日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
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選択された号の論文の1051件中101~150を表示しています
  • 高木 純平, 高橋 英之, 河本 恭子, 田村 謙太郎, 近藤 真紀, 西村 幹夫, 嶋田 知生, 西村 いくこ
    p. 0102
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    小胞体で前駆体として合成された種子貯蔵タンパク質は,小胞輸送によりタンパク質蓄積型液胞に運ばれた後,プロセシングを受けて成熟型になる.私達は貯蔵タンパク質前駆体を種子に異常蓄積するシロイヌナズナmaigo変異体を単離し,液胞タンパク質の細胞内輸送機構を解析してきた(1).新規の変異体であるmag5変異体の種子細胞には,電子密度の高いコアを含む,直径約 500 nmの構造体が多数蓄積していた.これらの構造体は,小胞体内に貯蔵タンパク質が異常蓄積することによってできるMAG bodyであると判明した.同定したMAG5遺伝子は,約150 kDaのタンパク質をコードしていたが,予測される機能ドメインをもっておらず,機能未知であった.シロイヌナズナゲノムには,MAG5遺伝子のホモログが1つ存在しており,これをMAG5-like遺伝子と名付けた.mag5変異体とは異なって,mag5-like変異体の種子に貯蔵タンパク質前駆体は蓄積していなかった.MAG bodyを異常に蓄積する既知の輸送変異体の原因遺伝子はすべて,小胞体―ゴルジ体間の輸送に関わる因子である.MAG5遺伝子も小胞体―ゴルジ体間の輸送に関わっていることが示唆される.
    (1)Takahashi H. et.al, Plant Cell Physiol 2010;51(10):1777-1787.
  • 福田 真子, 佐藤 美緒, Okita Thomas W., 川越 靖, 小川 雅広, 熊丸 敏博
    p. 0103
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    GEF (Guanine nucleotide Exchange Factor)は小胞輸送を担うRabタンパク質の活性化を促進する因子である。イネ種子においてGEFの構造遺伝子変異、glup6突然変異は胚乳においてグルテリン前駆体を多量に蓄積する。しかし、グルテリン前駆体の細胞内輸送におけるGEFの機能については不明である。そこでGEFに関する2系統のglup6同座変異体の組織学的解析を行った。蛍光顕微鏡解析の結果、両glup6系統において小型化したPBIIと、グルテリン前駆体を集積する構造体が観察された。この構造体は層状構造を示し、構造体内にグルテリンの他にグロブリンとゴルジ体で合成されるβ-グルカンが存在した。さらに、共焦点レーザー顕微鏡解析より、液胞前区画(prevacuolar compartment: PVC) タンパク質及びゴルジ体膜タンパク質も構造体に局在した。これらの結果から、glup6においてグルテリン前駆体のゴルジ体以降の輸送が滞っていることが考えられる。また、glup6の登熟初期の胚乳では細胞壁にグルテリンを集積する顆粒が観察されたが、登熟後期では消失した。
    以上のことから、イネGEFは胚乳細胞におけるゴルジ体等のエンドメンブレンシステムの形成に重要な作用を有し、グルテリン前駆体のゴルジ体からPSVへの細胞輸送に関与していると考えられる。
  • Wen Liuying, Fukuda Masako, Satoh-Cruz Mio, Kumamaru Toshihiro, Ogawa ...
    p. 0104
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Rab GTPases regulate the intracellular membrane trafficking events and are activated by Guanine nucleotide exchange factor (GEFs). The trafficking of rice glutelin involves membrane traffic pathway, which has been mainly described as that glutelins are initially synthesized on the endoplasmic reticulum as 57-KD precursor, then transported via the Golgi apparatus to protein storage vacuole (PSV), proteolytically cleaved and accumulate in PSV. In our previous study, both of glup4 and glup6 mutants for Rab5a and GEF, respectively, showed the novel structure containing the proglutelin in the endosperm. The immune precipitation analysis of the Glup6-GEF and Glup4-Rab5 proteins revealed that both proteins were interacted each other, suggesting that the Glup6-GEF activates Glup4-Rab5. The microscopy analysis of the endosperm in double recessive type of glup4 and glup6 mutants showed more severe novel structure containing the proglutelins than each single mutant. These results suggest the possibility that the Glup6-GEF activates also the other Rab proteins and the Glup4-Rab5a is activated also by the other GEF proteins.
