本研究では, 3才児をとりあげ, 2列の数の多少等判大内・天野:3歳児における数の多少等判断77 断を求めた。特に課題判断での, 多少・等の用語の理解に留意し, はじめに, 実物キャラメル1~3個による予備テストを行い, その成功者のみを本実験の被験者とした。実験Iでは, 要素数4, 3の2集合を対応配置に並べた場合, また実験量IIでは, これを非対応配置にした場合を, それぞれカード図形で提示し, 異数・同数の比較判断を求めた。
結果のうち, 主なものを示すと次のようである。
1) 多少・等の用語が予備テスト前からわかっている者は3才児の1/3に過ぎない。また3才児の中でも前半児と後半児に年齢差がみられた。後半児は誤りのない者が多く, 誤りをしても用語理解に達するまでの二次的教示回数が少なかった。前半児の中には, 中用語理解の基準に達せずに終った失敗児もみられた。3才児に多少等判断を求める際は, 事前の用語理解の確認が不可欠である。
2) 予備テストでは, 異数比較よりも同数比較に誤答率が高く, 言葉の理解として試たくさん」よりも試同じ」の方が難しいことが示された。中
3) 年齢差や, 試たくさん」「同じ」の難湯差にかかわらず, 予備テスト中に被験者の9割弱が用語理解に成功し, 3才児における比較用語の教示可能性も示された。
4) 対応配置の実験1では, 異数比較, 同数比較の判断が, ともに確実に行われた。
5) しかし, 実験IIの非対応配置では, 全体として正答率は低くなり, 用語を理解していても, この年齢での数判断が視知覚的なものに頼っていることが示された。非対応配置の判断基準の一貫性に関しては, 一貫性のある者のうちでは長さによるものがほとんどを占めるが, 被験児の過半数が, 課題の視知覚的特徴によって判断する非一貫反応者である。
6) 実験IIの非対応配置の中では, 4-3の異数比較に正答が比較的多くみられたが, 同数比較は, これよりむずかしかった。同数比較の中では3-3と4-4に差があり, 4-4にはほとんど正答がみられない。
7) ここでは年齢差がみられ, 後半児では, 伺数比較 4-4から3-3へ, さらに異数比較へと成績が前半児より明瞭によくなり, そのため前半児との差がこの順序で開いていく。これらのことから3才児の多くは, 異数から同数へと比較が拡がり, 多少・等判断のうちでは等判断は遅れるのではないかと考えられる。
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