日本顎関節学会雑誌
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17 巻, 2 号
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  • 砂川 敏博, 砂川 元, 神農 悦輝, 新垣 敬一, 花城 国英, 金城 真, 比嘉 努
    2005 年 17 巻 2 号 p. 141-145
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 近年増加傾向にあるといわれている小児の顎関節症患者について, 当科における現況を臨床統計的に調査し検討を加えたので報告する。
    対象は, 平成9年1月から平成14年12月までの6年間に当科を受診した顎関節症患者1, 053例のうち小児 (15歳以下) 97例 (男児20例, 女児77例) である。調査項目は, 15歳以下97例にっいて, 1. 来院数の年度別推移, 2. 男女別の年齢分布, 3. 症型別分布, 4. 治療および治療経過について診療録をもとにretrospectiveに調査した。
    来院数の年度別推移については経時的に若干の増加傾向 (7.5~11.8%) がみられた。男女別の年齢分布について, 最年少生後20日, 最年長15歳でありほとんどの年代で女児が多く (平均男女比1: 4), 14歳をピークに15歳, 13歳の順に多く認められた。症型別分布については, IIIa型が38例と最も多く, 次いでIIIb型26例, II型17例, I型15例, IV型1例の順に多かった。治療内容では, 生活指導や咀嚼指導に開口訓練を加えた理学療法のみの治療が最も多く (76例/78.4%), 次いでそれにスプリント療法を加えた治療が17例 (17.5%), パンピングを行った患者は4例 (4.1%) であった。治療経過については, 97例中74例 (76.3%) に改善がみられた。改善症例の治療期間については1か月以内が多かった。
  • 重田 優子, 小川 匠, 松香 芳三, 安藤 栄里子, 深川 菜穂, 山崎 泰志, 豊田 長隆, 福島 俊士
    2005 年 17 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    近年, 歯痛の原因が歯にない場合があることが明らかになり, 非歯原性歯痛として分類されるようになってきた。非歯原性歯痛には, 上顎洞・鼻腔性, 神経因性, 筋・筋膜性, 神経血管性, 頸性, 心臓性, 心因性などがあり, 歯痛とはいっても, その診断にはさまざまな知識が必要となる。
    本研究の目的は, 口腔顔面領域の疼痛に占める非歯原性歯痛の発症頻度を明らかにすることと, 非歯原性歯痛の症例を呈示することによって, 適切な診断と治療法を選択する一助とすることである。
    対象は2001年6月から9月の3か月間の金曜日に, 口腔顔面領域に疼痛を訴え, 鶴見大学歯学部附属病院初診室に来院した患者50名である。これらの患者に対し, 共通プロトコルを用いて診察を行い, その所見とX線写真所見から初診時の診断 (以下, 一次診断) を行った。また, 各科における精査後の確定診断と一次診断を比較し, 1年間の追跡調査を行った。
    その結果, 以下の知見を得た。
    1. 初診室に来院する患者の約2割が歯痛を含む口腔顔面領域の痛みを訴える患者であった。
    2. 患者の訴える痛みの部位は歯が最も多く, 6割以上を占めていた。
    3. 一次診断と確定診断, 1年後の診断が異なるものが8例 (16%) 存在した。
    4. 1年後の調査の脱落率は8%であった。
    5. 1年後, 診断がつかなかった患者が3名存在し, 非歯原性歯痛の可能性が考えられた。
  • 青村 知幸, 松尾 徹也, 水城 春美
    2005 年 17 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, 復位の有無, 転位程度および転位期間と円板形態との関連性について検討した。
    問診より, 関節雑音および開口障害の発症時期が把握され, MRIにて円板形態の読影が可能であった105関節を対象とした。内訳は, 復位性円板転位が50関節, 非復位性円板転位が55関節であった。
