ランドスケープ研究
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61 巻, 5 号
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  • 横川 洋也, 鈴木 誠, 進士 五十八
    1997 年 61 巻 5 号 p. 609-612
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 樹木を視対象とした距離の一般化に供するれ基礎データの収集と, その方向性を探ることを目的とした。調査は, 公園内広場に単植された樹木 (コブシ, クスノキ, クロマツ) を対象とし, 見えとそれに伴う感じ方の変化について現地調査 (被験者延べ251人) を行った。見え方の変化点, 葉の大きさおよび樹木の大きさと見え方の関係について考察し, さらに, 視距離によって変化する感じ方 (形容詞) を抽出, それぞれの特徴を考察。その結果, 対象距離 (200m) の中に5つの感覚の違いを見出すことができ, それらを区分する目安は, およそ (1) 200~60m (2) 120~36m (3) 36~12m (4) 12~2m (5) 2~0mとなり, 今後の一般化の方向性を示す値が得られた。
  • 駒田 健太郎, 市原 恒一
    1997 年 61 巻 5 号 p. 613-616
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    公園の景観計画において, 利用者にとって快適な空間を提供するためには, 利用者の行動と公園の景観という二つの側面から調査を行う必要がある。本報告では旧古河庭園を調査対象として, 写真を用いた景観評価試験を行い, 因子分析により抽出された形容詞対の階層構造により景観が説明できるとして, その結果をファジィAHP法で分析した。また利用者の歩行速度を計測し, 景観と歩行速度との相関を調査した。その結果, 必然性測度による景観の評価と歩行速度との間で特に高い相関が得られた。公園のような公共施設の景観の評価には, 秀でた項目があることを評価する可能性測度よりも, 欠点が少ないことを評価する必然性測度が適切な指標になると考える。
  • 亀野 辰三, 八田 準一
    1997 年 61 巻 5 号 p. 617-620
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 街路景観の評価に及ぼす街路樹の影響について, とりわけ, 樹高と街路幅員との比率 (以下「樹高幅員比」) に着目して, 街路樹景観の望ましいプロポーションとその評価構造を考察したものである。そのために, 3次元CGとフォトモンタージュを併用した景観疑似画像を作成し, これらを用いて評価実験を試みた。その結果, 1) 街路樹景観への評価は,「心地よさ」と「重々しさ」の2つの因子軸によって規定され,「心地よさ」が総合評価に強く影響していること, 及び, 2) 望ましいプロポーションは樹形ごとに異なる値を示し, 円錐型・盃状型・卵円型の各樹形では, 樹高幅員比が0.6で最も高い評価を得た。
  • 杉田 早苗, 土肥 真人, 松井 啓之
    1997 年 61 巻 5 号 p. 621-626
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 利用者の行動によって生起すると考えられる空間の分節を, 公共空間を対象として考察することを目的とする。対象地を日比谷公園噴水広場に設定し, 利用者の行動観察を行なった。観察の結果明らかになった事象に関して, 従来の行動観察で用いられている定性的な分析を行ない, 特に移動者と滞留者それぞれに見られる空間分節の特徴を明らかにした。次に, 定性的な分析の結果について, GISを用いた定量的な分析方法による検証と考察を加え, 移動者, 滞留者それぞれのパーソナルスペースを数値として示し, その特性を明らかにした。また, 人間の行動による空間の分節の定量的な分析方法についても, 検討を加えた。
  • 愛甲 哲也, 浅川 昭一郎
    1997 年 61 巻 5 号 p. 627-630
