Thermal Medicine
Online ISSN : 1882-3750
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ISSN-L : 1882-2576
37 巻, 4 号
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Original papers
  • 井関 祐也, 黒澤 俊祐, 新藤 康弘, 加藤 和夫
    2021 年 37 巻 4 号 p. 113-130
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/01/24
    ジャーナル フリー

    変形性関節症(OA)は最も一般的な関節疾患の1つである.変形性膝関節症を対象とした温熱療法では,膝関節中心に位置する関節腔内を36~38 ℃程度に温めることで痛みの緩和および病変の進行を防ぐ効果があるとされているが,骨に覆われた膝関節腔内を効果的に加温することは電磁気学的にも伝熱工学的にも容易ではない.このような背景から,著者らは非接触深部加温が可能な空胴共振器加温装置を提案している.これまで,ウシの膝関節を用いた加熱実験や3次元のコンピュータ・シミュレーションなどから,膝関節の深部領域を加温可能であることを示してきた.しかしながら,ウシ膝関節を用いた加温実験では1次元的な温度分布しか明らかになっておらず,不均一で解剖学的な構造を有する被加温体内部の2次元温度分布をコンピュータ・シミュレーションによる温度分布結果と直接的に比較したことがなかった.また,超音波画像を用いた非侵襲温度計測手法についても研究を進め,1.0 ℃以下の温度測定精度で温度分布計測が可能であることを示してきたが,超音波による温度計測実験においても,均一組織による実験に留まっており,骨を含む解剖学的な構造を有する被加温体内部の温度分布計測について検討の必要性があった.このような背景から,本論文では2次元医用画像からFEMモデルおよび3Dプリンターによって3Dプリンティングモデルを作製することにより,解剖学的な構造を有する被加温体のコンピュータ・シミュレーション,赤外線サーモカメラによって撮像した2次元サーモ画像,超音波による温度計測の比較を行い,数値的および実験的検討の両面から本加温装置および本温度計測手法の有用性を評価した.本論文では,初めに,2次元医用画像から3D FEM膝モデルと3Dプリンティング膝型モデルを作製した.次に,FEM解析によって温度分布を計算し,試作加温システムおよび3Dプリンティングモデルを用いた加温実験結果との比較を行った.第三に,超音波画像を撮像するためのロボットアームシステムの精度を把握するため,位置決め精度実験を行った.最後に,超音波画像から3Dプリンティング膝モデル内の温度分布を測定した.以上の結果から,空胴共振器加温装置は膝関節の深部領域を加温可能であることを数値的および実験的検討から確認し,温熱治療実現のために有用であることを示した.

  • 林 奈々世, 加藤 和夫
    2021 年 37 巻 4 号 p. 131-140
    発行日: 2021/12/15
    公開日: 2022/01/24
    ジャーナル フリー

     我々は,変形性膝関節症の温熱治療を目的とした小型の矩形空胴共振器加温システムを設計・試作し,コンピュータ・シミュレーションおよび加温実験結果の両面からその有用性を議論した.著者らは,先行研究において,円筒形状の空胴共振器を用いた膝関節深部温熱リハビリテーションシステムを提案し,寒天ファントムを用いた加温実験とボランティアによる臨床試験の結果からその有用性を実証した.しかしながら,円筒形状の空胴共振器を使用した場合,共振器内部に収まる脚の領域が広いため,目的加温部位以外のふくらはぎや太腿等をも加温する危険性が確認させていた.

     そこで本研究では,空胴共振器の形状を円筒形状から矩形状へと変更し,より安全な深部温熱治療の可能性を明らかにした.まず,有限要素解析手法(FEM)を用いて,矩形空胴共振器の寸法,および共振周波数帯域を決定した.このFEM数値解析結果に基づいて,矩形空胴共振器の試作を行い,円筒形状の寒天ファントムおよび人体脚型状寒天ファントムを対象とした加温実験を行った.矩形空胴共振器アプリケータの寸法は,高さ300 mm,幅350 mm,長さ200 mmとした.なお実験条件は,加温出力30 W,加温時間10分とした.その結果,円筒形状寒天ファントム中央部が局所的に加温され,その温度上昇値は,およそ8.0 ℃であることが確認された.また,脚型寒天ファントムを用いた加温実験では,膝関節深部のみが局所的に加温され,目的部位以外にホットスポットの発生がないことを確認した.これらの実験結果から,小型矩形空胴共振器アプリケータを使用して,膝関節深部を安全かつ局所的に加温治療できる可能性を示した.

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