土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
73 巻, 2 号
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和文論文
  • 粕谷 悠紀, 稲川 雄宣, 高橋 真一, 山本 彰, 古関 潤一
    2017 年 73 巻 2 号 p. 116-130
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     既設構造物基礎の耐震補強工事等において,狭隘地や空頭制限下でも施工可能かつ経済性に優れた高性能な小口径合成鋼管杭工法(以下,本工法という)を開発した.本工法は,ボーリングマシンを用いて二重管削孔し,鋼管を建込んだ後にグラウトを充填し,地盤中に鋼管を定着させる技術である.
     本報告では,鋼管杭継手部の曲げ強度,曲げ剛性および杭の水平抵抗特性を把握するために実施した,杭材の曲げ試験結果と杭の水平載荷試験結果について述べる.その結果,1) 鋼管杭継手部の曲げ強度と曲げ剛性は,鋼管杭単体のそれと同等以上の性能を有すること,2) 杭の水平方向地盤反力係数は,道路橋示方書・同解説IV下部構造編と建築基礎構造設計指針に示される各種調査・試験結果の変形係数から算定した水平方向地盤反力係数を上回ることを確認した.
  • 廣瀬 剛, 伊藤 譲, 石川 達也, 赤川 敏
    2017 年 73 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究では凍結融解土の透水係数を実用的なレベルで予測する実験的方法を提案するため,飽和細粒土を用いて予圧密と実験荷重を変化させた凍結融解実験を行った.実験では人工地盤凍結工法の現場での施工条件を考慮し,一次元凍結融解実験に加え,水平変位を拘束した条件下で水平方向の凍結融解実験を実施した.その結果,凍結融解土の透水係数は凍上率,予圧密荷重や過圧密比よりも実験荷重の影響を強く受けていることが明らかになった.つまり,地盤の固結状況や過圧密比よりも有効土被り圧を知ることで,凍結融解後の透水係数を実験的に予測できる.さらに,水平方向変位が拘束された凍結融解実験より,凍結融解土では含水比が凍結管付近で高くなり,そのことが凍結融解土全体の透水係数のさらなる増加に関係することが示された.
  • 矢部 満, 寺田 悠祐, 野並 賢, 飛田 健二, 上野 将司, 曽根 好徳
    2017 年 73 巻 2 号 p. 141-156
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/20
    ジャーナル フリー
     集中豪雨や局地的大雨が近年増加傾向にある中で,豪雨に起因した斜面崩壊の予測はますます重要性を帯びてきている.近年求められている斜面崩壊予測手法には,土砂災害警戒発令の観点とともに,警戒解除の観点での判定可否が必要かつ重要である.本研究では,土砂災害警戒解除の定量的判断に資する地盤の間隙水圧の推定法を検討した.この方法は,タンクモデルによって降雨データから得られる土壌雨量指数を,間隙水圧の観測ピーク値と一致するようにフィッティングし,そのフィッティング式から斜面崩壊時の間隙水圧の値を推定するものである.この推定方法を伊豆大島の過去の土砂災害に関する降雨データに基づいて検証した.検証の結果,推定方法により,狩野川台風や2013年台風第26号の土石流災害のきっかけとなった表層崩壊発生が再現された.
  • 古河 幸雄, 武田 隆宏
    2017 年 73 巻 2 号 p. 157-168
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
     流動化処理土に短繊維を添加すると,混合時のフロー値やブリーディング率は短繊維の直径や長さの影響を受け,添加率の増加とともに低下するが,流動化処理土の密度や硬化後の湿潤密度には影響を及ぼさない.一軸圧縮強さは,短繊維の直径や添加率,調整泥水の密度と相関関係があることから,それらを変数とした実験式を提案した.破壊ひずみや変形係数は,添加率や直径,長さ,調整泥水の密度との相関性は認められなかった.一方,15%ひずみにおける圧縮応力と一軸圧縮強さの比で示した強度比は,短繊維の添加率や直径,長さとの相関性を示したことから,それらを変数とした実験式を提案するとともに,残留強度は,添加率が大きく細い方が延性的挙動になることを示した.
  • 池本 宏文, 中島 進, 高崎 秀明, 藤原 寅士良
    2017 年 73 巻 2 号 p. 169-185
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
     本究では,崩壊防止ネットと地山補強材の併用による石積み壁の耐震補強方法の補強効果を実物大規模で検証するために,縮尺1/2程度の模型を用いた大型振動台実験を実施した.鉄道構造物等設計標準のL2地震動による加振の結果,静的な釣合い計算により降伏震度を0.4程度として地山補強材長さを設定した条件において,石積み壁の水平変位量,背面地盤の沈下量が限定的であることを確認した.石積み壁,地山補強材,ネットの応答特性から,ネットが積み石の抜け出しを防止するとともに壁面全体を拘束することで,離散的に打設した地山補強材の抵抗力が石積み壁全体に伝達され,高い補強効果が発揮されることが分かった.また,静的安定解析による補強効果評価法に従い実験の検証解析を行った結果,実験結果を安全側に評価できることを確認した.