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    キャンプ場は, 山岳地のなかでも一時的に利用が集中する場所である。植生の損失や利用体験への影響が懸念されており, 適正な収容力および規模の設定が必要である。本研究では, 大雪山国立公園のヒサゴ沼において, テントの設置位置と利用者の混雑感およびキャンプ利用において不快に感じた要因を調査した。その結果, 利用の増加に応じて, テントの占有面積と間距が減少し, 利用者の知覚したテント数と人数, 混雑感, 不快に感じた要因が増加した。実際の利用テント数および人数が, 利用者の不快に感じる限界を超えた場合に, 混雑感と不快に感じた要因の数が著しく増加し, 心理的・物理的に十分な空間がなかったと考えられた。
  • 奥 敬一, 深町 加津枝, 下村 彰男
    1997 年 61 巻 5 号 p. 631-636
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 農村地域で行われている写真コンクールを分析の対象として, 現代の人々がとらえた季節感, 及びその表現形態を明らかにし, 農村景観における季節性認識について議論することを目的としている。栃木県那須町芦野地区で行われている「芦野の里写真コンクール」を事例とし, 404件の作品から季節性要素の出現頻度, スケール, 及び焦点性について整理した。その結果, 景観としての季節性認識は, 個々の要素に依存するだけでなく, より多面的であることが明らかとなった。農村において季節性に配慮した景観整備を進める上では, 季節を象徴する要素に加え, 認識パターンを考慮した演出方法の検討を進めていく必要がある。
  • 沈 悦, 熊谷 洋一, 下村 彰男, 小野 良平
    1997 年 61 巻 5 号 p. 637-642
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 中国広東省恵州西湖の景観形成の特徴及び杭州西湖景観が及ぼした影響について考察することを目的とした。研究の方法は, 関連する歴史資料や詩集図絵などの文献を調査し, その景観整備過程を辿りながら, 地形図及び現地調査による視覚分析を行った。その分析結果と杭州西湖の景観構成との比較分析を通して考察を進めた。その結果, 恵州西湖の景観形成の特徴として, 以下があげられた。1) 杭州西湖景観の影響を受けつつも, 立地条件に合わせた独自の景観形成を行った。2) 視点操作を主体に長い年月をかけて景観形成を行った。3) 杭州西湖景観形成手法に類似しているものの, 名景化手法に特徴がある。
  • 臧 理, 十代田 朗, 渡辺 貴介
    1997 年 61 巻 5 号 p. 643-646
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    1900~1930年の間, 中国国内には上海租界に在住した外国人たちの手でいくつかの避暑地が建設され, 現在も国有財産として利用されている。これらの発展過程を検討しておくことは今後中国において新しくリゾートを造る場合への有益な示唆を得ると考えられる。そこで, 本研究は, 上海に租界があった時代を対象とし, まず, 上海からでかける避暑地にはどのような所があったかを概略把握した上で, その中の代表的な高原避暑地である慶山について, 外国人から中国人の避暑地への変貌過程, 別荘地としての空間構成の特徴とその変容, 及びそこでの避暑生活や行われたアクティビティ等を明らかにしている。
  • ヤニッキー アンドレア, 中村 良夫
    1997 年 61 巻 5 号 p. 647-652
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は, ポスト構造主義的な観点から都市テキストの生産プロセスとその読解プロセスを江戸名所図会に即して分析することである。
    都市テキストの生産プロセスについては, 寺社名所を分析した結果, 変異的摂動を伴う谷戸地形の無限反復特性が認められた. また読解プロセスについては, 視点, 視線の逐次移動に着目し, 複数個の部分テキストの二項対立連鎖としてテキストの意味生成が行われており, これはデリダ (Derrida) の差延的散種 (dissemillation) 他ならないことを示した。
    最後に, 視点変動から独立した「構造」との対比としての散種ならびに風景内風景を含めてメタ・ランドスケープの概念を風景の拡張概念として提唱した。
  • 小林 昭裕
    1997 年 61 巻 5 号 p. 653-658