  • 砂田 麻里子, 郷 達明, 上田 貴志, 中野 明彦
    p. 0105
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    近年,植物において,エンドサイトーシスが環境応答や形態形成などに密接に関与することが示されている.しかし,その詳細な分子機構についてはいまだ不明な点が多い.エンドサイトーシス制御因子の1つであるRAB5は,エンドソームに局在し,その融合のみならず多様な現象を制御する分子スイッチとして機能している。RAB5をGDP型からGTP型へと活性化するグアニンヌクレオチド交換因子には,Vps9ドメインと呼ばれる活性部位が広く保存されている。シロイヌナズナの栄養成長期においては,Vps9ドメイン以外の既知のドメイン構造を持たないVPS9aが唯一のRAB5 GEFとして機能し,ARA7,RHA1(保存型RAB5)と ARA6(植物固有のRAB5)の全ての活性化を担うことが明らかになっている.このことは,多数の既知のドメイン構造を持つ複数のRAB5 GEFが,異なるステップでRAB5を制御している動物とは異なり,植物独自のRAB5制御機構が存在することを示唆している.私たちはこれまでの研究において,VPS9aがRAB5メンバー全てを共通に活性化する領域と,植物固有型のARA6の制御に関わる領域(C末端領域)とからなることを明らかにした.現在,VPS9aがどのように異なるRAB5メンバーを制御しているのか,C末端領域はいかにARA6を認識するのか等を明らかにするべく,生化学的・遺伝学的解析を行っている
  • 海老根 一生, 藤本 優, 台信 友子, 植村 知博, 堤 伸浩, 中野 明彦, 上田 貴志
    p. 0106
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    細胞内では小胞を介して様々な物質の輸送が行われており,RABとSNAREはこの小胞と標的オルガネラ膜の融合を制御する分子である.我々は,小胞輸送が植物の高次現象において果たす役割を明らかにすることを目的とし,特に植物固有のRABとSNAREであるARA6とVAMP727に注目し研究を行っている.ARA6は特徴的な一次構造を持つ植物固有のRAB5であり,保存型のRAB5とは一部重なりながらも異なるエンドソームに局在している.一方,VAMP727はlongin domainに約20アミノ酸からなる挿入を持つR-SNAREであり,液胞膜とエンドソームの接する部分でQ-SNAREであるVAM3と複合体を形成することにより,エンドソームと液胞間における膜融合を制御している(Ebine et al., 2008).これら植物固有の小胞輸送制御因子について様々な手法を用いて機能解析を行った結果,我々は新たに,VAMP727がエンドソームから細胞膜への輸送においても機能していること,その上流でARA6が機能していることを見いだした.今大会ではこの解析結果について報告するとともに,ARA6によって制御される輸送経路の生理的意義についても議論したい.
  • 伊藤 瑛海, 白井 貴之, 上田 貴志, 中野 明彦
    p. 0107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    RAB GTPaseは,活性型時にエフェクターと呼ばれる分子群と相互作用することにより,細胞内膜交通において多様な現象を制御している.なかでもRAB5は,真核生物に広く保存されており,エンドサイトーシス経路で機能することが知られている.陸上植物は,この保存型RAB5に加え,ユニークな一次構造を有するRAB5ホモログをもつという特徴を持つ.私たちの研究室では,保存型RAB5と植物固有型RAB5が異なる輸送経路で機能することにより,花成や細胞分化,根の形態形成などの現象の制御に関わることを明らかにしてきた.このようなRAB5の機能は,さまざまなエフェクターとの相互作用を介して発現していると考えられるが,植物には,これまで動物で報告されているRAB5エフェクターのホモログは見いだされず,その仕組みは全く明らかになっていない.そこで,本研究では,シロイヌナズナの植物固有型RAB5であるARA6に注目し,エフェクターの同定と機能解析を試みた.酵母2ハイブリッド法により得られたARA6エフェクター候補のうち,PUF2(Plant-unique RAB5 Effector 2)は,活性型ARA6特異的に相互作用を示す一方で,保存型RAB5が制御する液胞輸送経路を主に制御することが明らかになった.このことから,PUF2が二つの植物RAB5が関わる輸送経路を統御する鍵因子である可能性が見いだされた.
