目的:今回我々は肥満と大腸腺腫発生部位との関連性について,大腸腺腫の大きさを考慮して検討した.
対象:1992年4月から15年間に大腸肛門病センター高野病院健診センターで内視鏡検査を初回受診した14,582名(男性6,528例,女性8,054例)とした.
方法:今回発見された大腸腺腫の発生部位と肥満(BMI≧25)との関連性を腺腫の大きさ別に解析するため,多変量解析ロジスティック回帰分析を用いてp<0.05を有意差ありとし,オッズ比(OR)を算出した.大腸腺腫発生部位は直腸(肛門を含む),S状結腸,S状結腸-下行結腸移行部,下行結腸,脾彎曲部,横行結腸,肝彎曲部,上行結腸,回盲部とし,大腸腺腫の大きさは5mm未満,5mm以上10mm未満,10mm以上に分類した.
結果:肥満と大腸腺腫との関連性は大きさ別では,男性肥満者は5mm以上で有意な関連性がみられ(5mm以上10mm未満の腺腫:p<0.01,10mm以上:p=0.01),女性肥満者では有意な差は認めなかった.さらに腺腫の発生部位は男性では上行結腸で有意に発見され(5mm以上10mm未満の腺腫:OR=1.93倍,p=0.003,10mm以上:OR=2.35,p=0.004),女性では発生部位に有意差は認められなかった.
結論:大腸腺腫の大きさや発生部位に関連性が有意に認められた男性の肥満は,一般に内臓脂肪型肥満が多く,この内臓脂肪型が腺腫の大きさや発生部位における何らかの病態に関与している可能性は否定できず,今後の課題であると思われる.
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