人間ドック (Ningen Dock)
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38 巻, 3 号
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巻頭言
総説
  • 市田 公美
    2023 年 38 巻 3 号 p. 467-480
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/29
    ジャーナル フリー

     腎機能が正常な場合,プリン体の最終代謝産物である尿酸は腎臓から約2/3が,腸管から残りのほとんどが排泄される.

     高尿酸血症の発症には,生活習慣以外に尿酸を輸送するトランスポーターであるATP-binding cassette(ABC)subfamily G member 2(ABCG2)の機能低下や喪失をきたす一塩基多型が大きく関与している.

     高尿酸血症の病型には,尿酸排泄低下型,腎負荷型(尿酸産生過剰型,腎外排泄低下型)および混合型がある.

     高尿酸血症は,痛風,尿路結石や腎障害の危険因子であるが,心血管系疾患の危険因子となるか否かについては結論が出ていない.

     尿酸降下薬には,大きく尿酸生成抑制薬(キサンチン酸化還元酵素阻害薬)と尿酸排泄促進薬(尿酸再吸収阻害薬)に分類される.

     非プリン型キサンチン酸化還元酵素阻害薬や選択的尿酸再吸収阻害薬は尿酸降下作用が強く,現在まで重篤な副作用は少ない.

     生活指導で重要なのは,肥満の是正,減酒,プリン体や果糖摂取の制限などである.

臨床経験(活動報告)
  • ―メタボリックチャート―
    山田 香織, 末次 長作, 崎原 永辰, 玉城 達也, 糸数 美那海, 重田 泰秀, 島袋 香織, 大田 明子, 髙江洲 アヤ子, 破磯川 ...
    2023 年 38 巻 3 号 p. 481-489
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/29
    ジャーナル フリー

    目的:健康診断の事後措置において,一次予防に関する保健指導の補助ツールとすることを目的として,血圧および血液代謝に関する検査12項目の概略がひと目で表現されるレーダーチャートを考案した.

    方法:代謝に関連する基本12項目をクロックフェイスに配置したレーダーチャートをメタボリックチャート(Metabolic Chart: MC)と名付け,2021年4月から2022年3月までに健康診断を受診した20歳から59歳までの7,622名(男性4,079名,女性3,543名)を対象として,肥満度別および同じ飲酒習慣をもつグループの平均をMCで表現した.

    結果:肥満度が異なる3グループのMCにおいて,男性ではHDL-C,Hb以外の項目で肥満度の進行とともに段階的悪化をみた.女性では肥満2度以上でALT,LDL-C,HbA1cで段階的悪化をみた.3グループ間の分散分析では,男女ともいずれのグループ間でもすべての項目で有意(p<0.01)であった.飲酒量・頻度が違う2グループのMCにおいて,男性では多量飲酒でAST,ALT,γ-GTP,TG,BPの悪化をみた.女性ではすべての項目で差がみられなかった.2グループ間のt検定では,男性はAST,γ-GTP,HDL-C,TG,HbA1c,UA,BPで有意(p<0.01)となり,他の5項目で有意差はなかった.女性はAST,γ-GTP,HDL-C,LDL-C,TG,FBG,HbA1c,UA,BPで有意(p<0.01)となり,他の3項目で有意差がなかった.

    結論:MCは事後措置を視覚化するものとして,保健指導の補助ツールとしての活用はもとより受診者の行動変容のきっかけになると期待される.

  • 折口 秀樹, 生山 聡美
    2023 年 38 巻 3 号 p. 490-495
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/29
    ジャーナル フリー

    目的:当健診施設での血清25(OH)D濃度測定によるビタミンD健診の初期成績について報告する.

    方法:2020年10月から2022年5月までのビタミンD健診受診者87名(男性17名,女性70名)の血清25(OH)D濃度と基礎属性(年齢,性別,%YAM,BMI,eGFR)の関連を検討した.

    結果:平均年齢59±10歳が対象で,血清25(OH)D濃度は30ng/mL以上の充足群が6名(6.9%),20ng/mL以上30ng/mL未満の不足群が15名(17.2%),10ng/mL以上20ng/mL未満の欠乏群が50名(57.5%),10ng/mL未満高度欠乏群が16名(18.4%)であった.骨密度測定者76名のうちYAM80%未満は12名であった.血清25(OH)D濃度は若年者で低い傾向(r=0.19,p=0.08)で,特に男性では血清25(OH)D濃度と年齢は正の相関が認められた(r=0.51,p=0.04).血清25(OH)D濃度と性別,%YAM,BMI,eGFRとは相関はなかった.

    結論:ビタミンD健診受診者のうちビタミンD充足の割合は1割未満で,血清25(OH)D濃度が20ng/mL未満の欠乏状態が8割近くを占め,健常者でのビタミンD欠乏はまれではなかった.また,若年成人で血清25(OH)D濃度が低い傾向がみられ,若年者でのビタミンD欠乏のスクリーニングが必要である.

  • ―指導症例を通じた省察―
    尾山 満美子, 島田 典明, 田中 阿由子, 浅野 健一郎
    2023 年 38 巻 3 号 p. 496-501
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/29
    ジャーナル フリー

     慢性腎臓病(CKD)は早期の診断と治療が重要である.早期のCKD患者への介入を目的に,当施設の人間ドックにおいて生活習慣病に伴う軽度の腎機能異常が指摘された受診者に対し,医師の指示のもとで生活指導,栄養指導および健康運動指導士による個別の運動指導を行った.2020年11月から2021年8月までに48例に運動指導を行った.年齢は64.9±7.8歳で,男性21例,女性27例,推算糸球体濾過量(eGFR)は55.8±6.8mL/min/1.73m2であった.25例(52%)は運動習慣がなかった.関節に過剰な負担のかかる運動をしている例が4例(8%)にみられたため,適切な運動を指導した.運動指導も栄養指導と同様に個々の患者の背景や生活様式に応じた指導が必要であると考える.早期のCKD患者において健康運動指導士による個別運動指導は,運動開始の契機または運動方法の見直しとしての意義があると考える.

委員会報告
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