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坂井 良輔, 尾山 浩太郎, 浅野 敏之
2014 年70 巻2 号 p.
I_301-I_306
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
東北地方太平洋沖地震津波を受け,全国各地で想定される最大クラスの津波への対応が検討されつつある.鹿児島県ではプレート境界型の津波に加え,桜島の海底噴火による津波も検討対象とする必要がある.桜島北部海域は閉鎖性海域であるため,海域内で発生した津波による海面変動のエネルギーが多重反射により海域内に閉じ込められ,通常の津波とは全く異なる特性を示す可能性がある.本研究は,桜島北部海域を対象地域とした津波について,震源位置や海底地形変化形状を変化させた数値解析を行い,閉鎖性海域特有の津波の伝搬特性についての検討を行ったものである.
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清重 直也, 吉次 真一, 大久保 佳美, 河原 和文, 西畑 剛, 伊野 同, 琴浦 毅
2014 年70 巻2 号 p.
I_307-I_312
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
日本海側に位置する島根原子力発電所では,敷地前面海域の活断層および日本海東縁部で想定される地震に伴い発生する津波について評価を行い,太平洋側で想定されるような巨大津波は想定されていないが,東北地方太平洋沖地震直後には,震源地付近の発電所で経験した巨大津波(遡上高TP+15m)をレベル2津波として評価を行い,これに耐え得る津波防波壁を設置することとした.
本稿では,非線形長波式を用いた数値解析によるレベル2津波の設定方法から,CADMAS-SURF/3Dを用いた数値解析による対策構造物に作用する設計外力の算定方法等について報告する.
また,数値解析によって設定した設計津波波圧および基準地震動Ssを用いて,発電所港湾のレイアウト等から合理的に設定した津波防波壁構造についても報告する.
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渡辺 一也, 松谷 和明
2014 年70 巻2 号 p.
I_313-I_318
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
2011年3月の東日本大震災の発生を受けて,従来想定よりもかなり巨大な津波が来襲することが予測されている.このような状況下で一人でも多くの人命を救うために,低地では津波避難タワーを設置することがある.津波避難タワーや高いビルはいわば最後の砦であるが,これらを越す津波が来襲した場合には,現在はそれ以降についての方策がなく,避難所である津波避難タワーやビルに到達できたとしても,被害を受ける可能性がある.そこで,本研究では従来の高所避難のみではなく,浮体式津波避難シェルターと併用したハイブリッドな避難手法に注目した.津波避難タワーやビルを超える津波来襲時における浮体式津波避難シェルターの挙動について検討を行う.
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松本 弘史, 重松 孝昌
2014 年70 巻2 号 p.
I_319-I_324
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
2011年3月11日の巨大津波来襲以降,避難時間の確保や逃げ遅れた人々の避難空間の提供など,減災の視点にたったさまざまな対策や提案が成されている.筆者らは,危機的状況におかれた人々の避難空間,また,避難所等における更なる避難空間として利用していただくことを目的として,浮体式津波避難施設の提案・開発を進めている.同施設は流体力を受けて浮上・移動する可動構造物であり,それ故,津波作用時の強度や避難者の安全性の観点から,流体力作用直後の挙動を高精度に予測することは重要な課題である.本研究では,水理実験によって避難施設の並進運動および回転運動の特性を把握するとともに,得られた実験結果との比較から,回転運動を考慮した避難施設の運動予測手法の適用性について検討した.
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Lulu HE, Shintaro YAMAUCHI, Wataru KIOKA, Rikuya TAKAHASHI
2014 年70 巻2 号 p.
I_325-I_330
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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It is important to known the movement of large drift, i.e. automobiles, in tsunami and its collision behavior to tsunami evacuation tower, a facility used to protect the safety of life and property in the tsunami-affected areas. For this purpose, laboratory experiments with 80 automobiles colliding with both Bridge type of tsunami tower (with a large distance between pillars) and Conventional tsunami tower (with beams between pillars) are carried out. In addition, a numerical model based on 3D Lattice Boltzmann Method (LBM) is developed for simulating the behavior of drifting automobiles due to tsunami inundation.
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中村 友昭, 根笹 裕太, 水谷 法美
2014 年70 巻2 号 p.
I_331-I_336
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
津波の作用と基礎地盤の洗掘による陸上構造物の移動現象に関する水理実験に津波・構造物・地形変化間の相互作用を解析できる3次元流体・構造・地形変化連成数値計算モデルを適用し,構造物の移動とその対策法についての検討を行った.その結果,水理実験の条件に適合した砂地盤のパラメータを用いることで,最終洗掘深の分布と構造物の挙動の再現性が向上することを確認した.また,構造物が砂地盤から受ける反力は,波だけではなく洗掘の影響も受けることから,構造物の安定性を評価する際に洗掘の影響を考慮することの重要性を明らかにした.さらに,構造物の沖側に矢板を設置する対策には構造物の安定性を向上させる効果が期待できないが,構造物の側面側に矢板を設置する対策と構造物の隅角部を斜めにする対策には効果が期待できることが判明した.
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野島 和也, 桜庭 雅明, 小園 裕司
2014 年70 巻2 号 p.
I_337-I_342
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
本研究は,一般的に用いられる津波シミュレーションの結果から,比較的広域かつ多種の漂流物の移動・滞留状況を推定する実務的な方法を提案するものである.津波に起因する漂流物の対象とその代表的諸元や移動条件を複数の津波漂流物のパラメータ(密度・体積,移動開始・停止条件)として一般化した.漂流物の位置については航空写真を活用し簡便に漂流物の移動過程のシミュレーションを行った.検討例として,南海トラフの巨大地震に伴う津波を対象とした各種漂流物の移動過程を数値シミュレーションにより推算した.その結果から各種漂流物の移動パターンを考察し,移動・滞留(座礁)・流出等に分類し想定される被害の分布(被害推定マップ)の作成を試みた.
