芝草研究
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13 巻, 2 号
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  • 北村 文雄
    1984 年 13 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    シバ類種子の発芽性は野生植物の特徴を残しており, その個体変異も大きい。そこで野生植物の備えている種子発芽における長期散発型の有無, 種子寿命などを明らかにすることを目的として, 本研究を行った。研究成果を次に挙げる。
    イ) 乾燥貯蔵したシバ類種子の寿命は長く, 16年を経ても充分に発芽能力を有している。その発芽率の経年変化をみると, 初期低く, 2年目に急上昇し, 3年目以降はゆるやかに上昇を続け, 7~10年目に最高を示し, その値は50%を超える。以後は下降の傾向をみせ, 明らかに長期散発型の発芽性を示す。種子の発芽開始日の経年変化ははっきりしないが, おおむね同様の傾向を示している。
    ロ) 種了の発芽処理については, 物理的方法の効果はあまり認められず, 化学的方法に有効なものが見出される。
    ハ) 種子の貯蔵方法は乾燥貯蔵が好結果を示している。また, 稔実種子を選ぶアルコール処理による種子発芽への悪影響はみられなかった。
    ニ) 種子は浸水すると3~4日で吸水を終了する。また貯蔵種子は, 乾燥貯蔵により重量は90~95%に減じ, 室内放置のものは100~104%, 冷蔵貯蔵では次年度までは98~100%, その後100%を超え, これらの値と種子寿命との関連性が考えられる。
  • 中村 直彦, 中前 博子
    1984 年 13 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    Zoysia属のノシバ, コウライシバは短日植物であるとされているが, 我国では一般にヒメコウライシバは秋と春の2回, ノシバ及びコウライシバは春に開花がみられる。春に開花する種についてその花芽の分化時期を明らかにするためにこの研究を行った。
    ターフとして栽培管理されているノシバ及びコウライシバのコアーを1983年10月12日から同年12月12日まで10日毎に採取し, 人工気象室 (16時間日長, 25±1.5℃) に移して通常の管理下におき, 出穂状況を調査した。ヒメコウライシバはすでに10月12日には自然状態で出穂がみられたので, この実験からは除外した。
    又同期間ターフの直立茎を採取して頂芽を固定し, ミクロテクニックによる組織学的検索を行った。
    以上の2つの実験から, ヒメコウライシバは晩夏から, 又春に開花するノシバ及びコウライシバでも秋に花芽分化が行われていることが明らかにされた。日長に対する感応性の差によって早く花芽分化するヒメコウライシバはその年の秋に, 又比較的遅いノシバ及びコウライシバは低温によって花芽生長が抑制されるために翌春開花するものと思われた。
  • 中前 博子, 中村 直彦
    1984 年 13 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    コウライシバは短日植物であり, 秋に花芽分化が行われ翌春開花するが, 花芽分化を誘導する内的要因の1つとされているC/N率がコウライシバの場合にも適合するかどうかを明らかにするために本実験を行った。1982年11月17日に圃場に栽培されているコウライシバから直立茎を採取し, 2×10-3倍に希釈したWhite培養液を入れたフラスコで連続照明下で培養した。その後もとの直立茎はすべて枯死し側芽が伸長したので, これを材料とし, 徐々にWhite培養液の濃度を増し最終的にW/5とした。実験区は照度の高低と培養液中の窒素化合物の濃度の高低の組み合わせによって4区を設け, 出穂状況及び栄養生長状態を調査した。栄養生長は窒素量と正の相関々係を示した。出穂開花は低照度・低窒素区 (LL) にのみ観察され, ある程度栄養生長が抑制され, しかも適切な炭水化物の蓄積が行われることが花芽分化を起こさせる条件となることが示唆された。この事は短日植物であるコウライシバが, 連続照明下でもあるC/N率を維持すれば開花を起こさせ得る事を示すもので, 開花生理についての基礎的な知見を与えるものである。
  • 松村 正幸, 長谷川 俊成, 山田 良彦, 白村 広吉
