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西山 浩司, 横田 いずみ, 広城 吉成, 朝位 孝二
2019 年75 巻2 号 p.
I_1201-I_1206
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
フリー
本研究では,自己組織化マップを適用し,九州地方北部と中国地方西部を対象に暖候期の気象場パターンと豪雨頻度の関連性を調べ,広島県で発生した40年間の土石流災害事例がどの気象場パターンに属するか調べた.また,広島県で記録的な災害になった平成30年7月豪雨の気象場の特徴を調べ,過去の類似事例の特徴と比較した.その結果,広島の災害事例は,共通して下層ジェットと湿舌の影響を受け,互いに類似する特徴を持っていた.また,平成30年7月豪雨の事例は,豪雨発生の可能性が高い気象場パターンに分類され,2日間もそのパターンに晒され続けた結果として記録的な災害へと繋がった.その類似事例に2009年7月24日の豪雨事例があり,両者に共通する特徴として,福岡県と広島県に災害をもたらしたこと,豪雨域が広範囲であったことが挙げられる.
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善光寺 慎悟, 手計 太一, 榊原 一紀, 松浦 拓哉
2019 年75 巻2 号 p.
I_1207-I_1212
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
フリー
本研究では深層学習の1つである畳み込みニューラルネットワークを利用して全球表面温度画像からタイ国チャオプラヤー川上流域の2ヶ月後の降水量の季節予報を行った.また,モデルのニューロン数の変更による予測モデル精度の評価を行った.その結果,小さいニューロン数から,層を深くするにつれて増加させ,減少させるというように,起伏を生じさせたモデルの予測精度が高かった.次に,予測結果を月ごとに分別し,RMSE,MAE,RMSE/MAEの評価関数を用いて評価を行った.その結果,RMSE及びMAEはタイ国の乾期(11~4月)では大きい値,雨期(5~10月)では低い値となった.RMSE/MAEは正規分布に従うとされる値よりも高い値であり,この予測モデルは乾期よりも雨期の方が定性的に精度よく降水量を予測するが,雨期中の予測には外れ値が多く存在するという特徴を保持していた.
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鈴木 美妃, 鈴木 麻里子, 北嶋 竜也, 井上 一哉
2019 年75 巻2 号 p.
I_1213-I_1218
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
フリー
本研究では,ダルシー・非ダルシー遷移領域における溶質輸送の分散特性を検討するため,均等係数に幅のある多孔質体を対象としたカラム実験を実施した.破過曲線に対する時間モーメント量を基に,分散性を表す指標として見かけの分散長を定義し,平均粒径と均等係数,間隙率,レイノルズ数,ペクレ数の各物理量と見かけの分散長の関係を検討した.実験の結果,同一の平均粒径を有する試料であっても見かけの分散長は均等係数に依存することやレイノルズ数やペクレ数と見かけ分散長の間に相関性があることがわかった.線形重回帰分析とAICにより,ダルシー・非ダルシー領域の輸送挙動に対する見かけの分散長を簡便に推定すべく,均等係数とレイノルズ数,ペクレ数による線形結合モデルを提案し,実験結果との良好な適合性を確認した.
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原田 守博
2019 年75 巻2 号 p.
I_1219-I_1224
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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一般に透水性の河床をもつ河川では,伏流や湧出などを通じて河畔の地下水との水交換を行なっている.地下水位が河川水位よりも低い状況では,河床堆積層を通じた伏流浸透が発生する.このとき地下水位が河床堆積層よりも高い場合,浸透は飽和流となり,伏流浸透量の実用的な評価式が確立している.一方,地下水位が河床堆積層よりも低い場合,浸透は不飽和流となり,従来の評価式は過小評価となることが指摘されている.この場合の伏流浸透量について,著者らは過去に従来式に代わる評価式を提案したが,その適用範囲は地下水位が十分に深い場合に限定されていた.本研究では,地下水位が河床堆積層に近づく状況にも適用できる汎用的な評価式を理論的に導出するとともに,河床下の不飽和浸透流の数値解析に基づき,新たな評価式の有効性を検証した.
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大橋 慶介
2019 年75 巻2 号 p.
I_1225-I_1230
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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扇状地河川では失水現象が河川流量を減少させることから,本来自然に備わった洪水調節機能を有していると言える.本研究では扇状地領域内における河川流量の増減に伴って変動する水の体積を貯留量と定義して,洪水前後の貯留量の変化を調べた.対象領域である長良川扇状地58.5km2に対して透水量係数1.0m2/sを与え,表流水および自由地下水の動きを河川流況計算で計算した.対象期間である2013年1月から2014年12月のうち2014年8月10日の最大流量4,740m3/sの出水イベントでは総流入量の約5%に相当する6,600万m3の貯留効果が認められた.ダム等と比較すると扇状地での洪水調節は洪水のピークカットへの寄与は小さいが,複数ピークの洪水波が連続する際でも貯留効果は継続するという特徴が明らかになった.
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阪田 義隆, 岩永 昇二
2019 年75 巻2 号 p.
I_1231-I_1236
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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地下水シミュレーションの必要なパラメータを決定する逆解析にて,再現対象の観測水位が目視観測や観測時間の違いなどによる誤差を含む場合,得られたパラメータによる計算結果がモデル全体の真の水位(全節点水位)を再現する保証はない.本研究では5000パターンの異なるパラメータの断面二次元・定常流問題に対し,真のパラメータに乱数変動させた初期パラメータ,制約付き最小二乗法,遺伝的アルゴリズム,初期パラメータ周辺での組み合わせ計算により逆解析をそれぞれ行い,全節点水位の再現性を比較した.その結果,全節点水位再現が最良となる逆解析法は,地盤条件により異なるが,最も頻度が高かったのは初期パラメータを用いた場合であり,逆解析で得たパラメータを説明因子に加えた線形判別分析により一致度約0.8で選定可能であることを示した.
