日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2015年年会
選択された号の論文の208件中101~150を表示しています
R2:結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物
R3:高圧科学・地球深部
  • 永井 隆哉, 高川 智成, 井上 徹, 新名 亨
    セッションID: R3-01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    CaSiO3ペロブスカイトは化学的に不活性で、固溶体を形成する成分はあまり知られていない。鉱物名ペロブスカイトCaTiO3とNaLaTi2O6が、2Ca2+⇔Na++La3+のカップル型置換で完全固溶体を形成することを参考に、CaSiO3ぺロブスカイへのNa+とLa3+の固溶を実験的に検討した。回収試料の粉末X線回折実験とSEM-EDSを使った定量分析の結果、20 GPa, 1300 °Cからの回収試料では、CaSiO3成分へのNaLaSi2O6成分の固溶限界が約2.7 mol%であることを示し、20 GPa, 1600 °Cでは約4.4 mol%であることを示す。
  • 赤荻 正樹, 阿部 航平, 遊佐 斉, 石井 貴之, 糀谷 浩
    セッションID: R3-02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    FeTiO3の高圧相転移を35GPa、1600℃までマルチアンビル装置で調べた。 その結果、FeTiO3ペロブスカイトは約28GPaで、1200℃以下ではカルシウムタイタネイト型Fe2TiO4とO1型TiO2に分解し、1200℃以上ではカルシウムタイタネイト型 Fe2TiO4とFeTi2O5 相に分解することが明らかになった。これらの結果は、従来のレーザー加熱ダイヤモンドアンビルによる相関係の報告と異なる。その相違の原因について議論すると共に、チタン酸塩ペロブスカイトの高圧相がポストペロブスカイト型ではなく、分解相であることを議論する。
  • 柿澤 翔, 井上 徹, 栗林 貴弘, 圦本 尚義
    セッションID: R3-03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    本研究はAlに富む含水ブリッジマナイトの含水量の圧力依存性の決定を目的にしている。実験条件は25-32 GPa, 1600℃で行った。含水量はSIMSでの定量及びAl置換にMg2+ + Si4+ ⇄ 2Al3+, Si4+ ⇄ Al3+ + H+を仮定した時の化学組成と格子定数から推定した。SIMSによる含水量の圧力依存性は圧力が増加するに従って含水量も増加する結果になった。この結果はHを除いた化学組成や格子定数からの含水量推定結果からも支持されている。本研究結果は少なくとも下部マントル上部は含水化する可能性があり、それ以深でもより水を含みうることを示している。
  • 小野 重明
    セッションID: R3-04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    高温高圧実験と第一原理計算の2つの手法を用いて、鉄の高圧相に関するスピン状態を見積もった。その結果、スピン転移が起こることが確認された。スピン転移圧力は、大きな温度依存性を持つことも確認された。
  • 土屋 卓久, 河合 研志, 桑山 靖弘, 大角 正直
    セッションID: R3-05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    We performed ab initio molecular dynamics simulations of hexagonal-closed-pack iron to investigate its thermoelasticity in Earth's inner core P,T condition. Calculated elastic wave velocities are compared to seismological values. Based on the obtained results, we will discuss the inner core mineralogy.
  • 大谷 栄治, 渡邉 虹水, 坂入 崇紀, 鎌田 誠司, 坂巻 竜也, 平尾 直久, 大石 泰生
    セッションID: R3-06
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    The melting experiments indicate that the inner core of the Earth crystallized from the center of the molten core and have Si rich inner core with Si depleted and S enriched outer core. In smaller terrestrial planets, the core crystallized at the top of the liquid core during crystallization of the core. The solid inner core is depleted in both Si and S compared to liquid outer core.