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不動 雅之, 中村 隆, 磯部 雅彦, 長野 章, 中泉 昌光, 後藤 卓治
2014 年70 巻2 号 p.
I_343-I_348
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
本研究は,南海トラフ地震等が予想される地域の早期対策に資する観点から,東日本大震災において完全に倒壊しなかった防波堤が津波を低減し,漁港や漁村などその背後地の被害を軽減した事例を踏まえ,13の対象漁港において津波シミュレーションを実施し,防波堤による津波低減効果の発現特性を解明するとともに,その簡便評価手法の可能性を検討した.また,防波堤と防潮堤による多重防護について,南海トラフ沿いの代表的な流通拠点漁港を対象として津波低減効果を把握し,その有効性を検証した.
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髙橋 研也, 西畑 剛
2014 年70 巻2 号 p.
I_349-I_354
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
津波来襲時において,遡上波が到達する前に津波が排水路を逆流して陸上へ溢水する現象が確認されている.溢水を防ぐ対策工として立坑を蓋により閉塞する場合や発電所施設のポンプ取水路などの場合は,気相の影響が管内圧力や溢水量に現れてくると考えられる.本研究では,地下管路内において気液二相流となる津波を対象とした水理模型実験を実施し,特に管内圧力に着目した計測を行い,気相がどのような影響を及ぼすのかを検討した.その結果,地下管路内において生じる現象には気相の存在が大きく影響しており,陸上へ溢水するまでの所要時間や溢水量はもちろんのこと,圧力変動にも大きな変化を及ぼすことが明らかとなった.出口を閉塞する影響やエアハンマー現象などにも留意しながら,地下管路内壁や溢水対策施設の設計を進めていくことが望ましい.
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川崎 浩司, 松野 哲弥
2014 年70 巻2 号 p.
I_355-I_360
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
本研究では,異相界面の捕獲手法の高精度化と質量保存性の向上を目指し,高精度界面捕獲法THINC/WLIC法を3次元固気液多相乱流数値モデルDOLPHIN-3Dに導入し,その妥当性と有用性を検証することを目的としている.まず,THINC/WLIC法を方形波の移流計算,円に対するせん断流れ,球に対する渦流れに適用し,精度検証を行った.その結果,同手法は十分な精度を有することを確認した.ついで,THINC/WLIC法を導入したDOLPHIN-3Dを水柱崩壊問題に適用し,非常に高い質量保存性を有することを示した.さらに,固気液相の相互作用現象に対する本モデルの妥当性を検証するために,段波と矩形剛体の衝突・漂流問題に適用した.その結果,同モデルは剛体に作用する圧力を良好に再現するとともに,段波の矩形体衝突時における水塊の跳ね上がりも表現可能となり,異相界面の捕獲精度の向上を確認した.
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奥村 弘, 有川 太郎
2014 年70 巻2 号 p.
I_361-I_365
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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本研究ではGPU計算においてCUDA化したCADMAS-SURF/3Dのさらなる高速化を目的としてMPIに対応したハイブリッド並列化を行い,その適用性と検証結果を報告する.前回の課題のデータ再配置オーバーヘッドを解消し、シングルプロセスでは最大800%の高速化を達成した。CUDA対応MPIライブラリによって非常に簡便な方法でハイブリッド化が可能であることがわかった。アルゴリズムの正当性を検証しながらハイブリッド化を行ったが、未知の原因により収束性に問題があり検討課題となった。収束がうまくいけばハイブリッド化により更なる高速化の可能性があることがわかった。
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有川 太郎, 林 達也, 鈴木 崇之, 下迫 健一郎
2014 年70 巻2 号 p.
I_366-I_371
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
防波堤の津波越流時における安定性について,有川ら(2012)
1)などにより水理模型実験がなされ,越流時においては,ケーソンが港内港外水位差により倒壊したこと,特に背面側の水圧が静水圧から減圧していたことがわった.一方で,水理模型実験においてはケース数が限られているため,静水圧からの補正係数の汎用性が不明瞭であった.そこで,本研究では,数値シミュレーションにより,様々な形状の防波堤に対して,津波の越流時の安定性の検討を行った.その結果,既存の補正係数により,ケーソン幅によらず検討することで安全側の評価となることを明らかに,また,ケーソン形状を変えた検討により,上部斜面型やパラペット型にしても矩形型と安全率が変わらず,より経済的断面を提案できる可能性を示した.
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石河 雅典, 上月 康則, 山中 亮一, 大久保 陽介
2014 年70 巻2 号 p.
I_372-I_377
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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2011年3月11日の東日本大震災において,海岸堤防は大きく被災し,その原因は堤防の裏法尻の洗掘を始めとする裏法側での破壊であることが多く指摘されている.著者らは,津波に対する堤防の粘り強さを検討する上で,越流水をできる限りスムーズに陸側へ流すことや越流水の到達点を堤防よりできる限り陸側へずらすことが有効であると考えた.そこで,数値波動水槽(CADMAS-SURF/3D)を用いた数値解析により,構造諸元の違いによる裏法面への津波作用外力の違いを明らかにし,堤防の「粘り強さ」の発生メカニズムと設計上の留意点について考察した.
その結果,海岸堤防裏法尻部の洗掘抑制には,裏法面の緩勾配化の他,裏法肩及び法尻部に曲線形を採用することが有効であることを確認した.
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木村 雄一郎, 水谷 征治, 山下 徹, 清宮 理, 平石 哲也, 間瀬 肇
2014 年70 巻2 号 p.
