木材学会誌
Online ISSN : 1880-7577
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59 巻, 4 号
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カテゴリーI
  • 高温乾燥における現象区分とモデル化
    相馬 智明, 鈴木 裕一, 稲山 正弘, 安藤 直人
    2013 年 59 巻 4 号 p. 171-178
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル フリー
    製材の人工乾燥スケジュールは実験的な研究成果や乾燥実務者の経験によって決定されており,そのためこれまで経験のない乾燥条件に遭遇した時には,実務現場で試行的に最適条件を見出しているのが現状である。筆者らは,伝熱工学的アプローチから製材の乾燥時間を算定する方法を構築し,机上計算によりある程度の乾燥スケジュールの目途を付けることを可能とすることで,こうした現場における試行を効率化できると考えた。そこで本報では水の沸点を超える比較的高温の乾燥過程に着目し,乾燥過程を4つの段階に分け,それぞれにおいて異なる伝熱モデルを適用して各段階における乾燥時間の算定法を示した。また,算定に使用する熱物性値を既往の研究データから近似的に求め,まとめた。
  • 中嶋 康, 東野 正, 武田 孝志, 飯島 泰男
    2013 年 59 巻 4 号 p. 179-187
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル フリー
    横架材としてのたいこ材と平角材の曲げ強度性能に及ぼす輪生節の影響を検討するため,アカマツたいこ材と平角材の静的曲げ強度試験を行い,曲げ強度性能について製材の日本農林規格の目視等級別に比較した。その結果,たいこ材は平角材と比較して節径比の増大に伴う曲げ強度の低下が抑制されており,このため目視等級が低くなると最大荷重も平角材と比較して高くなった。この実験データから推定した場合,たとえば中央部の直径300mmの丸太から得られるたいこ材の平角材に対する最大荷重の比は目視等級1級,2級,3級でそれぞれ1.59,1.62,及び1.95となり,同一直径の丸太の有効利用の観点からも,たいこ材は平角材と比較して効率的であることが示された。
カテゴリーII
  • 小林 良洋, 蒲池 健, 稲山 正弘
    2013 年 59 巻 4 号 p. 188-202
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル フリー
    我が国の伝統構法の一つである追掛継は,曲げ破壊の過程で胴付の木口面に摩擦による割裂破壊が観察される。よってこの割裂破壊は,継手の降伏を決定する要因の一つと考えられる。胴付の割裂破壊後は,割裂変位の増加により,平面保持仮定が成り立たなくなり,降伏以降の接合部の荷重変形挙動を予測するためには木口面同士の摩擦による割裂破壊荷重の推定が必要となる。そこで本研究では木口面に摩擦によるせん断力が作用するような状態を疑似的に再現する実験を行い,割裂破壊荷重に影響を与えることが予想される因子を抽出して割裂破壊荷重との関係を明らかにするとともに,既往の算定式を始めとするいくつかの定式化を試み,それらの適用性について検討を行った結果について報告している。
  • 成田 廣枝, 安藤 直人, 空閑 重則
    2013 年 59 巻 4 号 p. 203-210
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル フリー
    約70年間雨曝しで使用された古材の樹種が,タイワンヒノキ(Chamaecyparis obtusa var. formosana)とヒノキ(C. obtusa)のいずれであるか判別を試みた。顕微鏡組織観察,揮発性成分のGC/MS分析,ヒノキチオール-鉄錯体の呈色反応および薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った。その結果,ジクロロメタン抽出液のTLCにおいて,タイワンヒノキとヒノキは明確に識別され,古材はタイワンヒノキと同定された。よって,長期間雨曝しにされたタイワンヒノキの同定には,TLCフィンガープリント分析法のみが有効であった。
カテゴリーIII
  • 2層不完全合成梁の曲げ剛性の理論的検討と解法の比較
    園田 里見
    2013 年 59 巻 4 号 p. 211-218
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル フリー
    ずれ止め配置と荷重が左右対称な単純支持された2層不完全合成梁の曲げ応力解析についてNewmark理論,神谷の精算法および近似式を検討した。Newmark理論について,たわみやたわみ角を簡便に求める式を導出した。神谷の精算法を改良し,精度の向上と計算の安定化を図った。神谷の近似式に対して,具体的な応力計算法を導いた。数値実験により,近似解の理論精度ならびに精算解とNewmark理論による計算たわみの差異を検証した。近似解は実用上比較的良好な精度でたわみを計算できること,ずれ止めが比較的少ない合成梁にNewmark理論を適用する際の計算たわみの誤差に関する因子の影響を示した。
  • 原田 寿郎, 宮武 敦, 上川 大輔, 平松 靖, 新藤 健太, 井上 明生, 宮本 康太, 塔村 真一郎, 秦野 恭典, 宮林 正幸
    2013 年 59 巻 4 号 p. 219-226
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/29
    ジャーナル フリー
    高温時における接着強さが構造用集成材の耐火性能に及ぼす影響を明らかにするため,レゾルシノール・フェノール系樹脂接着剤(PRF),水性高分子イソシアネート系接着剤(API)及び酢酸ビニル系樹脂接着剤(PVAc)を用いた集成材はりの載荷加熱試験を行った。PRFとAPIを用いた集成材は45分の加熱試験で求められる性能を有したが,PVAcではラミナの脱落が早く,その性能は得られなかった。接着剤の圧縮せん断接着強さは温度上昇に伴って低下し,100℃,150℃,200℃ではPRF>API>PVAcの順となり,150℃のPVAcの値は0であった。集成材の耐火性能低下は,ラミナの脱落に支配され,接着剤の耐熱性能とラミナの脱落,集成材の耐火性能の関係が解明されたことで,200℃でラミナが脱落しない程度の圧縮せん断接着強さが残存すれば,集成材は,45分の載荷加熱試験で求められる耐火性能を有することが示された。
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