人間ドック (Ningen Dock)
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26 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 青木 空眞, 佐藤 研, 星 憲司, 川上 準子, 佐藤 憲一, 齋藤 芳彦, 森 弘毅, 吉田 克己
    2011 年 26 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:われわれは複数の基本的検査項目を組み合わせた顕性甲状腺機能異常症の新しいスクリーニング法を開発した.今回人間ドック受診者を対象に,この方法の有用性について検討した.
    方法:先行研究で開発した,顕性甲状腺機能異常症患者に特徴的な基本的検査セットの変動に着目して受診者の異常をスクリーニングする簡便な方法を用いた.JR仙台病院人間ドック受診者2,379名を対象に,アルカリフォスファタ―ゼ(ALP),血清クレアチニン(S-Cr),総コレステロール(TC),乳酸脱水素酵素(LDH),赤血球数(RBC)を入力し,コンピュータに機能異常が疑われる者を予測させた.
    結果:コンピュータの予測に加え甲状腺専門医が心拍数や体重変動,心電図などの付加情報も考慮した結果51名(2.14%)に甲状腺機能異常が疑われ,精査受診を勧奨した.来院時の血液または人間ドック時の残血のホルモン検査により,28名中,新たに6名の顕性および1名の潜在性甲状腺機能異常症を発見した.この7名全例で機能異常に関する訴えはなく人間ドック担当医は甲状腺異常を疑っていなかった.
    結論:人間ドックで測定済の基本的検査データを活用することで,ホルモンを測定せずに顕性甲状腺機能異常症をスクリーニングする新しい手法の有用性が確認された.本手法は一般内科医や人間ドック担当医に有用性が高いと思われ,患者QOLの改善をもたらすことができる.
  • 渡邉 敏充, 池田 敏, 鷲見 和幸, 澁谷 光一, 蘆原 友里, 飽浦 良和, 丹谷 延義, 山﨑 智子, 戸羽 祥二
    2011 年 26 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:腹部超音波検査(US)は,一般に上部消化管X線造影検査(UGI)の前に行われている.当施設では人間ドックの時間的効率化やUGI後のUSの追加希望など,UGIの前後にかかわらず,USを行う要望が高まってきた.そこでUGI後のUS描出能について検討した.
    方法:当施設職員男性11人,女性9人の計20人を対象にUGIの前後でUSを行い,臓器別に描出能を検討した.対象臓器は肝臓,胆嚢,総胆管,膵臓,脾臓,腎臓とした.また,UGI終了からUS開始までの時間を計測し,膵臓の描出について時間帯別に検討した.
    結果:肝臓・胆嚢は,UGI後のUSでも体位変換やプローブの走査方向を変えることで,UGI前と同等の描出が可能であった.総胆管は1人を除き同等以上に描出できた.脾臓・腎臓は影響を受けなかった.膵臓は描出不良が7人(35%),体位変換にて同等が8人(40%)であったが,発泡剤によるガスの影響は少なく,バリウムの影響で描出不良となった例が多かった.膵臓における時間帯別検討では,UGI終了からUS開始までの時間が30分以内では描出不良例を認めたが,それ以降では認められなかった.
    結論:UGI後のUSは少なくとも30分以上の間隔をあけることが必要であり,検査時に体位変換やプローブ走査法を工夫することにより,UGI前と同等の画像を得ることが可能である.
  • 杉本 孝一
    2011 年 26 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:尿中アルブミンの排泄増加は腎障害のマーカーとして有用であり,随時尿では早朝第一尿検体が推奨されている.しかし,日常の健康診断では午前中の随時尿を用いており,通常の判定基準では微量アルブミン尿が過剰診断される可能性がある.本研究はアルブミン尿の持続に着目して基準値の妥当性を検討することを目的とした.
    方法:当施設の人間ドック受診者において午前中随時尿における尿中アルブミン(UACR,mg/gCr)を計測し,ベースラインからの経年変化を検討した.
    結果:対象となった609例(平均年齢51.3歳;男性399例,女性210例)中,550例(90.3%)は2回とも「正常」(UACR<30)であった.初回測定時高値(UACR≧30)であった48例中,高値が持続したのは33例(5.4%),「正常」域に低下したのは15例(2.5%)であった.また,11例(1.8%)では初回「正常」で2回目30以上に上昇した.アルブミン尿高値の持続を「慢性の腎臓障害が存在する状態」と仮定すると,通常のUACRカットオフ値30では,感度0.75,特異度0.97であった.カットオフ値を40とすると,感度0.84,特異度0.98に上昇したが,さらにカットオフ値を上昇させても感度は増加しなかった.