I_378-I_383
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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フラップゲート式防波堤は,通常海底に倒伏し,運用時には浮力を利用して浮上させて港口を閉鎖する津波防御施設である.東北地方太平洋沖地震津波では多くの海岸構造物が被災したことから,これからの津波防御施設には,設計条件を超過する津波に対しても直ちに倒壊することなく,粘り強く抵抗することが求められる.本研究では,支持地盤からの反力を計測するための受圧機構を設けた1/40縮尺の試験体を用いて,造波水路内における模擬津波実験を実施して,フラップゲート式防波堤の津波に対する抵抗力について検討した.試験体の支持マウンド内への埋設深さや,作用させる模擬津波の条件を変えた一連の実験を通して,試験体を一定深さ以上埋設して設置することで,津波に対する抵抗力が顕著に増大することを確認し,揚圧力の作用状況についても把握した.また,こうした実験結果を簡易な机上計算によって検証し,良く整合した.
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楳田 真也, 斎藤 武久, 古路 裕子, 中口 彰人, 石田 啓
2014 年70 巻2 号 p.
I_384-I_389
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
本研究で対象とする防護柵は東北地方太平洋沖地震の際に津波漂流物を捕捉したものであるが,その浸水低減効果や津波波力の定量的な評価が不足している.本研究では陸上津波に対する防護柵の浸水低減効果と波力の基本特性を明らかにするために,直立護岸の背後陸上域に単独または二重に配置した防護柵に関する水理実験を行い,浸水流の水深・流速・流量および波力に与える柵の種類や二重化の影響について考察した.その結果,越流限界を超える遡上波に対しても浸水深の低減効果は柵の種類によってはある程度得られるが,浸水流速の低減効果は柵の種類を変えても得にくいこと,柵の越流限界を超えた遡上波では,単独柵によって低減できる浸水流量に比べて控え柵の追加によって低減できる浸水流量の方が大きく,防護柵の二重化による流量低減効果が相対的に高まること等が分かった.
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末長 清也, 岩前 伸幸, 池谷 毅, 秋山 義信, 舘野 公一, 鈴木 紀雄
2014 年70 巻2 号 p.
I_390-I_395
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
2011年の東日本大震災において,多くの構造物が津波被害にあった.その中で,ピロティ構造を有する建築物は多く残存しており,ピロティ構造は耐津波構造として効果的であると考えられている.しかしながら,ピロティ構造の波力低減効果について詳細に検討した例は少ない.
そこで,本研究では,ピロティ構造を有する建築物に作用する津波波力を把握するための第一歩として,ピロティ構造の柱部分を対象とした津波波力実験を実施した.実験結果から,1)柱の形状による柱周辺の水面形状の違いを観察し,分類した.2)写真から柱の前後の浸水深を読み取り,考察した.3)柱の本数・設置位置などの条件の違いにより,柱1本あたりの抗力係数が異なることを明らかにした.また,柱の条件によらずフルード数の増加に伴って,抗力係数は減少する傾向にあることを確認した.
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池谷 毅, 岩前 伸幸, 末長 清也, 秋山 義信, 舘野 公一, 鈴木 紀雄
2014 年70 巻2 号 p.
I_396-I_401
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
陸上の構造物に作用する津波の持続波圧は,入射波のフルード数に依存して変化することが知られている.ところが,津波持続波力を抗力モデルを用いて評価する場合,抗力係数には形状により決定する一定値が用いられるのが一般的で,上述のフルード数の影響は考慮されない.本論文では,波圧分布と整合性のある波力の評価法を提示する.風工学の分野で用いられる圧力係数を基本として,これに,柱体前面での跳水によるエネルギー減衰,柱体背面での空洞化の影響を加味して水圧分布を求め,この積分値として波力を求めた.解析の結果,抗力係数がレイノルズ数とフルード数の関数となることを示し,円柱及び正四角形に対しては,抗力係数とフルード数との関係を導出し,実験結果と比較して良好な一致を得た.さらに,近似関数を提案し,必要となるパラメータを示した.
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東山 和博, 下迫 健一郎, 荒川 貴信
2014 年70 巻2 号 p.
I_402-I_407
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
フリー
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震以降,津波の威力を低減する効果がある防波堤・潜堤には粘り強い構造が求められている.釜石湾口防波堤の被災メカニズムの検討においては,開口部では潜堤の滑落が本堤堤頭部の被災の要因の一つと分析されており,開口部にも粘り強い構造が必要である.しかしながら巨大津波に対しては,ケーソンのようなマッシブな潜堤では揚力の影響が大きく,実用的な設計断面が得られないことが判明した.また,ブロック工法では単体重量が小さく,津波流で流されてしまう等の課題がある.
本研究では,揚力を低減できるよう空隙を有しかつ一定の重量を確保するため,蛇籠を超大型化したような,捨石を内包する海中鋼製フレーム構造物を考案し,その有効性を確認した.
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中村 友昭, 中島 彩, 水谷 法美
2014 年70 巻2 号 p.
I_408-I_413
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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護岸を越流した津波による陸上構造物への作用波力に関する水理実験を対象に数値解析を行い,構造物に作用する波圧および波力の評価手法と波力低減対策としての直立壁の効果を検討した.その結果,構造物に作用する最大波圧の鉛直分布を算定する朝倉式の適用範囲は,構造物の位置での波の状態に依存し,その波の状態に関わらず最大波圧を算定できる数値計算の有用性を示した.また,構造物に作用する最大波力は,構造物がない状態での構造物の沖側前面の位置での水位および流速と,構造物の抗力係数が与えられれば,運動量の考え方に基づいて評価できることが判明した.さらに,直立壁を設置したとしても構造物に作用する最大波力を必ずしも低減できるわけではないことを示すとともに,直立壁の効果も運動量の考え方に基づいて評価できることが判明した.
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有光 剛, 大江 一也, 川崎 浩司
2014 年70 巻2 号 p.
