視覚の科学
Online ISSN : 2188-0522
Print ISSN : 0916-8273
ISSN-L : 0916-8273
38 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 佐々木 翔, 木田 淳子, 小林 克彦
    2017 年 38 巻 3 号 p. 42-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    【目的】空間覚を用いた新しい不等像視検査装置(本装置)を考案した。本装置の測定精度と有用性について評価を行った。

    【対象と方法】屈折異常以外に眼科的疾患のない健常者30名を対象とした。方法は, 両眼を完全矯正後, 右眼にサイズレンズを装用して10%の全面不等像視・10%の水平不等像視・10%の垂直不等像視の3種類の人工的不等像視を作成し, 本装置で不等像視の測定を施行した。測定はそれぞれ3回ずつ行い, 平均値を測定値として採用した。

    【結果】測定結果(平均値±標準偏差)は, 10%の全面不等像視で9.62±1.16%, 10%の水平不等像視で9.24±0.89%, 10%の垂直不等像視で10.40±1.26%であった。

    【結論】本装置による測定では, 全面・水平・垂直いずれの不等像視においても, 作成した人工的不等像視に近似した結果が得られ, 理論値からの誤差は小さかった。本装置は高い測定精度を有しており, 不等像視の定量法として有用である。

  • 新井 慎司, 髙木 優里, 長谷岡 宗, 稲垣 理佐子, 王 瑜, 鈴木 寛子, 古森 美和, 彦谷 明子, 堀田 喜裕, 佐藤 美保
    2017 年 38 巻 3 号 p. 48-52
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    【目的】前眼部光干渉断層計(OCT)で水平直筋付着部距離を測定し, 小児と成人で比較すること。

    【対象】遠見眼位が20△以内の斜位, 眼軸長28mm未満, 眼手術歴がなく, 研究への参加の同意が得られたボランティアおよび浜松医科大学受診者。小児を18歳未満, 成人を18歳以上とした。

    【方法】前眼部OCTはTOMEY社SS-1000 CASIAを用いた。隅角底から内直筋および外直筋付着部までの距離を測定した。年齢と付着部距離, 眼軸長と付着部距離の相関を解析した。

    【結果】眼軸長は小児が23.71±1.38mm, 成人が25.11±1.29mmで, 小児が有意に短かった。しかし, 内直筋付着部距離は小児が4.02±0.46mm, 成人が4.08±0.57mm, 外直筋付着部距離は小児が5.96±0.50mm, 成人が5.83±0.50mmで, 差はなかった。年齢と付着部距離, 眼軸長と付着部距離に相関はなかった。

    【結論】前眼部OCTでは非侵襲的に外眼筋付着部の評価が可能で, 今回撮影できた最少年齢である4歳以上では, 水平直筋付着部距離は年齢や眼軸長に影響されないことが判明した。

  • 中野 由香梨, 寺澤 靖雄, 神田 寛行, 大澤 孝治, 三好 智満, 澤井 元, 不二門 尚
    2017 年 38 巻 3 号 p. 53-59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    我々の開発する人工視覚は, 視細胞変性後も残存している網膜細胞を経網膜的に電気刺激し, 失明患者の視覚を再建するものである。人工視覚では刺激電流波形として一般的に方形波が用いられているが, より効果的な電気刺激パラメータを見出すため, 本研究では, 4種類の刺激波形形状(方形波, 三角波, 鋸波, 逆鋸波)の刺激効率を電気生理学的に検討した。ラット眼球の強膜を半層切除した部位上に刺激電極を設置し, 硝子体内に挿入した帰還電極との間で二相性電流パルス(cathodic-first)を通電した。刺激には, 等電荷量の4種類の波形を用いた。三角波, 鋸波刺激による神経応答は, 方形波より有意に大きかった。三角波と鋸波にて方形波よりも大きな応答が得られたことから, 三角波, 鋸波にてより低い電荷量で刺激できる可能性が示唆された。

  • 前川 ほのか, 稗田 牧, 中村 葉, 小泉 範子, 外園 千恵, 木下 茂
    2017 年 38 巻 3 号 p. 60-65
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    【目的】近視を有する小学生におけるオルソケラトロジー(オルソ)の近視進行抑制効果と波面収差の関係性を検討する。

    【方法】対象は異なる3社のオルソレンズを装用した72例144眼である。2年間のレンズ装用後, 最低3週間レンズを外した。レンズ装用2年後の波面収差(角膜と眼球4mmのコマ様収差, 球面様収差, 球面収差, 全高次収差)と装用前後の屈折度数, 眼軸長の変化量の相関関係を検討した。

    【結果】角膜の球面様収差と屈折度数変化量に正の相関を認めた(R=0.17, Pearson検定)。角膜と眼球のコマ様収差, 球面様収差, 球面収差, 全高次収差と眼軸長変化量に負の相関を認めた(R=-0.20, -0.24, -0.19, -0.23, -0.22, -0.23, -0.21, -0.23, Pearson検定)。

    【結論】近視を有する小学生において, オルソレンズ装用により, 角膜と眼球の高次収差が増加することで眼軸長の伸長が抑制され, 近視進行抑制効果を生じることが示唆された。

  • 有賀 義之, 梶田 雅義
    2017 年 38 巻 3 号 p. 66-71
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/03
    ジャーナル フリー

    【目的】累進屈折力レンズ(PAL)のフィッティング不適切例に対し, どのような調整を必要としたかを調査した。また, フィッティングの調整による不具合の改善を他覚的に評価できるか検討した。

    【方法】対象はPALを処方し2015年5月から1年の間に再来があった患者のうち, 不適切なフィッティングが認められた137名である。そのうちの3名については, PAL装用下のフィッティング調整前後でSpotTM Vision Screener(スポットビジョン)による測定を行い, 等価球面度数(SE)を比較した。

    【結果】頂点間距離の調整を要したのは84名, 遠用フィッティングポイント(FP)の調整を要したのも84名であった。そのうちの3名6眼の平均SEは調整前-0.56±0.44D, 調整後-0.33±0.47Dで有意差があった(t検定, p=0.0001)。

    【結論】PALの不具合を訴える場合, 頂点間距離と遠用FPを点検することが重要である。また, スポットビジョンは不適切なフィッティング症例の他覚的評価に有用であることが示唆された。

インタビュー
トピックス
本・論文紹介
feedback
Top