教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
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原著
  • 水本 深喜
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 2 号 p. 111-126
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,青年期後期にある子が捉える親との関係について「精神的自立」と「親密性」から捉え,それらの父息子・父娘・母息子・母娘関係の差を明らかにした。首都圏の大学生に質問紙調査を行い,まず「親子関係における精神的自立尺度」および「親への親密性尺度」を作成した(分析Ⅰ)。これらの尺度を用いて親子関係差を分析すると,娘が捉える母親との関係は,他の組み合わせの親子関係と比較して信頼関係が高く,親密性が総じて高かった。加えて,娘は父親とは分離した認識を強く持っていた(分析Ⅱ)。精神的自立と親密性との関連をみると,親子関係の組み合わせにより,親との信頼関係の築き方が異なっていた(分析Ⅲ)。最後に「信頼関係」と「心理的分離」の2軸による親子関係の4類型を用い,親との関係が子の自尊感情,自律性,主体性に与える影響について検討すると,父親との関係においては,心理的に分離することが,子の適応や発達を高めていた。自尊感情において性差が見られ,母親と信頼関係を築かないままに心理的に分離している場合の娘の自尊感情は低かった(分析Ⅳ)。総合考察では,これらの検討から明らかになった親子関係の性差について論じた。

  • 林田 美咲, 黒川 光流, 喜田 裕子
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 2 号 p. 127-135
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,生徒が学校生活をどう感じているかといった主観的な感覚に焦点を当てた学校適応感(「居心地の良さの感覚」,「被信頼・受容感」,「劣等感の無さ」)に対して,家庭内の対人関係である親への愛着と学校内の対人関係である教師および友人関係への満足感がどのように影響するのかについて検討することであった。中学生を対象に質問紙による調査を行った。その結果,親への愛着および教師・友人関係への満足感がそれぞれ中学生の学校適応感に正の影響を及ぼしていることが明らかとなった。さらに,親への愛着と教師や友人との関係への満足感の交互作用が学校適応感へ影響していることも示された。このことから,親子関係が不安定なまま育ってきた生徒であっても,学校内の対人関係に満足していることが補償的に働き,学校適応感が高められることや,学校内の対人関係に満足できていない場合,親への愛着の良好さにかかわらず,高い学校適応感が得られにくいことが示唆された。

  • 小川 翔大
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 2 号 p. 136-149
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,中学生,高校生,大学生を対象にした質問紙調査により,親密な友人間で生じるテスト失敗場面での効果的な慰めを明らかにすることである。調査対象者には,親しい友人から言語的慰め(励ましの言葉かけ),非言語的慰め(そばに寄り添う),何もせず離れる行動を受けた時の感情を評定してもらった。その結果,言語的・非言語的慰めを受けた時は,離れる行動を受けた時より,友人への感謝が高く,反発が低くなった。また,非言語的な慰めを受けた時は,自責や反発が最も低くなった。さらに,中学生は高校生や大学生より,閉鎖的関係希求(親密な友人とだけ一緒にいたい)が高く,相互尊重欲求(互いの考えを尊重したい)が低いため,そばを離れる友人に対する反発が高くなった。したがって,テストの失敗で落ち込んだ友人には,何もできなくてもそばに寄り添うことが効果的な慰めであることが示唆された。

  • 永井 智, 鈴木 真吾
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 2 号 p. 150-161
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,援助要請の利益・コストの予期が大学生の友人に対する援助要請意図に与える影響を検討することである。研究1において利益・コストの予期を測定する尺度を作成し,信頼性・妥当性が確認された。研究2において,悩み,抑うつ,ソーシャルサポート,そして利益・コストの予期が援助要請意図に与える影響を検討した。共分散構造分析の結果,援助要請実行の利益の予期だけでなく,援助要請回避の利益・コストの予期が援助要請意図に影響することが示された。また,それぞれの利益・コストの予期は,ソーシャルサポートや抑うつの援助要請意図に対する影響を媒介していた。

原著[実践研究]
  • 池田 琴恵, 池田 満
    原稿種別: 原著
    2018 年 66 巻 2 号 p. 162-180
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/08/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,学校評価は管理職が行うものと考えていた校長の意識が,学校全体で実施しようという意識へと変容する過程,および意識変容を促進する専門家の支援のあり方について検討した。本研究の実践では,協働的で自律的な実践活動を支えるエンパワーメント評価アプローチのツールであるGetting To OutcomesTM (GTOTM)1に基づき,日本の学校評価用に開発された学校評価GTOの導入を試みた。複線径路等至性モデルを用いた分析の結果,学校評価GTOを実施することで,(a)目標設定,実践計画,評価実施までを事前に準備することができ,学校評価の改善が可能であるという気づき,(b)学校全体での取り組みを試みる中で校長自身の学校運営に対する統制感の獲得といった意識変容の過程を経て,学校全体での実施という意識に至ることが示された。さらに校長の意識変容を促すために,校長の問題意識がない場合には導入の必要性を検討し,年度途中での運用上の修正が可能な提案,校長自身が学校教育計画や学校評価報告書に統制感を持つための支援,全校実施をイメージできるような実践ツールの提供,学校の特色に応じて実効性のあるツールへと改良するといった,専門家による支援の重要性が示された。

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