日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2434-3056
Print ISSN : 1882-0115
36 巻, 3 号
36巻3号(通巻100号)
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座談会
追悼
原著
  • 河島 秀昭, 樫山 基矢, 高橋 夏絵, 大関 亜樹子
    2020 年 36 巻 3 号 p. 86-93
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】ストーマ閉鎖術における手術部位感染(Surgical Site Infection, SSI)を含めた術後合併症の発生状況を検討する。
    【方法】2010年~2019年に当院でループストーマ閉鎖術を施行した症例を対象に、SSIを含めた合併症を、特にストーマ創部閉鎖法との関連に関して検討した。
    【結果】対象症例は54例で、男性31名、年齢中央値68歳であった。ストーマ部位は横行結腸33例、回腸19例、S状結腸2例であった。吻合方法は器械吻合33例、手縫い吻合21例で、創閉鎖法は環状縫合閉鎖法48例、半閉鎖法4例、ベンツマーク法2例であった。創閉鎖部のSSIは全合併症の42%を占め、SSI発生率は全体で9.3%、環状縫合閉鎖法8.3%、半閉鎖法25%と環状縫合閉鎖法で低率であったが有意差はなかった。術後入院日数中央値は、無合併症例の10日に対してSSI発生例は18日と有意に長かった。SSI発生のリスク因子に関して、ストーマ部位、吻合法、創閉鎖法、患者因子、術者間で比較したが有意な差はなかった。
    【結論】SSI発生により入院期間延長に関連を認めたが、環状縫合閉鎖法のSSI発生率は8.3%と低率であった。
  • 山本 亜由美
    2020 年 36 巻 3 号 p. 94-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】ストーマ造設患者のストーマセルフケア確立を困難にする要因を明らかにし、セルフケア確立困難予測患者への支援のあり方の示唆を得ることである。
    【方法】消化管ストーマを造設した患者を対象に、ストーマセルフケアの自立群と非自立群で2群間比較を行った。
    【結果】セルフケア確立困難の要因は、75歳以上、日常生活自立度の低下、理解力の低下、視力低下、手指巧緻性低下、上肢の麻痺、術後回復遅延、ストーマ合併症、悪性腫瘍であった。
    【結論】術前からセルフケア確立を予測するためには、75歳以上、日常生活自立度の低下、理解力の低下、視力低下、手指巧緻性の低下、上肢の麻痺をアセスメントし、1つでも当てはまる場合は、入院前から患者の能力に合わせたセルフケア方法を立案する。また、セルフケア能力が低下した場合は、ケア方法と目標を修正し早期に家族の協力や社会資源の活用を検討する必要がある。
症例報告
  • 中村 真樹, 竹内 仁美, 田村 祐太, 木田 千景, 増田 稔, 下園 佳代美, 村岡 亜紀, 河崎 明子, 久米 春喜, 井川 靖彦
    2020 年 36 巻 3 号 p. 100-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【背景】ストーマ周囲皮膚潰瘍は難治性であることが多い。今回、回腸導管ストーマ周囲皮膚潰瘍が、尿管ステント留置による尿分離と陰圧閉鎖療法の併用で治癒した症例を経験したので報告する。
    【症例】症例は55歳、女性。筋層浸潤性膀胱癌の診断で術前化学療法後、膀胱全摘除術・回腸導管造設術を施行した。術後にストーマ周囲皮膚潰瘍を発症したため、尿管ステント留置による尿分離と陰圧閉鎖療法を行って良好な治療経過を得た。
    【考察】術前化学療法による低栄養状態、術後化学療法で投与した抗がん剤の尿中排泄による細胞障害のために潰瘍が発症・増悪したと考えられ、尿の付着を防ぐ本治療が有用だったと推察する。今後、膀胱全摘除術症例は増加すると思われ、化学療法に関連して発生するストーマ周囲皮膚潰瘍に対する治療法の蓄積が必要である。
    【結論】尿管ステント留置による尿分離と陰圧閉鎖療法は、回腸導管ストーマ周囲皮膚潰瘍に有用と考えられる。
研究報告
  • 平井 菜穂, 角田 明良
    2020 年 36 巻 3 号 p. 106-113
