小国ながら丸太生産量が日本と同水準のオーストリアにおいて,行政,林業関連事業体,林産企業等を対象に聞き取り調査を実施するとともに,各種文献・統計資料を用いて日本林業との比較分析を行った。その結果,同国の林業が活発なのは,資源の成熟,やや緩やかな地形,高い路網密度といった川上側の要因とともに,川下の設備増強によって丸太需要が拡大したためであることが明らかとなった。同国の大規模森林所有者は,林産企業のフォレスターと直接取引する形で,成長量の7割近い伐採を行い,丸太の44%を供給していた。一方,小中規模所有者の伐採は,成長量の5割以下にとどまり,その伐採促進が大きな課題となっている。そうした小規模所有者を束ねる林業協同組合(wv)は,近年大きく取扱量を増やしていた。WVは,簡素な職員構造と,安価な手数料のもとで,(1)丸太代金の迅速かつ確実な回収,(2)共同販売による有利な販売価格,(3)伐出・運材等の最適化を実現することによって事業拡大を実現していた。wvは,製材工場の規模拡大に対処するために設立されたが,近年,地域材の供給拡大を望む川下側と協力関係にあることが明らかとなった。
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