本稿は、戦時期日本の学齢期保育の展開を、既婚女性の勤労動員との関係に着目して検討し、その事業の特徴を明らかにした。国は既婚女性の徴用を行わなかったが、仕事と育児の両立の問題への関心は高まっていった。学齢期保育の必要性を唱えた社会事業関係者の議論は、働く女性の育児支援という観点から行われた。この時期の学齢期保育事業は、既婚女性の勤労動員強化を背景に、学校、産業、地域社会一体型の社会事業として開始されていった。
教育学における他者論の一つの成果として、「~し直す」成長モデルが教育学において浸透している。ただ、「~し直す」成長モデルには、教育学における他者論に潜在していた自己矛盾の問題が十分に論究されないまま、依然として残されている。本稿は、バトラーとレヴィナスの受動的主体形成論に注目することを通して、教育学における他者論の自己矛盾のもたらす問題を克服する方法を提示する。
いかにして人は学ぶのか―ベルギーの精神医学者にして教育者のドクロリーは、こうした問いにどのように応答しているのか。本稿では、ドクロリー・メソッドひいてはドクロリーの思想を紐解く鍵となる「連合」の概念を当代フランス心理学における解離研究との繋がりから検討し、ドクロリーにおける「連合」の再解釈について明らかにする。認識活動を根本的に捉えようとした医学的心理学の視座から示されるa/di-ssociationとしての「連合」には人間や学びについての洞察が含まれている。