Thermal Medicine
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37 巻, 1 号
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Review
  • 金森 昌彦, 佐藤 勉, 島 友子, 齋藤 淳一, Gabor Andocs, 近藤 隆
    2021 年 37 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/06
    ジャーナル フリー

    Modulated electro-hyperthermia(略称mEHT),別名“オンコサーミア”は癌温熱療法における新たな治療法である.mEHTは腫瘍の温度上昇を治療に利用する点は通常のハイパーサーミア(癌温熱療法)と同様であるが,幾つかの異なる特長を有する.例えば,正確なインピーダンスマッチングを図る点,振幅変調した13.56 MHzラジオ波(RF)を用いた容量結合型加温である点,腫瘍内温度はいわゆる“マイルドハイパーサーミア”水準の<42 ℃に維持される点,腫瘍細胞膜に連続的な温度勾配を生じさせる点,等である.これによる細胞膜の不均一かつ非平衡な加温は腫瘍細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)を誘発するとされる.また低出力のRFを用いるため火傷等の副作用も少ない.従って,mEHTの治療効果を考える場合には,熱作用のみならず,非熱作用(温度上昇に依存しない)の生物効果を考慮することが臨床的にも重要である.サース教授による“Oncothermia: Principles and Practices”が出版された後にも基礎,前臨床研究および臨床結果が数多く報告された.この総説では,最近の知見をまとめ,mEHTの課題と将来に向けたさらなる臨床応用の可能性について考察する.

Original Paper
  • 浅野 麻実子, 杉山 順一, 河野 健一, 二木 史朗
    2021 年 37 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/06
    ジャーナル フリー

    マイクロ波は,電場と磁場によって物質を加熱する.この時,物質へのマイクロ波の吸収や加熱の度合いは,その成分や組成に影響される.細胞は,多種類の物質が様々な組成で混合した集合体であることから,マイクロ波加熱のメカニズムを細胞内で理解することは極めて難しい.したがって,加熱機構を考慮した上で,マイクロ波照射が細胞に与える影響を解析することは重要である.我々はこれまでに,マイクロ波照射が複数の培養癌細胞の細胞死を誘導することを明らかにし,その細胞死メカニズムを解析した.本研究では,マイクロ波の電場と磁場のどちらが培養癌細胞の死滅に強く影響を及ぼすかを調べた.まず初めに,共振器型マイクロ波照射装置を開発した.本装置は,1つのシャーレ内に照射される電場及び磁場成分の割合が異なっている.次に本装置を用いて,ヒト膵臓癌細胞株Panc-1がマイクロ波の電場及び磁場成分のどちらの影響で死滅するのかを確認した.その結果,電界強度が最大の位置で細胞死が誘導されたことから,誘電損失が細胞死に影響を与えると推測した.一方,磁場強度が最大の位置では細胞死は誘導されず,磁場は細胞死に影響を与えなかった.

Letter to the Editor
  • 森野 富夫, 河合 憲康, 安井 孝周
    2021 年 37 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/05/06
    ジャーナル フリー

    2017年に米国Food and Drug Administration(FDA)から公開された医療製品のカテゴリー分類に関するガイドライン最終版(Classification of Products as Drugs and Devices & Additional Products. Classification Issues: Guidance for Industry and FDA Staff. Final Guidance)を引用して,米国のカテゴリー分類の考え方を紹介した.更に,FDAの医療機器への分類事例として,本邦と米国で開発された二種類の癌治療用ナノ発熱粒子(magnetite cationic lipids composite particles, gold nanoparticles)を紹介し,その判断基準となったprimary intended purpose(製品の効能発現のために意図された製品作用の主目的)の考え方を概説した.更に,本邦の学術界から創生される新規医療製品の産業界への技術移転の観点から,本邦の製品カテゴリー分類プロセスの在り方について,私見を述べた.

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