I_414-I_419
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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陸上を遡上する津波は,地形の影響を受けて複雑な挙動を示すうえに,陸上構造物の形状や設置方向が多様であるため,構造物に対して直角に作用するとは限らない.このため,高精度な耐津波設計のためには,構造物への入射角の影響を考慮した津波流体力の評価が必要不可欠である.本研究では,遡上津波が陸上構造物に斜めに入射する条件に対して水理模型実験を実施し,遡上津波の入射角による作用波圧の影響について考察した.斜め入射時には,跳ね上がりの水位と最大波圧は直角入射に比べて低減することが判明した.また,斜め入射時の最大波圧は,直角入射時の値と入射角を用いて算定できることが分かった.ただし,斜め入射時でも,静水圧が卓越する状態では入射角の影響が小さいことが明らかとなった.
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中村 友昭, 澤 祐太朗, 水谷 法美
2014 年70 巻2 号 p.
I_420-I_425
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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津波による桁の流出被害の適切な評価に向けて,β値に含まれる水平波力の評価やβ値では考慮されていない鉛直波力の取り扱いについて検討するために,砕波を伴わない津波を桁に作用させる水理実験を実施した.水理実験の結果より,津波高が比較的小さいときには,長方形板の抗力係数と水位変動の影響を考慮した投影面積に基づく抗力により水平波力を評価できることを明らかにした.また,津波作用時に桁の下面の圧力が低下する現象が確認できたことから,この圧力の低下による力を揚力が下向きに作用するとしたダウンフォースとしてモデル化した.その結果,鉛直波力が増加し始めてからピークに達し,負に転じるまでは,桁を設置していない状態での水位変動から求めた浮力にダウンフォースの影響を考慮することで鉛直波力を概ね評価できることを示した.
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長谷川 巌, 田中 聡, 安田 将人, 吉平 健治, 前里 尚
2014 年70 巻2 号 p.
I_426-I_431
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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近年,防波堤の耐津波安定性に関する研究が多く実施されているが,サンゴ礁上の水深が浅い防波堤に対する研究成果の適用性は確認されていない.本研究では,サンゴ礁上の水深が浅い防波堤の耐津波安定性について検討した.サンゴ礁上の防波堤の耐津波安定性を検証する水理模型実験を実施し,港内側マウンド被覆材の安定性を示すイスバッシュの定数は,一般的に用いられている値よりやや大きい結果となると共に,港内側被覆ブロックの大きさと安定性に逆転現象を生じることがある結果を得た.CADMAS-SURF/3Dを用いた数値シミュレーションにより,サンゴ礁上の防波堤は水深が深い防波堤よりも越流水深が大きくなる可能性を確認した.
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大村 英昭, 尾崎 充弘, 平田 一穂, 秋山 義信, 岩前 伸幸, 池谷 毅
2014 年70 巻2 号 p.
I_432-I_437
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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東北地方太平洋沖地震(2011/3/11)の津波被災を受け防潮堤の整備が進められている.防潮堤に作用する津波波力は,津波波形や設置地形の影響を受ける.また,レベル2(減災レベル)津波では防潮堤の越流も考えており,越流時の作用力や背後地の洗掘の検討も必要である.そこで,ポンプ式津波造波装置を用い,東北地方太平洋沖地震に伴う津波において観測された二段型波形を含む現実的な津波を実験で再現し,盛土上に設置の防潮堤に作用する津波波圧分布を把握した.津波波圧は,波形の違い・防潮堤からの越流有無によらず,津波継続時間が長いことや盛土遡上の減勢等で“水位変動型”の作用で,持続波圧が主で衝撃波圧は発生せず,堰上げ前面水位による静水圧分布となり,防潮堤での反射を含む前面最大水位より求めた浸水深で整理した水深係数は,平均値で1.05~1.20,最大値で1.16~1.42で,1.5を下回った.
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柳川 竜一, 堺 茂樹
2014 年70 巻2 号 p.
I_438-I_443
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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本研究では,陸上域での津波浸水状況と建物破壊の関係について,津波数値モデルにより得られた浸水深とGIS解析から抽出した建物密集度に着目した解析を行った.久慈中心部では浸水区域の79.5%における建物が浸水深2m以下で,陸前高田中心部では45.8%の建物が浸水深9-11mであったことが明らかとなった.建物密集度の分析から,孤立しているRC造・S造建物は工場・公共施設等の堅牢な建物が多いのに対し密集しているRC造・S造建物は住宅・共同住宅が多く,浸水深が2m以下では孤立建物の方が全壊率が低かった.浸水深2m以下でのW造建物は,建物密集度の上昇に伴い全壊率が低下した.これら傾向を考慮した建物構造・津波浸水深・建物密集度を説明変数とする建物群の破壊確率分布を簡易的に推定するモデルを作成し,考察を加えた.
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泉宮 尊司, 吉田 裕一, 石橋 邦彦
2014 年70 巻2 号 p.
I_444-I_449
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
ジャーナル
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運動量保存則を用いて,浸水深,流速の関数として建物の単位幅当たりの津波波力の算定式が提案された.その関係式は,浸水深,フルード数および流向の関数としても表され,補正係数を用いることで実測の津波波力の合力を精度よく評価できることが示された.
建物の耐力
Rおよび津波波力
Fの確率密度関数がGauss分布に従うものとすると,それらの特性関数を利用して,性能関数
Z=
R-
Fの確率分布関数が同じくGauss分布に従うことが示された.その関数を-∞から0まで積分することにより,破壊確率が容易に算定できることを示している.東北地方太平洋沖地震津波では,浸水深が2m以上で建物の全壊確率も大きく増加している傾向にあった.建物の耐力および津波波力の平均値および標準偏差を適切に設定して,建物の被害確率を算定して,よく一致することが示された.
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HARTANA, Keisuke MURAKAMI
2014 年70 巻2 号 p.