  • 藤本 優, 丸山 桃子, 海老根 一生, 井坂 奈々子, 植村 知博, 石崎 公庸, 大和 勝幸, 河内 孝之, 中野 明彦, 上田 貴志
    p. 0108
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    SNAREは膜交通経路において膜融合の実行を担う分子であり,その構造上の特徴から,Qa-,Qb-,Qc-,R-SNAREの4種に分類される.このうち陸上植物で著しい多様化が見られるR-SNARE,VAMP7ファミリーは,VAMP71とVAMP72という二つのサブグループで構成されている.VAMP72グループの中にはさらに,アミノ末端側のLonginドメインに約20アミノ酸残基からなる酸性配列が挿入された特徴的な分子種が存在する.当研究室ではこれまでに、シロイヌナズナの酸性挿入配列を持つVAMP72分子,VAMP727が,エンドソームを中心としたポストゴルジ輸送経路で機能することや,挿入配列がエンドソームへの局在や液胞におけるSNARE複合体の形成に必須であることを明らかにしている.この挿入配列を持つVAMP72分子は,これまで種子植物に特有のものと考えられていた.しかし,最近コケ植物苔類ゼニゴケにも類似の分子が存在していることが明らかとなり,その解析から,この挿入配列がオルタナティブスプライシングに由来することが新たに判明した.現在,このオルタナティブスプライシングが,陸上植物におけるVAMP72の進化において果たした役割を解明すべく研究を進めている.本講演では,これらゼニゴケVAMP72スプライシングバリアントの細胞内局在やそれらが機能する輸送経路について解析した結果を報告する.
  • 森 雄季彦, 植村 知博, 藤本 優, 丸山 桃子, 海老根 一生, 上田 貴志, 中野 明彦
    p. 0109
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    細胞内の膜交通システムにおいて、輸送小胞と標的オルガネラ膜の融合を制御するSNARE分子の中に、輸送小胞膜に局在するR-SNAREがある。R-SNAREは、アミノ末端にlongin domain と呼ばれる領域を持つlonginと、それ持たないbrevinに大別され、陸上植物のR-SNAREは全てlonginであることが知られている(SEC22、YKT6、VAMP7のグループが存在する)。シロイヌナズナゲノムには18個のlonginがコードされており、そのうち12個がVAMP7に分類される。我々は、VAMP7の機能分化が植物細胞における細胞内輸送経路の多様化に関与しているのではないかと考え、VAMP714というタンパク質に注目して解析を行った。シロイヌナズナVAMP7は、さらにVAMP71とVAMP72の2種類に分類され、VAMP71の多くが液胞膜に局在するのに対し、VAMP714のみがゴルジ体に局在することが,シロイヌナズナ培養細胞での一過的発現解析により示されている。本大会では、シロイヌナズナVAMP714と陸上植物の様々な系統から単離したVAMP714ホモログの詳細な細胞内局在解析の結果を報告するとともに、VAMP714がどのような細胞内輸送経路に関与しているのかについて、進化細胞生物学的な視点から議論したい。
  • 白川 一, 上田 晴子, 嶋田 知生, 河本 恭子, 島田 貴士, 近藤 真紀, 高橋 卓, 奥山 雄大, 西村 幹夫, 西村 いくこ
    p. 0110
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナゲノムには4種類のSYP2ファミリーSNAREタンパク質がコードされている.我々はこれまで,その中の1つVAM3/SYP22が植物の成長・維管束パターンの形成・ミロシン細胞分化に関与していることを報告してきた (1).今回,我々はpep12/syp21plp/syp23の単独変異体,加えてこれらの変異体とvam3/syp22との多重変異体を作製した.変異体の致死性・維管束パターン・ミロシン細胞分化などの表現型の解析から,VAM3/SYP22PEP12/SYP21PLP/SYP23が冗長的に機能していることを発見した.加えて, PLP/SYP23が膜成分に局在することなくSNARE複合体を形成していること,及び多コピーのPLP/SYP23vam3/syp22の表現型を抑圧することを見出した (2).そこで,本大会ではSYP2ファミリーSNAREタンパク質の機能について議論したい.
