人間ドック (Ningen Dock)
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31 巻, 4 号
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巻頭言
総説
  • 加藤 公則
    2016 年 31 巻 4 号 p. 541-549
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
     Brain natriuretic peptide(BNP)とN terminal(NT)-proBNPは心不全の診断,予後を推定できる有用なバイオマーカーである.しかし,BNPは循環器内科医や一般内科医にとって有用なだけではなく,将来は健診医にとっても有用なバイオマーカーと成り得ると思われる.つまり,BNPやNT-proBNPは心不全と診断できる値より低値で,将来の死亡,心疾患や脳卒中の発症を予測できることが知られてきている.したがって,人間ドックにて高血圧,糖尿病(耐糖能障害も含む),脂質異常症,喫煙などがあり,すでに将来の動脈硬化性疾患の発症リスクのある人は,BNPやNT-proBNPを測定し,もし,それが正常高値にあれば,将来の脳心疾患の発症を防ぐために,さらに厳密なリスク管理を施す必要があると思われる.さらに,BNPは糖代謝とも関連していることが最近知られてきており,将来,糖尿病医にとっても大切なバイオマーカーになる可能性もある.
原著
  • 花里 映里, 三輪 真也, 山下 眞理子, 河村 栄美子, 北島 有紀, 櫻井 清一, 髙谷 典秀, 髙谷 純司, 髙谷 雅史
    2016 年 31 巻 4 号 p. 550-554
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
    目的:日帰り人間ドック受診者サービスの一環として,健診後にくつろげる空間にて,栄養バランスのとれた食材豊かな昼食をオリジナルランチとして提供.またその満足度等の評価.
    方法:近隣のフランス料理店の協力を得て,シェフと管理栄養士が栄養バランスのとれたメニューを検討し,オリジナルランチとして日帰り人間ドック受診者に対し提供した.2014年7~8月にオリジナルランチ利用者314名にアンケート調査を行った.
    結果:9割を超える利用者から満足を得ることができた.またオリジナルランチの再度利用率も1割と確認ができた.
    結論:今後も受診者へ向け健康支援の一つとして,食を通じアプローチしていくことも受診者サービスに貢献できるとものと考え,オリジナルランチのサービスを継続することが肝要と考える.
  • 工藤 智美, 伊藤 陽子, 渡部 順子, 工藤 ゆき, 渡部 恵美
    2016 年 31 巻 4 号 p. 555-563
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
    目的:職域がん検診の精検受診率を向上させるため,文書および電話によるコール・リコールを行った.精検受診勧奨法としてこのシステムの効果を検討した.
    方法:平成25年度に受診した職域がん検診精検未受診者に対して,3ヵ月後に文書による精検受診確認および受診勧奨(コール)を行った.文書には返信はがきを同封し,精検受診状況を記載したうえでの返信を求めた.文書による受診勧奨から1ヵ月経過しても精検結果の返却がなく精検未受診と思われる場合,本人に電話による再勧奨(リコール)を行った.すでに精検受診・予約済の場合は受診医療機関を聞き,その結果を医療機関に問い合わせることにより精検結果の正確な把握に努めた.
    結果:平成24年度と25年度の精検受診率を比較し,大腸がん検診8.6%,胃がん検診5.3%,肺がん(胸部)検診5.1%,子宮がん検診4.0%,乳がん検診0.6%の順で上昇した.胃がん,大腸がん検診では有意差がみられた(p<0.05).
    結論:コール・リコールによる精検受診勧奨により,文書だけでなく電話等,直接本人と話せる受診勧奨法が効果を高めることが示唆された.この過程で精検既受診者の精検結果未把握分を医療機関から回収することで,より正確な精検受診率の算出も可能となった.今後,さらに職域の精検受診率を向上させるためには,受診者個人への対策とともに,事業所,医療機関とも協力・連携し,精検受診しやすい環境を整えていくことが重要である.
