日本顎関節学会雑誌
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16 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 原田 洋, 長谷川 信乃, 田村 康夫
    2004 年 16 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    乳歯脱落による歯列交換と顎関節症状との関連について検討することを目的として, 小学生を対象に顎機能診査を行い, また経年的な顎関節症状の継続, 消退および出現の観察を目的として同一被検者を対象に中学生, 高校生に対し3年間にわたり顎機能診査を行った。
    診査は小学生に対しては, 初年度に顎関節症状が認められた小学生105名に対し翌年再診査を行い, 顎関節症状の継続, 消退について調査を行った。中学生および高校生に対しては, 3年間にわたり, 中学生277名, 高校生276名を対象とした。その結果,
    1. 初年度の顎関節症状が2年目に継続した児童は41.0%, 消退した児童は59.0%であった。
    2. 第二乳臼歯脱落後に同顎同側第二大臼歯萌出が認められた児童に顎関節症状の消退が多かった。
    3. 顎関節症状の継続率は中学生に比べ高校生, 特に女子において高かった。
    以上のことから, 顎関節症状を有する若年者に対しては, 歯列・咬合の変化を含めた定期的な診査が必要であることが示唆された。
  • 坂本 一郎, 依田 哲也, 成田 紀之, 今井 英樹, 石川 基, 津島 文彦, 櫻井 仁亨, 塚原 宏泰, 宮村 壽一, 依田 泰, 小村 ...
    2004 年 16 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 片側性咀嚼筋の重度形成不全を伴った顔面非対称の1例を経験したので報告する。患者は, 45歳男性で, 食事時の右側臼歯部と咬筋部の鈍痛を主訴に, 2002年12月に当科を受診した。患者は, 幼少時より右側咬筋部が左側に比べて張り出していることを自覚していた。両側外耳形態と聴力に異常は認めなかった。最大開口域は58mmで, 開口時に下顎の偏位を認めなかった。X線検査では, 明らかな歯科的異常は認められず, 左側の下顎枝・下顎角・下顎頭は右側に比べて矮小であった。MRIでは左側の咬筋・側頭筋・内側翼突筋の重度な形成不全を認め, 左側の外側翼突筋も矮小であった。臨床所見から, 本症例は第一・第二鯉弓症候群の亜型の一つである可能性が考えられた。
  • 小林 晋, 佐藤 淳, 金山 景錫, 瀬上 夏樹
    2004 年 16 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    患者は15歳と27歳の男性で顎運動時の両側咬筋部疼痛および開口障害を主訴に来院した。顔面は両側の下顎角の張り出しおよび咬筋肥大を認めた。開口域は31mm (症例1), 22mm (症例2) であった。画像所見では両側筋突起・下顎角の過形成を認めたが, 顎関節部には明らかな異常所見は認められなかった。開口障害を伴う両側咬筋肥大症および筋突起・下顎角過形成症の臨床診断のもと, 口内法による外科療法を行った。麻酔導入後の筋弛緩状態および筋突起切離後も開口域は2mm程度しか増加しなかった。咬筋部分切除および内側翼突筋剥離・下顎角形成後に開口域は著明に増加した。開口障害の主原因は閉口筋の拘縮および伸展障害による可能性が考えられた。
  • 久保田 耕世, 佐藤 寿, 榊 宏剛, 小山 俊朗, 木村 博人, 小松 賢一
    2004 年 16 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    下顎頭過形成は, 外傷や遺伝およびホルモン異常などが原因で生じると考えられているが, いまだその病因は不明である。今回, われわれは, 片側下顎頭過形成により咬合の偏位をきたした1例を経験したのでその概要を報告する。患者は60歳女性。2000年9月に近医歯科で上下顎義歯を作成した後, 徐々に咬合の偏位を自覚したが, 両側顎関節部に疼痛や開口障害などの症状は認めなかった。しかし, X線検査で左側下顎頭の変形が疑われたため, 2001年7月, 咬合偏位を主訴に当科紹介受診となった。初診時顔貌はオトガイ部の右側偏位により非対称を呈した。両側顎関節には雑音を認めるも, 疼痛や開口障害は認めなかった。CT, MRI画像検査で左側下顎頭の変形, 肥大を認め, 分葉状を呈していた。左側下顎頭良性腫瘍を疑い, 全身麻酔下に左側下顎頭腫瘍摘出術を施行した。摘出物の病理組織学的所見は骨髄の脂肪化と海綿骨の肥厚を認めたのみで, 下顎頭過形成の確定診断を得た。術後, 顔貌の非対称は改善し, 現在2年経過するが, 顎関節の機能障害や局所の再発を認めず経過良好である。
