応用生態工学
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8 巻, 2 号
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原著論文
  • 今本 博臣, 及川 拓治, 大村 朋広, 尾田 昌紀, 鷲谷 いづみ
    2006 年8 巻2 号 p. 121-132
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    水位低下に代表される水位変動が,琵琶湖の沈水植物に与える影響を把握する目的で,1997年(5,924コドラート)と2002年(6,654コドラート)に109測線で空間分布調査を,1999∼2003年にかけて3測線で水位変動応答調査を実施した.その結果,以下のことが明らかとなった.
    (1)空間分布調査結果から,2002年は1997年に比べて,群落面積が北湖で15%,南湖で73%,琵琶湖全体で36%増加しており,特に南湖での増加が著しい.
    (2)1997年と2002年の調査では,北湖の優占種はいずれの年もクロモとセンニンモ,南湖の優占種はいずれの年もセンニンモとクロモとオオカナダモとマツモであり,この5年間では種組成に大きな変化がなかった.
    (3)水位低下による光利用性の向上で,新たに生育可能となった場所に群落を形成した種は,北湖ではセンニンモ,クロモ,イバラモ,南湖ではクロモ,センニンモ,オオカナダモ,マツモであった.
    (4)琵琶湖に生育するコカナダモとエビモは,水位低下の発生頻度が高くなっている近年,急激に減少していることから,水位低下による影響で減少した可能性が高い.また,ロゼット型のネジレモは,水位低下にともなう波浪エネルギーの増大によるとみられる影響で,減少する傾向が見られた.
    (5)北湖の沈水植物群落の鉛直分布は,水位変動の影響を受けて変化していた.
    (6)南湖の沈水植物群落の鉛直分布は,水位の変化から考えられる以上にその群落面積が増加していた.その理由の第1は水位低下にともなう生育期間の延長,第2の理由は経年的な水位の低下,第3の理由は沈水植物増加の正のフィードバックである.
  • 小林 哲
    2006 年8 巻2 号 p. 133-146
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    河川感潮域の上流部は,モクズガニのメガロパが着底して変態し,稚ガニがしばらく成長する場所であり,モクズガニ個体群の維持に極めて重要な場所である.そこでモクズガニのメガロパの着底と稚ガニの生息場所として好ましい環境を調べるため,福岡県福津市の西郷川感潮域の上流部で3タイプ(石被度25%,75%および石+ヨシ株75%)に被度を変えた人工芝マット(30cm×30cm×厚さ1.5cm)を沈め,カニの密度を比較し環境選好性を明らかにした.メガロパの着底は感潮域最上流部の流路直下にある,常に速い流れが存在する早瀬状の環境に集中する傾向があり,メガロパに正の走流性があることを示していた.このため河川感潮域に建設された堰と魚道はモクズガニの分布様式に大きな影響を与えることが明らかとなった.変態後の稚ガニは,成長とともに着底場所から周囲へ分散する傾向がみられた.ヨシ類の株がある場合は石のみに覆われている場合よりも密度は高く,ヨシ類の株が稚ガニの生育にとって重要であることが推察された.その効果は早瀬よりも平瀬や淵状の環境において顕著であった.また今回の実験により,人工芝マットを用いた方法はモクズガニ個体群調査に対して極めて有効であることが示された.
  • 阿部 俊夫, 坂本 知己, 田中 浩, 延廣 竜彦, 壁谷 直記, 萩野 裕章
    2006 年8 巻2 号 p. 147-156
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    河川への落葉供給源として必要な河畔林幅を明らかにするために,森林内の落葉散布パターンを実測し,さらに,風速変動を考慮した簡単な物理モデルを用いて落葉散布の推定が可能かを検討した.落葉広葉樹林において,谷の両側斜面に単木的に分布するクリの木(両側各1本)を対象として,落葉散布を実測したところ,斜面から谷への方向では,落葉の散布距離は,最大で約25mであり,ほとんどの落葉は15m以内に落下することが分かった.モデルによる落葉散布推定の結果,一方のクリでは,樹冠近傍を除き,モデル推定値と実測値がよく一致した.累積落葉密度は,モデル,実測とも,距離15mで約90%に達した.もう一方のクリでは,モデルによる散布距離の推定値はやや過大となった.モデル推定値と実測値の比較の結果,林内風速が正確に測定できれば,本研究で提案したモデルを用いて落葉散布パターンを推定できる可能性が示唆された.しかし,林内では,樹木や地形の影響で局所的に風の吹き方が異なり,これがモデルの推定精度を下げる要因になっていると思われる.一方のクリで,モデルと実測が一致しなかったのも,この風速の不均質性が原因と推察された.ただし,大まかな落葉散布範囲は,河畔域の代表的な地点で風を観測することにより十分推定可能と思われる.また,本モデルは,その性質上,樹冠近傍の落葉密度を過小評価してしまう.しかし,落葉の累積%が80~90%に達する距離は,モデル,実測ともほぼ同じであり,落葉供給範囲を推定するという目的を考えれば,この違いは大きな問題ではないといえる.以上から,本モデルは,現時点での検証が不十分であるものの,今後,河川への落葉供給源の推定に有効なツールになりうると思われる.