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齋藤 雅彦
2019 年75 巻2 号 p.
I_1237-I_1242
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
フリー
豪雨時において斜面内に発生する湧水は,斜面崩壊の予兆の一つとして広く知られている.一方,従来の均一場を仮定した浸透流解析では,局所的に発生する湧水の状況を表現することができない.また,豪雨時には地表面付近の飽和度の上昇に伴って間隙空気圧が上昇し,その結果,降雨浸透の抑制が生じることが考えられるが,従来の浸透流解析ではこのような現象は考慮されていない.これに対して本研究では,透水係数の空間分布モデルを用いて不均一な斜面における豪雨時の湧水の発生条件および間隙空気の影響について,3次元数値シミュレーションにより検討し,降水量,斜面の透水性,表土層厚等と,湧水の発生状況について整理することを試みた.
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菅原 快斗, 佐山 敬洋, 寶 馨
2019 年75 巻2 号 p.
I_1243-I_1248
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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物理式に基づき降雨流出を追跡する分布型モデルは,演繹的なパラメータにより,未曾有の大災害に対する予測手法として期待できる.しかし,その要素モデルの中で,山地の鉛直不飽和浸透は十分なモデル化がなされていない.本研究では,滋賀県の桐生水文試験地において土壌水分量と間隙水圧の観測を行った.土壌水分量は土層から風化基岩層の上部で測定を行い,その特性について議論した.間隙水圧については,圧力拡散方程式の解析解による再現計算を行った.再現計算の結果,初期土壌水分量が高いイベントにおいて解析解の適合性が高かった.また,浸透フラックスは拡散係数によって規定されること,拡散係数の値は適合度の高いイベントから平均値を求めて一定値で設定できることを示した.
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関根 正人, 竹村 尚樹, 馬場 航, 吉野 萌
2019 年75 巻2 号 p.
I_1249-I_1254
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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近年,地球規模で気象の極端化が進行している.そのため,各地で豪雨が頻発している.これは大都市においても例外ではなく,ひとたび未曾有の雨が降れば,河川洪水や内水氾濫被害に見舞われる.本研究では鶴見川流域を含む横浜市と川崎市を対象とし,国土交通省のXバンドMPレーダー(XRAIN)によって観測された2016年8月22日の実降雨データを用いて再現計算を行った.過去にも東京都23区において精度検証を行ってきたが,今回の再現計算結果と当時の浸水深,河川水深の比較からS-uiPSが他都市でも適用できると確認できた.さらに今回は新たに川崎市の一部地域で側溝の取り扱っている.今後,S-uiPSが中度に都市化されたエリアでも適用できるよう,その取扱い方についても説明する.
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阿部 将也, 武田 誠, 中島 勇介, 村瀬 将隆, 松尾 直規
2019 年75 巻2 号 p.
I_1255-I_1260
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
フリー
大規模な洪水氾濫に対する浸水対策の検討には,氾濫解析モデルが重要なツールとなる.近年,建物に大量の氾濫水が流入し甚大な被害が生じる大規模水害も生じており,詳細な浸水対策の検討のためには,建物への流入・流出を考慮した氾濫解析の確立が重要である.本研究では,汎用性も考え,デカルト座標系の氾濫解析を基礎とし,流入・流出を考慮した建物の水理モデルを導入して解析モデルを構築した.数値実験において建物の水理モデルの有無による特徴を明らかにし,質量保存の観点から解析モデルの妥当性評価を検証した.また,解析モデルの活用として,建物の盛土(地盤高の増加)の影響評価,建物被害額の評価,ドア・窓の破壊に関する影響評価を実施し,実用的解析のための課題を明らかにした.
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陳 翔, 平川 隆一, 大本 照憲
2019 年75 巻2 号 p.
I_1261-I_1266
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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本研究では,2017年7月花月川洪水氾濫を対象に平面2次元氾濫解析を実施し,洪水時に橋桁が洪水の疎通能力や上流側水位上昇,そして氾濫の発生規模に与える影響を検討した.また解析には家屋の存在を考慮した地盤モデルを用い,市街地における洪水の挙動についても分析した.
解析の結果,洪水流に対して橋桁の有無によって,堤内地における浸水速度と最大浸水範囲に大きな違いが生じ,洪水時に橋桁の存在が浸水被害を拡大させることが分かった.その原因として,洪水の水位が橋桁高を超過すると,そこにオリフィスのような働きが生じ,流量は開口部面積に支配され,これにより,疎通能力が低下し,上流側水位の上昇が引き起こされることが分かった.
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村瀬 将隆, 武田 誠, 矢神 卓也, 高橋 俊彦, 大矢 航平, 山内 琳太郎
2019 年75 巻2 号 p.
I_1267-I_1272
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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近年,局地的大雨により内水被害が多発しており,詳細な内水氾濫の発生メカニズムの検討が進められている.しかし,内水氾濫のメカニズムおよび内水対策を検討するための下水道内水位の計測は十分に行われていない.本研究では,愛知県春日井市の下水道内に水位計を設置し,下水道内水位を観測した.現地観測により,各地点の降雨と下水道内水位の関係を検討した.実効雨量を用いて,下水道内の水位データとの関係を整理し,実効雨量のピーク値と水位のピーク値に高い相関性があることを示した.また,内水氾濫対策を検討するため,排水施設と貯水槽を考慮した都市浸水の数値解析を行った.観測値と解析値の比較を行い,数値解析モデルの精度を検証し,排水施設と貯水槽の考慮により最大浸水深が低下し,地上の水量が減少することが確認できた.