I_450-I_455
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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Hydraulic interactions between tsunami flow and structures located along coastlines include quite complex phenomena, because the tsunami flow acts on a structure with trapping air. In order to design structures such as an evacuation building properly, it is important to consider the effect of this entrapped air in the investigation of tsunami hydrodynamic loads. This study is aimed at investigating the characteristics of tsunami hydrodynamic loads on multi floor buildings with openings by using a two-phase flow model in a three dimensional space. Two types of building models, the building with openings and the building without openings, were examined in this study. Numerical results were compared with the results obtained from one-phase flow simulations, and also verified with the experimental ones. The numerical results obtained from the two-phase flow model show good agreement with the experimental results. Furthermore, the two-phase flow model simulates the interface between water and air inside the building more accurately than the one-phase flow model. The openings in the building reduce the sustained pressure acting on the front side. The effects of the opening ratio and entrapped air to the wave pressures and uplift forces acting on the floor slab were also discussed.
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本田 隆英, 織田 幸伸, 伊藤 一教, 渡辺 征晃, 高畠 知行
2014 年70 巻2 号 p.
I_456-I_461
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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津波に強い建築構造形式としてピロティ構造が注目されているが,エレベーターホールや1階天井に作用する津波波力については,未解明な点が多い.そこで,水理実験により,ピロティ構造本体,エレベーターホールなどの1階小規模構造物,天井板に作用する津波波力の作用特性について検討した.
ピロティ形式とすることで構造物全体に作用する津波波力は有意に低減できるが,特に立ち上がりが急な津波波形では既存のガイドラインによる算定波力を上回る波力が2階壁面および1階小規模構造壁面に作用することが分かった.さらに,津波高が1階の高さより低くても,小規模構造の存在により2階壁面にも津波波力が有意に作用することが確認された.また,1階小規模構造前面の天井板には,一般的なオフィスビルのスラブの設計外力より2オーダー大きな揚圧力が計測された.
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高畠 知行, 伊藤 一教, 織田 幸伸, 本田 隆英
2014 年70 巻2 号 p.
I_462-I_467
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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臨海域の発電所では,津波来襲時,取放水路に海水が流入し水路内の水位が上昇して,水路の天端(天井)部分に揚圧力が発生する.特に,天端部の形状によっては,天端と水面の間に空気層が発生し揚圧力に影響を及ぼす.本研究では,この揚圧力の作用特性を水理実験及び数値解析により検討した.水理実験の結果,天端と水面間に空気層が発生する場合,空気層が発生しない場合に比べ最大揚圧力が小さくなり,その大きさは既存式から概算できることが分かった.一方,水路天端に着水する際には大きな衝撃圧が発生し,その大きさは天端位置によりばらつきが見られた.また,天端着水時に発生する最大揚圧力をOpenFOAMにより再現することを試みた.その結果,天端近傍の解析格子を細かくすることで最大揚圧力の再現性が高まることを示した.
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松下 紘資, 平石 哲也, 間瀬 肇, 岸本 治
2014 年70 巻2 号 p.
I_468-I_473
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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本研究では,直立防波堤港内側の補強工法として提案されているカウンターウェイトブロック(CWB)について,偶発波浪および津波を用いた断面実験を実施し,異なる配置パターンにおけるCWBの性能評価を行った.その結果,偶発波浪を用いた実験ではCWBを積上げる配置方法でケーソンの滑動量を小さくでき,津波を用いた実験ではCWBを横に並べる配置方法でケーソンの滑動量を小さくできることがわかった.いずれの実験においてもCWBの使用個数が増えるほどケーソンの滑動量を小さくすることができ,抵抗力推定に用いる摩擦係数が妥当であることを確認した.また,補強工法としてCWBおよび割石腹付けを設計した場合の所要断面積と工事費の比較を行った結果,CWBは割石腹付けに比べて補強分の施工断面積を約半分に縮減でき,工事費を36%低減できることがわかった.
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砂川 透吾, 齋藤 秀一, 鈴木 信夫, 瀬良 敬二, 辻尾 大樹, 小笠原 敏記
2014 年70 巻2 号 p.
I_474-I_479
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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宮城県女川港の湾口防波堤は,東北地方太平洋沖地震に伴う津波によって被害を受けた.その復旧には,L2津波作用時に最低限の機能を維持できる粘り強い構造が要求される.本研究では水理模型実験を実施して,被覆ブロックの連結が粘り強さに寄与し,経済的な断面であるかを検証した.
海底地盤が洗掘されない条件下において,潜堤部では被覆ブロックの連結が構造物の粘り強さに大きく寄与することを示唆した.ケーソン部Bでは,L2津波が作用すると,全ての被覆ブロックを連結してもマウンド法面は崩壊するが,堤体は安定であることを確認した.ケーソン部Aでは,根固方塊を2段積みにすることで,飛散しないことがわかった.また,潜堤部では被覆ブロックを-25mまで部分連結した対策が最も経済的であることがわかった.
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大井 邦昭, 林 建二郎, 河野 茂樹
2014 年70 巻2 号 p.
I_480-I_485
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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平成23年東北地方太平洋沖地震により発生した巨大な津波によって数多くの海岸構造物が壊滅的な被害を受けた.その被災形態のひとつとして構造物天端を越流した水流による構造物陸側の洗掘が原因となった事例が多く報告されている.海岸堤防においては陸側法尻や斜面が洗掘され,これが堤体全体に進行して破堤に至るケースがみられた.そこで今後は設計外力を超過したレベル2津波(以下,L2津波とする)に対して大きな被害を受けずに機能を容易に復旧可能な“粘り強い”構造とすることが提唱されている.
本報告は,法肩に設置されたブロックの安定性照査に必要な水理学的特性値を調べることを目的としてブロックに作用する流体力等の評価を試みたものである.また,ブロックの転倒を引き起こすメカニズムを明らかにするためブロックまわりの圧力分布の評価を行った.
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辻本 剛三, 土田 理紗子, 石坂 淳史, 柿木 哲哉, 宇野 宏司
2014 年70 巻2 号 p.
