応用生態工学
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2 巻, 2 号
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  • 小野 勇一
    1999 年 2 巻 2 号 p. 99-100
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
  • 特集を編集するにあたって
    中村 太士
    1999 年 2 巻 2 号 p. 101-102
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    The experimental flood from Glen Canyon Dam in spring 1996 and Columbia basin program to bring back salmon in the 1980s initiate a new era of dam management in the United States. Conservation and improvement of river environment was included in the purpose statement of the new River Law in Japan, which was revised in 1997. Reservoir dams, erosion control dams and other dam structures are thought to have considerable effects on the structure and function of river ecosystem, but very few studies in Japan have demonstratively elucidated such effects. In order to provide present knowledge on influences of dam structure, studies in Japan and other countries were reviewed from the viewpoints of hydraulics, geomorphology, riparian forest dynamics, water quality, benthic animals, and fish life history. We believe that the idea of Adaptive Management will be useful as a future management strategy within a limited knowledge of dam influences.
  • 河川工学及び水理学的視点から
    辻本 哲郎
    1999 年 2 巻 2 号 p. 103-112
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    流域の水を制御してさまざまな人間社会の要望に応える役割を持つダムが,一方では,水系への水の流量,土砂供給条件の変化によってもたらされる河相の変貌を通して,さまざまな影響が出現しており,とくに最近それが顕在化しているといわれる.本論文では,まず,河川水理学的,あるいは河川工学的観点からそれを概説した.
    ダム貯水池では,流水を貯留するため,水域だけでなく周辺の環境にも影響を及ぼす.また,土砂や物質をかん止し(このことも貯水域の環境変化に作用する),流況変化(平均的な量とともに流量変化のパターン)とともに,下流河道に影響を与える.ダム工事期を除いても,湛水期の極端な流量減少と微細土砂の河床への堆積,引き続いて,砂質系材料のダムでのかん止によって下流河道での砂州環境がリフレッシュされないこと,さらに河床低下とそれに伴う粗粒化(アーマー化)の下流への伝播が出現する.より長期的には澪筋固定,砂州などの陸化,植生繁茂,樹林化などの傾向に代表される河相の変貌へとつながるおそれがある.河相が河川が担うべき治水,利水,親水,生態系保全機能と強く関連している,あるいは河相の管理・制御によってこそこれらの機能が全うされるという観点から,上記のようなダムの河相変貌に及ぼす影響を河川工学的課題として捉え,その変貌の仕組みを河川水理学的な視点から考察した.
    今後の新しいダム建設については環境アセスメントによって,既存のダムについてはフォローアップの枠組みによって,ダムの機能維持とダムの建設がもたらす河相や河川が担うべき機能の変質と復元の問題にとり組まれることになるが,河相変遷の仕組みの理解は,これらの枠組み(環境アセスメントやフォローアップ)が具体的に機能するか否かに大きな役割を果たすはずである.また,生息環境評価の河川水理学的側面についても例をあげた.この問題は河川工学の今日的課題であることは間違いなく,あえて水理学的アプローチを紹介して生物・生態学の研究者との今後の共同を期待した.
  • 侵食性平衡勾配から堆積性平衡勾配へ
    池田 宏, 伊勢屋 ふじこ, 小玉 芳敬
    1999 年 2 巻 2 号 p. 113-123
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    わが国の山間地河川では,河床・河岸に岩盤が露出して粗大な岩塊が残留している岩盤河川が卓越している.このような岩盤河川は平衡状態には達していないとみなされてきたため,その縦断勾配の値についてはほとんど研究されてこなかった.しかし,山地河川沿いに発達している河岸段丘面などからみて,急勾配の岩盤河川区間も過去数万年という時間スケールでは平衡状態に達していると見なされる.
    岩盤河川の縦断勾配は河床・河岸の凹凸の程度が増すほど急になる.上流から供給される砂礫を流すためには,河床・河岸に凹凸があるほど大きなエネルギーが余分に必要になるためであることが,水路実験によって確かめられる.すなわち,流量や流砂量が同じ流れでは,河床に岩塊や巨礫が残留しているほどに勾配は増す.ダムを建設すると,その上流では河床や河岸の凹凸が砂礫に埋め立てられて平滑になるために,堆砂面の勾配は凹凸の大きい元河床勾配より小さくなる.元河床勾配と堆砂面勾配との開きは堆砂面が元河床の凹凸の程度と比較してどれほど平滑になるかにかかっている.
