教育心理学研究
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49 巻, 2 号
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  • 黒田 祐二, 桜井 茂男
    2001 年 49 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 中学1・2年生を対象として, 友人関係場面における目標志向性 (経験・成長目標, 評価-接近目標, 評価-回避目標) と抑うつとの関係について検討したものである。研究1において, 目標志向性を測定する尺度を開発し, その信頼性と妥当性が検証された。研究2では, 目標志向性と抑うつとの関係を重回帰分析により検討した。その結果, Dweck & Leggett (1988) の仮説通り,「対人的経験を積むことを通して自分を深めようとする」経験・成長目標は抑うつを抑制し,「自分の性格について悪い評価を避けようとする」評価-回避目標は抑うつを促進するが, Dweck & Leggettの仮説に反して,「自分の性格について良い評価を得ようとする」評価-接近目標は抑うつを抑制することが明らかになった。また, 評価-接近目標が抑うつを抑制する効果は, 2年生よりも1年生において顕著にみられることが示された。
  • 水野 治久, 石隈 利紀
    2001 年 49 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    アジア系留学生の専門的ヘルパー, 役割的ヘルパー, ボランティアヘルパーに対する被援助志向性に関連する社会・心理学的変数を抽出するために, 質問紙調査が実施された。国立大学に在籍する韓国, 中国, 台湾のアジア系在日留学生を対象に調査を行い, 257票の質問紙が回収された。専門的ヘルパーとして留学生担当教官, 役割的ヘルパーとして日本語教師, 指導教官, ボランティアヘルパーとして同国人留学生, 日本人学生が設定され, 学習・研究, 健康, 対人関係, 住居・経済, 情緒領域の被援助志向性が尋ねられた。分析の結果, 同国人留学生の一部の領域を除き, 被援助志向性と呼応性への心配, サポートの量との関連が認められた。またいくつかのヘルパーでは, 性差や自尊感情, 日本語能力等との関連が認められた。自尊感情では, 被援助志向性と正の関連が認められた。このような結果から, ヘルパーや領域によっては, 性差や自尊感情などを考慮する必要があるが, サポートを積極的に供給すること, 呼応性への心配を低くする介入で, 被援助志向性を高められる可能性が示唆された。
  • 藤井 恭子
    2001 年 49 巻 2 号 p. 146-155
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 青年期の重要な友人との関係における心理的距離をめぐる葛藤について検討する。具体的には, 青年が友人との心理的距離をめぐり,「近づきたいけれども近づきすぎたくない」,「離れたいけれども離れすぎたくない」というように,「適度さ」を模索して生じる葛藤である。本研究ではこの葛藤を,「山アラシ・ジレンマ」として捉え,(1) 青年期の友人関係における「山アラシ・ジレンマ」を抽出する,(2)「山アラシ・ジレンマ」に対する心理的反応の仕方を明らかにする,(3)「山アラシ・ジレンマ」とそれに対する心理的反応の仕方の関係について, 心理的距離の程度から明らかにする, ことを目的として研究を行った。その結果, 近づくことに対するジレンマ, 離れることに対するジレンマにおいて, 心理的要因がそれぞれ2つずつ抽出された。それらは, 対自的要因によるジレンマと, 対他的要因によるジレンマであると整理された。また, 生じた「山アラシ・ジレンマ」に対して,「萎縮」,「しがみつき」,「見切り」という3つの心理的反応があることが明らかとなった。さらに, 対自的要因による「山アラシ・ジレンマ」ほど, 心理的反応に結びつきやすく, その傾向は相手との心理的距離を遠く認知しているほど強まることが明らかとなった。
  • 対人様式としての愛着と個別情動に対する意識的態度との関連
    坂上 裕子, 菅沼 真樹
    2001 年 49 巻 2 号 p. 156-166
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    大学生を対象に, 対人様式としての愛着と情動制御との関連を検討した。情動制御の一側面として, 本研究では意識レベルでの情動情報の処理に着目した。まず研究1で,「個別情動に対する意識的態度尺度」を作成した。これは, 代表的な4情動 (怒り, 悲しみ, 恐れ, 喜び) に対して, 個人が意識の上でどのような態度や備えを有しているかを測る尺度であり, 4つの下位尺度 (内省傾向, 自己の情動の覚知, 他者の情動の覚知, 情動に対する不快感) から構成された。次に研究2で, 大学生208名に, 愛着に関する尺度(戸田, 1988)と個別情動に対する意識的態度尺度への回答を求め, 両尺度の関連を検討した。その結果, 両者には弱いながらも関連が認められた。すなわち, 愛着の安定性の高い人は, 自他の悲しみや喜びに対する内省や覚知が高く, 回避性の高い人は, 悲しみや喜びに対する不快感が高い傾向があった。また, 両価性の高い人は, 自他の怒り, 喜びの覚知が低い傾向があった。以上より, 各愛着特性は, 特定の情動に対する意識の上での異なる態度や構えと関連しており, それらの態度や構えが, 各愛着スタイルを維持するように働いているのではないかと考察された。
