人間ドック (Ningen Dock)
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26 巻, 5 号
人間ドック
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
総説
原著
  • 高橋 珠紀, 谷口 中, 八城 博子, 酒井 泰彦, 丸毛 聡, 室 繁郎, 佐藤 晋, 佐藤 篤彦
    2012 年 26 巻 5 号 p. 729-733
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/13
    ジャーナル フリー
    目的:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主原因は喫煙であり,世界の死因第4位で今後さらに有病率と死亡率が増加すると予測され,予防医学の観点からも大きな問題である.近年COPDは治療可能な疾患となりつつあり,適切に治療介入することで肺機能低下の予防や予後の改善が期待される.効率的かつ早期にCOPDを発見し診断するためには気流閉塞の高リスク群に肺機能検査を行うことが必要である.心電図がCOPDの早期発見のためのツールとして役立つかどうかを検討した.
    方法:京都予防医学センターにおいて2007年1月から2009年11月までの間に心電図とスパイロメトリーを含む定期健康診断を受けた13,834例を対象とし,気流閉塞の有無と心電図異常との関連を検討した.
    結果:非喫煙者が53.0%,過去喫煙者が24.7%,現喫煙者が22.3%,全対象例における気流閉塞の有病率は9.9%.喫煙歴を有する症例では,心房細動,完全右脚ブロック,不完全右脚ブロック,心室性期外収縮,左軸変位,QSパターン,ペースメーカー調律の症例で気流閉塞を呈する症例が有意に多かった.
    結論:気流閉塞の有病率は何らかの心電図異常を持つ喫煙者に多く,COPDには心電図がスパイロメトリーを施行する上での補助的ツールとして役立つ可能性がある.一定の心電図異常を持つ喫煙者群には,COPDを早期に発見するために肺機能検査を受けることが推奨される.
  • 佐藤 友美, 野崎 良一, 山田 一隆, 春間 賢, 藤井 昌史
    2012 年 26 巻 5 号 p. 734-742
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/13
    ジャーナル フリー
    目的:今回我々は肥満と大腸腺腫発生部位との関連性について,大腸腺腫の大きさを考慮して検討した.
    対象:1992年4月から15年間に大腸肛門病センター高野病院健診センターで内視鏡検査を初回受診した14,582名(男性6,528例,女性8,054例)とした.
    方法:今回発見された大腸腺腫の発生部位と肥満(BMI≧25)との関連性を腺腫の大きさ別に解析するため,多変量解析ロジスティック回帰分析を用いてp<0.05を有意差ありとし,オッズ比(OR)を算出した.大腸腺腫発生部位は直腸(肛門を含む),S状結腸,S状結腸-下行結腸移行部,下行結腸,脾彎曲部,横行結腸,肝彎曲部,上行結腸,回盲部とし,大腸腺腫の大きさは5mm未満,5mm以上10mm未満,10mm以上に分類した.
    結果:肥満と大腸腺腫との関連性は大きさ別では,男性肥満者は5mm以上で有意な関連性がみられ(5mm以上10mm未満の腺腫:p<0.01,10mm以上:p=0.01),女性肥満者では有意な差は認めなかった.さらに腺腫の発生部位は男性では上行結腸で有意に発見され(5mm以上10mm未満の腺腫:OR=1.93倍,p=0.003,10mm以上:OR=2.35,p=0.004),女性では発生部位に有意差は認められなかった.
    結論:大腸腺腫の大きさや発生部位に関連性が有意に認められた男性の肥満は,一般に内臓脂肪型肥満が多く,この内臓脂肪型が腺腫の大きさや発生部位における何らかの病態に関与している可能性は否定できず,今後の課題であると思われる.
  • 大原 信行
    2012 年 26 巻 5 号 p. 743-748
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/13
    ジャーナル フリー
    目的:上部内視鏡検査において胃蠕動は検査精度を劣化させる要因であり,何らかの蠕動抑制処置を講じることが一般的である.筆者はレモン果汁を用いた新しい蠕動抑制法を開発した.経鼻内視鏡における本法の有効性と安全性を証明するためランダム化比較試験を行った.
    方法:2011年6月~8月に当院において人間ドックおよび検診で経鼻内視鏡を受けた80名を対象とし,封筒法によりA群とB群にランダムに割付けた.A群は検査中にレモン果汁15mLを十二指腸に注入し,B群はレモン果汁の代わりに蒸留水15mLを注入した.蠕動の程度を1(蠕動なし)~4(強い蠕動)の4段階にスコア化し,注入前後の蠕動の程度を評価した.同時に注入前・直後・注入3分後の血圧,心拍数およびSpO2を測定した.
