温度制御環境を用いて植物生育に対する温度効果を詳細に解析する場合, 種々の環境要因が温度効果にいかなる影響をおよぼすかを解明しておく必要がある.本報では各空気温度条件下で異なった光強度条件を設定し, キュウリ胚軸伸長に対する光強度の影響を解析した.環境条件設定にはグロースキャビネットを用い空気温度20, 25, 30, 35, 40℃とし, 光強度をそれぞれ4, 000, 8, 000, 12, 000luxに設定した.光源としては螢光ランプ (FLR40S・W-SDL-AP/M) を用い, 8時間日長とした.
1) 胚軸伸長は空気温度条件に著しく影響されたが, 同時に光強度にも影響された.同一温度条件では光強度が小であるほど胚軸伸長が大であり, その光強度の効果は温度条件により異なった.
2) 光強度に対する胚軸伸長の感受性は温度条件によって異なり, 30℃で最大で, 20℃で最小であった.
3) 胚軸伸長に対する最適温度は光強度条件によって異なり, キュウリ胚軸伸長は, 4, 000lux区では30℃で最大で, 8, 000luxおよび12, 000lux区では35℃で最大であった.
ファイトトロンガラス室では光条件, すなわち光強度, 光質, 日長が日周的および季節的に著しく変動しており, このような変動する光条件下では植物生育に対する温度効果が精密に解析できない場面がある.本実験における結果は植物反応に対する温度効果を解析する場合には, これら光要因の変動を十分考慮に入れる必要があることを示唆しており, 人工照明による一定の光条件設定が温度効果解析に有効な場面が多いことを示している.
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