  • 櫻庭 隆浩, 松井 豊, 福富 護, 成田 健一, 上瀬 由美子, 宇井 美代子, 菊島 充子
    2001 年 49 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,『援助交際』を現代女子青年の性的逸脱行動として捉え,その背景要因を明らかにするものである。『援助交際』は,「金品と引き換えに, 一連の性的行動を行うこと」と定義された。首都圏の女子高校生600人を無作為抽出し, 質問紙調査を行った。『援助交際』への態度 (経験・抵抗感) に基づいて, 回答者を3群 (経験群・弱抵抗群・強抵抗群) に分類した。各群の特徴の比較し,『援助交際』に対する態度を規定している要因について検討したところ, 次のような結果が得られた。1) 友人の『援助交際』経験を聞いたことのある回答者は,『援助交際』に対して, 寛容的な態度を取っていた。2)『援助交際』と非行には強い関連があった。3)『援助交際』経験者は, 他者からほめられたり, 他者より目立ちたいと思う傾向が強かった。本研究の結果より,『援助交際』を経験する者や,『援助交際』に対する抵抗感が弱い者の背景に, 従来, 性非行や性行動経験の早い者の背景として指摘されていた要因が, 共通して存在することが明らかとなった。さらに, 現代青年に特徴的とされる心性が,『援助交際』の態度に大きく関与し, 影響を与えていることが明らかとなった。
  • 佐藤 典子
    2001 年 49 巻 2 号 p. 175-185
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究の第1の目的は, 音楽大学への進学理由の認知について検討することであった。そのため, 音楽大学の1, 2年生を対象に調査を行った。女子学生378名の, 進学理由項目への回答に対して斜交因子分析を行った。結果から, 進学理由について5因子 (将来展望, 能力活用, 同一視, 他者のすすめ, 消極的動機) が見出された。最初の3つの因子問に正の相関が見られ (r=0.39~0.49), これらの因子は積極的な動機を示すものであった。本研究の第2の目的は, 音楽大学への進学理由の認知が, 大学における適応に与える影響を検討することであった。そのため, それらの関係についての因果モデルを作成した。なお, 適応感についての項目は, 主成分分析を用いて選択した。データは, 共分散構造分析を用いて分析され, 異なる専攻間の比較も行った。その結果, すべての専攻において, 積極的動機が大学での適応を導くことが示された。
  • 情報回避・情報収集・解決策産出と心配
    杉浦 義典
    2001 年 49 巻 2 号 p. 186-197
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    心配は, 制御困難な思考であると同時に, ストレスへの対処方略でもある。本研究では, 心配がどのような性質の対処方略なのかを調べるために, 情報回避, 情報収集, 解決策産出という3つの対処方略とストレスに関する思考の制御困難性との関連を検討した。成人134名を対象とした質問紙調査の結果, 情報回避, 情報収集, 解決策産出のいずれもが思考の制御困難性を増強し得ることが示された。さらに, この関連はそれぞれの対処方略のもつストレス低減効果とは独立であった。また, 性格特性によって, 対処方略の使用が思考の制御困難性に及ぼす影響が異なることが分かった。結果を, 心配のメカニズムのモデルに照らして考察し, 問題焦点型対処に分類される情報収集と解決策産出については, 動機的な要因による思考の持続が思考の制御困難性を規定するのに重要である可能性を示唆した。
  • 特性の解明及び生活経験との関連
    盧 怡慧
    2001 年 49 巻 2 号 p. 198-208
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 日本における高齢者の知恵の特性の解明, 及び知恵と生活経験の関連を明らかにすることを目的とした。実験では, 高齢者と大学生に人間関係の葛藤を主題とする「人生設計課題」を提示し, 発話思考の内容を事実に基づく知識, 手続き的知識, ライフ・スパンの文脈論, 不確実性への処理能力, 価値相対論の5つの観点から評定し, 得点化した。その結果, 高齢者は「ライフ・スパンの文脈論」「不確実性への処理能力」において特に得点が高く, また「手続き的知識」については大学生との間に差が示されなかった。よって, 解決策の提示のほかに, 問題を多方面から捉え, 熟慮することを重視する傾向が, 高齢者の知恵の特徴として挙げられた。一方, 高齢者の知恵と生活経験の関連を検討したところ, 過去に「役職経験があること」及び「経験した職種の数が多いこと」が豊富な「事実に基づく知識」と関連することが示された。また多様な活動に積極的に取り組む高齢者は「ライフ・スパンの文脈論」「不確実性への処理能力」「価値相対論」において成績が優れており, 日常における難題の解決により多くの知恵を働かせていることが明らかになった。
  • 教員養成学部の学生を対象に
    若松 養亮
    2001 年 49 巻 2 号 p. 209-218