    侵食性平衡勾配と堆積性平衡勾配とが違うとの認識に基づいて,岩盤河床に巨石を設置・固定して河床勾配を増大させて下刻を防止する工法を砂防ダムに代えるものとして提案したい.その実用化のためには,岩盤河川の河床・河岸の凹凸の程度を定量化することが必要である.そのためには,ダム貯水池からの放流による人工洪水を総合観測することが有効であろう.グランド・キャニオンを流れるコロラド川では人工洪水によるビーチの再生を目標とした総合研究が継続されている.これを手本として,特定河川を対象とした真の総合研究を実施したいものだ.
  • 中村 太士
    1999 年 2 巻 2 号 p. 125-139
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    ダム構造物が水辺林の更新動態に与える影響について,流量変動,流砂量および地形変化,撹乱の頻度と強度,そして流水による種子散布の観点から検討した.
    ダムによる融雪洪水の消失は,5月から6月にかけての砂礫堆の形成と水分の供給を制限し,ポプラに代表されるヤナギ科植物が発芽定着できる更新立地を縮小させる.また,夏季の水位低下は乾燥による稚樹の枯死をもたらすと報告されている.
    一方,ダムによる流量調節および砂防ダムや床固め工の施工により,氾濫原内の裸地が減少し樹林化が進んでいるという報告も多い.ダムによる砂礫供給の減少は,ダム下流における流路変動を抑制する方向に働く。先駆性の広葉樹にとって,流送砂礫による寄州の発達と古い堆積面への土砂再堆積は,更新裸地および水分・栄養補給の観点からも重要であるが,これがダムにより抑えられることになる.
    砂利採取およびダム建設による掃流砂量の減少は,下流河床の低下を引き起こす.一方で,微細砂は流域の土地利用に起因して生産され,段丘化した氾濫原に越流堆積する.こうした河床低下と高水敷への微細砂堆積は,近年ニセアカシアが水辺域に分布を拡大する要因となっている.
    ダムによる洪水撹乱頻度と強度の減少は,比高(最低河床位からの高さ)に沿った水辺林の種分布に少なからず影響を与え,ヤナギ科植物に代表される先駆性の広葉樹からハルニレやヤチダモに代表される遷移後期樹種への遷移を進めると考えられる.
    流水による種子散布は湿地林についての報告が多い.湿地林の種多様性を維持する機構として,洪水撹乱による種子の再分散の重要性を指摘する報告もあり,ダムによる流量調節および種子の捕捉は,流水による種子散布にも影響を与えると考えられる.
    ダムの影響を検討した既存の研究の多くは,ダムの上下流間比較もしくはダムの存否による流域間比較に基づいている.また,比較内容は,単純に種組成のみを比較したものから,水文・地形条件を加味したものまで様々である.ダム建設前後の比較については,成熟林からの年輪情報の解析および経年的空中写真の判読により検討している。モデル解析は,高度を環境傾度とした植物種のニッチの違いからダム水位操作による種分布域の移動を議論した事例や,遷移確率と浸食率とを組み合わせてダムの影響を評価した事例などがある.
    現在,日本でも河川の生態系を復元するためにフラッシュ放流実験が実施されるようになってきた.こうした実験結果を管理計画に反映するためにも,順応的管理による仮説検証が今後必要になる.
  • 香川 尚徳
    1999 年 2 巻 2 号 p. 141-151
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2010/03/03
    ジャーナル フリー
    本総説では,はじめに,過去20年間に提唱された河川生態系に関する三つの重要な概念すなわち,河川連続体,不連続結合,栄養素らせんの各概念と,それらの概念によるダムの取り扱い方とを概観した.
    次に,これらの概念に基づき,ダムを河川連続体に対する不連続発生の場とみなす立場で,ダムによる河川水質の変化,すなわち,不連続発生の実状を,ダム下流の河川生態系に及ぼす影響を考慮しつつ,水温,粒子状物質,クロロフィルa,栄養素,嫌気的水質環境の5項目について検討した.