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    山岳自然公園では自然景観を眺めに多くの利用者が高山帯を訪れる。しかし, 高山帯は利用者の踏圧に脆弱かつ回復力の弱い環境条件にあることが多く, 登山道やその周辺で, 裸地化, 泥濘化や浸食の著しい箇所がみられる。これらの被害は, 自然環境の破壊だけでなく, 利用者の視野の近傍にあることから, 目に付きやすい存在として, 利用者が望む自然景観への阻害要因ともなる。本研究では, 高山植物を眺めに多くの利用者が訪れる大雪山国立公園の高山帯を対象に, 踏圧がもたらす被害を軽減・緩和する管理方策を見出すため, 登山道の立地環境と利用者の行動形態との関係について, 生態的視点および立地デザイン的視点から, 管理方策を検討した。
  • 朝廣 和夫, 小川 剛, 重松 敏則, 瀬戸島 政博, 牧田 史子
    1997 年 61 巻 5 号 p. 659-662
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    カラー空中写真や超分解能衛星画像を利用した植生環境情報の収集と的確な環境評価システムの開発を目的に, 写真画像から判読できる樹冠幅及び樹林高から下層植生の発達状況を予測することを試みた。ヒノキ人工林を対象に森林構造と下層植生との関係を現地調査に基づき分析し, さらにコンピューターにより抽出した空中写真上の樹冠幅や樹林高を反映するグレー値の標準偏差について関係性を検討した。その結果, 空中写真から判読できる樹林高とグレ-値の標準偏差により林床植生の発達程度がほぼ予測できることがわかった。
  • 橋本 健一, 工藤 誠
    1997 年 61 巻 5 号 p. 663-668
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 脈絡のない要因同士が混在し変容を続ける地域環境下に生み出される空間と景観解釈のつながりの自己組織的生成・変容過程を捉える事を目的としている.東京芝浦地区を研究対象とし, 1980年以降の商業界隈としての空間変容を都市情報誌の分析史料調査及び, 現地調査を通じ, 個別商業施設の特徴の分析から, 景観解釈の変容を情報誌上の記述分析から明らかにした。これらの結果を相互参照し, 対象地の空間と景観解釈のつながりの自己組織的生成過程を異種混交環境の生起に起因した空間と景観解釈の相互作用の結果として, その変容過程を浮動的なつながりが空間・景観解釈の変化に常時影響を受け変容する過程として示した。
  • 古谷 勝則
    1997 年 61 巻 5 号 p. 669-674
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    人が風景を体験し, 強い感動を受けるような思い出に残る自然風景を調査した。一般社会人にアンケ-トを送付して183名から回答を得た。体験年齢視点場と視対象, 体験した状況を整理・分析し, 以下の成果が得られた。1) 視点場は.山頂や海岸, 草原だけでなく, 道路や展望台, 橋も重要である。2) 視対象の構造は, 対象物の空間分布を視知覚で認識しているのに加え, 時間や季節の変化要因が自然風景に彩りを加えている。3) 季節は夏と秋が多く, 体験時間は午前中に72%が体験している。空は晴れていて, 陽射しが強く, 明るい場合に, 感動することが多い。一方, 朝や夕方の風景も感動することが多い。温度や風の影響は少ない。
  • 吉村 晶子
    1997 年 61 巻 5 号 p. 675-680
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    風景は, 身体的観点のみならず, 価値的意味論的観点においても動態的であると言える。そこで, 本論文は, 風景を身と心の変容過程としてとらえる動態論の立場を提出し, 動態論的に風景を記述するモデルの構築を行った。同時に実際の風景体験の例として「東関紀行」をとりあげ, その中に見られる風景生成過程を動態的風景記述もモデルにより表現し, 明らかにした。また, 風景は動態性の中で見い出され, 後から生成された風景によりぬりかえられる性質を持つことを示した。さらに, 本モデルと体験相という概念の導入により風景の深化の過程を説明した。
  • 金子 忠一
    1997 年 61 巻 5 号 p. 681-684