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    大学生における進路未決定のうち, 一般学生に見られる決定の困難さのメカニズムを解明するために, 教員養成学部において質問紙調査を実施した。分析の対象は3年生233名である。「もう迷わない」と決めた進路の選択肢があるか否かで操作的に決定・未決定を定義づけたところ, 決定者が84名, 未決定者が149名であった。その両群間によって, 未決定者は (A) 自分の抱える問題が何なのかを理解できていないのではないか, および (B) 意思決定のための行動に結びつきにくい困難さを抱えているであろうという2つの仮説を検討した。その結果, 仮説Aは支持されたが, 仮説Bは支持されなかった。そこで「快適さ」の指標を加えて分析対象者を限定したところ, 未決定者が情報や答が得られにくい問題に悩まされているという結果が見出され, 仮説Bが支持された。さらに未決定者のうち, indecisive傾向の強い者は拡散的に新たな進路の選択肢を求めるという結果が見出され, それは仮説Bを支持するものであった。最後に, 未決定者に対して有効と思われる処遇と, 今後の研究に向けての考察を行った。
  • 出口 拓彦
    2001 年 49 巻 2 号 p. 219-229
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, グループ学習に対する指導を独立変数, グループ学習の効果および問題点に対する児童の認知を従属変数として, 複数の指導の組み合わせの効果について検討することを目的とした。16名の小学校高学年の教師にはグループ学習に対する指導について尋ね, 495名の児童にはグループ学習の効果および問題点に対する認知について尋ねた。グループ学習に対する指導をクラスター分析により「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」に分類し, 各指導の効果を分散分析によって検討した。その結果,(a)「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」を共に行っている学級において, 最も肯定的な認知がなされていること,(b) 「討議に関する指導」のみを多く行い「参加・協力に関する指導」はあまり行わなかった学級において, 最も否定的な認知がなされていること, などが示された。このことから, グループ学習の指導の際には,「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」を共に行うことの重要性と, 「討議に関する指導」のみを行うことの問題が示唆された。
  • 荒井 龍弥, 宇野 忍, 工藤 与志文, 白井 秀明
    2001 年 49 巻 2 号 p. 230-239
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 縮小過剰型の誤概念として小学生の動物概念を取り上げ, この誤概念を科学的な概念に修正するための境界的事例群を用いた教授法の効果を検討した。本研究の中心的仮説は, 境界的事例群を用いた教授により縮小過剰型誤概念が修正されるであろうというものであり, この仮説を検証するために, 3つの実験が行われた。実験はいずれも, 小学校5年生を対象とした理科の授業として行われ, 事前テスト, 自作のビデオ教材の視聴と視聴後の話し合いによる教授, 事後テストという3つのセッションで構成された。境界的事例群として水中のプランクトン事例群及び貝事例群を単独で用い, 食べる, 動く, 排泄するシーンを示すビデオ教材の視聴を行った第1, 第3実験では, 概念の組みかえを示す結果は得られなかった。境界的事例としてプランクトン事例と貝事例群を用いたビデオ教材の視聴を行った第2実験では, すべての課題の正答率が大幅に増加し, 仮説を支持する結果を得た。これらの結果から, 縮小過剰型誤概念の修正には, 2種の境界的事例群の対提示が有効であることが確認された。
  • 能動性に着目して
    杉浦 義典
    2001 年 49 巻 2 号 p. 240-252
    発行日: 2001/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    心配は, 制御困難な思考であると同時に, 困難な問題に対処するために能動的に制御された過程でもある。心配研究の主要な課題は, 心配がなぜ制御困難性になるのかを説明することである。本論文では, 先行研究を,(1) 心配の背後の自動的処理過程を制御困難性のメカニズムとして重視する流れと,(2) 心配の能動性そのものの中に制御困難性の要因を見いだそうとする流れ, の2つに分けたうえで,(2) に重点を置いて概観する。(2) の立場からの研究の課題は, さらに, a. 心配の機能や目標を明らかにするという大局的なものと, b. そのような機能や目標を実現するための方略を明らかにするという微視的なものとに区分される。本論文では特にb. のような微視的な視点に立った研究の必要性を提唱する。
  • 2001 年 49 巻 2 号 p. 264-
    発行日: 2001年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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