    結果:蠕動なしの割合はA群注入前7.9%,注入後39.5%,B群注入前8.3%,注入後0%であり,注入後の群間比較においてA群が有意に高かった(p<0.00001).蠕動スコアの平均値はA群注入前2.34,A群注入後1.79,B群注入前2.47,B群注入後2.64であり,A群では注入後に有意に減少した(p<0.01).群間比較では注入前は両群に有意差はなく,注入後はA群が有意に低かった(p<0.0001).
    結論:経鼻内視鏡において本法が有効で安全な蠕動抑制法であることが証明された.本法は苦痛を伴わず経済性にも優れており人間ドックや検診に適している.今後,本法が普及し経鼻内視鏡の検査精度の向上に貢献することが期待される.
  • 宮城 悦子, 沼崎 令子, 中西 透, 片岡 史夫, 猿木 信裕, 井畑 穰, 伊藤 則雄, 吉田 憲生, 新原 温子, 村松 孝彦, 今泉 ...
    2012 年 26 巻 5 号 p. 749-755
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/13
    ジャーナル フリー
    目的:血漿中アミノ酸濃度はがんを含む各種疾患により変化する.血漿中アミノ酸プロファイルから健康状態や疾病の可能性を把握する「アミノインデックス技術」は複数がんのスクリーニング法として臨床実用化されている.本研究は多施設共同試験により3種の婦人科がん(子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がん)の判別を行う指標式を「アミノインデックス技術」を用いて導出し,その有用性を検討することを目的とした.
    方法:複数施設で子宮頸がん患者208例,子宮体がん患者186例,卵巣がん患者102例,婦人科良性疾患患者305例,健康人1,631例を対象として採血し,血漿中アミノ酸濃度をLC-MSにより測定した.
    結果:3種の婦人科がん患者の血漿中アミノ酸濃度変化は共通性が高く,婦人科がんのいずれかに罹患している可能性を判別する一つの指標式を「アミノインデックス技術」を用いて導出し,その判別性能評価を行った.導出された指標式の特異度95%での感度は子宮頸がん52%,子宮体がん58%,卵巣がん77%であり,いずれもⅠ期症例から高い感度を示した.また,子宮頸がんでは腺癌も高い感度を示す,子宮体がんではCA125より有意に感度が高い,卵巣がんではCA125と同程度の感度を示すなどの特徴を有していた.
    結論:「アミノインデックス技術」により導出された,3種の婦人科がんのいずれかに罹患している可能性を評価する一つの指標式は,3種の婦人科がんの簡便な血液検査のスクリーニング法として有用であることが示唆された.
  • 神谷 英樹, 滝川 久美子, 杉山 秀樹, 榎崎 茂, 間根山 彰一
    2012 年 26 巻 5 号 p. 756-762
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/13
    ジャーナル フリー
    目的:健康診断における心臓聴診の重要性の評価.
    方法:対象は2009年4月~2011年3月までに,当センターで健康診断を受診した5,492例(平均47.8±12.0歳,男2,296例,女3,196例).全例に心臓聴診を行い心雑音の有無を評価した.その結果を,病歴,胸部X線検査(XP),心電図検査(ECG)と比較検討し,精密検査結果の追跡を行った.
    結果:49例(0.89%)に心雑音を認め,うち,未診断例は35例(0.64%)であった.この35例中,XPは29例に施行し要精査例は2例(7%),ECGも29例に施行し要精査例は4例(14%)であった.XP,ECGのいずれか,または両方で異常を認めた例は6例(17%)であった.未診断35例中19例で精密検査結果が追跡可能で,手術適応例(重症)は3例(僧帽弁閉鎖不全症(MR)1例,大動脈弁閉鎖不全症(AR)1例,動脈管開存症1例),専門医の管理を要する例(中等症)は7例(MR 3例,AR 2例,大動脈弁狭窄症2例),軽微な異常は4例(MR 2例,AR 1例,詳細不明1例),異常なしは5例であった.重症と中等症の10例中,ECG異常はなくXP異常は心拡大1例のみで,残り9例は心雑音以外の異常を認めず,心臓聴診のみで診断可能であった.
    結論:心臓弁膜症や先天性心疾患診断のため,健康診断において心臓聴診は重要である.
第52回日本人間ドック学会学術大会
委員会報告
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