  • 糀谷 浩, 小島 芽子, 赤荻 正樹
    セッションID: R3-07
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    TiO2ルチルの高圧多形であるα-PbO2型TiO2は、隕石衝突による衝撃圧縮を受けた岩石や超高圧変成岩中に発見されており、衝撃の温度圧力や変成岩の温度圧力履歴を議論する際にルチル-α-PbO2相境界が用いられている。熱力学的にルチル-α-PbO2相平衡境界線を計算するためには、それら2相の定圧熱容量やエントロピーの情報が必要となる。これまでに報告されているα-PbO2型TiO2の定圧熱容量は、十分に制約されていなかった。そこで、本研究では示差走査熱量測定(DSC)および熱緩和法を利用した物理特性測定システム(PPMS)による熱量測定を2-630 Kの範囲で行い、定圧熱容量とエントロピーを決定した。測定された低温定圧熱容量から、298.15 Kにおける標準エントロピーは46.6±0.3 J/mol.Kと求められた。
  • 入舩 徹男, 川上 航司, 有本 岳史, 古田 大祐, 大藤 弘明, 國本 健広, 新名 亨
    セッションID: R3-08
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    マルチアンビル装置を用いた高温高圧合成法により、グロシュラー及びパイロープガーネットのナノ多結晶体の合成をおこなった。ドライ条件下でのガラスを出発物質として用い、圧力15GPa・温度1300~1400℃付近の条件下で粒形100nm程度以下のナノ多結晶の焼結体が得られた。得られた焼結体は極めて透光性が高く、弾性波測定等の物性測定試料としても最適である。
  • 米田 明
    セッションID: R3-09
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    共振法は試料の固有振動数を測定し弾性定数を決定する方法である。一個の試料で全結晶弾性を測定できる点で超音波法にないメリットがある。従来は測定周波数領域が5 MHz程度であったため、2mm程度の試料サイズが必要であった。2009年頃より測定周波数の向上に取り組み、50 MHzまで動作可能なトランスデューサを開発した。その結果、200mm程度の鉱物結晶試料での弾性測定が可能になった。2011年には本技術で特許を取得した。これまでに、“高周波共振法”というネーミングで、高圧相単結晶であるステショバイトや捕獲岩中のインクール―ジョン結晶(クロムスピネル)等の測定を行った。ステショバイト単結晶は岡山大学地球研で高圧合成したものである。今後は、含水フォルステライトの結晶弾性の測定を予定している。本講演では、高周波共振法の概要を解説し、今後の鉱物科学分野での共同研究開始のきっかけとしたい。
  • 住田 達哉
    セッションID: R3-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    NaClのB1相は、代表的な圧力標準物質の一つであり、状態方程式の構築に資する様々な実験が行われてきたが、5 GPaまでの断熱線を求める実験(Boehler, 1981)については、準調和近似の状態方程式では、高温データを説明できなかった。真性非調和は、準調和近似よりも高温下でのγを小さくする方向に影響するので、実験値の再現性が向上する可能性があったため、真性非調和モデルによる計算を行った。今回の真性非調和モデルによる実験値の再現は、準調和近似よりも若干良好であったものの劇的な改善は見いだされなかった。この結果は、真性非調和の影響が、わずかの体積減少で急速に消滅することと関係している。
  • 浦川 啓, 井上 徹, 服部 高典, 佐野 亜沙美, 亀卦川 卓美, 舟越 賢一, 三部 賢治, 小原 真司
    セッションID: R3-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    含水SiO2ガラスの中性子回折実験とX線回折実験を約10GPaまでの圧力において室温で行った。構造因子と動径分布関数から,含水石英ガラスの中距離構造が圧力と供に縮小する様子が示された。一方,SiO4四面体は10GPaまでの圧力では変化しなかった。中性子回折からはD-O距離の圧力による変化は検出されなかった。
  • 鎌田 誠司, 平尾 直久, 鈴木 那奈美, 前田 郁也, 濵田 麻希, 大谷 栄治, 大石 泰生, 増田 亮, 三井 隆也
    セッションID: R3-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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  • 新名 良介, Bykova Elena, Ovsyannikov Sergey, McCammon Catherine, Kupenko I ...