    1.5Tesla超伝導MRI装置を使用し, 顎関節の矢状断を3スライス撮像した。円板の形態は, Westessonの分類に準じてbiconcave, biplanar, reversed, biconvex, enlargement of posterior band (EPB) に分類した。biconcaveを正常とし, 他を変形とした。また, 転位程度は, 転位程度小 (円板後方肥厚部の一部が下顎頭関節面に接する) と, 転位程度大 (円板後方肥厚部のすべてが下顎頭の前方にある) とに分類した。
    非復位性円板転位で100%, 復位性円板転位で56.0%に円板変形がみられた。円板形態が正常であった22関節のうち, 20関節は復位性円板転位で転位程度は小さかった。また転位後60か月以上経過しても, 6関節で円板形態が正常であった。そのすべてが復位性円板転位であり, 6関節中5関節は転位が小さかった。また転位期間と円板変形とに有意な関連性はみられなかった。
    以上より, 円板形態の変形には, 転位期間よりも復位の有無および転位程度が大きく関係する可能性が示唆された。
  • 佐藤 春樹, 栗田 賢一, 小木 信美, 外山 正彦, 清水 幹雄
    2005 年 17 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顎関節強直症に対して顎関節授動術を行い, 自家肋骨肋軟骨移植および側頭筋弁により再建した1例を経験したので報告する。症例は58歳の女性。開口障害を主訴に当科を紹介され受診した。CTで左骨性顎関節強直症を確認しえたため, 2000年5月, 間隙形成による顎関節授動術を行い自家肋骨肋軟骨移植および側頭筋弁により顎関節を再建し, 術直後から開口訓練を開始した。
    術後約5年を経過した現在, 再癒着の徴候はなく良好な機能が得られており, 40mmの開口域と良好な顎位が確保されている。
  • 東海林 理, 中里 龍彦, 藤澤 政紀, 金村 清孝, 河野 雅俊, 郷土 恵久, 田邉 憲昌, 依田 淳一, 石橋 寛二
    2005 年 17 巻 2 号 p. 162-169
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    超高磁場MRIはS/Nが高いため, コントラストが良好で解剖学的な構造の描出能に優れているとされている。この研究の目的は, 3.0T-MRIに独自のコイルユニットを用いた顎関節撮像システムの有用性を検討することである。今回の研究に用いたコイルユニットは2個の受信用サーフェスコイルとコイルホルダーから構成され, 左右顎関節の同時撮像が可能である。
    3名の男性と1名の女性の被験者に対し左右顎関節の矢状断撮像を両側同時に行い, 2通りのファストスピンエコーシーケンスを決定した。一つは, 画質を優先した下顎安静位での撮像に適したシーケンス, もう一つは顎関節の動態を分析する目的で, 下顎安静位, 中間開口位, および最大開口位の3顎位の撮像のために時間を短縮したシーケンスである。
    画質を優先したシーケンスで撮像して得られた画像では関節円板, 下顎頭, 円板後部組織が明瞭に描出された。また同一のシーケンスで1.5T-MRIで得られた画像と比較してもS/Nが良好で明瞭な画像であった。顎関節の動態分析を想定したシーケンスでは, 日常臨床で用いている1.5T-MRIによるものと同等の画像を半分の時間で得ることができた。
    今回の結果より3.0T-MRIに両側表面コイルユニットを併用した撮像システムは顎関節構造の描出と, 関節円板の動態および下顎頭滑走運動の分析において有用であると思われ, 顎関節症患者の診査へ寄与することが期待された。
  • 石亀 勝, 大浦 紀志子, 三浦 廣行
    2005 年 17 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2005/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    矯正歯科治療中にidiopathic condylar resorption (ICR) による下顎骨の後方回転を伴うoverjetの増加やoverbiteの減少をきたした1例を経験したので, その概要を報告する。患者は, 14歳1か月の女子で, 他医院にて矯正治療中にICRを生じたため, 当科紹介受診となった。当科初診時は, オトガイの後方回転を伴った開咬ならびに上顎前突を呈していた。下顎頭への過荷重負担に注意しながら再度矯正治療を行い, 咬合の安定を得た。現在保定開始から1年7か月経過するが, 顎関節の機能障害を認めず経過良好である。今後は, 顎の成長発育と歯列, 咬合の変化について経過観察が必要である。
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