  • 梶井 貴史, 加藤 由紀, 平林 義章, 藤森 修, 佐藤 嘉晃, 飯田 順一郎
    2004 年 16 巻 3 号 p. 205-212
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    常染色体劣牲遺伝の形をとる短肢症 (brachymorphism, bm) は, 軟骨のグリコサミノグリカンの低硫酸化に起因することが知られている。BALB/c-bm/bmマウスには前歯部左右的交叉咬合を自然発症するものがある。われわれはこのマウスの顎関節を調査した。
    BALB/cマウス (対照群), 不正咬合を発症しないBALB/c-bm/bmマウス (短肢-正常咬合群) の8週齢の前頭断切片を作成し, ヘマトキシリン-エオジン染色, アルシアンブルー臨界電解質濃度法染色, およびウシ睾丸ピアルロニダーゼ消化後に増感高鉄ジアミン染色を施し, 下顎頭頭頂部を観察した。また, 不正咬合を発症するBALB/c-bm/bmマウス (短肢-不正咬合群) を加えた3群の3週齢と13週齢より下顎頭軟骨を採取し, 硫酸化グリコサミノグリカン (以下, S-GAG) をdimethylmethylene blue法にて定量した。
    短肢-正常咬合群では対照群に比べ, 肥大軟骨細胞層が不明瞭であり, コンドロイチン硫酸とケラタン硫酸の染色性は弱かった。3群ともに, 13週齢のほうが低いS-GAG濃度を示した。3週齢では対照群に比べて短肢-正常咬合群のほうが低いS-GAG濃度を示し, 13週齢ではこの2群に比べてさらに短肢-不正咬合群のほうが有意に低いS-GAG濃度を示した。短肢-不正咬合群での偏位側と非偏位側には大きな差は認められなかった。
  • 田村 佳則, 内田 愼爾, 四井 資隆, 吉峰 茂樹, 西崎 宏, 前田 照太, 井上 宏
    2004 年 16 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    目的: 外側翼突筋 (以下LPt) の形態は, 屍体解剖による肉眼観察によって明らかにされている。医用画像を用いた観察では, CTを用いた報告も散見されるが, MRIを用いた報告は少ない。本研究ではMRIにて, LPtを非侵襲的に観察することを目的とした。
    方法: 顎関節部に自覚的症状をもたない成人21名を被験者とし, MRI装置Signa Horizon LX(R) (1.5T, GE, USA) を用いて, Fast Gradient Echo法でLPt部の3次元データ収集を行った (slice厚, slice間隔ともに1.0mm, TR=9.6ms, TE=4.0ms)。Exavision lite(R) (Zio, Tokyo) を用いて多層再構成像で下記の3項目を観察, 計測した。1) 両側LPtの体積2) LPt下頭の走行角度3) LPtの形態的観察
    結果と考察: 1) LPtの体積について, 右側が有意に大きな値を示した。2) LPtの走行角度について, Axial sliceにて両側LPt下頭は, ほぼ直交していた。3) 形態について, 2頭筋と3頭筋があり, 約80%が2頭筋であった。以上の結果から, MRIによるLPtの形態観察は, 有効な方法であることが示唆された。
  • 村岡 渡, 河奈 裕正, 朝波 惣一郎, 中嶋 顕, 大塚 友乃, 和嶋 浩一, 中川 種昭
    2004 年 16 巻 3 号 p. 220-223
    発行日: 2004/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    両側慢性耳下腺炎に起因したと思われる両側骨性顎関節強直症の1例を経験したので報告する。症例は52歳, 男性。開口障害を主訴に耳鼻咽喉科より紹介され受診した。20年前より, 両側慢性耳下腺炎にて耳鼻咽喉科で治療を受けていた。最大開口域は4mmであった。両側骨性顎関節強直症の診断の下, 両側下顎頭形成術を施行した。術後, 自力最大開口域23mmに増加し, 経口摂取良好で患者の満足が得られている。ただし, 耳下腺炎の増悪時に開口域が減少するため開口訓練と慎重な経過観察を行っている。
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