教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
71 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 早川 貴子, 水野 泰尚
    原稿種別: 原著
    2023 年 71 巻 2 号 p. 89-99
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

     本研究では,中学生の謝罪効果に及ぼす加害者の謝罪の言葉と表情の影響を検討した。謝罪効果として,謝罪の評価,不快感情,許しを取り上げた。仮想場面における謝罪の言葉(あり,なし)×加害者の表情(罪悪感あり顔,罪悪感なし顔,表情図なし)の6条件を対象者間要因として,中学生200人(中1〔N=94〕と中3〔N=106〕)を対象に質問紙調査を行なった。その結果,謝罪の言葉と表情の影響が謝罪の評価,不快感情で見られ,罪悪感あり顔・謝罪の言葉あり条件の謝罪が最も評価され,不快感情の緩和が見られた。一方,謝罪の言葉と表情が矛盾する条件(罪悪感あり顔・謝罪の言葉なし条件,罪悪感なし顔・謝罪の言葉あり条件)では謝罪をされたと認識されず,不快感情の緩和も見られないことが示唆された。許しについては,謝罪の言葉と表情の影響は認められなかった。これらの結果より,中学生は謝罪の言葉と表情の両方を手がかりにできるが,謝罪の言葉と表情が矛盾すると謝罪に関する情報が適切に処理されないために,謝罪が評価されず,不快感情も緩和されないことから,中学生が謝罪の言葉と表情の両方を考慮できるようになる移行期である可能性が示唆された。

  • 小浜 駿, 高田 治樹
    原稿種別: 原著
    2023 年 71 巻 2 号 p. 100-116
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

     本研究は,先延ばしのタイプ分類のための簡便な方法を開発することを目的とした。大学生974名を対象とし,先延ばし意識特性尺度,General Procrastination Scale日本語版,決断遅延尺度について回答を求めた。はじめに,混合正規分布に基づくクラスタリングを実施した結果,回答者は4つのタイプに分類された。次に,クラスタリングに重要な変数を選ぶためにランダムフォレストを実施し,重要度指標を算出した。その後,多変量解析を用いずに回答者を分類するため,決定木分析を実施した。決定木分析の結果,状況の楽観視,先延ばし中の否定的感情,先延ばし後の否定的感情,決断遅延尺度の4変数によって,十分な精度で4つのタイプ分類を再現することができた。抑うつやエフォートフル・コントロール,学業成績といった外的基準との関連から,4つのタイプの特徴が把握された。最終的に,各タイプは否定感情クラスタ,楽観クラスタ,遂行優先クラスタ,切替クラスタと命名された。

  • ―交差遅延効果モデルによる検討―
    直原 康光, 安藤 智子, 菅原 ますみ
    原稿種別: 原著
    2023 年 71 巻 2 号 p. 117-130
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー
    電子付録

     本研究の目的は,第1に,離婚後の父母コペアレンティングと子どもの適応の相互関係,第2に,子どもの適応のうち「外在化問題行動」,「内在化問題行動」,「向社会的な行動」の相互関係について,交差遅延効果モデルを用いて,経時的な相互関係について検討することであった。離婚して2年未満で2―17歳の子どもと同居する母親500名に,3か月後,6か月後に追跡調査を行った。3時点のデータを用いて,交差遅延効果モデルによる分析を行った結果,「葛藤的なコペアレンティング」は,「外在化問題行動」に正の影響を及ぼし,「外在化問題行動」は「内在化問題行動」に正の影響を及ぼし,「内在化問題行動」は「向社会的な行動」に負の影響を及ぼすことが明らかになった。また,「内在化問題行動」と「向社会的な行動」の間には,互いに負の影響関係が認められた。変数相互間の関係性については,発達カスケードを踏まえて考察を行った。本研究の結果を踏まえた介入や支援への示唆として,離婚後の「葛藤的なコペアレンティング」を抑制することの重要性および子どもの「外在化問題行動」に着目することの重要性が示された。

  • 生田目 光, 沢宮 容子
    原稿種別: 原著
    2023 年 71 巻 2 号 p. 131-144
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

     本研究ではポジティブボディイメージの一種であるボディ・アプリシエーションを高める心理教育的支援の開発に向けた基礎的な研究を行うこととした。具体的には,ボディ・アプリシエーションを促進すると考えられる感謝,セルフ・コンパッションおよびメディアの影響を扱い,適応的調和食行動や人生満足度への影響を含めて,統合的支援モデルを検討することを目的とした。264名の大学生を対象に構造方程式モデリングをおこなった結果,仮説モデルがおおむね支持された。感謝はセルフ・コンパッションを促進し,セルフ・コンパッションはボディ・アプリシエーションを促進した。また,感謝はボディ・アプリシエーションを直接的にも促進していた。メディアの影響は,ボディ・アプリシエーションを促進しなかったが,適応的調和食行動を促進した。さらに,ボディ・アプリシエーションは適応的調和食行動と人生満足度を促進していた。これらの結果は,ボディ・アプリシエーションの発達と介入ターゲットの理解の促進に貢献しうる。

原著[実践研究]
  • ―研究者と教師が連携した語彙学習方略指導の効果とそのプロセス―
    内田 奈緒, 水野 木綿, 植阪 友理
    原稿種別: 原著[実践研究]
    2023 年 71 巻 2 号 p. 145-158
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/06/14
    ジャーナル フリー

     本研究では,研究者が効果的な語彙学習方略について明示的に指導し,教師が通常授業で方略使用を支援する方略指導実践を行った。その実践を通して,高校生の方略使用の変化と,変化の個人差の背景にあるプロセスについて検討した。実践では,高校1年生1クラス33名を対象に,英単語を他の情報と関連づけながら学習する方略について指導した。指導の効果について,実践開始前の4月から実践開始後の7月,2月にかけて,指導した関連づけ方略の使用が継続的に増えていた。また,指導後方略を普段の学習でよく使うようになった生徒3名とあまり使うようにならなかった生徒2名にインタビューを行った。その結果,方略を使うようになった生徒は,指導を受ける前にもともと自分が使用していた方略の問題を認識し,それと相対化して新たな方略の有効性を認知していた。一方,あまり使うようにならなかった生徒は,指導前の学習について具体的な問題は認識せず,新たな方略について感覚的に,あるいは外的資源に依存して有効性を認知していた。研究者と教師が連携する方略指導の有効性および,元の学習方略と新たな学習方略を相対化することの重要性が示唆された。

エラータ
feedback
Top