    最後に,不連続軽減対策について,ダム湖水の滞留時間を短くして河川的性質を保つことは必ずしも出来ることではないので,下流の生態系に重大な影響を与える水質変化を中心に不連続発生を軽減することが現実的であると考察した.特に,自然に備わった水の動きや物質を利用することが望ましいとの観点に立って,富栄養化対策における二つの方法,密度流と選択取水の統合的利用と分解中の麦藁や落葉落枝が示す藻類増殖阻止作用の利用とを今後の検討課題にあげた.
  • 谷田 一三, 竹門 康弘
    1999 年 2 巻 2 号 p. 153-164
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    Influences of dams on benthic animal communities in tailwater rivers were reviewed focused on changes in their species richness, population densities and biomass. It was commonly observed that the benthos communities below dams had more population densities of fewer numbers of taxa in comparison with control rivers without dam effects. However, not a few works reported different results such as a case of less species richness, less population densities and less biomass or a case of more species richness in benthos communities below reservoirs. We considered functional processes of dam effects on benthos communities in the following respects: i.e., 1) impacts of flow regime regulation including stabilization of water flow, frequent flow fluctuation by electric power station, and drought in an extreme case, 2) alteration of habitat structure such as stabilization of river bed, water courses and armoring, 3) alteration of thermal regimes derived from surface or deep waters of the reservoirs, 4) effects of siltation, 5) effects of increasing plankton supply from the reservoirs, and 6) effects of dams and reservoirs themselves as an obstacle for migration by adult aquatic insects. The importance of Serial Discontinuity Concept and its future perspectives were also discussed. In order to assess the influences of dam construction and its management properly, the SDC model should be modified to reflect individual characteristics of each river and to include influences on diadromous animals and estuarine ecosystems.
  • 森 誠一
    1999 年 2 巻 2 号 p. 165-177
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    ダム構造物およびダム湖という湛水域は,環境の生物的・物理的な構成要素に影響を及ぼす.湛水域には堆砂が増加し,下流へ大量の濁水が,特に建設工事中や増水時に流出する.ダムの放水運用によって,河川水量は季節や一日の内で短期間に大きく変化する.こうした河川から湖への生態系の変化は必然的に,魚類相,魚類の餌生物相,個体群動態の変化を引き起こし,水産業にも打撃を与える.例えば,ダムは魚の上流や下流への移動を妨害し,魚類群集の変化がダム上・下流の広い範囲で認められた.湛水域は在来種の産卵場所を消失させ,個体数の激減を導く.また,湛水域に放流された移入魚の増加は,在来種の絶滅と関連することもある.こうしたダム構造物や湛水域,水量管理による魚類への多くの不利な影響とその改善策を,水域の環境復元のための将来計画を立てる上で十分に考慮調査されなければならない.今後,長期の持続的な生態学的評価に基づいて,ダム除去を含む河川生態系改善のためのシナリオを作成することが切望される.
  • 阿部 俊夫, 中村 太士
    1999 年 2 巻 2 号 p. 179-190
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    倒流木を実験的に除去し,河川地形と魚類生息への倒流木の影響を検証した.北海道北部の緩勾配山地河川に,除去区と対照区を設け,1993年秋に地形や生息場所特性,魚類生息密度を調査した後,除去区の倒流木を除去し,翌春と翌秋に再調査を行った.
    倒流木の除去後,土砂の堆積量は一時的に増加した.地形変化は,対照区では倒流木に,除去区では流路平面形状に規制される傾向にあった.淵の体積は減少せず,個数のみが減少した.カバー量は減少した.魚類生息密度は,サクラマス幼魚では明瞭に低下したが,底生性のフクドジョウでは変化は小さかった.
    緩勾配河川での倒流木除去は,砂礫堆発達と側方洗掘による淵再生をもたらし,淵体積の減少は生じにくいと考えられた.倒流木は,カバーと淵個数を増加させることで,サクラマス生息へ好影響を与えていると結論できた.今後の河川管理では,倒流木の河川生態学的価値も考慮する必要がある.