I_486-I_491
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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粘り強い海岸構造物を目指して構造物背後の陸側を強化する方法がある.防潮堤や護岸を想定した構造物の陸側にマウンドを設けて,その上にコンクリートの被覆ブロック設置し,越流後の流動で被覆ブロックが被災する時の要因等を水理実験と数値モデルによって検討した.実験は連続して越流ができるように開水路を使用し,数値モデルは実験と同様な越流を再現するために湧き出しの条件を用いた.被災の要因として法肩部に発生する負圧と法面に形成される3タイプの流動特性によるため,被覆ブロックはマウンドの形状によって被災が発生する越流水深が異なる.耐被災水深に対して有効な断面長さが存在し,マウンドの形状では三角形断面のほうが台形断面より被災には優位であったが,越流した流脈がマウンドより陸側に影響を及ぼすことがある.
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中村 友昭, 峯浦 亮, 澤 祐太朗, 水谷 法美, 小竹 康夫
2014 年70 巻2 号 p.
I_492-I_497
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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津波越流時に混成堤ケーソンの港内側の面に作用する波力の特性と,津波の越流によるケーソンの転倒を防止する対策の効果を現地スケールの数値解析により考究した.その結果,ケーソンの港内側の面に作用する波力は,港内の水位変動から静水圧を仮定して求めた波力に対して低減する現象がみられ,その低減率は相対越流水深の増加とともに上昇する傾向を確認した.また,この傾向に与えるマウンドの透水性の影響がみられたことから,波力を検討する際におけるマウンドの透水性の重要性を示した.さらに,ケーソンの転倒防止効果を有する上部コンクリートの港内側の形状があることを確認した.このとき,潮位の影響も考慮して発生する渦の規模を非常に小さく抑えられるような形状とすることで,ケーソンの転倒を防げる粘り強い構造となる可能性が示唆された.
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飯干 富広, 前野 詩朗, 吉田 圭介, 高田 大資
2014 年70 巻2 号 p.
I_498-I_503
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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東北地方太平洋沖地震時の大津波が堤防を越流し,裏法尻を洗掘させることで,岩手・宮城・福島県の海岸堤防は大きな被害を受けた.これは,これまでの設計では考慮されていなかった津波越流に起因する被害であり,堤防裏法面及び法尻保護工の重要性が認識されることとなった.しかし,これまでの研究では,越流した水塊が裏法尻部保護工に作用する流体力を評価したものはない.そこで,本研究では堤防裏法面被覆工および裏法尻保護工の形状の違いによる法面の圧力特性と裏法尻の流体力特性に着目し,水理模型実験による検討を行った.法尻保護工に作用する揚力は,津波波高の増加により一旦は増加するが,ある越流水深以上になると,逆に小さくなることが分かった.また,法尻保護工の表面粗度は,法尻部の流速を低減できるが,法尻保護工に作用する流体力は逆に大きくなるため,めくれや滑動対策を適切に行う必要があることがわかった.
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宮田 正史, 小竹 康夫, 竹信 正寛, 中村 友昭, 水谷 法美, 浅井 茂樹
2014 年70 巻2 号 p.
I_504-I_509
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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今後の防波堤の耐津波設計の高度化に資する汎用データの蓄積を目的として,防波堤ケーソンを津波が越流する際の水理特性を把握するための水理模型実験を実施した.本実験では,ケーソンの基本諸元,パラペットの有無,防波堤の前面および背面の水位などの諸条件を幅広く変化させた.実験の結果から,ケーソン前面と背面に作用する津波波力の特性を明らかにした.特に,ケーソン背面に作用する水平力は,ケーソン前背面の水位差が大きくなると,防波堤下流の水位に対応した静水圧に比較して,大きく低減することを明らかにした.また,実験結果に基づき,ケーソンを越流した水脈がケーソン背面から飛び出し,背後水面へ打ち込む際の位置・角度・流速を簡易に推定できる手法を提案するとともに,その推定精度を示した.さらに,推定手法による試算事例も示した.
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澤田 豊, 河端 俊典
2014 年70 巻2 号 p.
I_510-I_515
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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東北地方太平洋沖地震では,防波堤を越流した津波により背後のマウンドおよび地盤が洗掘を受け,支持力不足が原因で多くの防波堤が倒壊した.本研究では,過去に行われたL型防波堤の水平載荷実験を個別要素解析で再現するとともに,背後地盤が洗掘を受けた状況をモデル化し,洗掘孔の距離と洗掘深さを変えた条件で数値実験を実施した.その結果,洗掘孔が防波堤の近くに発生する場合,水平抵抗力が著しく低下することが明らかとなった.要因として基礎根入れ部地表面付近の水平土圧の低下を示した.また,根入れ部の防波堤背面から伝達される力は,水平よりおよそ25度下向きに発達することがわかった.この結果より洗掘孔による支持力低下の影響を小さくするためには,洗掘孔が防波堤背面から根入れ深さの2.3倍以上離れている必要があることを示した.
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中村 友昭, 水谷 法美
2014 年70 巻2 号 p.
I_516-I_521
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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海岸堤防を越流した津波による裏法尻の洗掘現象を対象に,津波と地形変化の相互作用が解析できる数値計算モデルによる再現計算を行い,海岸堤防の粘り強さの効果を定量的に評価する際に有用と考えられる数値解析技術の確立に向けた検討を行った.その結果,堤防の法面を階段状に近似した影響を受け,裏法での水位を過大評価し,流速を過小評価する傾向が現れることを確認し,直交格子を用いて数値計算を行う際における斜面のモデル化の重要性を示した.また,津波越流時に基礎工の周辺には滲出流が生じていたことを踏まえ,浸透滲出流の影響を考慮した漂砂計算手法を用いた計算を行った結果,漂砂計算に浸透滲出流の影響を考慮することで津波作用後の地形の再現性が向上することが判明し,本現象を検討する際における浸透滲出流の重要性を示した.
