本研究は, 特異な栄養のしくみをもつ反芻動物が, 寒冷環境下で熱生産ならびに糖新生の素材を何に求めるのかという問題を解明するための一環として行われた.
4頭のめん羊 (被毛長1cm以下) を, ズートロン内で0℃に7日間暴露し, その際の一般生理反応ならびに血液・尿成分が観測された.
寒冷暴露にともなって, めん羊の四肢から躯幹にかけて顕著な“ふるえ”があらわれ, 同時に, 心拍数と熱生産量は速やかに著しく増加し, 7日間ほぼ同程度の値を保った.飲水量および尿量は明らかに減少し, 呼吸数も減少傾向をみせた.直腸温には明瞭な変化はみられなかったが, 朝夕の日内変動の幅が小さくなる傾向がみられた.
血漿遊離脂肪酸濃度は速やかに増加した.暴露4日以降に, 血液グルコース濃度および血液P
co2値はやや増加する傾向がうかがわれた.血液遊離アミノ酸, 乳酸および低級脂肪酸濃度には明瞭な変化はみられなかった.尿中ケトン体排泄日量はやや減少し, 全窒素排泄日量はほとんど変化しなかった.
めん羊で観察されたこのような諸変化は, 従来, イヌやヒトなどで報告された所見とほぼ同様なものであることが確かめられた.
抄録全体を表示