生物環境調節
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29 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 山田 久也, 梶岡 律子
    1991 年 29 巻 4 号 p. 153-157
    発行日: 1991/12/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    ミニトマトNFT栽培において, 毛細管現象による連結材を用いた新しい定植法を試みたところ, その有効性が明確となった.とくに, 従来法との差を収量のみならず, 生体計測法を利用することによって, 早期に, かつより定量的に明らかにすることができた.
    1.新定植法が, 従来法よりも好結果となったのは, 苗の引き上げ作業がなくなり, 苗にストレスがかからなくなったためと考えられる.
    2.連結材の有無や種類による生育差を, 茎径の生体計測により, 目視よりも早期に判断することができた.
    3.生体計測による茎径の微視的挙動には, 次のような特徴がみられた.すなわち, 生育の順調な苗の茎径は日中膨張するのに対し, 生育の芳しくない苗の茎径は日中収縮することが確認された.
    4.茎径の膨張あるいは収縮は, 光合成産物の転流による肥大要因と蒸散による収縮要因とのプラス・マイナスの結果としてとらえられるのではないかと推察される.
    5.日射量変動と茎径変動との間には密接な関連がみられ, 苗の生育差を, 茎径の膨張・収縮といった定性面だけでなく, 日射量変動に対する応答性によっても定量的に示すことができた.すなわち, 茎径変動・日射量変動をスペクトル解析し茎径と日射量との相互相関関数を求めたところ, 生育の順調な苗では, 数分の遅れで日射量に敏感に応答していることが明確になった.
  • 加納 恭卓
    1991 年 29 巻 4 号 p. 159-166
    発行日: 1991/12/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    スイカ果実の品質は, 甘味, 外観, 果肉色, 肉質等によって決定される.とくに甘味はスイカ果実の品質を決定する最も重要な要因と考えられる.そこで, ここではまず初めに甘味, すなわち糖について果実中に含まれる種類を調べ, さらにそれぞれの含量の果実発育に伴う果実中の部位別変化, さらには収穫後の変化について調べた.
    スイカ果実には果糖, ブドウ糖, ショ糖の3種類の糖が含まれていた.果実発育に伴う糖含量の変化についてみると, 果糖, ブドウ糖は果実発育のごく初期から存在し, その含量は交配後30~40日目に最高となり, その後減少した.果実中における部位別の糖含量についてみると, 果糖, ブドウ糖どちらもいずれの発育段階でも果実の中央部よりやや外側の種子付近の部位で高かった.ショ糖もまず種子付近の部位に現われはじめ, その後もこの部位での含量の増大が著しかった.収穫後の果実では, 果糖, ブドウ糖含量は急激に減少したが, ショ糖含量は収穫時にくらべ収穫後日数がたつと増大した.
    このように, スイカの果実発育に伴う果実中の糖の種類およびそれらの含量の部位別変化ならびに収穫後の変化が明らかとなった.なお, 果実発育後期および収穫後における果糖, ブドウ糖含量の減少, ショ糖含量の増大の原因についても考察した.
  • 橋本 良二
    1991 年 29 巻 4 号 p. 167-177
    発行日: 1991/12/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    光合成の光補償点は, 二つの生理的要因, すなわち暗呼吸速度と光一光合成曲線の初期勾配の関数として表わされる.この関数が与える等光補償点ダイヤグラムは, 光補償点の温度変化あるいは種間差異に対して両要因がどのように関与しているかを示す.温度上昇にともなうヒバ稚樹の光補償点の上昇は, 光合成の適温付近まではわずかである.これは, 暗呼吸速度が増加するいっぽうで初期勾配が急になるためである.しかし, 高温域では主として暗呼吸速度の増加により光補償点は著しく上昇する.ヒバ稚樹の光補償点は, 適温域で4から6μmol quanta m-2 sec-1であり, 同じ林床に生育する他の木本植物にくらべ高い値を示す.ヒバ稚樹にくらべ, ミズナラ稚樹やヒメアオキで光補償点が低いのは, 暗呼吸速度が低いためであり, ハイイヌガヤで低いのは, 暗呼吸速度が低く初期勾配が大きいことによる.
  • 玉木 浩二
    1991 年 29 巻 4 号 p. 179-184
    発行日: 1991/12/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    植物個体の重量生長を, 初期重量をバランス重量により相殺し, 生長による微小重量増分を計測しうる天秤型の重量計測システムを開発した.線形性, ノイズ, 温度特性, 液面変動および試料植物を水耕栽培したまま計測することの影響等について検討した結果, 開発した計測システムの分解能はほぼ1mg以内と考えられた.
    つぎに, 開発した重量計測システムを用いて, 水耕栽培したシュンギクについて, 照射光源の照度を一定として, 連続的に生体重量変化を記録したところ, 光条件の差により生体重量の変動に差を生じることが確認された.また, 温度, 栽培液濃度など他の条件は一定としておき, 光源の照度のみ6段階に設定し, ある照度の段階で1時間栽培を行ったのち重量増分を計測し, 順次照度を変化させ増分を計測する実験を行ったところ, 重量増加速度最大となる光条件があることが示された.
    さらに, 水耕栽培した試料シュンギクを, 他の条件は一定に保持し光源の照度のみ制御要因として, 重量増加速度を最大とする条件を求める実験を行った結果, 生長にとって最適な条件を, 重量増加速度を指標として探索しうる可能性が示唆された.
  • 池 性韓, 篠原 温, 鈴木 芳夫
    1991 年 29 巻 4 号 p. 185-192
    発行日: 1991/12/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    トマト「大型瑞光」を標準濃度 (EC1.4→2.0dS/m) とその1/4濃度 (EC0.7→0.9dS/m) の培養液 (山崎トマト処方培養液; 定植後7週からはそれぞれ1.5倍とした) で栽培した.低濃度区は養分供給の不足を防ぐため毎日ECを調整した.処理後6週から実験終了時まで, 低濃度区は葉と茎の乾物重, CGRならびにLAIの減少が認められた.根の乾物重, 総果数および初期収量において, 培養液濃度間の差はなかったが, 総果実収量は低濃度区が標準濃度区にくらべ32%も低下した.処理後6週から12週の間で, NARならびに果実の乾物分配率は低濃度区で高かったが, 処理後15週では慓準濃度区より低かった.培養液濃度は葉中P, CaならびにMg濃度には影響を与えなかったが, 生育末期の葉中N, K濃度は低濃度区が標準濃度区より著しく減少した.トマトの水耕栽培においては, 摘心後NならびにKの十分な追肥を行えば, 低濃度 (EC0.7-0.9dS/m) 培養液によって果実収量を減少させずに水耕トマトの栄養生長をコントロールできることを示した.
  • 第29巻 (1991)
    1991 年 29 巻 4 号 p. 199-202
    発行日: 1991/12/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
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