    1984 年 13 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    コウシュンシバ (こうらいしば, K) , シバ (のしば, J) 及びギョウギシバ (Bermudagrass, B) は, いずれも日本の暖地で広く用いられている夏型の芝草である。これらの草種の土壌水分及び日射条件に対する感受性を比較するため, 3段階の地下水位及び3段階の日射条件のもとで, それぞれのソッドを生育させた (Fig.1, Tabs.1, 2, 5) 。
    この研究は1983年に行い, 春~夏期及び夏~秋期の2実験からなる。前者では地上部の乾物収量に対する地下水位 (土壌水分) の影響を, 第1回 (7月25日) 及び第2回 (8月30日) の刈取りによって調査し, 後者では主として日射の影響を, 第3回 (9月27日) 及び第4回 (12月2日) の刈取りによって調べた。再生地上部の乾物重をそれぞれの刈取毎に測定した。そのほかに, 第3回刈取時には草高を, 第4回刈取時には残株 (直立茎とほふく茎の基部, 地下茎及び根を含む) の乾物重を測定した。
    地下水位に対する各草種の反応は, 水位の増加 (土壌水分の増大) に伴う乾物重の減少というかたちで, 春期 (第1回刈取り) よりも夏期 (第2回) に明瞭に現われた。夏期実験についての分散分析の結果, 草種と水位との交互作用には有意性が認められ, 水位に対する各草種の感受性はB≫J>Kの順であることが示された (Tabs.3, 4) 。
    日射に対する反応もまた夏期 (第3回) に明瞭に現われ, 各草種は日射量の減少とともに草高を増し, かっ乾物重を減じた。乾物重についての草種と日射との交互作用は有意であり, 各草種の日射に対する感受性は, 水位に対すると同じく, B≫J>Kであった (Tabs.6, 7, 8) 。
    残株 (根を除く) の乾物重は日射量の減少に伴い顕著に減少した。乾物重の減少程度から, 日射に対する残株の感受性にはK>J>Bの傾向がみられ (Tabs.9, 10) , 翌年における各草種の生育はこの順で制約を受けるものと推定された。
    3草種についての以上の結果から, 水位や日射に対する反応にみるように, シバはある程度の可変性 (plasticity) と安定性とを併せもつと考えられる。その意味で, 少なくとも集約的な管理の伴い難い条件のもとでは, 他の2草種よりも使い易い草種であるといえるであろう。
  • 柳 久, 山本 晃男
    1984 年 13 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    本試験は, ベントグラスのグリーンに侵入混生するスズメノカタビラに対し, SAP乳剤の反復処理による防除効果と処理体系の確立を検討した。
    試験は, 北海道石狩ゴルフ倶楽部のペンクロスベントグラスのパッティング・グリーンで, A (3.0cc/m2を夏1回処理) , B (3.0cc/m2を春・夏2回処理) , C (夏2.0cc/m2のほか1.0cc/m2を3回処理) を設けた。
    処理は55年から始め, スズメノカタビラの混生率の推移を重ねわく法によって調査した。スズメノカタビラの混生率は, 試験開始3年後に激減し, SAPの顕著な効果が現われた。ただし, 処理区間における効果の差は判然としなかった。
    ベントグラスに対するSAPの影響は認められなかった。
    以上の結果より, ベントグラスのグリーンに侵入混生するスズメノカタビラの防除は, 雑草の根の再生および種子の発芽前 (8月中旬) に, SAP50%乳剤の3.0cc/m2の数年継続処理が最も有望である。
  • 河野 通世
    1984 年 13 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
  • 竹松 哲夫, 近内 誠登, 竹内 安智, 青木 章彦
    1984 年 13 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    1.ペンディメタリンの雑草発生前処理はイネ科雑草に卓効があるが, 広葉雑草には効きにくい。
    2.ペンディメタリンにトリアジン系除草剤を加えると殺草スペクトルが拡大した。処理適期幅も拡大し, ペンディメタリン150gとシマジン60g (10a) は雑草の1.5葉期まで, ペンディメタリン (150g) とアトラジン60g (10a) の組合せは雑草の2.5葉期でも卓効があった。
    3.ペンディメタリンにシマジンを加用しても土壌中の下方移動はほとんど変らなかったが, ペンディメタリンにアトラジンを加えると大きくなった。
    4.ペンディメタリンにシマジンを加えた場合, コウライシバとノシバに薬害が小さかった。しかし, ペンディメタリンとアトラジンの組合せは高薬量で薬害があり, 特に秋処理で, しかもノシバにたいして大きかった。
