木材加工産業による活発な私有林材利用が見られるインドネシアのジャワ島において,木材加工企業,製材所および農民の行動と森林面積の増減との関連を探り,私有林利用の持続可能性を明らかにした。事例としたタシクマラヤ県においては,私有林材の移送に際して必要となる原産地証明書でチェックされた材の量が利用実態に合致しており,管理が良好に行われていた。一方,私有林材需要の拡大は,同県の森林面積増減に影響していた。調査対象B社の需要の拡大が木材を供給する農民の伐採量を増加させ,森林面積を減少させた。その対策として実施された契約造林および農民の自主的な植林によって2007年時点での森林面積は増加したが,原木買取価格の上昇が続いたことで,植林を上回る速度で伐採が継続し,2010年時点の森林減少へとつながった。さらに,供給の増加に伴い多くの製材所が設立された結果,その製材能力は村全体の木材供給量を上回り,結果的に原木不足に陥っていた。このように,天然林面積の減少→木材供給不足→私有林材の利用→私有林面積の増加,という流れに加え,私有林材利用の増加→私有林面積の減少,という続きのシナリオが存在することが明らかになった。
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