    結論:午前中随時尿においてUACRカットオフ値40mg/gCrはアルブミン尿持続をもっとも良く予想できた.
  • 山田 千積, 稲邊 富実代, 三橋 敏武, 平塚 伸, 新井田 奈美, 高橋 英孝
    2011 年 26 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:メタボリックシンドローム(MetS)早期に関連するインスリン抵抗性の指標としてhomeostasis model assessment of insulin resistance(HOMA-R)を,心血管疾患リスク進展の指標として高感度CRP(hsCRP)を用いて,MetS早期の診断および重症化の指標としての肝機能検査の有効性を検証することを目的とした.
    方法:東海大学八王子病院の人間ドック初回受診者4,906人中,高血圧,糖尿病,脂質異常症,肝疾患治療中,大血管障害の既往者,肝炎ウイルス陽性者を除外し,現在飲酒習慣のない1,687人を対象とした.ステップワイズ法による重回帰分析でHOMA-RやhsCRPと関連の強い項目を選択し,対象者をMetSと肝機能異常有無により分類して臨床的特徴を比較した.
    結果:重回帰分析により,HOMA-RはFPG,BMI,ALT,SBP,TG,hsCRPはγ-GT,BMI,HDL-Cと有意な関連を認めた.HOMA-RはMetSとALT異常有無により,hsCRPはMetSとγ-GT異常有無により区別可能であった.さらにMetSでALT異常者をγ-GT異常の有無で分類するとHOMA-R・hsCRPともに高い群を抽出できた.
    結論:HOMA-RにはALTが,hsCRPにはγ-GTが関連しており,MetS有無に加えてALTとγ-GT異常の有無を評価に加えることで,それぞれMetS早期の診断および重症化の指標として役立つと考えられた.
  • 船津 和夫, 山下 毅, 本間 優, 栗原 浩次, 斗米 馨, 横山 雅子, 細合 浩司, 近藤 修二, 中村 治雄
    2011 年 26 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:脂肪肝は健診でみられる肝機能異常の大部分を占め,その罹患率は近年増加し,メタボリックシンドロームにおける肝臓の表現型とされている.しかし,非肥満者にみられる脂肪肝の意義についてはほとんど検討されていない.そこで,肥満の有無による脂肪肝の諸検査値に及ぼす影響ならびに脂肪肝とインスリン抵抗性との関連について検討した.
    方法:当健診センターで健診を受けている健康な成人男性936名を対象とした.対象者を肥満度と脂肪肝の有無により4群に分け,各群における一般血液検査値とインスリン抵抗性の指標であるhomeostasis model assessment of insulin resistance(HOMA-IR)を比較した.さらに,脂肪肝の発生に関与している諸因子を調整したうえで,非肥満者と肥満者におけるHOMA-IRの脂肪肝への関与の度合いを比較した.
    結果:肥満の有無にかかわらず,脂肪肝を有する人は無脂肪肝の人に比べ,肝機能,尿酸,血清脂質,糖代謝の各検査値は高値を呈し,特に,HOMA-IRは脂肪肝を有する人において著明に高値であった.ロジスティック回帰分析により肥満に関連した諸因子を調整しても脂肪肝の有無はインスリン抵抗性と関連があり,特に,肥満者よりも非肥満者において脂肪肝とインスリン抵抗性が密に関連していることが判明した.
    結論:非肥満者において脂肪肝がみられた場合,肥満者より高いインスリン抵抗性を有することから,生活習慣の改善をする必要があることが示唆された.

  • 今渡 龍一郎, 小川 雅克, 濱生 由衣, 北原 尚美, 宇野 卓也, 田中 裕, 鍵山 明弘, 合馬 紘
    2011 年 26 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:特定保健指導による諸指標の変化を検討した.
    方法:小倉医師会健診センターで特定保健指導を実施後,次年度特定健診を受けた同一受診者420名(男性236名,女性184名)を対象として体重(腹囲)変化に伴う血圧,脂質代謝,糖代謝の変化を検討した.
    結果:受診者全体では,保健指導により体重・腹囲ともにそれぞれ平均1.5kg,1.6cm有意に減少した.このうち体重減少群(n=236:平均-3.4kg)は収縮期血圧(133.7→129.8mmHg,p<0.001)・拡張期血圧(78.3→76.3mmHg,p=0.005)ともに下降,脂質代謝は中性脂肪値減少(150.2→130.4mg/dL,p<0.001)とHDLコレステロール値上昇(55.7→57.6mg/dL,p<0.001)したが,糖代謝には有意変化を認めなかった.一方,体重増加群(n=66:平均+2.3kg)は中性脂肪値増加とHDLコレステロール値減少傾向,糖代謝ではHbA1c(JDS)値の有意な上昇を認めた(5.42→5.57%,p<0.001).
