顎関節において比較的高頻度に発症する病態に顎関節内障と変形性顎関節症がある。両疾患とも滑液中からinterleukin(IL)-1
βとtumor necrosis factor(TNF)-
αが検出される。本報告では,顎関節内障患者滑膜由来の培養ヒト顎関節滑膜細胞(滑膜細胞)にIL-1
βまたはTNF-
α単独刺激に加え,IL-1
β+TNF-
α共刺激を行い,IL-6 cytokine familyおよびそのreceptorの遺伝子発現を測定し,各刺激間で比較検討した。無刺激滑膜細胞と比較し,滑膜細胞は各刺激によりIL-6,leukemia inhibitory factor(LIF)遺伝子発現上昇およびタンパク質産生量の増加が認められた。その上昇率および増加量はIL-1
β+TNF-
α共刺激時で最も高かった。また,滑膜細胞ではgp130,LIF receptor, oncostatin M receptor,IL-11 receptor遺伝子が恒常的に発現していた。IL-6およびLIFは関節の炎症および組織破壊に関与するとされており,顎関節滑液中にIL-1
β,TNF-
αが共存する場合,滑膜細胞はIL-6やLIFの産生がさらに上昇することが示唆された。
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