教育学研究
Online ISSN : 2187-5278
Print ISSN : 0387-3161
ISSN-L : 0387-3161
90 巻, 1 号
選択された号の論文の41件中1~41を表示しています
論文
  • ジョン・デューイの1920年代から1930年代の思想変遷を手がかりに
    梶川 萌
    2023 年 90 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、測定の技術をめぐるジョン・デューイの洞察を手がかりに、そこで個性概念がどのようにとらえられているのかを明らかにすることである。デューイにおいて、個性と測定の技術とのかかわりは、知能テスト批判を契機として1920年代に問われ、産業化社会や物理学の発展等の社会状況を背景に1930年代を通じて考察が深められた。その際、個性概念の内実が多元性を有するものから予測されえなさの源へと変化したことが明らかとなった。

  • グレゴリー・ミッチーの多文化教育の実践記録および研究を手がかりに
    植松 千喜
    2023 年 90 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本稿は、米国の多文化教育のペダゴジーの実践記録や教師の語りに着目し、教師が「生徒の声」を聴こうとした際に直面する困難を明らかにした。グレゴリー・ミッチーの実践記録やそれに続く彼の研究を比較検討することで、生徒たちと文化的な重なりをもつ教師であるがゆえにかえって「声」を聴きづらくなる場合があることや、「声」を聴くことと学力保障によるエンパワメントを両立することの困難が示唆された。

  • ローカルな価値判断の必要性
    桐村 豪文
    2023 年 90 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     フィリップスは、エビデンスに基づく政策と実践の推進をめぐって対立する立場の全体像を、「硬い心」の立場と「軟らかい心」の立場を両極にもつ連続体として捉えている。本稿が着目するのは、その連続体の中間に位置する「より柔軟」な立場である。その立場は、昨今の科学哲学の知見を踏まえ、因果関係の概念をINUS条件として捉え、ローカルな文脈を重視するアプローチを展開する。しかしそのアプローチも不確実性の問題に直面し、価値判断の必要性に回帰する。

  • 大正新教育期の実践家による教育評価論の形成過程
    橋本 美保
    2023 年 90 巻 1 号 p. 38-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本稿では、大正新教育期の実践家である千葉命吉が成績考査改革論を形成した過程を明らかにし、彼の考査論の特質を指摘した。欧米の実験教育学や新心理学を受容して考査研究を行った千葉は、考査を、児童の成長を支援するための動的なカリキュラム実践に不可欠な活動と捉え、彼の実践改革の中核に位置づけた。千葉の考査改革においては、教師の教育的洞察による判断が重要視されながらも、同時に教師自身による実験的研究の必要性が説かれたことの意味について考察した。

  • 同和対策審議会答申・同和対策事業特別措置法の影響
    板山 勝樹
    2023 年 90 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本稿では、第一点目に、同対審答申が「格差是正」を中心課題としていたことと、そこには部落解放同盟の北原泰作、朝田善之助の意向が反映していたことを確認する。第二点目に、同対審答申と三つの命題との親和性を検証し、「格差是正」が部落解放上の戦術目標となったことを明らかにする。第三点目に、「格差是正」が導き入れた二つの問題(「低学力」の克服の浮上と同和地区対策教育化)を示す。第四点目に、二つの問題が導き入れた「解放の主体」形成の後景化を指摘する。

  • マイノリティの子どもの名前をめぐる実践と対話に着目して
    長江 侑紀
    2023 年 90 巻 1 号 p. 63-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究は、人々の相互理解と変容を促す対話の観点から、多文化共生に取り組む保育園における「名前をめぐる実践」を検討する。調査方法には保育者と保護者のインタビュー調査と園実践の参与観察を用いる。この実践の目的はマイノリティの可視化と文化的多様性の尊重を目指した子どもの「ルーツの名前」の使用の促進である。差別や偏見を憂慮し、葛藤を抱える保護者の声が上がる中、対話を契機に、保育者が保護者に耳を傾け、保護者と協働して包摂的な保育を目指すことへ目的と方法が再定義されるなど、実践の再構築が起きていた。

  • 三項の相互媒介関係に着目して
    金井 徹
    2023 年 90 巻 1 号 p. 76-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本稿は旧教育基本法の制定前後における教育理念に関する言説を、個人、国家、人類(世界)の相互媒介関係を前提とする三項図式の思考枠組を手がかりに分析した。三項図式は、国民(=民族)国家のもとで教育理念を構想した多くの人々に共通する思考枠組であり、個人と世界とを直接的につなぐ世界市民化と、世界との媒介を欠く民族国家の普遍化の企てとの両方向を批判的に捉え得る論理と同時に、自国民中心に帰結する論理を内包することを明らかにした。

  • 形成過程とその構造に着目して
    川上 若奈
    2023 年 90 巻 1 号 p. 89-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル フリー

     本稿では、19世紀フランスの作家、批評家テオフィル・ゴーチエが「芸術至上主義」思想を形成していく過程を、胎動、誕生、展開に区分して探った。彼は、道徳的教訓を示すという芸術の直接的な有用性を否定しながら、美しさに触れることにより人間の本性を向上させるという有用性を認め、そのための趣味を惹起し育むという芸術教育論を展開した。この意味で、彼を自律的な芸術のもつ教育的意義を主張した人物として再評価できると考える。

2022年の教育改革案・調査報告等
連載 教育研究の現在 第25回
日本教育学会第81回大会報告
課題研究
公開シンポジウム
一般報告
書評
図書紹介
feedback
Top