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永野 雄一, 伊藤 一教
2019 年75 巻2 号 p.
I_1273-I_1278
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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信頼性の高い浸水解析を行うためには空間的に精緻な降雨情報が求められるが,様々な建築構造物が林立する都市域を対象とした際に必要な地上雨量データの空間解像度についての知見は十分ではない.
本研究では,汐留の高層市街地を対象にビル風による地上雨量分布変化が浸水規模に及ぼす影響についての評価を行った.まずRANSによる解析の結果得られた風速場をもとに雨滴粒子挙動の解析を行い,地上での雨量分布を作成した.そして雨量分布をもとに浸水解析を実施した.
汐留の高層市街地では風速が速くなるほど降雨量分布が不均一となることが分かった.また,およそ200m×200mの範囲以下の排水区面積を有する管渠で流量が20%以上増加する可能性があることが明らかとなり,これよりもより小さな空間解像度で降雨測定をする必要があることが示唆された.
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橋本 雅和, 川池 健司, 出口 知敬, 中川 一
2019 年75 巻2 号 p.
I_1279-I_1284
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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本研究は矩形領域ネスティングの課題を整理し,非矩形領域ネスティングの適用性を解析結果への影響と計算効率の二つの観点から評価した.従来の矩形領域ネスティングでは,特に河川沿いの集落を対象にする場合にネスティング解析範囲の指定が難しいため,既往研究で非樺造格子の解析に適用されていた非矩形領域を描造格子の解析に応用した.研究対象地域をバングラデシュの北部Gaibandha県とし,特に浸水が頻発していたUdakhali村周辺をネスティング領域とした.上下流瑞に観測水位を与え,121日間の計算を行うことで,手法の適用性を評価した.矩形・非矩形領域ネスティング計算による解析結果を浸水域,浸水深時系列で比較し,矩形・非矩形の接続方法の違いで,解析結果に大きな差異がないこと,全体に密格子を適用した参照計算とネスティング計算結果の比較でも大きな差異が生じていないことを確認した.
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若山 侑未, 川中 龍児, 石垣 泰輔
2019 年75 巻2 号 p.
I_1285-I_1290
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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近年,堤防の整備によって洪水被害が軽減されてきている一方で,雨水排除を担う小河川の氾濫による内水被害が多く発生している.福知山市は外水氾濫常襲地であるが,2014年と2018年には集中豪雨により小河川が氾濫する内水被害が発生し市街地を中心に広範囲で浸水した.本研究では,福知山市を対象として2次元平面解析法を用いた極端降雨下における内水氾濫特性の検討と避難困難度指標による安全避難に関する検討を行った.その結果,内水氾濫特性として小河川の流域それぞれから氾濫水が広がり,排水機場による影響は流域ごとで異なることが示された.また,避難困難度指標による評価では対象地域のほぼ全域で避難困難になることが明らかになった.避難所の浸水深と前面道路の単位幅比力から安全性の検討を行い,内水氾濫時に安全な避難所を示した.
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後藤 岳久, 福岡 捷二, 大作 和弘
2019 年75 巻2 号 p.
I_1291-I_1296
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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豪雨時の適切な避難情報の提供や水防活動のためには,精度の高い洪水予測計算が必要である.しかし,洪水予測計算の流出解析モデルは,小流域からの流出量を十分検証出来ていないことや,一般に検証データに用いられるH-Q換算流量が,河道貯留や河床変動の大きい区間で十分な検証精度を有していない等の課題を有する.本研究では斐伊川を対象とし,観測水面形時系列を用いた洪水流河床変動解析により,平成25年洪水の本川上流域と支川の流量ハイドログラフを精度良く算定し,これを検証材料として各流域の流量ハイドログラフを推定するタンクモデルの定数を同定した.検証したタンクモデルを用いて,平成23年洪水の降雨情報から洪水予測計算を行い,水面形や流量の時系列を精度良く予測し,下流河道で高精度な洪水予測計算が可能となることを示した.
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重枝 未玲, 秋山 壽一郎, 中島 晴紀, 勝原 亮介, 桂 佑樹
2019 年75 巻2 号 p.
I_1297-I_1302
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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本研究は,平成29年7月九州北部豪雨時の花月川の大臣管理区間を対象に,水位を境界条件とした洪水氾濫解析による粗度係数等のモデルパラメータの最適化と流量の推定を実施するともに,同推定流量に基づき,流域流出・洪水氾濫解析のモデルパラメータの最適化を実施し,既存の解析結果と比較することで,その有効性について検討したものである.本研究で提案した最適化手法は,降雨と水位情報により,河道の流量や流域流出・洪水氾濫解析のモデルパラメータの最適化を可能にするとともに,最大浸水域については同程度の精度を保ちつつ,流量・水位ハイドログラフの再現精度を向上させることが確認された.
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重枝 未玲, 秋山 壽一郎, 王 少博, 勝原 亮介
2019 年75 巻2 号 p.
I_1303-I_1308
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
フリー
本研究は,雨水の土壌への浸透を組み込んだ降雨流出・洪水氾i監ダイナミック解析モデルに地中流の取り扱いを新たに組み込み,平成29年7月九州北蔀豪雨時の赤谷川流域を対象に解析を実施し,地中流との挙動と土砂崩落地との関係について検討したものである.本研究から,本モデルが痕跡水位と実測浸水域を再現可能であること,地下水の流動水深や底面せん断力の力積の解析結果に基づき,赤谷川流域の土砂崩落地には地下水流が生じることによって斜面の安定性を維持できず土砂砂崩落に至った箇所と,流れによる比較的大きなせん断力が長時間作用したために洗掘された箇所が存在することが確認された.