    (1) Shirakawa, M. et al, Plant Cell Physiol., 50, 1319-1328 (2009).
    (2) Shirakawa, M. et al, The Plant Journal., in press.
  • 西村 浩二, 石川 翔太, 山内 淳司, 服部 沙陽子, 中川 強, 地阪 光生, 長屋 敦, 横田 一成
    p. 0111
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    クラスリンはクラスリン被覆小胞の被覆タンパク質であり、動物、酵母、植物におけるトランスゴルジ網や細胞膜のタンパク質を種々のエンドソームに輸送する機能をもつ。クラスリン被覆は、トリスケリオンと呼ばれる三脚巴の構造からなり、三分子のクラスリン重鎖(CHC)が一分子のクラスリン軽鎖(CLC)とそれぞれ結合した六量体から構成される。CHCのアミノ酸配列は真核生物で広く保存されているが、CLCの保存性は比較的低く、このためCLCは生物種特異的な機能を持つことが示唆される。さらにシロイヌナズナにおけるCHCとCLCの相互作用の詳細は明らかではない。本研究ではシロイヌナズナクラスリン分子のCHCとCLCの相互作用を詳細に解析した。酵母two-hybridアッセイや二分子蛍光相補性解析(BiFC)によりシロイヌナズナCLCはCHCと相互作用することが明らかになった。さらにCLC(1-258)の欠失解析によりCLCの中央領域(82-144)が重鎖のカルボキシル末端側のHub領域(1086-1705)と相互作用することが示され、シロイヌナズナのCHCとCLCは哺乳動物のクラスリンと同様な相互作用をすることが示唆された。さらに変異導入解析によりCHCとの相互作用に関わるCLCのアミノ酸を解析したので合わせて報告する。
  • 山本 雅也, 遠藤 斗志也, 西川 周一
    p. 0112
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    小胞体は分泌タンパク質の合成の場であり,高次構造形成に失敗した異常タンパク質を修復,分解する「品質管理」の機能をもつ.哺乳動物では,小胞体Hsp40であるERdj3が,小胞体Hsp70,BiPと協調し,小胞体品質管理で重要な役割を担っている.われわれは,ERdj3のシロイヌナズナオルソログAtERdj3Bの遺伝子破壊株(aterdj3b株)は高温条件である29°Cで種子ができない不稔となることを見いだした.aterdj3b株は,花粉の葯からの放出に欠損をもち,柱頭に付着する花粉粒の数が顕著に減少していた.29°Cで栽培したaterdj3b株の成熟した葯では,野生株でみられない異常な沈着物が観察され,このため花粉同士や花粉と葯壁などが癒着していた.AtERDJ3Bプロモータとレポーター遺伝子GUSの融合遺伝子をもつ形質転換体を用いた遺伝子発現解析の結果,AtERDJ3B遺伝子はタペート細胞で強く発現していることが明らかとなった.また,タペート細胞特異的なAtERdj3Bの発現により,aterdj3b株の29°Cでの不稔性および受粉過程の欠損は部分的に抑圧された.これらの結果から,小胞体品質管理がタペート細胞の機能発現に重要であることが示唆された.
