教育学研究
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76 巻, 2 号
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特集 大学論の新たな地平を探る
  • 天野 郁夫
    2009 年 76 巻 2 号 p. 172-184
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2017/11/28
    ジャーナル フリー
    高等教育システムはいま、世界的な変動期を迎えている。日本もその例外ではない。そのシステム変動の基本的な構造と方向性を分析する上で、最も説得的な理論とされているのは、アメリカの社会学者マーチン・トロウの「歴史・構造理論」である。「エリートからマス、ユニバーサルへ」の段階移行で知られるこの理論は、ヨーロッパ、それにアメリカ高等教育の発展の歴史的な経験をもとに、一般化されたものである。本論文の目的は、日本の経験を事例に、その比較高等教育システム論としてのトロウ理論の妥当性を検証することにある。日本を、ヨーロッパ・アメリカと対比させた本論文での分析は、この移行理論の基本的な妥当性を裏付けるものである。しかし同時に、その移行過程の分析は、「エリートからマス、そしてユニバーサルへ」の段階移行に、単一の道を想定することの妥当性に疑問を提示するものである。移行の過程について、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本に代表される東アジアという、3つの道を想定することによって、この理論はさらに説得性を増し、実り多いものになるはずである。
  • 大場 淳
    2009 年 76 巻 2 号 p. 185-196
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2017/11/28
    ジャーナル フリー
    高等教育の市場化は世界的傾向である。我が国では1990年代以降、大学設置基準の大綱化をきっかけとして市場化が本格化した。21世紀に入って、市場化は構造改革を進める小泉内閣の下で一層進められたが、同時に整備されたのは強い統制力を持つ事後監視・監督制度であった。世界化・大衆化する高等教育の市場化は不可避であるが、現行制度では大学が創造性を発揮しつつ市場化に適切に対応することは困難である。業績評価の軽減を始めとして、真の自律性拡大に向けた高等教育制度の全般的な見直しが求められる。
  • 船寄 俊雄
    2009 年 76 巻 2 号 p. 197-207
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2017/11/28
    ジャーナル フリー
    日本の教員養成は大きな転換の時期を迎えている。今、大学が社会から求められていることは、「大学における教員養成」原則の実質化に他ならない。その原則の歴史的意義の核心は、大学が教員養成に意識的・積極的に関与するということにある。しかし実際には、「大学」と「教員養成」の関係はなかなか調和しがたい歴史を有してきた。本稿の目的は、「大学」と「教員養成」の関係を教育史観点から再整理し、教育学部の今後を展望することにある。
  • 金子 勉
    2009 年 76 巻 2 号 p. 208-219
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2017/11/28
    ジャーナル フリー
    日本の大学関係者の大学観に影響したと考えられるドイツの大学理念について検討する。ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの「ベルリン高等学問施設の内的ならびに外的組織の理念」と題する文書は、大学論の原点である。研究と教育を重視することがドイツ的な大学観であると認識されてきたが、そのような大学理念はフンボルトあるいはベルリン大学から生じた形跡がないとする異論がある。そこで、高根義人、福田徳三、ヘルマン・ロエスレル等の大学論、ベルリン大学及びベルリン科学アカデミーの歴史、大学関係法令を手がかりとして、ゼミナール、インスティトゥート等諸施設の性質を考察した。科学アカデミーに所属する研究施設を分離独立して、これらを新設大学が教育上の目的に利用することが、ベルリン大学創立時の構想の核心にある。実際に、ベルリン大学令が大学と研究施設の関係を規定し、その規定が他大学に継承されたのである。
  • 秦 由美子
    2009 年 76 巻 2 号 p. 220-234
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2017/11/28
    ジャーナル フリー
    1992年継続・高等教育法により、二元構造であったイギリスの高等教育は一元構造に移行した。この一元化により新大学となった高等教育機関と1992年以前から大学であった旧大学には、今なお多くの相違点が存在している。そこで本論文では、特に大学自治にとって対極に位置すると考えられる新大学と伝統的大学の自治の変容に焦点を当て、特色ある4大学を事例として挙げながら、大学組織としての側面と公的財源の影響面から大学の管理運営と組織文化について論じてゆく。そして最終的には、大学が大学として存在するために不可欠な大学の自治についてイギリス高等教育機関が今後必要とする諸条件を提示したい。これら諸条件は、日本の大学においても必須のものであると考えられるからである。
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