日本顎関節学会雑誌
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13 巻, 3 号
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  • 長谷川 泰陽, 前田 照太, 村松 豪太, 吉村 計宣, 井上 宏
    2001 年 13 巻 3 号 p. 319-324
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顎関節症の治療法としてスプリント治療による保存療法の効果はよく知られている。しかし, その作用機序は明らかではない。そこでわれわれはスタビライゼーションスプリントの顎位修正効果について着目し, スプリントを経時的に装着させ, 装着前後においてのタッピング運動の下顎閉口終末位であるタッピングポイントの変動を観察した。
    被験者は, 本学学生を対象に, 理想的正常咬合者6名, 咬合不正で不顕性顎関節症を有する者6名とした。実験による被験運動は, 30秒間のタッピング運動とした。頭部の固定は行わず, 直立座位において通法により顎機能総合解析システムを用いて下顎切歯近心偶角部の動きを観察した。
    用いたスプリントは上顎スタビライゼーションタイプとした。実験条件を, スプリント未装着, 装着直後, 3時間経過後継続装着, 3時間経過後スプリント撤去直後の4条件とした。計測結果の3次元座標を波形分析ソフトAcqKnowledge (R) によりタッピングポイントを導出し, その『ばらつき』について比較検討した。その結果, 水平面における前後方向と左右方向の『ばらつき』比較では, 前後方向に大きな『ばらつき』を示した。また前後方向におけるスプリント装着前後の天然歯でのタッピングポイントを比較すると, 撤去後に咬合不正群は『ばらつき』が有意に減少した。
    以上よりスプリントを装着により, 咬合不正者におけるタッピングポイントの『ばらつき』を減少させる傾向が示唆された。
  • 井上 吉登, 楊 静, 檜山 雄彦, 熊坂 純雄, 進士 久明, 内村 登
    2001 年 13 巻 3 号 p. 325-333
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    小児に対して比較的簡便に適応できる顎機能検査装置 (ナソヘキサグラフ(R)) が, 近年臨床家の間で普及してきている。この装置の有効性を確認するために, 任意点の入力方法, 3次元座標系での測定誤差, 小児患者への臨床応用の適否を検討した。任意点の入力の際, ペンポインターをCCDカメラの正面に向けなければ座標の誤認をする恐れがあった。測定精度は, 3次元座標系で, それぞれ機器誤差が1%以下であった。また, 小児患者に臨床応用した結果, 十分に応用可能であることが示唆された。
  • 鏡視下剥離授動術前後の比較検討
    大貫 敬嘉, 福田 雅幸, 関 宏, 三好 康太郎, 飯野 光喜, 船木 勝介, 高橋 哲
    2001 年 13 巻 3 号 p. 334-339
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究は, 保存療法無効症例に対し鏡視下剥離授動術を施行し, その治療前後の円板後部組織の信号の変化をT1強調画像 (1.5Tesla) で評価した。
    対象は, 保存療法が無効のため鏡視下剥離授動術を行った43例43関節である。これらの患者を奏効群 (32症例32関節) と非奏効群 (11症例11関節) に分け, 治療前後での円板後部組織の低信号化を比較検討した。
    奏効群は, 治療後, 有意に円板後部組織の低信号化を示していた。一方, 非奏効群は, 治療後, 円板後部組織の低信号化を示さなかった。治療後の円板後部組織の低信号の出現頻度は, 奏効群 (81.3%) が非奏効群 (45.5%) より有意に高い値を示していた。
    以上より, 鏡視下剥離授動術後の奏効と円板後部組織の低信号化とは相関がみられた。
  • 若年顎関節症患者と無症状ボランティアにおける検討
    冨永 和宏, 木尾 哲朗, 岸本 一雄, 助台 美帆, 古田 功彦, 森本 泰宏, 田中 達朗, 福田 仁一
    2001 年 13 巻 3 号 p. 340-346