    セッションID: R3-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    鉄酸化物は物質科学、地球科学、あるいは工業において根源的に重要な化合物である。今回我々は新しい鉄酸化物、Fe7O9 (Fe3+/Fe2+ = 4/3)とそのFe2+-Mg固溶体、(Mg,Fe2+)3Fe3+4O9を報告する。この相はマルチアンビル装置を用いて、24-26 GPaにおいて合成された。単結晶X線回折測定の結果、どちらの相も単斜晶系の空間群C2/mに属すことが分かった。これは既知の鉄酸化物いずれの構造とも異なるものである。メスバウアー分光法の結果は単結晶X線回折測定の結果と調和的であった。この新しい相の発見は、高圧下において鉄酸化物が従来考えられていたよりも多様な混合原子価状態を取りうることを示唆している。かつて提案されたFe2+1+nFe3+2O4+nグループから類推すると、Fe2+3±nFe3+4O9±nグループもまた、ある温度圧力酸素雰囲気下において安定であるかもしれない。
  • 久保 友明, 岩里 拓弥, 肥後 祐司, 中田 大城, 阿辺山 健大, 今村 公裕, 加藤 工, 金嶋 聰, 上原 誠一郎, 丹下 慶範
    セッションID: R3-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    地球内部に沈み込む深部スラブはプレートテクトニクス型マントル対流運動の主要な駆動力であるが、その力学的性質は未だ不可解な点が多い。特に、海溝での沈み込みや上下マントル境界付近での折れ曲がりを可能にする変形機構や、(稍)深発地震の発生に見られるような高圧下での断層運動(剪断不安定化)のメカニズムはよくわかっていない。そこには海洋との加水反応で加わった水やその深部での脱水反応、また高圧相転移などが関わっていると考えられる。我々は深部スラブで起こるこれらの反応と変形挙動の相互作用を明らかにするために、高温高圧変形場において、反応速度とクリープデータ、Acoustic emission(AE)活動を同時にモニタする実験技術の開発を行ってきた。また深発月震の原因とされるような高圧高温下での部分溶融にともなうAE発生の測定も試みている。本発表ではその実験手法と結果の一部を報告する。
  • 三浦 保範
    セッションID: R3-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    大陸地殻以外の海洋性石灰岩の衝突変化は、試料の入手困難性と脆弱な鉱物混合体の特徴から、十分な解明研究が進んでいなく、本研究でその解決の指標を示す。古生代からの古期石灰岩(欧米・日本)は、地球外物質の海洋衝突時に破壊粉砕後堆積と岩塊の地下に埋没隔離され、更に大陸成長移動に付随して運ばれ現地衝突性が欠除している。米国の古期石灰岩調査を4か所で行い報告している。秋吉台石灰岩の地下試料(帰り水、地下250m)の粉末方解石で物性変化とXRF組成分析を粉末バルクで残存を確認している。高分解能分析走査顕微鏡FE-ASEMとラマン測定により、地下試料に海水性岩塩ナノ微粒子と、再結晶方解石に岩脈状に鉄に包囲された急冷炭素の微粒子が多数観察でき、XRDとラマン測定から高圧系炭素が確認されている。日本の例(秋吉)では、その場破砕組織では地下243m付近の岩脈状にミクロ炭素と鉄組織が急冷ナノ組織確認できる。
  • 加藤 正人, 興野 純
    セッションID: R3-P01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    Nominally anhydrous minerals (NAMS)は地殻やマントル内における水のリザーバーとして重要である.ハイドロガーネット,katoite Ca3Al2(O4H4)3は代表的なNAMSとして知られる.下部地殻・上部マントルにおけるNAMSの挙動を知るため,katoiteの構造相転移を単結晶X線回折法と高圧ラマン分光法を用いて検証した. ラマン分光法において,常圧で332と537 cm-1に格子振動によるバンドが観察された.両バンドの半値幅は加圧に伴い増加し,6 GPa付近で増加率が変化した.増加率の変化は振動モードの分裂を示し,つまり晶系変化を示している.したがって,katoiteの結晶構造は圧力増加に伴い,6 GPa付近で立方晶系の空間群Ia-3d (点群Oh)からメジャーライト構造である正方晶系のI41/acd (点群D4h)に構造相転移する可能性が示された.
  • 吉田 侑起, 奥野 正幸, 奥寺 浩樹, 濵田 麻希, 水上 知行, 荒井 章司, 阿藤 敏行
    セッションID: R3-P02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    シリカゲルに対して, 室温に加えて低温での衝撃圧縮実験を実施し, その構造変化を調べた. 実施された衝撃圧力は約20 GPaであり, 出発温度は低温(100K)と室温(293K)であった. 回収されたサンプルはそれぞれXRD, IR, ラマン分析によって分析された. その結果, 約20 GPaの衝撃圧力下において, 出発温度を室温にすると, シリカゲルの構造はシリカガラスに類似した構造へ変化し, 一部脱水が起こることが確認された. 一方, 低温圧縮では, 上記のような構造変化および脱水減少は確認されなかった. これらの結果は, 対照的であり, 20 GPaの衝撃圧力におけるシリカゲルの挙動は衝撃圧力だけでなく出発温度も影響していることが明らかとなった. 