事例研究
  • ミティゲーションを超えた湿地生態系の復元事業について
    一井 直子
    2006 年8 巻2 号 p. 157-164
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    米国·ワシントン州ボーセル市における復元事業を報告した.この復元事業は新キャンパス建設に伴うミティゲーションがきっかけであったが,事業主であるワシントン州政府はミティゲーションの領域を越え,湿地生態系全体を復元する大規模な復元事業を実施することを決定した.湿地生態系の評価手法であるHGMアプローチが採用され,復元サイトに対応するリファレンスサイトが選定されて湿地機能が与えられた.そしてこれをもとに,影響評価,復元計画,モニタリングプランや不測事態措置の作成が行われた.復元計画ではリファレンスサイトを参考にして,新河川システムの設計や擬似倒流木の設置,植栽計画が検討された.建設工事は造成工事,植栽作業,雑草の制御から構成された.建設工事終了後,メンテナンスとモニタリングが復元計画に従って開始された.建設工事終了後,復元サイトの管理はワシントン大学に委譲され,ガイドラインを作成して復元サイトを管理し,教育や研究目的にも有効に利用している.
  • 田子 泰彦, 辻本 良
    2006 年8 巻2 号 p. 165-178
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    庄川中流域にある水深約30cmの浅瀬に人工的に水深約1mの淵を造成し,そこでの魚類の出現状況を1995年と1996年の8月から9月に調査した.出現した魚類の種類,数,および大きさは,日中は目視観察により,夜間は投網採捕により調べた.造成した淵の魚種の多様度は,造成前の浅瀬に比べ著しく増加した.1995年には淵で最も出現数の多かったアユの数は,8月から9月にかけて,日の経過とともに増加した.しかし,淵への流入量が日の経過とともに減少した1996年には,最も出現数の多かったウグイの数は,日の経過とともに減少した.夜間においても淵における魚種の多様度は,淵の上流に隣接する瀬のそれに比べ有意に高かった.夜間にはアユ,ウグイおよびヌマチチブは瀬よりも淵を好む傾向がみられ,逆にカジカは淵よりも瀬を好む傾向が認められた.1996年には淵に生息していたウグイ稚魚のサイズは,日時の経過とともに大きくなった.淵は生息魚類に休息·逃避場所,稚魚の成育場,夜間の睡眠場所として重要な役割を果たしており,また適当な流量が維持されればアユにとっては重要な摂餌場になるものと考えられた.
  • 大石 哲也, 天野 邦彦, 尾澤 卓思
    2006 年8 巻2 号 p. 179-191
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,イギリスで開発された河川環境評価手法であるRHSとHQAを用いて,円山川を対象にその適用性について事例研究を行った.対象区間は直轄区間0-26.5Kpとし,感潮の有無から,0-16Kpを上流域,16-26.5Kpを下流域に分け,RHS·HQAの項目に従い,既存の資料(環境情報図,植生図,空中写真,地形図など)や現地調査により,データを記録した.その結果,土地利用形態,河畔林と河畔植生,河岸の人工度的な改変の程度,樹木の連続性と土地利用の関連などの項目から,RHS·HQAにより,上·下流域にみられる特徴を定量的に示すことができた.このような特性を整理した後,今後の自然再生計画のための保全·再生箇所の抽出を検討するため,RHSによる場の希少性やHQAスコアの高低からその考え方を例示した.さらに,本報では,RHS·HQAのさらなる活用の可能性をみるため,HQAのスコアとコウノトリの関連性について評価を行った.その結果,HQAスコアの高いサイトが必ずしもコウノトリの選好場の特性を有しているわけではないことが分かった.しかし,コウノトリの飛来状況とRHSの調査データとの比較することにより,コウノトリは草地や砂州の多い場所に飛来するものの,河岸沿いに樹林が連続的に見られる箇所には飛来しないことを定量的に明らかにすることできた.この結果を利用することで,現在,飛来が確認されていないが,潜在的には利用可能性が高い箇所の抽出が可能であることが示せた.重要種の保全を念頭に置いた環境修復を行う際には,このような潜在性の高い箇所周辺を重点的に修復すると共に,全体とのバランスについても同時に留意することが望まれる.RHS·HQAは,このような要請に応えうる評価手法であることが示された.
