生物環境調節
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19 巻, 2 号
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  • 蟻蚕の走光性の適応的意味
    清水 勇
    1981 年 19 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    孵化直後のカイコ幼虫 (蟻蚕) の走光性の適応的意味を明らかにするために, いくつかの実験をおこなった.
    1) 桑葉を摂食するまえの蟻蚕は, 活発に屈曲的な指向性走光性行動を示した.
    2) 走光性応答曲線によって得られた走光性の光刺激の閾値 (光覚閾) は, 暗適応後は10-3~10-2luxの間に, 明適応後は10-2~10-1luxにみられた.
    3) カイコが目標として向かう光源の形態も走光性応答に影響をおよぼした.
    4) 可視域の単波長光に対しては557nmの緑色光に蟻蚕は最大応答を示すが, 青色光や赤色光に対する走光性応答は極めて低かった.蟻蚕は357nmの近紫外光にも走光性を示した.桑葉の透過緑色光も顕著に蟻蚕を誘引した.
    5) 一定の離れた場所から蟻蚕が桑葉に向かう走性は, 暗条件下では明条件下にくらべて低かった.ビタミンA欠乏によって視覚と走光性を喪失した蟻蚕も明暗の条件にかかわらず, 桑葉への走性が著しく低下していた.
    6) これらの観察は蟻蚕が食草である桑葉を認知し, これに定位と走性を示して到達するまでの一連の行動において, 視覚過程を媒介とした走光性を走化性とともに, 重要な手段としていることを示している.
  • 松井 健, 江口 弘美, 森 啓一郎
    1981 年 19 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    放射冷却装置を試作し, グロースチャンバー内にそれを設置して, 葉温に対する放射冷却作用の解析と葉面上結露および結霜の制御を試みた.断熱材で作成した放射冷却箱の底部に直膨式冷却コイル (伝熱面積300cm2, 冷凍機能力1, 430kcal hour-1) を備え, 天井部には凹面鏡をとりつけて植物体からの放射を反射によって冷却コイルにできるだけ収れんさせるようにした.グロースチャンバーで制御された空気 (0.2m3min-1) を冷却箱壁面上部の孔から取り入れ, 壁面下部の左右の孔から排出する方式を採用した.この放射冷却箱内の空気流は下方向に1.3cm sec-1となったが, 露点温度分布は水平面にほぼ均一な層をなしたパターンであった.放射冷却によって葉温は周囲空気温度より少なくとも1.0℃低下し, 葉温が露点温度より低くなった時点で結露および結霜が認められた.露は冷却時間が長いほど大きく, また霜は温度条件によって異なる形状を示した.このように本実験で開発した放射冷却装置によっ
    て, 諸条件下での葉面の結露および結霜の現象を人工的に再現することが可能になった.
  • 大政 謙次, 橋本 康, 相賀 一郎
    1981 年 19 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 既に, 熱赤外画像計測システムを用いて, 気孔開度の指標である水蒸気拡散に対する気孔抵抗やSO2あるいはNO2収着量の葉面分布を推定する手法について報告している.本論文では, この画像計測手法を用いて, SO2あるいはNO2に被暴した植物葉に生じる気孔反応や可視害等の急性影響とガス収着量との関係を定量的に検討した.その結果は, 以下のようであった.
    1) SO2あるいはNO2暴露に伴い, 気孔は閉鎖する傾向があった.しかし, その挙動は, 葉の局所部位により異なり, 不規則であった.これらの局所部位における気孔反応の違いは, ガス暴露期間中の積算ガス収着量の違いには依存しなかった.このことは, SO2あるいはNO2に対する気孔の感受性が葉の局所部位により異なることを示唆している.
    2) SO2あるいはNO2に被暴した葉において, 可視害は, 積算ガス収着量が閾値を越える領域に発現する傾向があった.そして, 障害葉は, 正常な領域と可視害領域に分離されるという特徴があった.この特徴ある可視害の発現は, 葉の局所部位における気孔抵抗や葉面境界層抵抗などのSO2あるいはNO2収着を支配する要因の違いにより生じることが示唆された.
  • III.カボチャ子葉表面および裏面の温度差
    松井 健, 江口 弘美, 上滝 正弘
    1981 年 19 巻 2 号 p. 69-72
    発行日: 1981/06/30
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    カボチャ子葉を用いて, 光照射に対する葉表面および裏面温度反応の動特性解析を試みた.子葉表面と裏面の温度差は光照射による温度上昇後気孔蒸散によって葉温が最低になる時点で最大となり, 葉表面および裏面のいずれの方向から光照射した場合にも葉裏面温度が表面温度より0.5℃低いことが認められた.しかし, 子葉をアブサイシン酸 (ABA) によって処理し気孔を閉じさせた場合, 光照射後の差は認められなかった.顕微鏡観察の結果子葉表面の気孔数は裏面の気孔数の80%であった.以上の結果から, 葉裏面における気孔蒸散は表面におけるそれより大であり, このことが光照射下のダイナミク
    スにおいて葉裏面温度を表面温度より低下させると考えられる.
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