Thermal Medicine
Online ISSN : 1882-3750
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ISSN-L : 1882-2576
26 巻 , 3 号
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Review
  • 足立 聡子, 古倉 聡, 吉川 敏一
    2010 年 26 巻 3 号 p. 75-85
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/10/18
    ジャーナル フリー
    化学療法単独では, 固形癌の根治は困難であり, 抗がん剤と温熱療法の併用効果が期待される. 併用治療では, 抗がん剤の腫瘍組織内への取り込み促進と殺細胞効果の増強による治癒率の向上を目指す.
     近年, ゲムシタビンによる膵臓癌細胞内でのNF-κBの活性化が, ゲムシタビンに対する薬剤耐性獲得の機序のひとつであることが報告されている. 我々は, 癌温熱療法の効果増強法を検討し, 温熱誘導性の熱ショックタンパク質 (特にHsp70) がIκ-B kinaseを阻害し, その結果, 炎症に関連する転写因子NF-κBの活性化を抑制することを明らかにした. また, 化学療法と併用される温熱療法の効率的な治療増感効果の誘導には, 温熱処理のタイミングが重要であることを示した. 本総説では, ゲムシタビン処理に対する温熱処理のタイミングの検討結果について述べ, 治療効果増強のメカニズムについて考察する.
  • 大栗 隆行, 矢原 勝哉, 村上 基博, 今田 肇, 寺嶋 廣美, 興梠 征典
    2010 年 26 巻 3 号 p. 87-96
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/10/18
    ジャーナル フリー
    産業医科大学放射線科では, 温熱療法を1988年より開始し, 現在に至るまで1000例を超す症例に施行している. 治療機器は8 MHz誘電加温装置 (Thermotron RF-8, 山本ビニター社製) を用いている. 当初は放射線治療医・放射線技師が治療に当たっていたが, 近年は臨床工学士や看護師の応援を受け行っている. 放射線 (化学) 療法の併用治療として行う場合が多いが, 全身化学療法との併用治療の割合が近年増加している. 物理学的な治療技術の進歩により放射線治療の腫瘍制御率が, 飛躍的に改善されているが, 多くの進行癌や局所再発例においては更なる局所制御率の向上が求められており, ハイパーサーミアの役割は依然として大きいものと考えている. 特に局所進行肺・食道癌に対しては積極的に併用している. また, 照射野内再発例に対する再放射線照射や多剤化学療法耐性例への同一抗癌剤再投与との併用など, 限られた治療選択肢の増感治療としても併用を試みている. 当科におけるハイパーサーミアの経験, 特に深部領域の加温方法に関して概説し, 今後の癌治療におけるハイパーサーミアの役割を考察し報告する.
Original Paper
  • 井上 幸平, 川田 哲也, 斉藤 正好, 劉 翠華, 宇野 隆, 磯部 公一, 伊藤 久夫
    2010 年 26 巻 3 号 p. 97-107
    発行日: 2010/09/20
    公開日: 2010/10/18
    ジャーナル フリー
    温熱は放射線によるDNA損傷からの回復を遅らせる作用を有している. 一方, 温熱自体も細胞致死効果を有している. 温熱による細胞死の原因としてDNA二重鎖切断が示唆されているが未だ議論の多いところである. さらにconfluentな細胞における温熱の有効性についても結論には至っていない. 今回我々はDNA損傷修復タンパク質であるATMの阻害剤を用いてconfluentな細胞における放射線および温熱刺激のDNA損傷を観察することとした. Confluentなヒト正常線維芽細胞および骨肉腫細胞を使用した. 45°Cの温水による温熱単独刺激およびX線+温熱併用刺激を与えた. 生存率の検討としてコロニー形成法を用いた. 染色体修復障害はPCC (Premature Chromosomal Condensation) 法を用いて凝集させた染色体をFISH (Fluorescence in situ Hybridization) 法により観察した. 染色体は正常細胞では1番と3番を, 癌細胞では18番染色体を観察した. 温熱を併用したX線刺激に対しては生存率の低下および染色体修復障害の増加を認めた. 温熱単独刺激においても加温時間に比例して生存率の低下および染色体修復障害の増加が認められた. これらはATMを阻害することでより効果的となった. 以上の結果から, confluentな細胞においても温熱が有効であることが判明し, 温熱によってDNA二重鎖切断が生じている可能性が示唆された. 温熱単独でもDNA二重鎖切断が観察された意義は大きく, ATMを阻害して染色体異常を観察したのは初めてのことと思われる. また, 非S期での温熱の有効性が得られたことは興味深い. これらの結果は臨床においても, 温熱による副作用や腫瘍内部の温熱の有効性という観点からも意義あるものと思われる. ただし, 温熱によるタンパク質変性の問題や非S期の正確性など, いくつかの問題点も浮き彫りとなり, これらについては今後の検討課題と思われた.
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