    結論:保健指導後,受診者全体では体重・腹囲の有意な減少を認めた.さらに約5%の体重減少群で血圧下降,脂質代謝の改善,体重増加群では脂質・糖代謝の悪化を認め,特定保健指導による体重(腹囲)減少は生活習慣病発症抑制に有用と思われる.
  • 三浦 猛, 岡本 直幸, 今泉 明, 山本 浩史, 村松 孝彦, 山門 實, 宮城 洋平
    2011 年 26 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:血漿中アミノ酸濃度は,生理学的な代謝状態を反映することが知られており,肝臓機能障害時や種々のがんで血漿中アミノ酸濃度が変化することが示唆されている.前立腺がんの早期発見,治療につながる新しい診断マーカーの開発を目的とし,前立腺がん患者と対照者との血漿中アミノ酸濃度の比較に基づき,アミノ酸を変数とした多変量解析により作成した判別式「アミノインデックス」による前立腺がん判別の可能性を検討した.
    方法:前立腺がん患者と対照として人間ドック受診者の血漿中アミノ酸濃度を測定した.患者群と対照群とのアミノ酸濃度を比較し,個々のアミノ酸濃度変化を,変数選択を伴う多重ロジスティック回帰により,前立腺がん患者を判別する判別式「アミノインデックス」を導出,前立腺がんの診断能の評価を行った.判別能の評価基準としては,ROC曲線下面積(ROC_AUC)を採用した.
    結果:対照群と比較し,前立腺がん患者は,Alanine, Histidine,Asparagine, Prolineの増加,Triptophanの減少が見られた.導出された前立腺がんを判別する「アミノインデックス」は,ROC_AUC=0.74の判別能を有し,早期がんも検出できた.またPSAとは有意な相関は見られなかった.
    結論:前立腺がんを判別する「アミノインデックス」は,前立腺がんの新しい診断マーカーとなる可能性が示された.また,PSAと独立した指標であることから,PSAとの併用による有用性が示唆された.
  • 伊藤 玲子, 池田 弓恵, 大竹 かおり, 武井 晃司, 茂木 俊一, 見田 尊, 藤井 孝尚, 黒澤 功
    2011 年 26 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:乳房MRIの結果と,マンモグラフィ(MMG),超音波検査(US)の結果を比較し,検討したので報告する.
    対象と方法:2009年7月1日から2010年3月31日までにMRIを施行した52例を対象とし,乳がん18例のMMG・US・MRIの検査結果について検討した.
    結果:MMG陰性だが,USで指摘され,MRIで多発乳がんが疑われた症例が1例あった.また,USで描出困難な症例が3例,MMGやMRIで病変が認められ,大きさの小さな病変や非浸潤性乳管がん(DCIS)であった.MRIではUSで描出できなかったsatellite病変が4例検出され,satellite病変の検出能は高いと考えられる.数例の拡散強調画像(DWI)にてADC値(10-3mm2/sec)の測定を行った.結果は乳がん0.964,0.908,正常・良性2.359,2.097であった.
    結語:MRIは,MMGやUSでは描出困難なsatellite病変,DCISも検出可能であり,乳がんに対しての検出能が高いと考えられた.MRIのDWIにてADC値を測定することで健診として十分活用でき,診断精度の向上も期待できる.

  • 加藤 公則, 中原 寿子, 小林 隆司, 小林 篤子, 松田 和博, 笹川 力
    2011 年 26 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:N-terminal pro-brain natriuretic peptide(NT-proBNP)は,心不全の診断,治療効果判定,予後の指標として,臨床において重要なバイオマーカーとして確立されているが,健診における役割についてはまだ不明である.そこで,人間ドックにおけるNT-proBNP測定の意義について検討した.
    方法:2009年1月15日から3月9日まで,当協会の人間ドックを受診された5,084人を調査対象とし,腎不全(クレアチニン2mg/dL以上),心疾患や高血圧にて治療中の受診者を除外した4,225人を,年齢,性別,血圧,血液データ,心電図所見とNT-proBNPとの関係を検討した.次に,NT-proBNP高値者(109 pg/mL以上)の割合を,高血圧,心電図異常の有無で検討した.
    結果:年齢,性別,収縮期血圧,LDL-C,アルブミン,赤血球数,空腹時血糖,高感度CRP,上室性期外収縮,心室性期外収縮,左脚ブロック,心房粗細動,左室肥大が有意に独立してNT-proBNPと関連していた.NT-proBNP高値群の割合は,正常血圧や心電図異常がない受診者では5%前後であったが,高血圧や左室肥大では10%,心房粗細動では60%であった.
