化学療法単独では, 固形癌の根治は困難であり, 抗がん剤と温熱療法の併用効果が期待される. 併用治療では, 抗がん剤の腫瘍組織内への取り込み促進と殺細胞効果の増強による治癒率の向上を目指す.
近年, ゲムシタビンによる膵臓癌細胞内でのNF-κBの活性化が, ゲムシタビンに対する薬剤耐性獲得の機序のひとつであることが報告されている. 我々は, 癌温熱療法の効果増強法を検討し, 温熱誘導性の熱ショックタンパク質 (特にHsp70) がIκ-B kinaseを阻害し, その結果, 炎症に関連する転写因子NF-κBの活性化を抑制することを明らかにした. また, 化学療法と併用される温熱療法の効率的な治療増感効果の誘導には, 温熱処理のタイミングが重要であることを示した. 本総説では, ゲムシタビン処理に対する温熱処理のタイミングの検討結果について述べ, 治療効果増強のメカニズムについて考察する.
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