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    多様かつ高度な公園整備がなされている今日の都市公園行政においては, 効率的な公園管理運営システムの構築が課題となっている。本研究では, カナダのバンクーバ-地域公園を対象としてレクリエーション・プログラムに視点をおいて自然資源依存型公園の管理運営システムの現状を明らかにした。その結果, 公園計画段階におけるプログラムの意味づけ, 職能として公園解説員の評価と管理組織体制上の確立, プログラムの管理運営における位置づけ, イベントによる周辺地域との連携など, 管理運営システム構築に関わるいくつかの知見が考察された。
  • 下村 泰彦, 増田 昇, 山本 聡, 有田 義隆
    1997 年 61 巻 5 号 p. 685-688
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大阪市の都心業務地区における民有地 (公開空地) での連続緑化が果たす環境保全に係わる効果を, 微気象, 鳥類の生息, 歩行者ルート選択, 景観評価に視点をあて, 緑化が連続する魚の棚筋と緑や公開空地のない御霊筋との比較により探った。結果, 連続緑化は環境保全に係わる効果として, 魚の棚筋では8月測定で最高2.0℃, 9月測定で最高0.6℃気温の上昇を抑制し, 12月測定で最高1.9℃気温の低減を抑制した。また, 魚の棚筋の方が鳥類の種や個体数共に2倍以上の差で多く確認できた。さらに魚の棚筋の方が, 景観評価では全項目で平均評価点が約1点高いことや歩行者ルート選択 (歩行者の87.5%) にも影響がみられ修景効果を確認できた。
  • 近藤 範和, 宮城 俊作, 木下 剛, 田代 順孝
    1997 年 61 巻 5 号 p. 689-694
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    港北ニュータウンにおいて用いられたマスターデザインは, 公園緑地整備に関連する計画段階のコンセプトを設計段階に反映させ, 計画と設計を繋ぐための新たな手法であった。公園緑地の計画段階で考えられていたコンセプトは, マスターデザインにおいて記号化された整備範疇と特記事項により図化された。マスターデザインは, 全域における検討が可能な段階において “全域と個” の関係を検討し, 公園緑地と周辺土地利用の関係 (場と周辺) を踏まえた整備方針を提示した。マスターデザインが個別の公園緑地の実施設計において反映されていることが明らかになったことにより.計画と設計を繋ぐツールとしての有効性が証明された。
  • 鶴島 孝一, 宮城 俊作
    1997 年 61 巻 5 号 p. 695-698
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    公園設計競技における当選者の位置づけと作品の扱いは, 設計競技の過程と競技後という2つの段階において把握できる。1983年以降の実現を前提とした公園設計競技の各応募要項では設計者と作品に関する記述に相違がみられた。また競技後, 当選案を実現していくプロセスでの設計者の位置づけを設計意図の伝達という観点からみると4つの段階を想定することができ, これらの段階の詳細を事例によって検証した。
    こうした相違や段階の発生は, 設計・施工という実現のプロセスで設計者の裁量をどこまで期待するかという主催者側の判断によるものであり, それはその裁量を造園設計委託の慣例に適合させるか否かを根拠とするものであると推 察した。
  • 大路 宗義, 杉本 正美, 包清 博之
    1997 年 61 巻 5 号 p. 699-704
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    敷地計画における景観配慮プログラムとは, 特定の敷地において求められた景観目標に応える景観を創造するための仕様である。本研究は, 景観形成実態の異なる複数の住宅地を対象にして敷地計画における骨格計画段階での景観配慮プログラムの内容に有効な基礎的知見を, 各々の住宅地における居住者の満足度の視点から明らかにすることを目的とした。そのため複数の住宅地を選定し, それぞれの住宅地の居住者にアンケート調査をおこなった。居住者の満足度に大きく寄与する景観の骨格形成要素の違いは, 敷地の主要特性である地形の違いと敷地計画における地形の取扱いの違いにより生じるものであることなどがわかった。
  • 赤澤 宏樹, 増田 昇, 下村 泰彦, 山本 聡
    1997 年 61 巻 5 号 p. 705-710