  • 鈴木 昭夫
    セッションID: R3-P03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
    会議録・要旨集 フリー
    P-V-T equation of state for epsilon-FeOOH was determined from in situ X-ray diffraction experiment at pressures to 11 GPa and temperatures to 700 K. A fit to the second-order Birch-Murnaghan equation of state yielded isothermal bulk modulus K0, 300K = 143(8) GPa, the volumetric thermal expansion coefficient 2×10-5 K-1, and the temperature dependence of bulk modulus (dK/dT)P = -0.02 GPa/K.
  • 興野 純, Ahart Muhtar , 山中 高光, Mysen Bjorn, Mao Ho-kwang, Hemley Russell
    セッションID: R3-P04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    We report Raman spectroscopic studies of magnetite in a diamond-anvil cell under hydrostatic conditions up to 40 GPa at room temperature. With increasing pressure, the frequencies of the three modes A1g, F2g and Eg increase continuously up to about 24 GPa The results of the Raman spectroscopic study about phase transformation are in good agreement with that of the X-ray diffraction study.
  • 渡邉 真央, 小松 一生, 鍵 裕之
    セッションID: R3-P05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    最近の研究で、氷の高圧相である氷Ⅶ相の結晶構造中にLiClやNaClといった塩を取り込むことが報告されている。本研究では、室温下での加圧実験で氷Ⅶ相へのMgCl2の取り込みの可能性について調べることを目的として、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた塩化マグネシウム水溶液のX線回折パターン及びラマンスペクトルの測定を行った。実験の結果、不純物を含まない水から析出した氷と比較して、氷Ⅶ相と氷Ⅷ相の相境界温度の低下、氷Ⅶ相のOH伸縮振動(3200 cm-1付近)のピーク位置の高波数側へのシフトが見られ、塩化マグネシウムが氷Ⅶ相の結晶構造へ取り込まれていることを示唆した。
  • 谷部 功将, 平賀 岳彦
    セッションID: R3-P06
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    上部マントルのレオロジーはオリビン多結晶体の高温変形実験で得られたデータによって議論されるが、天然由来のオリビン多結晶体の固さは人工的に合成されたオリビン多結晶体の固さよりも粘性率にして10倍以上固いことが報告されており、議論が続いている。材料科学の知見から、この硬さの違いの候補として試料に含まれる不純物の量の違いによるものと考えられる。そこで本研究ではこれまでとは異なる手法を用いて、不純物を含まない鉄入りオリビン (Mg1.8Fe0.2SiO4) 多結晶体試料と、不純物 (0.1wt% CaO, Al2O3, Ni, TiO2) を含む試料を作製し、それぞれの試料について変形実験を行った。その結果、すべての試料は拡散クリープで変形し、不純物による固さの違いはほとんど見られなかった。また、鉄なしオリビンとの固さを比較したところ、鉄によって10倍程度柔らかくなることが分かった。
  • 長谷 淳史, 土屋 卓久
    セッションID: R3-P07
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    我々は最近第一原理計算によって弾性波速度を求め下部マントルがパイロライト的であるという結果を報告した。本発表ではこれらの計算で得られたブリッジマナイト(Br)の熱弾性特性に対する Fe2+、Fe3+の固溶効果をまとめて報告する。本研究では我々のグループにおける鉄固溶Brのこれまでの計算[Wang et al 2015]と同様、内部無撞着LSDA+U法を適用した。Chantel et al(2012)により報告された鉄の固溶効果は、本研究で得られた Fe2+とFe3+の固溶効果の間に位置することがわかった。Chantel et al(2012)では試料が Fe2+とFe3+の両方を含んでいたことを考えると、本研究で得られた結果とChantel et al(2012)の結果は調和的であるといえる。