    結論:以上より,NT-proBNP測定は,人間ドックにおいても有用な検査である.
  • 中澤 浩二, 野末 則夫
    2011 年 26 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:胃がん検診の有意性を検証するため,検診受診者群と検診未受診者群の死亡率およびその予後について比較調査した.
    方法:2005~2009年までの5年間,藤枝市において毎年1月1日から12月31日まで,胃がんで死亡した者を死亡診断書より抽出し,年齢,性,罹病期間,検診受診の有無等を調査した.対象者は延べ186,965人,受診者は50,301人.未受診者136,664人である.
    結果:2005~2009年まで,胃がん死亡者は214人,男性は131名,女性83名であった.年平均42.8人で死亡率は0.11%であった.2008年の男女別死亡率は,男性0.15%,女性0.06%で男性の死亡率が高い(P<0.05).年代別には40,50歳代に比し,60,70歳代の死亡率が有意に高かった(P<0.05).検診未受診者群の胃がん死亡者は,年代により違い71~88%,平均82%であった.検診受診者群では1年以内に死亡する者が29%に対し,未受診者群では40%に及び受診者群の1年以内の死亡率が低かった(P<0.05).
    結論:胃がん死は検診未受診者で82%であった.検診受診者群では18%であった.検診受診者群は未受診者群に比し死亡率が低かった(P<0.05).検診受診者群では1年以内の死亡率が低かった(P<0.05).
  • 森口 次郎, 松尾 福子, 江島 桐子, 井手 陽子, 奥田 友子, 櫻木 園子, 武田 和夫, 池田 正之
    2011 年 26 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:2008年よりメタボリックシンドローム(MS)の予防・改善を目的に特定健康診査(特定健診)・特定保健指導が開始された.当会では対面指導と遠隔支援を併用した特定保健指導プログラムを実施しており,そのMS改善および予防への有効性を検討した.
    方法:2008年度に特定保健指導を受診し,2008,2009年の特定健診結果を確認できた男性260名(指導群)を対象とし,同じ支援レベルで指導を受けていない男性260名を比較対照とした(非指導群).解析には必要に応じて,対応あるt検定,Wilcoxon符号付順位検定,カイ二乗検定,重回帰分析を用いた.
    結果:指導群ではBMI,腹囲,HbA1cが低下した(p<0.001).非指導群ではHbA1cの上昇を認めた(p<0.01).指導群でBMI変化を従属変数,生活習慣指標の変化を独立変数とした重回帰分析では,週2日以上の運動習慣,1日1時間以上の身体活動が有意な独立変数となった(r=0.196,p<0.01).
    結論:対面指導と遠隔支援を併用したプログラムはMS改善および予防に有効であり,その減量効果には運動習慣の改善が寄与している可能性が示唆された.
  • 綱島 素子, 横田 欽一, 武田 寛樹, 大西 詔子, 海野 美奈子, 奥山 佳緒梨, 鈴木 沙緒里, 吉田 慶子, 吉田 良子, 吉田 威
    2011 年 26 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:生活習慣病を予防するためには,メタボリックシンドロームを早期に把握し,食習慣の改善を中心とした行動変容へと結びつける必要がある.その前段階として,食習慣の傾向とメタボリックシンドローム関連検査項目との間にどのような関係があるのかを比較検討した.
    方法:平成21年度に当院人間ドックを受けた40~69歳の男性1,335名,女性570名を対象とした.「食事内容チェック表」による食習慣と,BMI,腹囲,中性脂肪,HDL-C,LDL-C,FBS,HbA1c,収縮時血圧,拡張期血圧とを比較した.男女による食習慣の違い,検査データと食習慣の関連性を多重ロジスティック回帰分析により検討した.
    結果:「組み合わせを考える」,「果物」,「植物油」,「甘いもの好き」は女性に多く,「塩辛いもの好き」,「汁を飲み干す」は男性に多かった.男女とも「腹八分目」はBMI,腹囲の正常化,「腹八分目」+「組み合わせを考える」はLDL-Cの正常化,「甘いもの好き」はHbA1c上昇と関連していた.「牛乳毎日」が男性では中性脂肪とHDL-Cの正常化と,女性ではLDL-C値の上昇と関連していた.男性では「外食が多い」,「塩辛いもの好き」,「果物を食べない」が肥満や脂質異常と関連していた.