  • 佐川 志朗, 萱場 祐一, 皆川 朋子, 河口 洋一
    2006 年8 巻2 号 p. 193-199
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,水面幅約3mの直線河道を呈する実験河川において,24調査区における努力量を統一させた魚類捕獲調査を行い,エレクトリックショッカーの捕獲効率を算出し,各種に対するショッカーの効用および効果的な魚類捕獲の方法について考察することを目的とした.調査の結果,底生魚および遊泳魚ともに捕獲効率が高い種および低い種が存在し,前者としては,アユ,ドジョウおよびシマドジョウ属が,後者としては,オイカワ,タモロコおよびヨシノボリ属が該当した.オイカワおよびタモロコの捕獲効率が低かった原因としては,第1年級群である40mm以下の小型個体の発見率が小さかったことが示唆された.また,ヨシノボリ属については,微生息場所である河床間隙中で感電した個体が発見できなかったために,第1,第2年級群を含めた全サイズ区分にわたって捕獲効率が低かったことが考えられた.ヨシノボリ属やコイ科魚類の稚仔魚が分布する河川でショッカーを用いて捕獲を行う際には,たも網を用いて感電個体をすくい捕るのと併せて,あらかじめ通電する箇所の下流に目の細かいさで網を設置しておき,すくい捕りのすぐ後に,足で石を退かせながら水をさで網に押し入れるような捕獲方法を併用することが望ましい.今後は,本邦産魚類の各種に対して,様々な水質条件,ショッカー設定下での捕獲効率を明らかにするとともに,各魚類の成長段階ごとにショッカーの影響程度を把握し,効果的で魚類個体群への影響を最小限とする魚類捕獲手法の検討を行う必要がある.
総説
  • 中村 圭吾, 天野 邦彦, Klement TOCKNER
    2006 年8 巻2 号 p. 201-214
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    河川復元は,1990年代以降,先進国において数多く実施されるようになった.本稿では,ヨーロッパを中心として,世界の河川復元の現状を整理し,今後の河川復元にとって重要な研究分野及び日本の河川復元の課題について検討した.ヨーロッパについては,各国の特徴的な河川復元を紹介した後,河川復元の背景について考察し,頻発する洪水やEUの政策が河川復元を推進していることを説明した.アメリカは,大規模な河川復元の他にも小規模な河川復元が多数実施されており,河川復元技術のデータベースの作成も進行中であることを紹介した.また,オーストラリアや南アフリカの環境流量の研究について概説した.最後に,世界の研究の現状と日本の課題について(1)河川地形変化の捉え方,(2)流量のあり方,(3)情報の整理と分析,(4)自然再生型洪水対策の4つの観点から整理し,考察を行った.
特集: 野生生物の生息・生育適地推定と保全計画
序文
原著論文
  • 伊勢 紀, 三橋 弘宗
    2006 年8 巻2 号 p. 221-232
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    1.広域的な環境要因とモリアオガエルの分布の対応関係を解析し,日本列島スケールでの生息適地の推定を行った.また,この結果に基づいて保護区の現状に関してギャップ分析を行った.
    2.モリアオガエルの分布の「有」データを説明する環境要因として,年間最高気温,実効雨量と最大積雪深(グループ化),森林率,緩斜面率の5つを対象として,二進木解析を行った.その結果,すべての環境要因がモリアオガエルの分布を説明する上で有効であることが判明した.そして,上記の順に階層化されたモデルが構築された.
    3.構築されたモデルでは,生息適地として選択されたメッシュを全体の約40%まで絞込み,75%の実際の生息地をカバーすることが出来た.また,推定した生息適地に1メッシュでも隣接する地域も,生息適地として評価した場合,約95%の実際の生息地をカバーした.これらの結果は,ランダマイズドテストを行ったところ,いずれの場合も有意であり,本モデルが比較的高い信頼性を持つことが検証された.
    4.これまで分布の空白地域とされていた,関東地方の北東部(茨城県)や南東部(神奈川県),紀伊半島,四国,九州地方は,実際に生息適地が乏しいか散在する地域であることが確認できた.
    5.一方で,推定した生息適地図を参照すると,予測の不整合が確認された.分布が予測されるが,実際には分布情報が乏しい地域として,中国地方南部や東北地方東部(岩手県)が抽出された.逆に,分布が予測されないが,実際に分布する地域として,東海地方(静岡県北部),兵庫県南部などが抽出された.これらの不整合は,調査の不十分さ,異なるスケールやその他の環境要因が関連すると思われる.
    6.生息適地と保護区との重複性をギャップ解析した結果,都道府県によって,現状が大きく異なることを視覚化することが出来た.特に近畿地方南西部(大阪,和歌山,奈良)においては,生息適地面積と保護区の占有率ともに値が低く,保全対策が必要であることが分った.