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佐々 真志, 高橋 英紀, 森川 嘉之, 高野 大樹, 丸山 憲治
2014 年70 巻2 号 p.
I_522-I_527
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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本研究では,津波による越流と浸透の同時連成作用を機能的に制御し高速度カメラによる高度な画像解析を装備した遠心実験システムを活用し,津波越流―浸透連成作用による一連のマウンド/基礎地盤洗掘・マウンド支持力破壊・流動・ケーソン不安定化過程を明らかにした.とりわけ,同連成作用によるマウンドの進行性滑り破壊を伴う洗掘の発達助長が顕在化する領域において,ケーソンが不安定化に至ることを初めて明らかにした.そして,このような越流―浸透連成作用によるケーソンの不安定化に及ぼす腹付け効果とケーソン直下の動水勾配の影響を定量的に明らかにした.得られた知見は,防波堤基礎の耐津波安定性の照査・向上を図る上で重要である.
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中村 友昭, 福田 俊, 水谷 法美
2014 年70 巻2 号 p.
I_528-I_533
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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鋼矢板岸壁に局部腐食が発生した状況を想定し,腐食孔からの埋め立て土砂の吸い出しを数値解析により検討した.その結果,腐食孔近傍の地盤が膨張状態にあるときに地盤表面の接線方向流速の大きさが最大となる位相があることが判明した.そのため,その位相にて埋め立て土砂の吸い出しが生じ始める可能性が高いと考え,接線方向流速の大きさの最大値とそのときの地盤の体積ひずみに着目した.そして,(1)腐食孔が静水面と同じ高さにあるとき,(2)腐食孔が没水状態にある場合は,腐食孔の位置が静水面に近づくか,作用波の波高が高くなるか,周期が長くなるほど,(3)腐食孔が没水状態にあるかに関わらず腐食孔が大きくなるほど,流速の大きさの最大値が増加し体積ひずみが減少するために,埋め立て土砂の吸い出しが発生する可能性が高いことを明らかにした.
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武田 将英, 下迫 健一郎, 山路 徹, 羽渕 貴士, 網野 貴彦, 花岡 大伸, 津田 宗男
2014 年70 巻2 号 p.
I_534-I_539
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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港湾構造物の中でも桟橋上部工は,塩害による早期劣化が維持管理上の大きな問題になっている.本研究では,桟橋下面での砕波の発生回数すなわち海水飛沫の発生量を低減する目的で,実際の桟橋において,設置高さの異なるカーテンウォール状の前垂れを複数配置した.その背後の梁と床板にコンクリート供試体を設置し,海洋環境下での曝露を2年間行い,曝露開始1年目と2年目に曝露供試体を回収した.曝露供試体の塩化物イオン濃度測定結果から,前垂れ設置による塩分供給量の低減効果について検討を行った.今回の現地実験の範囲では,概ね潮汐の累積相対度数を0.8より小さくなる位置に前垂れ下端を設定すれば,塩分供給量の低減効果が得られることが分かった.
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志水 克成, 斉藤 直, 松尾 定
2014 年70 巻2 号 p.
I_540-I_545
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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港湾施設で多用される海洋鋼構造物は,常に海水の影響を受ける過酷な腐食環境にあり,防食工によって供用期間中の所定の性能を確保している.
本稿では,電気防食に流電陽極方式を採用し,建設後40年経過した鋼管杭式ドルフィン形式の桟橋において実施した,陽極の段階的な取付と鋼管杭の電位測定,陽極の電流測定の結果について報告する.電位変化の傾向については,新設陽極取付時の電位変化は時間経過に伴い減衰すること,陽極の電位変化の効果は周囲の杭に現れること等がわかった.さらに,電位変化について統計的に分析した結果,これらの要素を考慮すれば,陽極取付時の電位予測モデルを高い精度で作成できた.これを用いて桟橋全体系での電気防食の設計として,陽極の取付本数や配置を設計できる.
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武田 将英, 川瀬 恭平, 重松 孝昌, 津田 宗男, 羽渕 貴士, 網野 貴彦
2014 年70 巻2 号 p.
I_546-I_551
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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桟橋に代表されるような著しい劣化が指摘されている港湾構造物の効率的な維持・管理手法を構築するためには,港湾構造物に波浪が作用する際に発生する飛沫の特性を定量的に把握する必要がある.本研究では,斜面上に設置された鉛直壁に波が作用する際の飛沫の発生過程を高速度カメラを用いて撮影し,新たに開発した画像解析アルゴリズムにより個々の飛沫の運動特性を解析して,その定量的な把握を試みた.飛沫径,発生飛沫個数,飛沫体積,飛散速度,飛散角度などの諸量の定量的な計測が可能であることを示した.
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佐藤 徹, 加藤 絵万, 川端 雄一郎, 岡﨑 慎一郎
2014 年70 巻2 号 p.
I_552-I_557
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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港湾施設の点検診断については,施設の設置環境等から目視に頼らざるを得ない部分が多く,港湾利用の制約を伴う機器を使用した点検調査については,あまり実施されてこなかった.しかしながら,高齢化した社会資本の安全性確保や,的確な点検実施など維持管理の重要性の高まりなどを背景として,昨年,老朽化した港湾施設を主対象に,全国的な点検調査が実施された.この調査においては,はじめて全国規模で地中レーダを用いた係留施設の空洞化調査が実施された.本報告では,係留施設を対象に実施された空洞化調査の結果について整理し,空洞化と目視により判定されたエプロン舗装等の劣化度の関係等についてとりまとめた.また,これらの分析を踏まえて,係留施設に発生する空洞化に対して今後対応すべき事項等について考察した.
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宇野 宏司, 木下 歩, 岸本 周平, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
2014 年70 巻2 号 p.