R4:地球表層・環境・生命
  • 鈴木 庸平
    セッションID: R4-01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    花崗岩の亀裂を流動する地下水は、熱水活動や海進・海退等の影響をうけて変遷する。最終氷期以降に海水が深部まで浸透した北欧の花崗岩体では、還元的地下水中でウランが高濃度で検出され、その要因は明らかでない。日本最大級のウラン鉱床が東濃地域で約1000万年前に形成したが、花崗岩中で大規模にウランが移動した要因についても明らかではない。東濃地域は1800から1500万年前にかけて海進を1度だけ経験し、花崗岩の亀裂中で当時の海水から沈殿した炭酸カルシウムが充填鉱物として保存される。淡水と海水の置換を記録する炭酸カルシウムを分析することにより、地下水中でのウランの物質移行特性の変動を復元することを目指した。
  • 宗本 隆志, 大森 一秋, 岩月 輝希
    セッションID: R4-02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    水-鉱物反応は地球表層環境における物質移動特性に影響を及ぼす重要な地球科学プロセスである。特に、希土類元素(YREE: La-Lu, Y)の鉱物中への分配挙動は環境条件の変化にしたがって、YREE存在度パターンとして保存されるため、地球科学プロセスを把握するための指標として利用されてきた。本研究では深部花崗岩中の地下水と二次鉱物を対象に地下水の水質条件の変化にともなうYREEの分配挙動の変化について検討を行った。
  • 小西 博巳, 眞鍋 達郎
    セッションID: R4-03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    ケイ素を吸着させたフェリハイドライトを合成し,鉄還元細菌による培養実験を,30度,暗所で最長2か月間行い,生成物とその組成を検討した。ケイ素を含む磁鉄鉱,Feに富む7Åの底面反射を有する粘土鉱物が生成することを確認した。縞状鉄鉱床に見られるSiを含む磁鉄鉱やgreenaliteが,嫌気性微生物による還元作用によりフェリハイドライトから生成した可能性がある。
  • 榊原 正信, 高橋 嘉夫, 村上 隆
    セッションID: R4-04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    フェリハイドライトは、溶液中の金属を吸着し、地下水や河川水中を移動し、また準安定相であり、より安定な相に転移するため、その金属の地球表層での再分配に大きな影響を与える。フェリハイドライトの相転移に伴う金属元素の再分配の定量的な評価に向けて、異なる濃度のZnを吸着させたフェリハイドライトを相転移させることで、それに伴うZnの再分配と相転移速度の変化を調べた。見かけの相転移速度は初期Zn濃度が高いほど、遅くなった。また、相転移プロセスもZn濃度により異なり、低い方から、(i) ferrihydrite(Fh)→hematite(Hem)+goethite(Gth)、(ii) Fh→maghemite(Mgh)→Hem、(iii) Fh→Mgh→Hem+Zn-ferrite(ZF)の3種が見いだされた。Znの再分配は相転移プロセスの違いに大いに影響される。
  • 福士 圭介, 酒井 実, 今井 英吾, 宮下 駿, 宗本 隆志
    セッションID: R4-05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    水質汚染の原因となる有害元素の多くは陰イオンの形態で溶存する。筆者らは準安定相の相転移現象を利用した効率的な有害元素除去の検討を行っている。炭酸カルシウム鉱物の中には、モノハイドロカルサイトという準安定相が存在する。モノハイドロカルサイトは簡単に合成できる鉱物であるが、水中では溶解・再沈殿を経て時間とともに方解石や霰石といった安定相に相転移する。相転移の過程で、溶存する微量陰イオンが安定相に共沈されるのであれば、鉱物の添加のみで、効率的な共沈による有害元素の除去が期待できる。本講演ではモノハイドロカルサイトによるヒ酸の除去を例に、このプロセスの概要と意義を述べる。また、天然におけるこのプロセスの重要性を議論したい。
  • 橋爪 秀夫
    セッションID: R4-06
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    アニリンをモンモリロナイトに吸着した複合体からアニリンの脱離をpHの異なる水溶液で行った。pH1では吸着したアニリンのほぼ半分が脱離し、pH12では約90%が脱離した。しかしながら、pH4や8、水をもちいた場合はアラニンの脱離はほとんどなかった。また、アニリンを脱離したモンモリロナイトを乾燥し、アラニンの再吸着も試みているので、紹介する。