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    日本の住宅密集市街地では, 道路を含んだオープンスペースが生活空間として認知されているが, 密集市街地の空間構造は多様なものであり, 一様に生活空間として認知されているのではないと考えられる。本研究の目的は, 住民の生活行動を通して, 住宅密集市街地特有の空間構造と空間認知との係わりを探ることである。
    本研究では, 第1に道路を含めたオープンスペースの分布形態から密集市街地の空間構造をとらえ, 第2に生活活動圏域を指標として空間認知の圏域を調べ, 第3に路地園芸を指標として空間認知の圏域を調べた。結果として, 密集市街地における空間認知の構造には, 空間の独立性と空間内部の段階性が影響していることがわかった。
  • 竹末 就一, 杉本 正美, 包清 博之
    1997 年 61 巻 5 号 p. 711-714
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    我国において, 独自の景観の骨格を形成してきた樹林地は, 都市の拡大に伴い減少が進んできた。そうした背景の中で, 自然環境, 特に樹林地が持つ固有の効果の再認識を通して, 適正な樹林地の保全・活用の方策が求められてきている。そこで本研究では, 都市における樹林地の保全・活用に向けての価値評価を, 樹林地周辺の環境条件や人間の反応行動の相違から相対的に導くことの必要性に着目し, 各々の樹林地が持つ固有の価値について検討を行った。その価値評価の結果からこれら樹林地が持続的に都市に存続できる, いわゆる保全・活用に向けた基礎条件の一端が明らかになった。
  • 田中 隆, 日置 佳之, 青木 久宣
    1997 年 61 巻 5 号 p. 715-720
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東京都内の6地区におけるアンケート調査の結果, 自然の生物との触れ合いが少ないと感じる住民の割合が高い地区ほど,「自然の生物の保全が十分行われていない」と感じる住民の割合が高かった。「自然の生物の保全が必要」とする回答者はいずれの地区でも90%以上を占めた。人工的性格が強いみどりは, それらが少ない地区で住民の欲求が強く, 自然的性格が強いみどりは, それらが住民の目にふれる地区で要求が強かった。
  • 木下 剛, 宮城 俊作
    1997 年 61 巻 5 号 p. 721-726
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 自然環境の保全を指向したオープンスペースシステムを実現した港北ニュータウンを対象として, オープンスペース計画の理論的な発展過程と実体化手段としての公園緑地の意義と役割について検証を行った。その結果, 港北ニュータウンのオープンスペース計画は, 公園緑地が前提とする2大機能 (レクリエーションー緑地保全) 相互のバランスをとりながら都市基盤としてのオープンスペースシステムを形成してゆくプロセスとして理解された。そして, システム機能の低次化及び構成要素の限定という点で, 公園緑地が前提とする2大機能の併存イメージがシステム実現上の阻害要因となった実態を明らかにした。
  • 小篠 隆生, 小林 英嗣
    1997 年 61 巻 5 号 p. 727-730
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    大学の空間と市街地との関係は, 大学の成立過程における空間構成から見ると市街地の街路や広場を中心として原初の大学空間が発生し, そのまとまりが発展し中世の大学都市の空間的骨格を形成しており, 2つは密接な関係にある。この関係性に重要な役割を果たしているのは, 市街地の街路や広場といったオープンスペースであり, これによって大学の空間は1つの統一された空間として認識されるようになった。本研究では, 大学空間と市街地の関連におけるオープンスペースの計画意図と計画手法に着目して, キャンパスマスタープランの中にオープンスペースのシステムによって大学と市街地との関連と構造が構築されている方向性について考察し, アーバンデザインに対するオープンスペースの可能性について論考する。
  • 横張 真, 加藤 好武, 山本 勝利
    1997 年 61 巻 5 号 p. 731-736