  • 神宮 字寛, 近藤 正, 沢田 明彦, 森 誠一
    1999 年 2 巻 2 号 p. 191-198
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,農閑期の湧泉の環境条件とイバラトミヨPungitius pungitiusの生息状況の関係を明らかにし,湧泉保全についての考察を行った.調査は,秋田県千畑町畑屋地区の5ヵ所の湧泉を対象に,イバラトミヨの生息密度数調査および物理的環境調査を1997年12.月から1998年4月に行った.その結果,すべての湧泉において,12月から4月にかけて,湧出量の減少に伴い生息密度が低下した.生息密度が大きく低下したのは,そのうち2ヵ所であった.生息密度が低下した湧泉では,12月に平均水温が低下し,湧出口水温と大きな差が生じた。また,融雪期にあたる3月に300mm以下の水位での水温低下が大きく,未成魚の生息密度の低下が大きかった.また,調査期間を通じて湧出口水温との差が少ない湧泉においても,水生植物の植被率の低下から,生息密度が低下していた。一方,湧出量が安定し,:水温変動が少なく,水生植物め植被率が高い湧泉では,3月から4月にかけて生息密度の増加がみられ,未成魚の生息密度が高かった。
    圃場整備による湧泉環境への影響を回避するためには,圃場整備による地下水位の低下に伴い枯渇する可能性が高い湧泉や水温変化が大きい湧泉を湧出量が多く水温変化が少ない湧泉と水路で連結する改善策がのぞまれる.
  • 村上 哲生, 西條 八束
    1999 年 2 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    長良川・木曾川下流部におけるクロロフィルαの連続観測記録の解析により,淡水域と汽水・海域Y`起源を持つ二つの浮遊藻類群集が両川の河口部で見られる事が確認された.前者は,河川棲浮遊珪藻群集が河口域に流下したものであり,その現存量は塩化物イオンの変化と逆位相の変動を示した.一方,後者は,汽水域から遡上した褐色鞭毛藻類,渦鞭毛藻類を優占種とする群集で満潮時に高い現存量が記録された.
    長良川河口堰は,その上流の湛水域における滞留日数を長期化することにより河川棲浮遊珪藻群集の増殖を促進することが示され,また,木曾川下流域においては,堰による取水が,淡水による希釈や水の交換を阻害し,汽水由来の浮遊藻類が集積する可能性が示唆された.河口構築物が由来の異なる二つの浮遊藻類群集の現存量の変化に及ぼす機構はそれぞれ異なっており,水質の現状評価や改善の施策の検討に当たっては,両群集を区別して考える必要がある.
  • 口分田 政博, 田中 万祐, 遊磨 正秀
    1999 年 2 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
    ゲンジボタル成虫の発生時期を予測するために,京都市右京区清滝,京都市左京区銀閣寺,および滋賀県山東町長岡における成虫発生時期について,幼虫の上陸時期や気温との関係について検討を行った.幼虫上陸数最盛(または初見)日と成虫発光目撃数最盛(または初見)日(ともに1月0日からの日数で示す)の関係は,
    成虫発光目撃数最盛(初見)日
    =14.23+1.34×幼虫上陸数最盛(初見)日
    として示された.蛹期(幼虫上陸から成虫羽化までの全期間)の発育ゼロ点は13.7℃,蛹期の発育を完了するための有効積算温:量は162.6日度と推定された.日平均気温平年値が蛹期の発育ゼロ点を超える蛹期発育開始日平年値から20日間,30日間,ならびに40日間の発育ゼロ点以上の積算温量から,成虫現存数の最盛日は
    成虫発光目撃数最盛予測日
    =174.8-0.248×有効積算温量20
    成虫発光目撃数最盛予測日
    =180.2-0.199×有効積算温量30
    成虫発光目撃数最盛予測日
    =187.1-0,175×有効積算温量40
    としてある程度の予測をすることができる.なおこれらの有効積算温量の添字は温量の積算に用いた日数を示し,成虫現存数最盛予測日は1月0日からの日数として表現している.また,この式は京都府と滋賀県の個体群に関するものであり,気温条件の異なる他所への適用に際しては,発育ゼロ点や有効積算温量に関するゲンジボタル地域個体群間の同異について今後の検討を要する.
  • 浅枝 隆
    1999 年 2 巻 2 号 p. 211
    発行日: 1999/11/19
    公開日: 2009/05/22
    ジャーナル フリー
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