顎関節症において病的骨変化はみられなくても, 左右下顎頭形態が非対称であることは少なくない。
その原因としては, 関節円板病態の影響, 顎関節動態の影響あるいは下顎頭と下顎窩との不調和などが考えられる。
そこで, 今回は関節円板の動態変化, 特に各関節円板位置での病的骨変化のない顎関節症患者の下顎頭形態のCT所見について検討した。
対象は, 全例女性とし, 下顎頭に骨変化のみられない顎関節症患者77名154顎関節をCT像により測定分析した。顎関節造影断層像より関節円板位置によって, 正常位置群 (NP群), 復位を伴う関節円板前方転位群 (W群) および復位を伴わない関節円板前方転位群 (WO群) の3群に分類し, 各群の下顎頭形態について分析した。
その結果, WO群のように関節円板位置の変化が大きくなると, 下顎頭最大横断面積や下顎頭長径および短径は小さくなる傾向にあった。また, 下顎頭長軸角は大きくなった。しかし, 長径/短径比には変化が認められなかった。
また, W群と異なり, WO群では発症からの経過が長くても, 下顎頭最大横断面積や, 下顎頭長軸角の変化は認められなかった。
したがって, 下顎頭形態の変化は, 顎関節症によっても引き起こされるが, どこまでも進行するわけではない。また, 下顎頭形態の特異性によって, 逆に関節円板の位置異常がおこる可能性も考えられた。
抄録全体を表示