  • 福島 路生, 亀山 哲
    2006 年8 巻2 号 p. 233-244
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    1.生息適地モデルを使って以下の2つの解析を行った.1つは北海道におけるサクラマスの分布に与えるダムによる流域分断の影響解析であり,2つめはサクラマスやイトウなどサケ科魚類の保護を目的として北海道が設定した保護水面が,的確に彼らの生息適地をカバーしているかどうかを見極めるための評価解析である.
    2.サクラマスの生息適地モデルには説明変数として標高,気温,降水量,積雪深,流域人口,流域面積,調査件数,調査年,ダム分断後の経過年数,調査地点の位置座標が選ばれた.
    3.ダム上流側でのサクラマスの生息確率は分断後,約30年経過すると急激に低下していた.これは古い時代に建設されたダムの多くは魚道がない,あるいは魚道の機能が低いのに対し,近年のダムにはサクラマスに比較的有効な魚道が設置されていることを反映しているのかもしれない.建設後30年を経過するダムへの魚道の設置,改良が強く求められる.
    4.ダムの影響を受けてサクラマスの生息確率が低下している地域が全道にパッチ状に数多く分布する.特に著しい影響を受けた地域は,日高山脈西部や石狩川上流部などである.
    5.イトウの生息適地モデルには説明変数として標高,気温,降水量,積雪深,流域人口,流域面積,調査件数が選ばれた.
    6.イトウの生息確率に対するダムの影響は検出されなかった.しかし,そもそもイトウの主な生息域である湿原や原野にはダム等の工作物がほとんど建設されていないため,その影響評価を行うことには無理がある.
    7.保護水面32水系におけるサクラマスの生息確率は全道平均よりも有意に高い.さらに保全指標値で比べると,保護水面における水準の高さはいっそう際立つ.しかしイトウに関しては生息確率,保全指標値ともに保護水面での水準が高いという傾向は認められなかった.イトウ保護のためには既存の保全地域の対応では不十分であり,高密度に生息する地域(例えば宗谷地方)の重点的な保全が提示された.
  • 鎌田 磨人, 小倉 洋平
    2006 年8 巻2 号 p. 245-261
    発行日: 2006/01/30
    公開日: 2009/01/19
    ジャーナル フリー
    1.塩性湿地は人為的な影響により大きく改変されてきている生態系の一つで,多くの種が絶滅の危機に瀕している.こうした種や生態系の保全,修復を行っていくために,生態系の変化を予測し,評価するための簡単で合理的な手法の開発が必要である.そのような観点から,徳島県那賀川の河口域の一砂州上およびその周辺の干潟に発達している塩性湿地植物群落のハビタットの物理的構造を,比高および表層堆積物の粒径を用いて記載し,評価した.
    2.2002年および2004年に,低空撮影された空中写真を携行した現地調査によって,植生図,比高階級図,表層堆積物の分布図を作成した.そして,それらの図をGISに入力した上でマップオーバーレイ解析を行い,塩性湿地植物群落が選好して生育する立地特性や,洪水による分布変化の空間的不均一性を把握した.2002年は先に発生した大規模洪水から4年ほど経過した後の,植生構造等が再生した状態が,一方,2004年は,大規模洪水による破壊直後の状態が表されている.
    3.2002年には,塩性湿地植物群落であるハママツナ群落,ハマサジ群落,ウラギク群落,ナガミノオニシバ群落,イソヤマテンツキ群落は,比較的高い比高領域にも分布しているものの,大潮満潮位よりも低い場所に対しての選好性が高かった.そして,礫が表層に堆積しているところに分布し,細·中礫の領域に対して最も高い選好性を示した.
    4.ハママツナ群落,ハマサジ群落,ウラギク群落等が低比高域に対して示した高い選好性は,これら群落が砂州·干潟に侵入した後の種間競争や,大規模洪水が発生する間に生じる小·中規模の洪水撹乱による影響の結果を反映し,また,これら群落が礫質領域にのみ分布することは,これら植物の種子や実生の潮汐·洪水による流出を,礫が防御した結果を反映したものであることが,文献から推察された.
    5.2004年に起こった大規模な洪水によって,対象砂州は大きく浸食され,植物群落の多くは消失した.しかし,その影響は空間的に不均一で,ワンド領域では塩性湿地植物群落が残存していた.このことより,ワンドは塩性湿地植物群落のレフュージとして重要な機能を有することが確認された.
    6.河口砂州·干潟のような撹乱を頻繁に受ける場所でハビタット評価を行うためには,1)調査時点での生物群の分布は必ずしもその選好性を反映したものとなっていない可能性があることに留意すべきこと,また,2)周辺の砂州·干潟を含む広い領域を対象にした物理環境の変動や,それに伴うメタ個体群構造動態の変化をも含めて評価するための論理·手法も検討していく必要があることについて言及した.
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