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    水田を対象に, その気温低減効果と分布形態との関係および同効果の市街地内への影響範囲について検討した。水田の分布形態を面積率と市街地との混在度により把握した場合。面積率の減少および混在度の上昇とともに水田の気温低減効果は低下することが明らかになった。また, 水田から垂直に延びる街路上の気温を計測した結果, 気温低減効果の市街地内への影響範囲は, 大規模な水田から市街地への微風という条件下で150~200mであることが明らかになった。これらの事実は, 都市近郊での望ましい水田と市街地の混在のあり方に, ひとつの知見を与えるものと考えられる。
  • 大西 文秀, 増田 昇, 下村 泰彦, 山本 聡, 安部 大就
    1997 年 61 巻 5 号 p. 737-742
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 人口, 降水量, 森林蓄積量土地利用形態などの地域環境要素による地域環境量とライフスタイルや技術水準などにより設定される単位負荷量の関数として地域環境容量を捉え, 1975年と1991年の二時期での比較試算によりその変動量, 変動要因, 変動構造, 変動速度の考察を行った。淀川水系と大和川水系における分析からCO2固定容量では単位負荷量は微増したが地域環境量の増大により上昇傾向にあること, また, 水資源容量では地域環境量は減少したが単位負荷量の減少によりさらなる減少傾向を抑えることができたことなどが明らかになった。
  • 長瀬 安弘, 吉田 鐵也, 野嶋 政和
    1997 年 61 巻 5 号 p. 743-748
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, 森林の保全・整備に市民が関わる機会が増えている。京都府山城町では1996年に, 京都府の呼びかけで森林ボランティア「サン・フォレスター」が活動を開始している。筆者らは「サン・フォレスター」の参加者の意識に焦点を当て, 参加観察及びアンケート調査を実施した。その結果, 本事例において参加者は森林作業中心のプログラムに満足し, さらに興味や関心の範囲を広げ, 自主運営を目指すようになった点で, 市民としての関わり方が明確化し始めたことがわかった。以上, 森林の管理・整備への市民参加の課題の一端が明らかになった。
  • 温井 亨
    1997 年 61 巻 5 号 p. 749-752
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    尾花沢市では1986年に「銀山温泉家並保存条例」を設け, 温泉内の建築活動を誘導し, 美しい町並の形成に努めてきた。本研究ではこの試みに対して,(1) 温泉街の景観的特徴,(2) 条例の内容,(3) 12年間の成果,(4) それに対する住民の評価という4つの分析を行い, 景観づくりの手法としての成果と課題を考察した。条例では, 新築・増改築時のルールを定め, 工事予定者はルールに適合しているか審議会の審査を受けることが補助金により奨励されている。こうした景観コントロールの手法を, 住民と地元行政だけで行い, 大きな成果を上げたことは高く評価される。しかし, 景観上議論のある建築への補助金の運用には, 想定外の建築への対応の課題が指摘できる。
  • 土井 良浩, 土肥 真人
    1997 年 61 巻 5 号 p. 753-758
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 島根県の美保関漁港の後背集落を事例として. 漁村という地域社会の抱えていた問題の発生一定着の過程を歴史的に捉え, 問題解決のための施策がどの様に機能し, それに対して地域社会はどの様に関わったのかを明らかにすることを目的としている。研究の方法は本漁村を対象に記録された「美保関新聞」のテキスト分析である。結論としては,(1) 大正14年~平成7年の間, 問題の焦点は漁業→交通→観光と移行してきた,(2) 問題解決の施策が新たな問題を発生させる機構や地域だけでは解決に限界がある問題がある,(3) 近年になって「観光と漁業の融合」,「有志によるイベント」など地域自身で問題解決の動きがあった, という3点が導かれた。
  • 齋藤 雪彦, 中村 攻, 木下 勇
    1997 年 61 巻 5 号 p. 759-762