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    急峻な関節隆起形態をもつ顎関節に円板転位が多いという報告がある一方, 円板転位と隆起形態の関連を明らかにできなかった報告もある。また, 円板転位の結果として関節隆起が平坦化するという報告もある。このような議論を解決するために, 円板転位があったとしても, その経過が長くはないであろうと推定した10歳台の顎関節MRIを分析した。本研究の目的は, 急峻な関節隆起が円板転位の予測因子となるという仮説を評価することにある。対象は顎関節症患者29名からの51関節と, 無症状ボランティア19名からの38関節の矢状断MRIである。各関節の外側, 中央, 内側の3か所を評価した。円板や下顎頭の変形が認められた関節は除外した。関節隆起の形態はKuritaらの分類に従い, box (急峻な関節隆起後斜面をもつもの), sigmoid (S字状のスロープをもつもの), flat (浅い関節隆起をもつもの) の3型に分類した。関節隆起の形態と円板転位の有無との関連は1×m分割表におけるχ2検定を用いた。顎関節の中央から内側において円板転位をもつ関節にboxタイプが有意に多かった (p<0.05)。このことから顎関節の関節隆起形態が円板転位の重要な因子になると考えられた。さらに, 急峻な関節隆起形態は円板転位の予測因子に成り得ると結論付けた。
  • 大塚 明子, 栗田 浩, 酒井 洋徳, 上原 忍, 小塚 一芳, 倉科 憲治
    2001 年 13 巻 3 号 p. 347-350
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 生下時から顎関節雑音を認めた3症例を経験したので報告する。
    症例1: 生後5日, 女児。出生後より哺乳時に顎関節雑音があることに母親が気づき当科初診。哺乳時両側顎関節にクリッキングを認めたが哺乳障害は認めず。経過観察を行い, 約40日後の再診時にはクリッキングは消失していた。症例2: 生後23日, 男児。生後3日目, 授乳開始した際右側顎関節の雑音に気づく。当初母乳の哺乳困難であったため当科初診。開閉口時右側顎関節にクリッキングを認めたが哺乳困難はなく, 他の異常も認めないため経過観察とした。症例3: 生後3か月, 女児。出生直後より下顎を前方へ動かした際の顎関節雑音に母親が気づき, 症状続くため当科初診。症状はクリッキングのみであったため観察とした。
    乳児における顎関節雑音は, ほとんどの場合疼痛などを伴わず経過観察のみ行われていたが, 原因, 病態, 経過等不明な点が多く今後も長期にわたり経過観察が必要であると思われた。
  • 鈴木 英弘, 高木 律男, 小林 龍彰, 福田 純一, 山田 一尋, 花出 晃治
    2001 年 13 巻 3 号 p. 351-355
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 小児顎関節強直症患者に対し早期に顎関節授動術を施行し, 長期経過観察を行ったので報告する。患者は5歳3か月の女児で, 母親が開口障害と顔貌の変形を気にして 当科初診。現病歴は1歳半時にオトガイ部を強打し, 1年後より母親が開口障害に気づく。初診時開口量は5mmで, 開口路は3mm左側に偏位し, 最大開口時疼痛を訴えた。CTにて左側顎関節に34×38mmの不整形の塊状不透過像を認めた。5歳8か月時, 下顎枝高位切除術を施行。術後変化より以下の結果を得た。1. オトガイ部の患側偏位は術後1年間で著明であった。2. 積極的な開口練習により開閉口機能が改善した術後1年以降では, 下顎骨の発育の左右差は少なく, オトガイ部の偏位は進行しなかった。3. 下顎頭と側頭骨は一体化し, 完全な骨性癒着を示した。4. 反対側の顎関節には異常所見を認めなかった。
  • 重田 浩樹, 岡田 裕, 小椋 正
    2001 年 13 巻 3 号 p. 356-363
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    解剖学的形態の変化が顎関節部負荷に及ぼす影響を調べるために, 顎関節部を含む下顎骨の3次元有限要素簡易モデルを構築した。今回は, その簡易モデルの妥当性を検討することを目的とした。