  • 三浦 保範
    セッションID: R4-07
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    活動地球において、鉱物・水・生命等の問題で未解明のままになるのは、これまで記載的に学術分野や実験法等で正確に行うことを主点にしているからである。水惑星表層で長い地球年代の中での形成鉱物は、軽元素を上面・上空に蒸発・離脱して、固体で安定的に再現しやすい特徴を示す。地球の生命体の活動記載は、炭素主体に短時間で変化し活動するミニ地球的である。地球の活動源は、本質的に地震・火山・隕石衝突であるが、生命体はエネルギー代謝等である。現在の地球外天体での生命体の存在は困難であることを示す。 水は、相図からも高温高圧時に全圏で介在残存したもので、現象が全圏的な巨大衝突時と考えられる。軽元素が介在した固体では衝撃時に液化している。 以上から、活動地球で形成された鉱物と生命体で複雑進化した人類は、稀有な類似性を示し、不可逆変化持続性は地球内外での正確な記載がこれからの教育研究に大切である。
  • 吉村 真裕, 鈴木 道生, 佐々木 猛智, 小暮 敏博
    セッションID: R4-08
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    生体鉱物は様々な鉱物学・結晶学的特徴を有していると言われている。Pokroyら(2007)は、軟体動物貝殻を構成するあられ石の格子定数が無機的なあられ石に比べ異方的に変化していることを報告しているが、この特徴が他の生物起源のあられ石にも見られるかを調べるため、非生物起源のあられ石を含めた21サンプルの格子定数を測定した。またこれらのあられ石の熱的安定性の違いを調べるため、あられ石-方解石の転移温度を決定した。あられ石の3つの軸長は試料によってばらついているが、軸率を求めると、異方的な変化をしているあられ石は海生の軟体動物の貝殻に限られ、淡水の軟体動物貝殻ではそのような特徴は見られなかった。一方あられ石-方解石の転移温度については、すべての生物起源あられ石で無機鉱物あるいは合成のあられ石よりも60-100℃程度低くなっていたが、陸生動物の貝殻はほとんど同じ転移温度を示した。
  • 佐久間 博, Sorensen Henning, 川野 潤, 西山 直毅, 福士 圭介
    セッションID: R4-09
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    カルサイト(CaCO3)は石油の貯留岩であるチョークを構成する主要鉱物であり、その結晶表面の親水性・新油性は石油の回収率に大きな影響を与えている。結晶表面の親水性・親油性は表面の構造および組成に依存する。本研究では、カルサイトが塩の組成・濃度を調製した人工海水に接した際にどのような表面構造・組成を示すかについて、表面X線散乱実験から調べた。またその結果を吸着実験の結果と比較した。
  • 向井 広樹, 小暮 敏博, 菊池 亮佑, 甕 聡子, 廣瀬 農, 田野井 慶太朗, 中西 友子, 田村 堅志
    セッションID: R4-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    2011年の福島原発事故による周囲の放射能土壌汚染の解決のためには、土壌中で放射性セシウム(Cs)がどのような状態で存在するかを明らかにすることが重要と思われる。本研究で我々は,実際の汚染土壌を実験室で再現するため,放射性同位体であるCs-137とIPオートラジオグラフィを用いて様々な粘土鉱物種を非常に低濃度(10-11~10-9M)のCs-137溶液へ同時に浸漬し、どの鉱物種にCs-137がよく吸着するのかを調べるという新しい吸着実験を行った。その結果、福島で採取した風化黒雲母が、他の粘土鉱物(同じ地域の未風化の黒雲母、モンモリロナイト、イライト、ハロイサイト、カオリナイト、アロフェン、イモゴライト等)に比べて極めて多くCs-137を吸着・固定することが明らかとなった。
  • 小暮 敏博, 向井 広樹, 山口 紀子, 浅野 眞希, 三留 正則, 長谷川 琴音, 足立 光司
    セッションID: R4-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    Microparticles containing substantial amounts of radiocesium collected
    from the ground in Fukushima were investigated mainly by transmission electron
    microscopy (TEM) and X-ray microanalysis with scanning TEM (STEM).