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    全国の243の自治体に対して郵送アンケートを実施し, グリーンツーリズムの趨勢について分析を行った。結論を以下に示す。グリーンツーリズムは地域が主体となって推進する観光活動で, 地域づくり活動との連携が見られた。また, グリーンツーリズムの成長過程は, 地域づくり活動との連携と相関のある観光活動の種類数・観光地類型の複合度で示すことができた。しかし, 年間入り込み宿泊客数10万人以上の事例においては, 地域づくり活動との連携内部資本による推進といったグリーンツーリズムに見られた特徴を減じる。さらに, 観光活動の種類数の増大は既存観光活動との複合化の過程でもあり, 自治体間で差違が稀少で画一化の傾向を示した。
  • 田中 章
    1997 年 61 巻 5 号 p. 763-768
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は, 自然的土地利用の保全における環境アセスメント (EIA) 制度の有効性とミティゲーションとの関係を明らかにし, 両者のあり方を提言することを目的としている。第1にわが国のEIA制度の目的又は定義にみられるミティゲーション規定の変遷を整理した。第2にEIA制度の発祥地である米国におけるミティゲーションの変遷を把握した。第3に, 日米両国の違いを踏まえて, 環境アセスメントが法制化されたばかりのわが国のミティゲーション規定について考察した。結論として, わが国のEIA制度の有効性の低さはミティゲーション規定が明確化されていないことに由来しており, 有効性を高めるためには同規定の充実が必要であることが示唆された。
  • 尹 龍漢, 丸田 頼一, 本條 毅, 柳井 重人
    1997 年 61 巻 5 号 p. 769-772
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 緑地の規模と内外気温との関連性を明らかにすることを目的に, 規模の異なる4つの緑地での気温分布の調査を行った。そして, 緑地内外の気温分布, 緑地内の土地被覆状態と気温緑地の規模と気温低下との関連性について, 回帰分析等により解析を行った。その結果, 緑地内では低温域が, 周辺では高温域が認められ, 緑地から周辺に向かい気温が高くなる傾向がみられた。また, 緑地の規模と気温低下がほぼ比例することや土地被覆の差により気温低下の程度が異なることがわかった。
  • 若生 謙二, 清水 正之, 田中 隆, 松江 正彦, 野島 義照
    1997 年 61 巻 5 号 p. 773-776
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    阪神・淡路大震災後の公園の避難地利用の実態を解明するために, 仮設住宅居住者に対するヒアリング調査を実施した。公園への避難には, 一時避難と避難生活があり, 避難生活はさらに一時避難から避難生活に移行するものと他の避難地を経て公園で避難生活を送る二つの型がみられた。避難地選択の第一要因は自宅との近接性であり, 第二の要因は一時避難者では非建蔽性で, 避難生活者では私的生活の確保である。また, 避難生活者は一時避難者より普段の公園の利用率が高く, 一時避難者においても日常的利用者では公園の認知度が高い傾向がみられ, 震災以前の公園利用の密度と質が避難地の選択に影響を及ぼしていることが推察された。
  • 岡村 穣, 佐藤 仁志
    1997 年 61 巻 5 号 p. 777-780
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    名古屋市は, 戦災復興計画以来, 小学校を地域の防災上の拠点とするため, 約半数の113小学校が道路を隔てて公園に隣接している。その中の8校の校庭は, 道路を廃して公園と一体化させた学校公園となっている。校長及び教頭への学校公園の管理に関する聞き取り調査では, 授業の一環としての利用はあるが住民の利用は少なく, 授業時以外の責任の曖昧さや管理の負担を感じており, できれば専用で使いたいという回答が多かった。大森北小学校 (守山区) では, 学校公園を利用したワークショップに, 多くの児童, 親, 及び学区住民が参加したが, 学区連絡協議会長, 校長及びPTA会長の3者の参画及び呼びかけが有効であった。
  • 朴 永吉, 田代 順孝, 木下 剛
    1997 年 61 巻 5 号 p. 781-784
