ハイパーサーミアは42.5度以上の温度下でも正常細胞が生存しているのに対し, がん細胞の多くが死滅することを利用したがん治療の一つであり, 放射線や抗がん剤に対するがん細胞の感受性を高める. しかしながら, ハイパーサーミアは通常のがん治療で施行されることは少なく, 殊に進行肺癌において, ハイパーサーミアと放射線治療や化学療法とを併用した治療は殆ど行われていない.
我々は2008年4月までに60症例を超える肺癌患者にハイパーサーミアを施行してきた. これらの患者のうち, 当院で診断し, 初期治療から標準化学療法とハイパーサーミアを併用した非小細胞肺癌患者は30症例あった. このレポートで, この30症例の治療成績を報告する.
年齢は39-83歳であり, 平均年齢は65.1歳であった. 男性が28例であり女性が2例であった. 組織型は腺癌が21例, 扁平上皮癌が9例であった. Stage分類ではStage IIBが1例, IIIAが3例, IIIBが11例, IVが15例であった. 施行された化学療法はPAC+CBDCA, MVP (VNR+MMC+CDDP), CDDP+GEM, CDDP+CPT-11, およびTS-1単剤投与であった. ハイパーサーミアはそれぞれの抗がん剤の投与に併せて施行された. これらの治療は特に大きな副作用を起こすことなく, 安全に施行することができた. この標準化学療法とハイパーサーミアの併用療法の生存率は1年生存率89%, 2年生存率64.5%, 3年生存率32.5%であり, 生存期間中央値は27ヶ月と非常に良好なものであった.
これらの結果から, 標準化学療法とハイパーサーミアの併用療法は肺癌の生存率を上げる可能性が大であり, 肺癌の標準治療の一つとして行われることを推奨する.
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