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木村 匡臣, 奥村 直人, 安瀬地 一作, 髙野 陽平, 吉川 夏樹
2019 年75 巻2 号 p.
I_1309-I_1314
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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本研究では,低平農業地域である新潟市亀田郷地区を対象とした排水解析シミュレーションモデルを構築し,末端調整池である鳥屋野潟における排水機場の予備運転および排水ポンプの目標内水位の引き下げによる,大雨時のピーク内水位抑制効果,内水氾濫被害軽減効果について検討した.その結果,排水機場の予備運転によるピーク内水位の抑制効果は,特に降雨イベントの初期に有効であること,目標内水位を引き下げることによって,内水位を継続して下げることが可能となることが明らかになった.また,確率降雨波形を用いた検討を行った結果,冠水被害は降雨のピークが後方にあるほど大きくなること,排水ポンプの目標内水位の引き下げによる冠水被害の軽減効果は特に水田に対して発揮され,降雨のピークが前方にあるほど大きくなることが示唆された.
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関根 正人, 馬場 航, 小方 公美子
2019 年75 巻2 号 p.
I_1315-I_1320
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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台風や局地的豪雨による被害が日本各地で多発している.2015年に改正された水防法では,想定しうる最大規模の洪水・内水および高潮に係わる浸水想定区域を公表する制度が創設された.今後は起こりうる各々の水災害に対し,適切な対策を講じることが求められる.本研究では,浸水予測手法S-uiPSを用いて大規模豪雨と高潮が同時発生する状況下を想定し,浸水予測計算を行った.高潮時には,臨海部から都市河川を遡上する流れが生じ,河川水位によっては雨水吐を経由して下水道内への水の逆流や河川からの越水が生じる.こうした危険性は,河口から離れた地点においても十分に考えられる.本研究では,都市河川のどの範囲にまで高潮の影響が現れ,いずれか一方の外力による浸水と比較してどの程度深刻な事態となるかを明らかにすることができた.
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近者 敦彦, 関本 大晟, 阿部 紫織, 岩崎 貴志, 崔 国慶, 小島 広宜, 中村 要介, 佐山 敬洋
2019 年75 巻2 号 p.
I_1321-I_1326
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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近年の地球温暖化に伴う洪水は,全国各地で浸水をもたらしており,観測データが少ない中小河川も含めた全国スケールでのリアルタイム氾濫予測が望まれる.これまでの洪水予測は,主に氾濫の発生を把握するものだが,近年ではグリッドセルベースで流出から氾濫までを一体的に解析する降雨流出氾濫解析モデルの実用化が進んでいる.本研究は,代表的な降雨流出氾濫解析モデル(RRIモデル)を活用し,全国の氾濫予測実施を試みたものである.日本域表面流向マップを基とした地方毎の広域モデル構築,ベクトル型スーパーコンピュータの並列化に対応したプログラム改良による高速化実現,リアルタイム解析,その結果のウェブ表示システム構築により,各河川での精度向上には個々の検討も必要だが,全国版氾濫予測のプラットフォームが整備できたといえる.
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西川 詩雲, 堀 智晴
2019 年75 巻2 号 p.
I_1327-I_1332
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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水害時の避難において,リアルタイムで避難経路上の浸水個所など通行障害となる情報を避難者が得ることで,どの程度避難が有効に行えるようになるかを定量的に分析した.具体的には,個人レベルで水害時の避難行動をコンピュータ上に模擬する水害避難ミクロモデルをベースに,避難者が移動中に浸水個所に遭遇して歩行速度の低下や歩行不可能に陥る様子に加えて,自身が直接視認することのできない範囲の浸水情報を得ることで,その部分を迂回して避難場所に移動する機能を付加した避難シミュレーションモデルを作成した.作成したモデルを用いて,滋賀県芹川下流部を対象地域とし,確率規模の異なる降雨による水害時の避難行動を,浸水情報の共有の有無を条件にシミュレーションし,その結果を比較考察した.
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北村 福太郎, 稲津 大祐, 池谷 毅, 岡安 章夫
2019 年75 巻2 号 p.
I_1333-I_1338
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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河川洪水に遭遇しないためには早期の避難開始が重要である一方,現実には避難勧告等に従って避難する者は少ない.また堤防の決壊位置や時刻は予測できない.すなわち避難中の洪水発生もあり得る.よってあらかじめ洪水に遭遇しにくい避難経路を定めておくことも重要である.本研究では洪水避難で被災者を最小化できる経路選択方法を確立し,この方法による被災者減少効果がどの程度の避難所追加設置に匹敵するか検討した.その結果,浸水の時空間的広がりを加味した洪水を避ける経路選択で被災者を減少できること,被災者数を最小とする最適経路は各洪水シナリオの浸水開始時間の最小値を取得した分布図から得られ,想定するすべての洪水で被災者を減少できること,最適経路による被災者の減少効果は避難所の25箇所追加設置に匹敵することが分かった.
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伏見 健吾, 田中 規夫, 海野瀬 綾乃
2019 年75 巻2 号 p.