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    高齢化社会における都市公園の在り方を検討することが重要である。本研究は.高齢者率の高い東京都区内の都市公園を対象として, 公園利用の実態調査を行い, 高齢者の利用特性 年齢, 時期, 目的, 理由, 来園手段, 来園頻度 および利用特性と来園距離との関係, さらに利用特性 (目的, 理由, 手段) と誘致圏域との関係について分析を行った。その結果, 公園利用の目的, 理由, 手段によって誘致圏域が異なる実態が明らかにされ, 来園距離に対する誘致圏域の相対性が指摘された。今後, これら様々な要因との相互関係を考慮しつつ, 異なる規模・性格の公園についてさらに調査研究を進める必要がある。
  • 大野 正人, 服部 勉, 進士 五十八
    1997 年 61 巻 5 号 p. 785-788
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本調査は, 公園デビューという社会現象の実態把握を行なうため, 世田谷区内の3つの街区公園とそこを利用する乳幼児連れの母親を対象とし, 20項目のヒアリング調査を中心に考察を行なった。その結果,(1) 公園を利用する母親は, コミュニケーションの度合などから, a.固定グループ型b.不特定グループ型, c.非グループ型, d.寄り道型, a'.育児サークル型, b'.児童館型, e.公園放浪型, f.ファミリー型の8つに類型区分されたこと,(2) 公園における類型区分の割合を決定する要因としては, 第一子率, 公園の立地環境規模の違いによる母親の認知度が大きな影響を与えていることが明らかとなった。
  • 高木 真人, 服部 ひかる, 仙田 満
    1997 年 61 巻 5 号 p. 789-792
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    屋根や庇により雨避けが可能となるような半外部的な空間をキャノピーと定義し, 野外遊戯施設である遊園地におけるキャノピーを類型化した。雨天時のキャノピーの利用実態を調査した結果, 大空間キャノピーや, テーブル・ベンチなどの装置を有するキャノピーは滞留を誘引し, 外部に開放された線形キャノピーは滞留に加えて通行を誘引する。普通規模遊園地の場合, 複数のアイテムを囲むようにキャノピーを配置し, さらに拠点となるキャノピーを設置すれば, キャノピーに対する満足度は上がるであろう。大規模な遊園地の場合, 各エリア間を線形キャノピーで接続すればキャノピーに対する満足度は上がるであろう。
  • 上甫木 昭春
    1997 年 61 巻 5 号 p. 793-796
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 居住環境形成に資する戸建て住宅地の庭空間に対する公的役割の付与の可能性やそれに影響する諸要因を, 居住者意識に基づき明らかにすることを目的とした。その結果, 道際演出や庭への生き物誘引などの公的な役割の推進と庭空間の私的な利用とは, 矛盾するものではないと推測された。公的な役割の内容をみると, 道際演出などの人間生活の快適性が, 庭への生き物の誘引などの地域の生き物生息環境への配慮よりも優先される傾向にあることが分かった。道際演出には, 庭と道路との高低差空地面積入居時の植樹の有無などの空間特性や, 家族構成世帯主の年齢, 居住年数などの居住者特性が影響していることが明らかとなった。
  • 章 俊華, 木村 弘
    1997 年 61 巻 5 号 p. 797-800
    発行日: 1998/03/30
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 中国私家庭園における「廊」に着目し, 分析対象庭園の「廊」の種類と分布状況により, 空間構成の類型化とその特徴を明らかにすることを目的として, 蘇州市にある8つの庭園の「廊」に対して実測調査し考察を行った。その結果, 8つの私家庭園における空間構成の類型化は4つのグループに分けられた。その特徴は特有な特性を持つグループA; 特有, 且つ神秘な特性を持つグループB; 離水, 且つ開放的な特性を持つグループC; 隣水, 且つ多様な特性を持つグループDをそれぞれの極とする立体構造の分布が把握できた。「廊」形態の変化に基づいた空間の特質から類型化と対応関係が見られた。
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