  • 仲佐 菜生子, 米原 久恵, 菖蒲 宏子, 上村 尚子, 永田 真理, 内藤 潤美, 春木 宥子, 内藤 篤
    2016 年 31 巻 4 号 p. 564-569
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
    目的:当院では人間ドック健診を受診するすべての喫煙者に,保健師による短時間禁煙指導を行っている.指導の再現性を保ち,指導効果を高めるため,当院で考案した禁煙支援ツール(禁煙支援オリジナルツール:以下,ツール)を使用し,その効果について検討した.
    方法:平成26年7月1日~12月30日に当院人間ドック健診を受けた者のうち,喫煙習慣のある受診者1,118名を,ツールを使用せずに保健師独自の指導を行った「不使用群」566名,ツールを使用し指導を行った「使用群」552名に分けて,指導効果を検討した.効果の判定には,受診者の関心度の変化を「変化なし・低下」と「向上」とに分類し,ツール使用の有無,保健師別に関心度の変化についてχ2検定を行った.指導を担当した保健師4名の経験年数は保健師A:13年,保健師B:10年,保健師C:6年,保健師D:4年であった.
    結果:ツール使用の有無により関心度の変化について有意差は認められなかった.指導者別の検討においては,保健師Dで「使用群」での関心度の変化「向上」の割合が有意に増加した.
    結語:ツールの使用により指導効果に有意な変化はみられなかったが,指導経験の少ない指導者においてツールの使用により短時間禁煙指導の効果が高まった可能性が示唆された.ツールは新人教育,経験の少ない指導者の教育に活用できると考えられた.
  • 安部 聡子, 原 雅文, 大中 佳子, 下司 映一
    2016 年 31 巻 4 号 p. 570-579
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
    目的:健診受診者の保健指導時の基礎資料とするために,女性健診受診者の年代別朝食欠食とメタボリックシンドローム(以下,MetS)関連指標との関連を明らかにすることを目的とした.
    方法:研究対象者は,平成23年4月から平成24年3月までに健康管理センターを受診した20~69歳までの女性受診者4,378名とした.特定健診の質問票から朝食摂取群と欠食群の2群に分けて,本研究で設定した8項目のMetS関連指標の平均値比較を全体および年代別に解析した.さらに,MetS関連指標の基準内と基準外で朝食2群比較を行った.
    結果:全体の平均値比較では,朝食欠食群において,MetS関連指標のBMI,腹囲,TG,LDL-C,が有意に高値,HDL-Cが低値を示した.2項ロジスティック回帰分析でも関連因子として腹囲,TG,FPG,LDL-Cとの関与が示された.年代別では,MetS関連指標の平均値比較で,20歳代(3項目),30歳代(3項目),60歳代(1項目)に摂取群と欠食群の有意差があり,40歳代(6項目),50歳代(6項目)は顕著に関与項目が多かった.さらに,朝食欠食群において,MetS関連指標の基準外となる割合が高率であったのが,20歳代(腹囲),30歳代(FPG・LDL-C),40歳代(腹囲・SBP・FPG・TG・LDL-C),50歳代(腹囲・TG・HDL-C)であり,60歳代を除く年代でMetS関連指標との相関を認めた.
    結論:習慣的朝食欠食はMetSにつながる可能性が高く,保健指導としては年代別のライフステージの特徴をとらえながら,個別性のある指導を行うことや40歳代より早期の介入を検討することが必要である.
  • 山門 實, 田中 孝幸, 影山 陽子, 新美 佑有, 谷 瑞希, 戸田 晶子, 長尾 健児, 今泉 明, 山本 浩史, 森 妹子, 青山 み ...
    2016 年 31 巻 4 号 p. 580-587
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
    目的:近年,生活習慣病と血漿中遊離アミノ酸(PFAA)プロファイルとの関連が報告されていることから,本報では,生活習慣病の主成因である内臓脂肪蓄積量がPFAA濃度を用いた指標式で評価できるかどうか,また,本指標式と生活習慣病との関連性について横断的,縦断的に検討を行った.