I_1339-I_1344
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
ジャーナル
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荒川中流域の潜在的な破堤リスク箇所を把握し,川島町の洪水避難における時間的情報を分析するために,浸透破壊を考慮した3つの破堤条件で氾濫解析を行った.河川の合流部や,河床勾配の変化点など水位が高くなりやすい箇所では,浸透破壊が生じるリスクが高く,設定条件において,荒川上流,越辺川と入間川の合流部で破堤と判定された.また,荒川上流部で浸透破壊が生じ多量の氾濫流が吉見町に流れ込むため,下流の控堤の破堤時刻が早くなる現象も発生した.川島町は氾濫流の溜まりやすい地形である.浸透破壊まで考慮した場合には,町外となる坂戸市や川越市も浸水している可能性が高く,荒川左岸側に避難することが有効である.また,川島町の南東の地域では浸水深が高く家屋倒壊の危険があるという点においても,荒川左岸側への避難が推奨される.
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小林 健一郎, 千郷 直斗, 丸山 満帆, 木村 圭佑, 浜中 俊行, Bae Chang Yeon , 孟 凡淞
2019 年75 巻2 号 p.
I_1345-I_1350
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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本稿では2016年12月21日に実施された津波を対象とした兵庫県立芦屋高等学校の全校生徒1000名による避難訓練をGPSで記録し,分析した結果を最初に示す.避難訓練は海抜3.9mにある芦屋高校の全校生徒を北側海抜20mラインにあるJR芦屋駅以北に110分以内に避難させるために実施された.次に避難行動のGPSログと,今回,構築したマルチエージェント避難モデルとの比較を行い,その結果を分析した.本稿ではより精度の高い避難モデルを構築するために,新たにファジィ推論を用いて速度式を定義したところ,再現精度が上がった.
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吉田 季生, 谷口 健司, 渋尾 欣弘
2019 年75 巻2 号 p.
I_1351-I_1356
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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梯川流域を対象とした氾濫シミュレーションによる浸水深と氾濫流速を用いてリスクランクの評価を実施した.リスクランクの算出過程では各時刻の状態量を評価しており,時間ごとの避難困難度を求めることができることから,避難判断水位に達した時刻からの避難可能時間を算定した.リスクランクは,その最大値をもって定義されるため,洪水の時間変化の影響を受けないが,避難困難度は浸水状況の時間変化に影響を受ける.本研究では,必ずしもリスクランクが高くない洪水波形において避難に余裕がないとの結果を得た.破堤氾濫が想定される大規模水害では避難行動は減災のための重要な行動であり,最も深刻な浸水状況に基づくリスクランクと合わせて,様々な降雨波形に応じた避難可能時間を算定し,避難完了までの時間を示すことが重要かつ有効である.
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戸村 翔, 舛屋 繁和, 植村 郁彦, 吉田 隆年, 大村 宣明, 千葉 学, 山本 太郎, 岡部 博一, 佐々木 博文, 小林 彩佳, 星 ...
2019 年75 巻2 号 p.
I_1357-I_1362
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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近年,我が国では多くの死者が出るような大規模水害が頻発しており,今後は気候変動の影響を踏まえた将来気候下における洪水リスクを正確に把握し,適応策を検討する必要がある.現在,我が国では水害時の死者数推定に氾濫時の浸水深から求めるLIFESimモデルが用いられている.一方,気候変動適応策が既に実施されているオランダでは浸水深のみならず氾濫時の流体力や流速,水位上昇率を考慮して死者数を推定するFlorisモデルが用いられている.
本研究では,十勝川流域を対象として大量アンサンブル気候予測データベース(d4PDF)から得られた現在気候下および将来気候下における降雨量を基に流出計算および氾濫計算を行い,帯広市街地を対象にLIFESimモデルおよびFlorisモデルを用いて水害時の死者数を推定し,両モデルで推定される死者数の違いを明らかにした.
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寺田 光宏, 石垣 泰輔, 尾崎 平, 戸田 圭一
2019 年75 巻2 号 p.
I_1363-I_1368
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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近年,大雨による浸水被害が増加しており,大阪や東京等の都市部では,地下浸水が発生する可能性がある.浸水対策が十分でない場合,地下鉄に侵入した洪水が地下鉄のトンネルを通って広がることになる.本論文では,地下鉄利用者のための避難リードタイムを,排水システム,地上及び地下空間を含む数値モデルを用いて調査した.地下鉄における浸水被害者の数を数値的に推定し,地下鉄駅の脆弱性について議論した.その結果から,避難リードタイムと各駅の浸水に対する脆弱性が示された.これらの結果は,地下鉄事業者が避難計画を立てるために重要である.
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吉野 純, 神谷 颯太, 小林 智尚
2019 年75 巻2 号 p.
I_1369-I_1374
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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本研究では,平成30年7月豪雨における避難意識と防災情報利用に関するアンケート調査を長良川周辺住民を対象に実施し,主成分分析を行うことで避難できない住民の心理状態と防災情報利用との関係性について分析した.第1主成分は潜在的な避難への消極性を表し,多くの人が根拠に乏しい理由で避難に消極的であった.また,第2主成分は潜在的な防災情報の活用度を表し,防災情報を根拠にして避難しなかった人とそうでない人に別れた.そして,バイプロットの4象限毎にサンプルを分類し,それぞれの平均的特性について評価し,避難行動や防災情報に対する認識が大きく異なっていることを明らかにした.
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佐藤 佑太, 太田 夏帆, 鈴木 利佳子, 篠原 麻太郎, 小野村 史穂, 川端 陽平, 衣川 悠貴, 二瓶 泰雄
2019 年75 巻2 号 p.
