学術の動向
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26 巻, 6 号
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特集
地方学術会議
  • 渡辺 美代子
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_9
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー
  • 山極 壽一
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_10-6_14
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     日本学術会議第24期(2017年10月~2020年9月)は、首都以外の地域へ機能移転をするといったこれまでの議論を解消し、毎年順番に7つの地区に振り当てて地方学術会議を開催することにした。24期中に京都、北海道、富山、山口と4か所で実に個性あふれる地方学術会議を開催できたのは、今後の地方学術会議を発展させるうえで重要な試金石となったのではないかと考えている。予算の制約もあって、地元大学に会場や開催準備などの助力を仰ぐことが必要となるが、会議には日本学術会議の幹事会を組み入れ、地元の行政や民間団体との対話を交えることが望ましい。コロナ後の日本は、テレワークを使った単業から兼業といった労働のあり方や、単線型から複線型へといった人生の見取り図が大きく変化し、大都市と地方の価値が逆転して地方の時代を迎える可能性がある。大学などの学術の拠点は未来へ向かう重要な指針を得られる場所として、これまで以上に大きな役割を果たすことが期待される。

  • ──はじめての地方学術会議開催の経験から
    伊藤 公雄
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_15-6_18
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     2018年12月に開催された第1回目の地方学術会議「日本学術会議 in 京都」について、①地方学術会議の京都での位置づけや会議の名称の決定にいたるプロセス、②開催にいたる経過、③実際の会議の内容、④成果と課題、について述べる。

  • 坂東 昌子
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_19-6_23
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     ポスドク問題、シニア人材活用、科学普及を目標にここ10年活動をつづけてきたNPO法人知的人材ネットワークあいんしゅたいんが、「日本学術会議in京都」企画に関わって、多様性と包摂性を基礎に、市民と積み上げてきた経験、男女共同参画における日本学術会議、多様性と包括的イノベーションの視点からのメッセージ、クライシス下での科学と社会を論じ、そこから市民を巻き込んだ、分野を横断する科学の在り方を探る。個別科学の深化の20世紀から分野横断的課題の解決に向かって、科学社会の今後の行方を、多様性と視点から考察する。

  • ──「ふるさと」から学術を考える
    寳金 清博
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_24-6_27
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     日本における「地域」コミュニティの過疎化と環境変化は、急激である。筆者の「ふるさと」においても、この60年余りの期間、地域は力を失ってきた。その中で、地域における学術に関して、日本学術会議がこれまでに、十分な機能を果たしてきたとは必ずしも言えない。今回、北海道において、地方学術会議in 北海道を開催した。その取り組みを紹介する。今後、①学術会議の課題を地方で議論する場としての役割、②学術の広報的役割、③地域の問題を取り上げる学術会議の役割という3つの役割を、地方学術会議が十分に果たしていくことが期待される。特に、ポスト・コロナにおける地域活性化に関して、日本学術会議の責任は非常に大きい。

  • 吉岡 充弘
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_28-6_31
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     北の大地が「北海道」と命名されてから150年という年月が経過した。脈々と続く次世代に向け、これからも北海道は世界とともに歩む持続可能な地域づくりを進めていかなければならない。そのために、SDGsの達成に向けた取組の積極的な推進が重要となっている。2018年度の道民意識調査では、SDGsについて、約70%が「知らなかった」と回答している。北海道が優先課題として掲げているのは、「あらゆる人々が将来の安全・安心を実感できる社会の形成」である。北海道は、これまで経験したことのない人口減少や高齢化、自然災害への対応など、様々なコミュニティーの存続にも関わる課題に直面している。一方で、強みもある。豊かで美しい自然、広大な大地とそこからもたらされる安心・安全な食と豊富で多様なエネルギー資源である。北海道ならではの価値が再認識され、SDGs推進にも重要な要素として位置づけられている。

  • ──中部地区会議の視点から
    戸田山 和久
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_32-6_35
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     2019年6月28日に開催された第三回地方学術会議「日本学術会議 in 富山」について、開催に携わった中部地区会議の一員としての視点から報告し考察する。まず、会議の概要と当日の模様をまとめる。次いで、会議開催に至る背景と経緯について記述し、富山における地方学術会議の開催を可能にした中部地区会議側の要因を二点抽出する。すなわち、地区会議の一極集中を避けるための「輪番制」と、中部独自の組織である科学者懇談会との連携である。これらが地方学術会議の開催において果たした役割を指摘する。最後に、地方学術会議の開催という経験を通じて、筆者が得た気づきと今後の展望、すなわち地方学術会議の多様性拡大の必要性と地域における日常的活動の重要性について述べる。

  • 本田 信次
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_36-6_41
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     富山市の近代化に向けたまちづくりをレジリエンスの観点から俯瞰すると、大きく分けて三つのステージがある。第1ステージは、明治30年から昭和13年頃にかけての神通川の治水対策と路面電車など交通インフラの整備である。第2ステージは、昭和20年から昭和30年頃にかけての戦災復興都市計画や復興のシンボルとなる施設の整備である。第3ステージは、平成16年から令和2年にかけての人口減少と少子・超高齢化対策としての「公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくり」である。令和2年に路面電車南北接続が実現し、明治41年の富山駅開業により南北に分断されてきた市街地の一体化が図られ、市民百年の夢が実現した。現在のまちづくりは、第1、第2ステージのまちづくりに支えられて実現したが、その背景には、傑出したリーダーたちの存在があった。

