目的:高血圧は循環器病の重大な原因疾患であるが未治療高血圧者も多く,健診の果たす役割は大きい.今回,職域健診における未治療高血圧者に行った健診当日の受診勧奨の効果を検討したので報告する.
方法:Ⅱ・Ⅲ度の未治療高血圧者を対象とし,健診当日に受診勧奨面談を行った.面談では勤務形態や生活環境に合わせた具体的な受診計画を立て,同時に生活習慣の修正や家庭血圧測定方法についての保健指導も行った.高血圧治療状況は1ヵ月後に電話で確認し,翌年度健診受診時に追跡調査も行った.
結果:健診受診者7,717名のうち,Ⅱ・Ⅲ度の未治療高血圧者は315名(4.1%)であり,278名に受診勧奨面談を行った.1ヵ月後に確認ができた241名の受診状況は,受診済108名(44.8%),受診予定60名(24.9%),受診検討56名(23.2%),意志なし17名(7.1%)であり,女性,高年層,Ⅲ度高血圧,他の動脈硬化危険因子の合併で受診率が高くなる傾向があった.面談1ヵ月後の生活習慣に対する取り組みは面談前と比較して改善しており,未受診群においても減塩や野菜摂取に対する取り組みが有意に改善した.翌年度健診時の追跡調査では,面談未実施者と比較して面談実施者では高血圧治療率が有意に高く,未治療者においても有意な血圧値の改善がみられた.
結論:職域健診における健診当日の受診勧奨面談および保健指導は,高血圧治療率の向上,生活習慣の修正に効果的であった.また未治療者においても生活習慣の修正や血圧値の改善につながった.
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