I_1375-I_1380
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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H30年西日本豪雨で発生した岡山県倉敷市真備町の人的被害は死者51名中44名が自宅で見つかり,その中の43名が一階で発見された.本研究では,家屋内浸水時の潜在リスクを把握するために,実物大スケールの家屋内浸水実験を行った.ここでは,水槽内にて実物大の部屋とドアを作製し,ドア開扉実験と家具転倒・散乱実験,避難実験を行った.その結果,ドア両側の水位差がわずか15-20cmでもドアを開けられない状況が確認された.家具転倒・散乱実験により,水位が高くなるとタンスが倒れて怪我のリスクがあることや避難通路を塞ぐ可能性が明らかとなった.その後の避難実験でも,大きなタンスが避難の妨げになることが示された.
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安井 智哉, 篠原 麻太郎, 太田 夏帆, 二瓶 泰雄
2019 年75 巻2 号 p.
I_1381-I_1386
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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平成30年西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県高梁川水系の被災世帯住民に対する二種類のアンケート結果(岡山放送,岡山県検証委員会)を用いて,避難行動とハザードマップの認知度を比較・検討した.その結果,ハザードマップの認知度は,2種類のアンケート共に20%強であり,決して高くない.岡山放送のアンケート結果より,ハザードマップの認知度が高い人ほど,大雨特別警報や避難勧告・避難指示といった災害情報に対しての理解度が高く,それらが発表・発令されると早期に避難行動をとる傾向にある.岡山県検証委員会の結果より,65歳以上にはハザードマップの認知が避難行動を促す大きな要因と考えられるが,65歳未満にはその逆の傾向あることが示唆された.
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楳田 真也, 岩倉 浩土
2019 年75 巻2 号 p.
I_1387-I_1392
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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越水による河川堤防の決壊・氾濫過程を正確に捉えるため,堤体や河床材料の粒径分布を考慮できる混合粒径型モデルによる数値解析を行った.堤体材料の粒径分布,堤防天端幅および洪水流の水面勾配等が異なる複数条件下の破堤実験を対象に,本モデルと単一粒径モデルを比較・検討した.洪水流・堤防条件の違いによる破堤口の拡幅開始時間,拡幅速度,最終破堤幅や氾濫流量の変化を混合粒径型モデルは良好に再現した.単一粒径モデルは使用する粒径を調節しても,水面勾配が急な条件では,破堤過程を特徴付ける前述の各項目の再現性を同時に全て高めることは困難であった.2004年新潟・福島豪雨時の五十嵐川の破堤事例を対象に,実河川の現象への適用性を調べた.本モデルは最終破堤幅,破堤地形や土砂堆積分布の特徴を概ね良好に捉えることができた.
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石藏 良平, 田井 明, 橋本 彰博, 安福 規之
2019 年75 巻2 号 p.
I_1393-I_1398
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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近年,豪雨による河川堤防の被害が発生している.豪雨への対策を効率的に行うためにも河川堤防や基礎地盤の弱部を抽出することは重要な課題である.本研究では,堤防基礎地盤のパイピング破壊リスクに焦点をあて,将来気候データ(d4PDF)を用いた解析から,降雨形態の変化によって新たに危険と考えられる河川堤防の地盤構成等を把握し,豪雨に対する危険箇所を抽出することを目的としている.本論文では,現場を想定した堤防基礎地盤に対する不飽和浸透流解析をパラメトリックに行い,パイピング破壊を誘発する地盤特性を考察した.また,実際の筑後川の堤防基礎地盤を対象に,将来気候データに基づく外力を用いて不飽和浸透流解析を実施し,パイピング破壊に対する危険度評価を行った.
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福岡 捷二, 石塚 宗司, 田端 幸輔
2019 年75 巻2 号 p.
I_1399-I_1404
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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平成28年8月十勝川大洪水では,計画規模に匹敵する大流量が流下したにも関わらず,丘陵堤が整備されていた下流部で目立った堤防被害は生じなかった.このことは,丘陵堤が軟弱地盤対策だけでなく,浸透に対しても高い安定性を有していると考えられる.
本研究では,十勝川下流部を対象とし,洪水及び地震災害履歴と堤防整備の経緯を整理し,丘陵堤の土質・構造を把握する.そして,堤防前面の水位ハイドログラフと堤防断面形状,平均透水係数を用いて,堤防の浸透破壊に対する無次元力学指標である堤防脆弱性指標の縦断分布を算定する.これより,十勝川平成28年8月大洪水で丘陵堤整備箇所が浸透破壊を引き起こさなかった理由を明らかにし,幅広で緩傾斜の丘陵堤が,計画規模洪水の浸透被害軽減に対しても有効であることを実証した.これにより,今後の堤防設計の方向性を示している.
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島田 友典, 渡邊 康玄, 深澤 アダム 翔, 前田 俊一, 横山 洋
2019 年75 巻2 号 p.
I_1405-I_1410
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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2016年8月北海道豪雨において常呂川水系支川において,自流のみでは越水しなかったものの,本川からの水位上昇による背水影響を受けたことにより,越水に起因した堤防決壊が発生したと考えれている.しかしながら自流のみによる堤防決壊拡幅現象との共通点・相違点については明らかになっておらず,被害軽減技術検討のためにも現象の理解が重要である.この現象理解を目的に数値解析を用いた検討を行い,背水影響を受ける堤防決壊拡幅現象について,自流流量および川幅に応じて異なることを示した.
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小池 太郎, 吉川 泰弘, 横山 洋
2019 年75 巻2 号 p.
