ウルトラロービジョン(ULV)は,完全な盲ではないが,物の形を認識することが不可能な,高度視機能障害を意味する。近年,遺伝性網膜変性でULVとなった網膜色素変性(RP) の患者に対して,正常な遺伝子を補充する遺伝子治療,光感受性色素の遺伝子を網膜神経節細胞に導入する光遺伝学的治療,網膜の内層の神経を電気刺激する人工網膜,iPS細胞から再生した視細胞を網膜下に移植する再生医療などの新しい治療法が開発されている。治療による視機能改善を評価する項目として,Leber先天盲に対する遺伝子治療では,迷路歩行,暗順応下の光覚閾値が採用され,人工網膜では到達運動,線に沿った歩行が採用された(いずれも米国食品医薬品局(FDA)から認可されている)。今後ULVに対して様々な新しい治療法が開発されると予想されるが,対象患者の選定および治療効果の判定に用いる視機能評価法,日常生活の改善の評価法の標準化が必要と考えられる。
既報において被写界深度延長レンズ(伊藤光学工業社製ESレンズ)は,一般的な非球面レンズと比べ装用時の調節変化量が小さいことが示唆される結果を報告した。今回,被写界深度延長レンズ装用の眼疲労に与える影響を眼疲労の他覚的パラメータである融像維持能力と主観的パラメータであるSSQを用いて検討した。被写界深度延長レンズを装用することによって他覚的にも主観的にも視覚負荷後の眼疲労値が低下する結果となった。被写界深度延長レンズは装用により調節を多用する環境において調節反応が軽減される可能性があり,眼の負担軽減に繋がることが示唆された。
篠森敬三先生とは東京工業大学大学院で同じ研究室の後輩学生として学んだとき以来の関係である。先生は色覚の研究で常に興味深い成果を挙げられており,また,近年は特に加齢に関する研究を行われている。本インタビューではそれらの研究の歴史を中心に先生から伺ったお話をご紹介する。最後に若手研究者へのメッセージも伺った。
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