REDD+(途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減,森林保全,持続可能な森林経営,森林炭素蓄積の増強)プロジェクト実施に際する地域住民の生計向上のための新しい収入源を模索し,その実現に必要な条件を明らかにした。炭素を多く含有する泥炭湿地の面積の割合が高い,インドネシアの中央カリマンタン州のPM村をプロジェクト対象村とし,そこに自生する新しい収入源となる可能性があるメラルーカ(Melaleuca cajupti)の木材生産の問題点に関するPCM(Project Cycle Management)を実施した。その結果,メラルーカの木材生産の実現には木材市場へのアクセスが最大の問題であることが明らかになった。そこで,その流通経路を探索し,開拓するため,メラルーカの市場調査を実施した。インドネシアのメラルーカには,小径材と並材の2つの市場が存在し,小径材の市場に関しては既に供給が十分であるため,PM村が新規に参入できる余地がないことがわかった。一方で,並材の市場では,メランティ(Shorea spp.)などに代表されるカリマンタン産の材の減少を受け,メラルーカの需要が高まっており,新規参入の余地が見受けられた。PM村には,現時点では並材を生産できる太さの木はなく,育林を中心とする森林管理を行う必要がある。そして,この森林管理にREDD+プロジェクトとしての追加性が見出せた。また,泥炭湿地に自生するメラルーカは,他の泥炭湿地におけるREDD+実施に際しても,有益な新しい収入源となると考えられた。
抄録全体を表示