顎関節症患者の訴える痛みには, 器質的要因によるもの, 心因性のもの, 神経性のものなどが含まれており, これらの痛みを評価するには, 一元的な評価のみでは不十分であり, 多元的な評価が必要である。
今回, 我々は多元的な評価法と一元的な評価法を比較することを計画した。すなわち, JMPQを用いて, 顎関節内障患者における痛みを評価し, VASとの関係について検討を加えた。また, 顎関節症の痛みの質・強さについて部位差を調べるべく, JMPQ・VASと圧痛部位の関係についても検討を加えた。
顎関節症III型の患者80名に対し, JMPQ, VASおよび圧痛部位を調査し, 以下の知見を得た。
1. JMPQにおいて, 単独のカテゴリー表現を用いた患者は41%, 複数のカテゴリー表現を用いた患者は53%であった。
2. JMPQにおいて, 感覚的表現を選択した患者はしない患者に対して, VAS値が有意に高くなる傾向が認められた。
3. 咀嚼時のVAS値は, 顎関節部の圧痛がある群ではない群と比較し有意に高かった。
4. 睡眠への影響のVAS値は, どのような質の疼痛であっても表現困難であることが示唆された。
5. 顎関節部の圧痛を訴える患者では, 平常時疼痛のVAS値が小さく, 筋の圧痛を訴える患者では生活への影響のVAS値が高かった。
6. 疼痛にはVASにより評価できるものとできないものがあることが示唆された。
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