コウシュンシバ (こうらいしば, K) , シバ (のしば, J) 及びギョウギシバ (Bermudagrass, B) は, いずれも日本の暖地で広く用いられている夏型の芝草である。これらの草種の土壌水分及び日射条件に対する感受性を比較するため, 3段階の地下水位及び3段階の日射条件のもとで, それぞれのソッドを生育させた (Fig.1, Tabs.1, 2, 5) 。
この研究は1983年に行い, 春~夏期及び夏~秋期の2実験からなる。前者では地上部の乾物収量に対する地下水位 (土壌水分) の影響を, 第1回 (7月25日) 及び第2回 (8月30日) の刈取りによって調査し, 後者では主として日射の影響を, 第3回 (9月27日) 及び第4回 (12月2日) の刈取りによって調べた。再生地上部の乾物重をそれぞれの刈取毎に測定した。そのほかに, 第3回刈取時には草高を, 第4回刈取時には残株 (直立茎とほふく茎の基部, 地下茎及び根を含む) の乾物重を測定した。
地下水位に対する各草種の反応は, 水位の増加 (土壌水分の増大) に伴う乾物重の減少というかたちで, 春期 (第1回刈取り) よりも夏期 (第2回) に明瞭に現われた。夏期実験についての分散分析の結果, 草種と水位との交互作用には有意性が認められ, 水位に対する各草種の感受性はB≫J>Kの順であることが示された (Tabs.3, 4) 。
日射に対する反応もまた夏期 (第3回) に明瞭に現われ, 各草種は日射量の減少とともに草高を増し, かっ乾物重を減じた。乾物重についての草種と日射との交互作用は有意であり, 各草種の日射に対する感受性は, 水位に対すると同じく, B≫J>Kであった (Tabs.6, 7, 8) 。
残株 (根を除く) の乾物重は日射量の減少に伴い顕著に減少した。乾物重の減少程度から, 日射に対する残株の感受性にはK>J>Bの傾向がみられ (Tabs.9, 10) , 翌年における各草種の生育はこの順で制約を受けるものと推定された。
3草種についての以上の結果から, 水位や日射に対する反応にみるように, シバはある程度の可変性 (plasticity) と安定性とを併せもつと考えられる。その意味で, 少なくとも集約的な管理の伴い難い条件のもとでは, 他の2草種よりも使い易い草種であるといえるであろう。
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