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】骨盤底筋協調運動障害を呈する便排出障害(骨盤底筋協協調運動障害)に対する肛門筋電計を使用したバイオフィードバック療法(Biofeedback Treatment,BFT)の介入効果を検証する。
    【方法】対象は2016年7月~2019年5月に骨盤底筋協調運動障害と診断されBFTを行った患者。BFT施行回数は原則1ヵ月に1回計5回行った。治療効果の評価には、Constipation Scoring System(0-30)(CSS) スコア、Obstructed Defecation Syndrome (ODS) スコア、Patient Assessment ofConstipation Quality of Life(PAC-QOL)調査票を使用した。
    【結果】対象者14例の年齢は73歳(58-85歳)で、男性が12例、女性2例であった。脱落例1例を除き13例で効果の検討を行った。CSSスコアはBFT前14(4-18)からBFT後8(3-15)と有意に改善し(p=0.007)、ODSスコアはBFT前16 (7-21)からBFT後7 (0-17)と有意に改善した(p=0.002)。PAC-QOLのOverallはBFT前1.9(1.0-3.6)からBFT後0.8(0.2-2.5)と有意に改善した(p=0.002)。
    【結論】骨盤底筋協調運動障害患者を呈する便排出障害には、肛門筋電計を用いたバイオフィードバック療法が、便秘症状ならびに生活の質を有意に改善するため有用である。
  • 矢野 琢也, 奥田 浩, 豊田 明美, 中原 雅浩
    2020 年 36 巻 3 号 p. 114-120
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【背景】ハルトマン手術後の人工肛門閉鎖術(ハルトマンリバーサル)は合併症が多いとの報告があるが、本邦における腹腔鏡下手術の報告は少ない。
    【方法】腹腔鏡下手術を第一選択としてハルトマンリバーサルを行った症例を対象に、その結果を後ろ向きに検討した。
    【結果】対象は20例(年齢中央値:68歳、男性:13例)。腹壁瘢痕ヘルニアのため最初から開腹した1例以外の19例では、まず腹腔鏡で観察した。その1例と観察のみで癒着などのため腹腔鏡下手術が困難と判断して開腹した5例の合計6例を開腹群とした。残り14例で腹腔鏡下に手術開始したが、うち4例(開腹移行群)では途中で開腹移行し、腹腔鏡下手術の完遂は10例(腹腔鏡群)であった。3群間で手術時間、術中出血量、covering stomaの必要性、縫合不全などの合併症、術後入院期間に関して有意差を認めなかった。
    【結論】腹腔鏡下手術を第一選択にすると、半数で完遂することができ、その結果は開腹手術と同等である。
実践報告
  • 福田 守良, 前田 修子, 森山 学, 中村 美穂
    2020 年 36 巻 3 号 p. 121-126
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は、アプリケーションソフト『介護者のための膀胱留置カテーテル管理(以下、カテーテル管理)モニタリングツール』の開発を目指し、その構成内容・機能を構築するために、在宅での介護者によるカテーテル管理の状況、携帯端末所有状況とカテーテル管理における情報通信技術(Information and Communication Technology)活用への期待を明らかにすることである。
    【方法】カテーテル管理を行っている介護者を対象に面接による質問紙調査を実施した。
    【結果】対象者は8名(平均年齢60.4歳、女性4名)で、尿性状・水分摂取量の観察、カテーテルの屈曲やねじれ・尿量・カテーテル挿入周囲からの尿漏れ・体温の確認を実施し、7名が携帯端末操作可能で、半数以上は介護者・訪問看護師・医師間の連携に携帯端末の利用を希望した。
    【結論】本ツールのアプリケーション化は可能であり、構成内容には介護者が行っていたカテーテル管理内容を含め、介護者を含めた関係職種が情報交換できる機能を付与する必要性が示唆された。
地方会抄録(地域研究会記録)
編集後記
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