近年, 歯痛の原因が歯にない場合があることが明らかになり, 非歯原性歯痛として分類されるようになってきた。非歯原性歯痛には, 上顎洞・鼻腔性, 神経因性, 筋・筋膜性, 神経血管性, 頸性, 心臓性, 心因性などがあり, 歯痛とはいっても, その診断にはさまざまな知識が必要となる。
本研究の目的は, 口腔顔面領域の疼痛に占める非歯原性歯痛の発症頻度を明らかにすることと, 非歯原性歯痛の症例を呈示することによって, 適切な診断と治療法を選択する一助とすることである。
対象は2001年6月から9月の3か月間の金曜日に, 口腔顔面領域に疼痛を訴え, 鶴見大学歯学部附属病院初診室に来院した患者50名である。これらの患者に対し, 共通プロトコルを用いて診察を行い, その所見とX線写真所見から初診時の診断 (以下, 一次診断) を行った。また, 各科における精査後の確定診断と一次診断を比較し, 1年間の追跡調査を行った。
その結果, 以下の知見を得た。
1. 初診室に来院する患者の約2割が歯痛を含む口腔顔面領域の痛みを訴える患者であった。
2. 患者の訴える痛みの部位は歯が最も多く, 6割以上を占めていた。
3. 一次診断と確定診断, 1年後の診断が異なるものが8例 (16%) 存在した。
4. 1年後の調査の脱落率は8%であった。
5. 1年後, 診断がつかなかった患者が3名存在し, 非歯原性歯痛の可能性が考えられた。
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