  • ──日本学術会議の新しい試み
    荊木 康臣
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_42-6_45
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     2020年9月27日にオンライン開催された「日本学術会議in山口」(山口大学吉田キャンパスより配信)は、二部構成で行われ、第一部では「AI戦略の地方への展開──大学におけるデータサイエンス教育と地域連携」というテーマでオンライン公開講演会が、第二部では、地方との対話の場として、幹事会懇談会(非公開)が同じくオンラインにて開催された。公開講演会は、地方学術会議の目的とする「多様な地域課題の解決」と「科学に対する興味・関心の喚起」を主眼に置き、急激に社会の中に浸透しつつある科学技術の一つであるAIを主テーマに取り上げた。政府が科学技術政策の中核にも据えている「AI戦略」に焦点を絞り、地域課題の解決に向けた科学技術の応用に関する議論を喚起する場とすることを狙った。本稿では、「日本学術会議in山口」の開催趣旨や実施概要に関して、主に日本学術会議の視点から紹介する。

  • 越智 光夫
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_46-6_49
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     広島大学は、世界の頭脳循環に参画しながら、科学技術イノベーションが次々と社会実装され、SDGsの達成にも繋がるSociety 5.0を実現すべく、未来社会ビジョンを共有する地元自治体である東広島市との間で新しい連携体制を構築した。具体的には、東広島キャンパスに誘致したアリゾナ州立大学と地元自治体であるテンピ市との組織的、日常的、包括的パートナーシップを参考に、Town & Gown Officeを共同で設置し、タウン(街)とガウン(学生や教員)が一体となった街づくりや地域課題の解決のための組織整備を進めている。地方創生とは大規模な社会変革であり、平和都市ヒロシマに隣接する東広島市において、平和を希求する大学が提案するポジティブ・ピース(積極的平和、つくる平和)を具現化するが、広島大学はその中核教育研究拠点となり地方創生を牽引する。

  • 佐藤 嘉倫
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_50-6_52
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     東北地方における日本学術会議の活動は東日本大震災と不可分の関係にある。日本学術会議による大震災関係のさまざまな意見の表出やシンポジウム等の開催は被災地の研究者にとって大きな心の励みになった。「日本学術会議を通じて日本社会とつながっている」という安心感を抱くことができた。被災地の復興はまだ終わっていないし、いつ終わるかも分からない。これからも日本学術会議が東北地方の研究者や一般市民と連携しながら、復興過程に関わっていくことを期待している。また地方学術会議と東北地区会議との有機的な連携を実現していくことが東北地方における日本学術会議の活動にとって重要である。

  • 遠藤 薫
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_53-6_55
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     関東地区会議は、これまでのように日本学術会議本部と一体であるかのような位置づけを脱し、新たな視座にたって、従来必ずしも十分に意識されなかった重要な役割を果たすべきである。それは、関東地区のみならず、他の地区会議との有機的な相互連携にも大きな力を発揮し、日本学術会議全体の活力をいっそう大きく高めることになる。

  • ──学術講演会を中心に
    君塚 信夫
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_56-6_58
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     九州・沖縄地区における日本学術会議の活動について学術講演会を中心に紹介し、新型コロナウイルス感染症影響下における学術講演会の今後の在り方について述べる。

  • 石塚 真由美
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_59-6_61
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     日本学術会議では地方創生を目的に、2018年度より新たに地方学術会議の開催を開始している。地方創生と学術・科学イノベーションとは密接な関係にあり、地方創生推進のためには学術の発展が欠かせない。また、国際的に取り組まれている持続可能な開発目標SDGsで掲げる「誰一人取り残されない社会を実現する」は地方創生にも大きくかかわってくる概念である。本稿では、地方創生に学術がどのようにかかわっていくのか、多くのファクターの中で、特に人材育成やデジタルトランスフォーメーションを主に取り上げる。

座談会
  • 山極 壽一, 佐藤 文一, 宇野 惠信, 渡辺 美代子
    原稿種別: ディスカッション記事
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_62-6_71
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染によって社会が大きく変わり始めた今、地方創生と学術の役割を問う座談会を行った。産学官の多様な経験をした4人が、それぞれの立場から地方で暮らした経験をもとに地方創生の意義を考え、議論した。日本の地方にはそれぞれ独特の歴史とそれに基づいた文化が育まれ、これらがこれからの社会を変える鍵になること、現在地方で最も深刻な世代交代の問題は二拠点居住や兼業などにより解決策が見えつつあることなどが語られた。そして、これからの学術はこの社会の変化を捉え、各専門分野に閉じずに他の分野と手を組み、市民や行政を巻き込む超学際を進め、現場を重視しながら総合知をもって未来を見通すことが重要であると論じた。地方創生の出発点は中央政府よりも地方の産官学民の連携にある、これがこの座談会の一貫した主張である。

  • 吉開 仁紀, 銭本 慧, 安田 仁奈
    原稿種別: ディスカッション記事
    2021 年 26 巻 6 号 p. 6_72-6_79
    発行日: 2021/06/01
    公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー

     地方創生について、若手の企業家、市役所職員、地方大学教員の立場から話し合う座談会を行った。東京大学大気海洋研究所でウナギの生態に関する研究で博士号取得後に長崎県対馬で漁師として持続可能な漁業を目指す銭本慧氏、観光や地域の振興にとっても重要な施設である、豊橋の道の駅を発展させることに大きく貢献した豊橋市役所の吉開仁紀氏の地域における活動体験を中心に、地方創生のために重要な事柄について話しあった。地域経済の問題点やその地方ならではの価値を新規に見いだすこと、地域住民との調和と対話を現場で重ねて、お互いが幸福になる道のりを模索し、根気よく自分たちの活動の意義や重要性を認めてもらうこと、さらに、こうした地方創生に寄与できる人材の育成として、世界や日本全体から見た地域を客観的に見る視点と地域住民や地域システムの観点からの視点の両方を理解し、活動してゆける人材を育てていくことが重要であると考えられた。

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