I_1411-I_1416
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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橋脚部におけるアイスジャム現象の解明を目的に,低水路と高水敷を設けた複断面水路を用いた実験を実施した.実験に用いた氷模型は,ポリプロピレンおよび実氷を用いた.本実験結果から以下のことが分かった.(1) アイスジャムにより氷模型の速度は減少し氷模型枚数は増加する.(2) アイスジャムにより氷模型は橋脚を迂回して高水敷へと流れて下流の低水路へと流下する.(3) アイスジャム発生後に,上流で氾濫が始まり,その後下流へと氾濫が始まる.(4) 氾濫速度は,流量が大きいほど速い.上流では氾濫速度はゼロに近づき,氾濫範囲は一定値となる.(5) アイスジャム発生地点の上流では水位が上昇し,直下流では水位が下降する.アイスジャム決壊後の直下流では水位が急激に上昇する.
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井上 隆, 山村 優佳, 二瓶 泰雄
2019 年75 巻2 号 p.
I_1417-I_1422
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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平成30年西日本豪雨により,太田川支川三篠川では,JR芸備線の第1三篠川橋梁が流失するなど,全94の橋梁のうち22の橋が被害を受けた.本研究では,著者らが行った三篠川における豪雨時の橋梁被害縦断分布データに基づいて,豪雨時の橋梁被害評価に適した指標を提案することを目的とする.そのため,水理学的要因や構造的要因に関わる様々な有次元・無次元指標の縦断分布特性を整理し,橋梁被害評価に有意な差があるかを統計的に検討した.その結果,無次元断面積(=河道横断面積/集水面積)と橋梁阻害率(=橋梁面積/河道横断面積)等を用いることで,橋梁被害特性を説明できることが統計的に明らかとなった.これらの指標を用いた橋梁被害リスクの評価手順についても試行的に検討した.
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岡部 和憲, 久加 朋子, 山口 里実, 清水 康行, 新庄 興, 長谷川 和義
2019 年75 巻2 号 p.
I_1423-I_1428
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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近年,十勝川水系の将来洪水流量は1.5~1.7倍程度まで変化する可能性が指摘されており,安全確保の観点からリスクを把握し,それを踏まえた河道計画を検討しておく必要がある.そこで,本研究では著者らの既往論文を発展させ,将来洪水流量を想定した場合の流路変動特性について数値解析より検討した.結果,当該区間では流量規模が大きくなるほど川幅も大きくなった.ただし,低水路内において川幅は拡幅し続けることはなく,各ケース一定値に漸近した.これは,流量1.5倍を超えた付近から,ピーク流量通過後の流路形態が蛇行から複列,あるいは網状流路へ変化し,流路の拡幅が止まったためである.ただし,この時点で既に堤防決壊している場合,堤内地に新流路が形成された.したがって,将来洪水流量を考慮した急流河川区間の河道計画においては,河道内ではある程度蛇行流の移動を許容し得るが,堤防基盤部およびその前面を侵食に対しては確実に防御できる構造とすることが肝要となる.
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清水 義彦, 長田 健吾, 岩見 収二
2019 年75 巻2 号 p.
I_1429-I_1434
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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中山間地域の洪水災害では,平成29年7月九州北部豪雨に見るように,最近の豪雨傾向による洪水流量の増大と相まって大量の土砂とともに輸送される流木が甚大な被害をもたらしている.これまで流木対策の多くは渓流砂防としてなされているが,今後,豪雨外力の増大化が見込まれる中,洪水流量増大に伴って土砂・流木の流下範囲も本川河道に拡大することが予想され,河道内においても積極的に流木貯留施設を設けるべきと言える.こうした観点から本研究では,中山間部の河道内に設置した流木貯留施設について,施設設計に関して有効な知見を,流木群の流動追跡を可能とする数値解析から抽出しようと試みた.具体的には,新潟県上越市にある関川の湾曲部に連続配置した流木捕捉工を対象として,その機能効果に関する考察を行い,河道流木貯留施設の設計に関する有用な知見を提示した.
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ムハマド イザーズ ハズミー ビン スハイミ , 山田 朋人, 久加 朋子, 清水 康行, 奥田 醇, 星野 剛
2019 年75 巻2 号 p.
I_1435-I_1440
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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2016年,4つの台風の接近・上陸に伴い北海道に記録的な大雨が降り,甚大な被害が発生した.空知川の上流域にある南富良野町においては,台風10号の接近による大雨で氾濫被害が発生した.本研究ではこのような氾濫被害の予測可能性を調べることを目的に領域気象モデル,降雨流出モデル,河川・氾濫モデルを連続的に用いることにより,災害発生の二日前を予測の初期時刻として,台風を含む気象場のアンサンブル予測を実施し,得られた降雨から河川水位,河床変動及び氾濫形態の予測可能性及び不確実性を調べた. 一連の予測結果は氾濫が発生しない事例,本災害以上の被害となる事例や災害の二日前から実際の浸水域・浸水深に近い事例を含んでおり,氾濫形態及び氾濫被害を確率的に予測できる可能性が示された.
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加藤 一夫, サムナー 圭希 , 三浦 忠昭, 菅野 貴詳, 千葉 喜一, 井上 卓也, 清水 康行
2019 年75 巻2 号 p.
I_1441-I_1446
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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各地で異常豪雨に伴う河川災害が頻発し,山地崩壊とともに流出した流木群や渓岸侵食から流出した流木群が,橋脚や欄干で堰き止められて橋梁被害が生じたり,氾濫水とともに低内地に流入した流木群によって氾濫被害を増大させたりしている.岩手県小本川では平成28年8月の台風第10号豪雨を契機として,市街地の流木被害を軽減させるために山間地の河道湾曲部を利用した流木捕捉施設を計画し,水理模型実験により3次元的な流木の挙動を把握し効率的に流木を取り込める設計諸元を設定している.この水理模型実験でみられた3次元的な流木の挙動を解析するために準3次元流れの計算モデルに個別要素法を用いた流木モデルを組み込んだ数値解析モデルを適用し,水深平均流速と底面流速を使い分けることで水理模型実験で確認された複雑な流木の挙動を表現できることを明らかにした.
