我々は,変形性膝関節症の温熱治療を目的とした小型の矩形空胴共振器加温システムを設計・試作し,コンピュータ・シミュレーションおよび加温実験結果の両面からその有用性を議論した.著者らは,先行研究において,円筒形状の空胴共振器を用いた膝関節深部温熱リハビリテーションシステムを提案し,寒天ファントムを用いた加温実験とボランティアによる臨床試験の結果からその有用性を実証した.しかしながら,円筒形状の空胴共振器を使用した場合,共振器内部に収まる脚の領域が広いため,目的加温部位以外のふくらはぎや太腿等をも加温する危険性が確認させていた.
そこで本研究では,空胴共振器の形状を円筒形状から矩形状へと変更し,より安全な深部温熱治療の可能性を明らかにした.まず,有限要素解析手法(FEM)を用いて,矩形空胴共振器の寸法,および共振周波数帯域を決定した.このFEM数値解析結果に基づいて,矩形空胴共振器の試作を行い,円筒形状の寒天ファントムおよび人体脚型状寒天ファントムを対象とした加温実験を行った.矩形空胴共振器アプリケータの寸法は,高さ300 mm,幅350 mm,長さ200 mmとした.なお実験条件は,加温出力30 W,加温時間10分とした.その結果,円筒形状寒天ファントム中央部が局所的に加温され,その温度上昇値は,およそ8.0 ℃であることが確認された.また,脚型寒天ファントムを用いた加温実験では,膝関節深部のみが局所的に加温され,目的部位以外にホットスポットの発生がないことを確認した.これらの実験結果から,小型矩形空胴共振器アプリケータを使用して,膝関節深部を安全かつ局所的に加温治療できる可能性を示した.
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