    結論:食習慣傾向と検査データとの間には明瞭な関連性のあることが確認された.今後の保健指導に役立てたい.
  • 林 京子, 一里塚 敏子, 福元 耕, 常喜 眞理, 稲次 潤子, 豊原 敬三, 中崎 薫, 真島 香代子, 銭谷 幹男, 和田 高士
    2011 年 26 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:肺年齢は身長,性別,1秒量をもとに算出される呼吸機能の新しい指標である.肺年齢の主要な悪化要因は喫煙とされている.しかし,非喫煙者における肺年齢悪化に関わる生活習慣に関連する要因は十分解明されていない.
    方法:東京慈恵会医科大学附属病院新橋健診センターで人間ドックを受診した呼吸器疾患のない非喫煙の男性1,291名(年齢49.9±11.1歳),女性1,689名(年齢50.4±11.8歳)を対象とした.受動喫煙の有無,肥満度(body mass index),20歳頃と人間ドック受診時の体重を比較したときの体重増加量,1週間のエタノール摂取量,身体活動時間,1週間で1時間以上の汗をかく運動の実施,1日1時間以上の歩行,早歩きの有無について,(肺年齢と暦年齢)差に対する影響を解析した.
    成績:男女ともに20歳時と人間ドック受診時の体重を比較したときの体重増加が肺年齢を悪化させる要因であった.その他に,男性では週に1時間以上の汗をかくような運動をしていないことが,女性では1日1時間以上の歩行を行っていないことが肺年齢を悪化させる有意な要因であった.
    結論:本研究で非喫煙者の肺年齢を悪化させる生活習慣要因は,体重増加とより少ない身体活動であることを示した.
  • 鷲見 和幸, 澁谷 光一, 丹谷 延義, 藤 照正, 渡邉 敏充, 氏福 左門, 浅川 徹, 松井 裕輔, 山﨑 智子, 飽浦 良和, 竹田 ...
    2011 年 26 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:注腸X線造影検査(以下注腸検査)の造影能の向上のため,2w/v%の低濃度バリウム懸濁液(以下低濃度バリウム)を腸内に注入,洗浄,吸引を行った後,注腸検査を行う方法を考案し,その臨床的有用性について検討を行った.
    方法:2010年2月から同年6月の間に,注腸検査を施行した290例を対象とし,洗浄,吸引を施行した群(A群)と,洗浄,吸引を施行しなかった群(B群)に分け,深部結腸(上行結腸,盲腸)を評価部位として,バリウム付着具合,便残渣量,FNP(fine network pattern)の描出の3項目について,注腸画像評価基準を用いて比較検討した.A群27例(年齢32~68歳,平均50歳.男女比は13:14),B群26例(年齢27~76歳,平均年齢48歳.男女比10:16)である.
    結果:上行結腸,盲腸において,A群はB群と比較して,評価点が有意に良好であった.
    結論:低濃度バリウムで腸内を洗浄,吸引する手法は,深部結腸の造影能を有意に向上させることができた.
  • 小林 伸行, 都築 隆, 萬造寺 知子, 渡部 洋行, 土屋 敦, 土屋 章
    2011 年 26 巻 1 号 p. 100-105
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    目的:呼吸機能検査における%肺活量について,新肺活量予測式および平成20年変更の%肺活量判定区分で判定した結果(以下新基準)と,Baldwinの肺活量予測式・平成14年の判定区分での結果(以下旧基準)を比較検討する.
    方法:呼吸機能検査を施行した延べ118,733例について,新・旧基準にて%肺活量を算出,新旧判定区分に従い判定した.さらに新基準における拘束性換気障害の%肺活量の経時的変化について,複数回受診者について検討した.
    結果:%肺活量80%未満(拘束性換気障害)は,旧基準7.5%に対し,新基準28.8%であった.判定区分では,旧基準でA:異常なし92.5%,C:要経過観察7.2%,D:要医療0.3%であった.新基準ではC判定がなくなり,A判定71.2%,D判定28.8%であった.新基準での拘束性換気障害を,70%以上80%未満,60%以上70%未満,60%未満と細分類すると,それぞれ81.1%,15.8%,3.1%であった.複数回受診者で,初回受診時70%以上80%未満症例の最終回受診時の%肺活量を比較すると,増加70.6%,減少28.7%であった.減少例のうち3年以上経過のあるものの,年平均%肺活量変化は-0.78±0.89ポイントであった.
    結論:新基準により拘束性換気障害の頻度は3.8倍増加したが,%肺活量の70%以上80%未満群が約8割であり,この群での%肺活量の年平均の変化も約-0.8ポイントと低いことから経過観察可能と思われる.
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