    方法: 標準的な乾燥頭蓋骨を基準として, 顎関節部を含む下顎骨の3次元有限要素簡易モデルの構築を行った。このモデルは, 下顎枝を簡略化し, 下顎頭と下顎体は剛体要素で結合させた。また, 関節円板と下顎頭や関節結節との間の接触面が滑ったり離れたりするように接触要素を付与した。咬合状態の変化による噛みしめ時の下顎頭の変位量や変位方向を求めた。
    結果: 1. 両側が同時に咬合すると想定した場合, 左右下顎頭とも, 前上方に変位した。
    2. 左側のみが咬合すると想定した場合, 右側下顎頭は前上内方に変位し, 左側下顎頭は第2大臼歯部以外の咬合では前上外方に変位した。第2大臼歯が咬合した場合, 左側下顎頭は後下外方に変位した。
    考察: 以上の結果は, 過去の報告とほぼ同様な傾向が示された。よって, 本研究で使用した簡易モデルの妥当性が示された。
  • 酒徳 明彦, 岸本 雅吉, 伊藤 正明, 岡藤 範正, 栗原 三郎
    2001 年 13 巻 3 号 p. 364-368
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    われわれは, 交通事故により両側下顎突起部と下顎骨体正中部を骨折し整復固定された24歳の女性患者に歯科矯正治療を行い, 同時にコンピュータ・アキシオグラフ (CADIAX(R)) による顎機能評価を行った。
    当科初診時, 患者は形成外科における手術後の固定プレートの変形と下顎枝の短縮により, 前歯部開咬となっていた。約20か月の動的矯正治療により, 歯の再拝列, 前歯部歯軸の改善, 前歯部被蓋および咬合の回復が行われた。しかし, 顎機能分析にて顎運動の改善を確認するのに, 動的矯正治療後2年以上を要した。
  • 栗田 浩, 大塚 明子, 上原 忍, 酒井 洋徳, 倉科 憲治
    2001 年 13 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顎関節内障の進行により下顎頭の変形性骨変化 (OA変化) が増加する。下顎頭のOA変化は主に矢状断面像において観察されてきた。しかしわれわれは, 下顎頭の前後撮影像に注目し, 下顎頭外側極上方隅角部の吸収性変化が関節円板前方転位例で有意に多く出現することを報告した。本報告の目的はこの外側極の吸収と矢状断面像で観察される下顎頭のOA変化との関連について検討することである。
    138例217関節で検討を行った。下顎頭外側極の吸収の有無は, 眼窩下顎頭方向単純X線写真上で判定した。また, MRI矢状断面像 (関節中央部) において下顎頭皮質骨のOA変化の有無および関節円板転位を判定した。
    外側極の吸収と矢状断面のOA変化の合併率は28%であった。復位性円板前方転位をもつ関節では, 外側極の吸収および矢状断面OA変化はおのおの単独でみられる傾向があり, 非復位性転位をもつ関節では両変化を併発する関節が多くなる傾向がみられた。
    今回の検討の結果, 下顎頭外側極の吸収性変化と下顎頭矢状断面像で観察されるOA変化は両者ともに顎関節内障の進行とともに高頻度で出現するものの, おのおのの骨変化はそれぞれ別に異なった機序で発現する可能性が示唆された。
  • 矢野 圭介
    2001 年 13 巻 3 号 p. 374-382
    発行日: 2001/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ウサギにおける内外側顎関節円板付着部の微細構造および力学的特性の関連性について比較検討を行った。円板付着部の線維構築は光学顕微鏡および走査電子顕微鏡によって観察し, 力学的特性は引張試験機にて計測した。その結果, 円板付着線維膜におけるコラーゲン線維は内側では前後方向に, 外側では内側方向に走行しており, 弾性線維においてはその傾向が一層顕著であった。またコラーゲン線維の線維構築は波状, canvas jacket様, 捻転状などさまざまな形態を示し, いずれも伸展性と強度を示唆する形態を呈していた。力学的特性については, 内外側にはほとんど相違は認められなかったが, 破断ひずみのみが外側で有意に高い値を示した (P<0.05)。
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