    方法:対象は腹部CT検査で内臓脂肪面積(VFA)を測定した865名,ならびに人間ドック健診を受診した初年度にVFAとPFAA濃度測定をし,その後4年間人間ドック健診を継続受診した4,293名とした.まず,865名の全対象者に対し早朝空腹時に採血し,PFAA濃度を測定した.そしてその650名のPFAA濃度からVFAと相関する指標式を導出し,その精度を検討した.また,215名の指標式の値とメタボリックシンドローム(MetS)の危険因子との関連性を横断的に検討した.さらに,4年間の継続受診者については,初年度の指標式の値に基づいて,受診後4年内に生活習慣病を発症するオッズ比をロジスティック回帰分析により縦断的に解析した.
    結果:PFAA濃度で導出された指標式とVFA値との相関係数は0.62であった.また,MetSの危険因子の保有数と指標式の値には有意な関連(p<0.001)が認められた.初年度の指標式の値により対象を低中高値に分類した結果,低値群と比較して高値群では次年度以降に生活習慣病を発症するオッズ比が有意に高かった.
    結論:指標式は内臓脂肪蓄積量と相関があり,また,生活習慣病を発症するリスクを横断的・縦断的に評価できることが示された.
  • 福井 敏樹, 今 陽一, 石川 実, 桝田 出, 加藤 公則, 高橋 英孝, 山門 實
    2016 年 31 巻 4 号 p. 588-597
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
    目的:特定健康診査において,CTと同様にデュアルインピーダンス法(Dual-BIA法)による内臓脂肪面積(DS-VFA)測定を実施した場合にも,腹囲測定に代用できる認可を得る目的で,日本人間ドック学会においてVFA委員会を設立した.
    方法:学会傘下の施設で,DS-VFAを積極的に導入している施設の協力を得て多施設共同データを作成し,横断的および複数回測定による縦断的解析を行った.
    結果:メタボリックシンドローム関連因子の変化や動脈硬化性血管病変の危険因子数の変化とDS-VFA変化には,すべてにわたって有意な相関が認められた.また,ROC曲線解析により,動脈硬化性血管病変危険因子およびメタボリックシンドロームの観点から,DS-VFAが検査として有用であることが示された.そして,いずれの解析においても女性の方が低いカットオフ値となり,少なくとも男女別のDS-VFAの基準値を設定していく必要があると考えられた.しかしながら,過去の報告にDS-VFAを当てはめてみるとCTによる内臓脂肪面積(CT-VFA)と同様の結果を示し,DS-VFAを標準検査として用いることの妥当性も証明された.
    結論:DS-VFAは生活習慣病およびメタボリックシンドローム対策のための検査として有用であり,しかも継続的に測定する意義があることが示された.
症例報告
  • 乾 和郎, 朝内 京華, 高島 東伸, 大橋 理恵, 石井 潔, 鈴木 信次, 福田 吉秀, 廣瀬 光彦
    2016 年 31 巻 4 号 p. 598-602
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー
     症例は43歳,男性.2008年11月の健診で肝機能異常を指摘されたため,2次検査を行った.腹部エコーで脂肪肝と胆嚢体部に5×4mmの高エコーな有茎性ポリープを認めた.コレステロールポリープと診断し,12ヵ月ごとの経過観察を行った.ポリープの大きさは2012年まで変化を認めなかったが,2013年11月に7×4mmとわずかに増大した.2014年11月に9×6mmとさらに増大したため腹部CTを行ったところ,胆嚢体部に石灰化を伴うポリープを認めた.半年後の腹部エコーで胆嚢内に大きさ6mm大の移動性のある結石像を認めた.また,以前に認めたポリープの付着部位には2~3mmの小ポリープを認めた.胆嚢ポリープが石灰化することは極めてまれであり,さらに,その一部が脱落して結石が形成されたと考えられる症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
委員会報告
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