I_558-I_563
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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都市河川河口では,夏季の貧酸素化の進行と冬季の河口閉塞による滞留化によって水環境の悪化が常態化している.かつて「コンクリート三面張り」の象徴とされた都市河川では通水能のみが議論され,生物生息機能や生物生産機能については全く注目されてこなかった.そのため,都市河川河口域の地形や水環境の動態は十分に明らかでない.また,河口砂州の発達した都市河川では,海からの塩水遡上が弱められたり,波浪の河道内への直接進入が防止されることで,河口周辺の水環境が変化し,汽水空間の減少や河川敷の浸水の危険性を高めている.本研究では,明石川河口を対象に現地調査および数値シミュレーションを実施し,洪水出水前後の地形および水環境変化を把握した.
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芝田 浩, 三宅 央朗, 浜崎 淳, 徳田 太郎, 松山 幸彦, 岡辺 拓巳
2014 年70 巻2 号 p.
I_564-I_569
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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瀬戸内海や九州を中心とした日本の沿岸海域において発生する赤潮は毎年甚大な被害をもたらしている.赤潮による被害を最小限に抑えるために,赤潮の分布や移動状況,海水温などのデータをモニタリングし,時々刻々と変化する赤潮を監視することが重要である.本研究では,赤潮による漁業被害を最小限に抑えるために,赤潮が発生した際にその位置や移動状況などをリアルタイムにモニタリングする赤潮観測システムを開発した.本システムは,無線ネットワークに接続した漂流ブイを赤潮と共に漂流させることで,漂流している位置,海水温,照度の各データをリアルタイムに取得する.本論では,漂流ブイによるモニタリングに対する漂流ブイの適用とシステムの概要,および観測データの可視化について述べる.さらに,赤潮が頻繁に発生する実際の海域においてシステムを使用した観測結果について述べる.
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倉原 義之介, 増田 龍哉, 御園生 敏治, 田中 ゆう子, 滝川 清
2014 年70 巻2 号 p.
I_570-I_575
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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人工干潟のモニタリング手法の最適化のために,底生生物調査地点の設定方法について検討を行った.人工干潟で造成した場の環境が複雑であれば,形成される生態系は多様となる.このため,調査地点の設定は,単に干潟の広さでなく,形成された生物生息環境の多様性に基づいて行う必要がある.過去の自然干潟における調査結果から,有明海・八代海の砂泥底の干潟に生息するマクロベントスでは,地盤高0.5m毎,含泥率20%毎に干潟を区分して調査地点を設定することで,干潟全体を調査した場合の8割以上の種が確認可能であることを示した.また,この調査地点の設定方法は今回調査を実施した人工干潟においても有効であった.ただし,人工干潟では,造成後に地盤が安定するまでの間,短期的に地盤高や底質の粒度が変化する可能性が高いため,環境の変化に合わせて柔軟に調査地点の見直しを行う必要がある.
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高橋 英紀, 森川 嘉之, 加島 寛章
2014 年70 巻2 号 p.
I_576-I_581
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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海浜地盤に砕けた波が打ち上げる際,地盤内の応力や間隙水圧は複雑な応答を示す.この応答を調べる水理実験は,今まで重力場において縮尺模型で行われるのが一般的であったため,実物スケールの応力や水圧を再現することは難しかった.また,地盤条件を変えたパラメトリックな検討も多大な労力を要した.そこで研究では,遠心模型実験装置によって波打帯における海浜地盤応答特性を調べることを試みた.研究では,限られた装置能力やスペース内で効率的に造波できる装置を開発するとともに,Modelling ofmodels手法によってフルード則を満たした水理実験が可能なことを示した.また,地盤内の間隙水圧を再現できることも示した.
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山本 浩一, 速水 祐一, 中野 龍一, 神野 有生, 関根 雅彦
2014 年70 巻2 号 p.
I_582-I_587
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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フロックの粒径を観察しながら粘着性底泥の再懸濁速度を測定できる装置を開発し,現地に適用した.フロックの粒径が1mm以下ではほぼ均一の限界せん断応力を持っていたが,山口湾の現地底泥では0.4Paを超えると1mm以上のフロックは再懸濁を開始し,かつ粒径に応じて限界せん断応力が増加することが明らかになった.これは底泥の侵食の形態が0.4Pa程度の限界せん断応力を境にfloc erosionからmass erosionに遷移することを示していると考えられた.
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宇多 高明, 酒井 和也
2014 年70 巻2 号 p.
I_588-I_593
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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堤防護岸などの健全度の評価では,施設周辺の砂浜状況や周辺施設との位置関係の理解が重要であるが,既往の点検手法ではこの点についての記述が十分でない.そこで,施設の周辺状況について最新の衛星画像(空中写真)を利用してまず把握し,その中で当該施設の位置をGPSにより定めた上で,その変状を具体的に調べる方法について皆生海岸での事例を基に議論した.
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森下 祐, 高橋 智幸
2014 年70 巻2 号 p.
I_594-I_599
発行日: 2014年
公開日: 2014/10/01
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近年,我が国に多大な被害をもたらした巨大津波では,局所侵食に伴う構造物の倒壊など土砂移動に起因する被害が各地で相次いだ.こうしたなか,津波土砂移動に関する研究は,室内実験等との検証を通じて津波移動床モデルの提案・高度化が行われてきた一方で,実地形に適用し,土砂移動特性等を分析した事例は少ない.このため,本研究では,津波移動床モデルを複雑な実港湾地形に適用し,土砂移動が流況に及ぼす影響や防波堤が土砂移動へ及ぼす影響を検証した.
この結果,水位の低い引き波時に流速が増大し侵食が助長されること,津波来襲後の堆積域は,その過程で侵食に転じている場合があることがわかった.また,沖合いの防波堤は,押し波の減勢効果に寄与する一方で,港口部の堆積域を助長している可能性があることがわかった.
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