  • 笠間 清伸, 堂本 佳世, 平澤 充成, 善 功企, 古川 全太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. 186-194
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,固化材等を添加し機械脱水(以下,脱水固化処理とよぶ)して作製した浚渫土砂ブロックを対象に,実海域における暴露試験と動植物の生息状況調査を行い,長期強度の評価および海洋環境への適応性を評価した.得られた主な結果を以下に示す.(1)脱水固化処理により,10MPa以上の一軸圧縮強さを有する浚渫土砂ブロックが作製できる.(2)ブロックの一軸圧縮強さは,材料密度や固化材添加率によらず,水セメント重量比による強度評価が簡便であり有効である.(3)設置から41ヶ月の間,気中,乾湿(潮の干満帯)および海中に暴露しても,一軸圧縮強さが低下することなく十分な耐久性を有する.(4)乾湿および海中暴露したブロックに生息する動植物の被覆率や出現種数は,比較対照としたコンクリート壁面とほぼ同様であり海洋環境への適応性がある.
  • 岩田 智明
    2017 年 73 巻 2 号 p. 195-211
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/20
    ジャーナル フリー
     現在で使用しているクーロン土圧に基づいた土圧計算式は,粘着力を考慮した計算が不可能であり,また,現状斜面のような斜面勾配が多様に変化する場合に対応する計算式は存在しない.
     本論文ではこの問題点を解消する方法として,クーロンの土圧理論を基本とした新たな土圧計算式を提案する.また,本提案式の妥当性の確認として,従来の土圧計算式および試行くさび法を用いて得られた算出結果と比較し,検証した.
     また,既存のランキン土圧に基づいた地震時土圧計算式は複雑な数式となっていることから,本論文では,この土圧計算式を簡略化し,地震時すべり角計算式を提案する.併せて,この計算式についても,従来法との妥当性を確認した.
  • 山脇 敦, 土居 洋一, 大嶺 聖
    2017 年 73 巻 2 号 p. 212-223
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー
     産業廃棄物安定型最終処分場等のプラスチック等が混入した廃棄物地盤は,土砂地盤とは異なる強度特性を有することが現場経験的には知られているものの,強度試験法や地盤利用等に際しての解析・評価法は確立されていない.本研究では国内外19現場29箇所での現場試験により,プラスチック等が混入した廃棄物地盤は柔軟で降伏しにくい強度特性を有することを把握した.また,沈下計測と実証載荷実験により,こうした地盤は沈下しやすい反面,不同沈下は発生しにくいことを確認し,その要因として廃棄物の水平方向の繋がりにより荷重を広範囲で受けることが推察された.提案した試験法について,衝撃加速度試験,安息角試験により粘着力,内部摩擦角,極限支持力が推定できたとともに,現場空隙試験による空隙率が各種強度定数と関係することが窺えた.
  • 原 弘行, 末次 大輔, 松田 博, 亀井 健史
    2017 年 73 巻 2 号 p. 224-232
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー
     固化処理土は海水に曝露するとその表面において,白色の析出物が生じる場合がある.本研究では,粘性土試料を母材とした石灰処理土に対して,海水を模擬したマグネシウム水溶液への浸漬実験を実施し,処理土表面に生成される析出物について観察・分析を行うとともに析出物生成の有無による石灰処理土のカルシウム溶出挙動および力学的劣化状況の差異を検討した.その結果,比較的石灰添加量が多いケースで処理土表面に析出物の生成が確認された.この析出物は球体状の水酸化マグネシウムと推定され,その緻密な構造によって処理土からのカルシウムの溶出,ひいては力学的劣化の進行を抑制する効果を持つことを示した.
  • 木戸 隆之祐, 肥後 陽介, 高村 福志
    2017 年 73 巻 2 号 p. 233-247
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー
     不飽和土はメニスカス水に働くサクションにより高い強度・剛性を示すが,ピーク強度後は完全飽和土や乾燥土に比べて明瞭なせん断帯と顕著なひずみ軟化を伴い脆性的な破壊モードを示す.不飽和土の破壊メカニズムの解明には,せん断帯発達に伴うサクションの進行的な変化や,メニスカス水の分布が巨視的な力学挙動に及ぼす影響を把握することが重要である.本研究では,不飽和砂の三軸圧縮過程で生じるせん断帯をX線CTで可視化し,間隙水の曲率,存在形態を調べる画像解析を行った.その結果,せん断帯の発達過程でサクションの変化は極めて小さいことがわかった.また,メニスカス水の数の減少がひずみ軟化の一因であることを明らかにした.特に,せん断帯内部はメニスカス水の数が少なく,軸差応力へのサクションの寄与が小さいことが示唆された.
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