  • ―アクアグローの場合―
    竹松 哲夫, 竹内 安智, 米山 弘一, 青木 章彦
    1984 年 13 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    1.アクアグローは多くの除草剤の土壌中の下方移動を促進した。たとえば, シマジン, ベネフィン, ペンディメタリン, ブタミホス, アミプロホスメチル, ベンスライド, メチルダイムロン, ナプロパミドなどである。
    2.シマジンの土壌中の下方移動は降雨量よりもアクアグローの添加量に比例して増大した。
    3.シマジンの散布時にアクアグローを添加すると, 下方移動が促進されるだけでなく, 土壌吸着力が低下しって溶出され易くなっていた。
    土壌吸着と水溶解度に関するモデル試験から, アクアグローはシマジンの土壌吸着を1/3以下に低下させ, 水溶解度を2倍に増大することが判明した。
  • 春はげ症および2, 3の芝草病害から分離されるRhizoctonia sp.の人工接種による発病について
    小林 堅志
    1984 年 13 巻 2 号 p. 158-168
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    1.当菌場に発生する春はげ症は殺菌剤の抗菌力, 病原菌の分離状況, 病徴などから見て, Rhizoctoniaによる病害ではないかとした。
    そこで, この病害から分離されるRhizoctoniaについて, 人工接種を行い病原性を確認するとともに, Rhizoctoniaによると考えられる仮称コウライシバリゾクトニア葉枯病, 仮称ベントグラス黄褐色パッチについても同時に実験を行った。
    2.春はげ症から分離されるRhizoctonaa sp.はコウライシバおよびベントグラスに発病が認められた。
    3.仮称コウライシバリゾクトニア葉枯病および仮称ベントグラス黄褐色パッチから分離されるRhizoctonia sp.もそれぞれの芝草に病原性が認められた。
    4.以上から, 春はげ症の病名として, 日本名を, リゾクトニア春はげ病, 英名をZoysia Rhizoctonia spring dead spotと命名したい。また, 仮称コウライシバリゾクトニア葉枯病を, コウライシバリゾクトニア葉枯病 (Yellow patch) と命名したい。なお, 仮称ベントグラス黄褐色パッチについてはさらに検討を要する。
  • 尾上 孝利, 谷 利一, 都崎 芳久
    1984 年 13 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    近畿および九州地方のゴルフ場において, 黄萎叢生の症状を呈するコウライシバを採取して電顕観察を行った。いずれの試料からも形状および内部構造がマイコプラズマ様微生物 (MLO) の特徴をもった顆粒体が篩部より検出されたので, これらの症状はMLOに起因するとし, コウライシバ黄萎病と称することとしたい。黄化葉では, 葉緑体形成初期におけるラメラ構造の発育不全ならびに早期崩壊を示唆する構造が観察された。
  • 廿日出 正美, 三嶋 公明, 杉山 日出男
    1984 年 13 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    1983年わが国の19か所のゴルフ場を任意に選び, マメコガネの発生消長を誘引トラップを用いて調べた。その結果, マメコガネの多発地域は東北, 信州, 東海地方に多く集中し, 中国, 四国, 九州地方ではその発生量はきわめて少なかった。次に発生時期と気温の関係について調査したところ, 発生初期, 発生最盛期では, 緯度による発生時期は異なるが, 平均気温とかなり密接な関係がみられることが示唆された。さらに, この誘引トラップはマメコガネの発生予察や防除試験の判定に十分利用することができた。また, 1トラップ。に1シーズンで3000~10000頭近く捕獲できることから, 農薬散布とトラップ数を増やすことにより, 相当の防除効果が期待されるだろう。
  • 谷 利一
    1984 年 13 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
  • 日本芝草学会芝草用語策定委員会
    1984 年 13 巻 2 号 p. 187-196
    発行日: 1984/11/30
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
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