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梶谷 勇人, 田中 規夫
2019 年75 巻2 号 p.
I_1447-I_1452
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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荒川中流域の潜在的氾濫リスク箇所を把握するため,荒川の西遷前と西遷後の氾濫特性について数値解析を用いて分析を行い,明治43年の破堤実績や現代の潜在的氾濫リスク箇所との比較を行った.
荒川西遷前においても熊谷扇状地では荒川右岸・左岸への氾濫が生じていた.特に,左岸氾濫では綾瀬川流域への氾濫流が生じ,備前堤を用いた氾濫流制御が開始された.その後,荒川西遷によって荒川左岸地域への氾濫流は減少したが,和田吉野川,市野川,入間川と荒川の合流点上流側の支川において,バックウォーター現象に伴う氾濫リスク箇所が新たに生じ,吉見・川島が水害常襲地帯となった.特に吉見では氾濫規模が大きくなり,大囲堤の築造だけではなく,控堤による氾濫流制御が行われた.近代改修後,背割堤の整備によって,入間川流域の氾濫リスクは減少しているが,荒川西遷による潜在的リスク箇所は河川合流点の支川側付近に残存している.
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Can DING, Kenji KAWAIKE, Hajime NAKAGAWA, Rocky TALCHABHADEL
2019 年75 巻2 号 p.
I_1453-I_1458
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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The paper presents a two dimensional coupled one dimensional numerical model to simulate inundation and sediment deposition over the paddy field considering the effect of channel network. The results show that the roads in the research area have significant influence to flood propagation and sedimentation; Main suspended load deposition happened near the inflow point and along the flow direction, the maximum deposition thickness on the ground surface is over 50 cm. And the sedimentation mode, that is the main deposition area and deposition thickness in the channels is similar to that on ground. The capacity of channel network and crop harvest may be seriously affected by the deposited sediment.
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五十嵐 孝浩, 竹林 洋史, 浜田 裕貴, 田中 安理沙, 上村 雄介
2019 年75 巻2 号 p.
I_1459-I_1464
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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平成30年7月豪雨における土砂災害発生状況を各調査報告やインターネットを用いて詳細に調査し,発生日時,場所を特定し,それらを対象にXRAIN,高解像度降水ナウキャスト,解析雨量の雨量データを用いて土砂災害危険情報サービスによる土砂災害危険度判定を行った.その結果を比較検討し,特徴を整理,XRAINと高解像度降水ナウキャスト(NC)の併用が土砂災害危険度判定の精度向上を資する可能性を確認した.
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佐山 敬洋, 清水 涼太郎, 井口 真生子, 南 良忠, 赤穗 良輔, 寶 馨
2019 年75 巻2 号 p.
I_1465-I_1470
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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洪水氾濫が発生した際,浸水深の空間分布を迅速に推定することは緊急対応にとって不可欠である.本論は,現場からの定性的な浸水関連情報をもとに,浸水深の空間分布を推定する技術を開発する.既往の手法に比べ,破堤地点・破堤時刻の入力など,実際の運用上困難となり得る課題を解決した.同化に必要となる事前計算には,浸水想定区域図の作成に用いられた浸水解析の結果を活用した.これにより,複数の地点で離散的な浸水深の情報を入力することで,直ちに浸水深の空間分布を推定できる仕組みが完成した.提案手法を,平成30年7月豪雨で堤防が決壊した岡山県の小田川下流域に適用した結果,領域内に4~8地点程度の定性的な浸水関連情報があれば,その空間分布を的確に再現できること,また7~3%の相対誤差で湛水量を推定できることが分かった.
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白水 元, 金城 海輝, 山本 晴彦, 朝位 孝二
2019 年75 巻2 号 p.
I_1471-I_1476
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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平成30年7月西日本豪雨では,岡山県倉敷市真備町で氾濫開始後短時間のうちに広範囲が浸水し,甚大な被害が生じた.気候変動による豪雨災害の激甚化が懸念される中,浸水状況を迅速に把握することが求められる.これには合成開口レーダー(SAR)搭載の地球観測衛星を活用した対応が期待されており,発災直後の緊急観測の実施や被災前ベースマップの整備も進んでいる.本研究では,洪水時のSAR衛星データの緊急観測に対応して,比較する被災前データとして同季節のSAR衛星データを選択し,浸水域の自動抽出と簡易な浸水深評価を短時間のうちに行うプロセスを検討した.推定した浸水域は航空機や地上からの観測により推定された浸水域とほぼ一致するものであり,浸水深は痕跡高と比較すると過少評価される箇所も多いが,非常に簡便に把握が可能であった.
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松冨 英夫, 鎌滝 孝信
2019 年75 巻2 号 p.
I_1477-I_1482
発行日: 2019年
公開日: 2020/11/16
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2018年7月の西日本豪雨による高梁川流域における降水や洪水の観測データおよび倉敷市真備町地区の洪水氾濫域における浸水深や土砂堆積厚などの現地調査データに基づいて,洪水氾濫による真備町地区における土砂堆積の実態や氾濫水密度を論じている.各調査地点における土砂堆積厚はそこでの最大浸水深の1%以下で,津波によるものより薄い傾向にあり,破堤地点から離れるにつれて薄くなることを例証している.大胆な湛水域立体形状の仮定や土砂堆積モデルを導入し,土砂堆積厚の現地調査データを用いて,氾濫水の断面平均の土砂濃度や密度を概算している.概算された氾濫水密度は海水密度より小さいと判定されている.
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