  • 鈴木 雄真, 福士 圭介, 大野 剛, 小川 雅裕, 山川 庸芝明, 高橋 嘉夫
    セッションID: R4-P01
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    モノハイドロカルサイト(CaCO3・H2O: MHC)は主にMg/Ca比の大きい塩湖での産出が報告されている。筆者らはCa、Mg、CO3の濃度を細かく設定した合成実験から、MHCの生成にはMg炭酸塩の共生が必要であることを示した。本研究では、MHCや含水Mg炭酸塩の合成実験と合成物のXAFS測定からMHCと共存するMgの存在状態を明らかにすることを目的とした。XAFS測定の結果、MHCのMgのXANESスペクトルは、 Mg含有量の多いMHCは非晶質Mg炭酸塩(AMC)と形状が類似し、含有量の少ないMHCはアラゴナイト中に含まれるMgのスペクトルと形状が類似した。AMCとアラゴナイトのMgを端成分としたXANESパターンフィッティングを行ったところ、 MHCのMgは、アラゴナイト中のMgと同様にMHC鉱物内部に含まれるMgとMHCとは別相で共存するAMCの混合物だと考えられる。
  • 宮下 駿, 福士 圭介, 諸留 章二, 伊藤 弘志
    セッションID: R4-P02
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    セレンは自然界に広く存在し,有毒性を持つ為,環境基準指定項目となっている.MgOは地表環境で準安定相であり,水溶液中でブルーサイト(Mg(OH)2)やハイドロマグネサイトに変質する.MgOが水溶液中で亜ヒ酸に対して有効な除去能力を持つ事が報告されている(Yang Liu et al. 2011). 収着実験はイオン強度0.01,初期亜セレン酸濃度2μM,固液比2g/Lとし反応させた.各反応時間で懸濁液のpH,液相のCa,Mg,Se濃度,固相の鉱物相同定を行った.測定結果よりスペシエーション分析と関連鉱物の飽和指数を計算した. MgOは24時間で完全にMg(OH)2に変質した.懸濁液のpHは3時間の時点で10.58であり,徐々に低下した.収着したSeは3時間後の試料で最も高く,その後も液相のセレン濃度は60時間後でも排水基準値(0.1ppm)以下を維持した.
  • 眞鍋 達郎, 小西 博巳
    セッションID: R4-P03
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    2-line ferrihydriteによる他元素の吸着作用,鉄還元バクテリアによる水酸化鉄鉱物の還元過程と生成する鉱物は,元素の循環を規制する要因となる.ヒ素と亜鉛をそれぞれ吸着させた2-line ferrihydriteを鉄還元バクテリアに与える培養実験を行い,二次生成鉱物のキャラクタリゼーションと,固相・液相中の組成の分析を行った.
  • 田村 知也, 興野 純
    セッションID: R4-P04
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    細菌とalbiteを付着させ, 結晶表面, 化学組成, 結晶構造の変化を捉えることを目的とした. 細菌は, 筑波大学構内の土壌から単離した. ablite(Minas Gerais, Brazil)の粉末を散布した普通寒天培地上で, 細菌を28℃, 4日間培養し, TEM-EDSで分析を行った. その結果, 細菌付着粒子はalbiteの回折パターンを示した. また, 細菌付着前後で結晶外形に目立った変化はみられなかった. 細菌付着前後の鉱物粒子のNaK線強度(INa)をSiK線強度(ISi)で規格化した結果, INa / ISi=0.167(12)であった. これは細菌付着前のalbite(INa / ISi=0.216)と比較してNa濃度が低下したことを示す. これらのことから, 細菌の付着によりalbiteは結晶性を維持したままNaを溶脱した可能性が示唆される.
  • 横大路 美帆, 興野 純, 千葉 崇, 辻 彰洋
    セッションID: R4-P05
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/15
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    本研究は、オパール-AGがα-石英に変化するという続成作用でシリカの結晶構造が変化するメカニズムを解明することを目的とした。試料となる珪藻を滋賀県余呉湖で採取し、研究室で培養した後、放射光X線回折とラマン分光分析で構造を解析した。放射光X線回折実験の結果、珪藻殻はオパール-AGを示す典型的な広いピークを示した。ラマン分光分析の結果、珪藻は高温高圧環境に置いた直後にオパール-CTに相転移し、さらに高温高圧状態を維持することでα-モガナイトとα-石英に相転移した。この結果は、堆積岩で観察されるシリカの続成作用とほぼ一致している。
R5:地球外物質
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