  • 平野 朋子, 松沢 智彦, 竹川 薫, 佐藤 雅彦
    p. 0113
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Fab1/PIKfyve はPtdIns 3, 5-kinase 、すなわち、PtdIns 3-P からPtdIns (3,5) P2を合成する酵素であり、液胞やリソソーム維持において機能する。酵母のfab1欠損株は巨大化した液胞が見られるのが特徴であるが、シロイヌナズナFAB1AとFAB1Bを発現させると、液胞を相補した。さらにGFPを融合させてFAB1A/Bの細胞内局在を調べた結果、FAB1は根で、エンドソームに局在することがわかった。さらに、FAB1A/Bの発現をRNAiで誘導的に減少させた植物では、液胞の酸性化やエンドサイトーシスが損なわれた。これは、シロイヌナズナFAB1A/Bが酵母と同様に植物でもPtdIns 3, 5-kinaseとして機能したことを示している。また、根や根毛の成長阻害、オーキシンに対する感受性の減少、根の重力屈性の乱れなど、様々な異常を示した。これらの異常な表現型は、FAB1の過剰発現植物でも観察された。また、過剰発現の植物は、FAB1の発現量依存的に矮小化し、雄性不稔になり、花の形態異常を起こした。これらのことはFAB1A/Bの適切な発現量が、エンドソームや液胞を含むオルガネラ膜系の恒常性に重要であることを示している。現在、FAB1の発現異常で引き起こされる現象がAUX1やPIN1のリサイクリング異常に原因があるか否かについて研究を進めている。
  • Hatano-Iwasaki Aya, Ogawa Ken'ichi
    p. 0114
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Seed vernalization promotes seed germination and flowering in various plants, and glutathione is required for vernalization-promoting flowering. Here we show that major changes in gene expression following seed vernalization involve glutathione in Arabidopsis thaliana. Seed vernalization treatment of wild-type seeds changed certain genes during seed germination, which are defined as "seed-vernalization-responsive (SVR) genes". Regardless of seed vernalization treatment, a similar gene expression pattern was observed in seed germination of transgenic plants overexpressing the gamma-glutamylcysteine synthetase gene GSH1, coding an enzyme limiting glutathione biosynthesis, under the control of the cauliflower mosaic virus 35S promoter. Taken together, SVR gene expression is modulated by glutathione. Based on changes in the amount and redox state of glutathione in wild-type and transgenic seeds treated and untreated with seed vernalization, we discuss the importance of oxidized redox states of glutathione in seed vernalization.
  • 岩崎(葉田野) 郁, 逸見 健司, 小川 健一
    p. 0115
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、グルタチオン結合性葉緑体型アルドラーゼの同定や内生グルタチオン量が低下したシロイヌナズナ変異体の解析から、グルタチオンが光合成の制御に関わることを明らかにしてきた。本研究では、グルタチオンを投与したシロイヌナズナを用いて、グルタチオン施用による個葉光合成への影響について解析した。シロイヌナズナ野生型植物(Columbia)に、酸化型(GSSG)または還元型(GSH)グルタチオンを底面灌水により施用した場合、種子収量が増加し、地上部バイオマス量が増加した。播種後5週目の植物のCO2固定速度は、GSSGおよびGSH施用で、無施用区と比較して高かった。GSSGとGSHのどちらを処理した植物でも、葉面積あたりの窒素およびクロロフィル含量の増加が認められ、Rubisco量の増加も認められた。Rubisco量は、GSSG施用区で無施用区の約1.3倍であったのに対し、GSH施用区では約2倍に増加していた。また、無施用区と比較して、GSSG施用区のChl a/b比は同程度なのに対し、GSH施用区では高かった。これらの結果から、GSSGとGSHは、CO2固定能力を高めることができるが、そのメカニズムは異なることが示唆される。
  • 逸見 健司, 岩崎(葉田野) 郁, 小川 健一
    p. 0116
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    窒素の過剰施肥は、栄養生長を促進し、光利用効率の低下によって種子収量を低下させる。しかし、シロイヌナズナにおいて窒素の過剰施肥と当量の還元型または酸化型グルタチオンは、草型を乱すことなく種子収量を上昇させた。この窒素施肥では見られない効果を調べるために、還元型または酸化型グルタチオンを底面潅水で与えた野生型シロイヌナズナの生長解析を行った。還元型または酸化型グルタチオン施用では、播種後4週間目あたりの時期からロゼット葉が丸みを帯びた形態を示したが、花成に大きな影響を及ぼさなかった。還元型または酸化型グルタチオン施用した植物は、播種後5週間目において抽だいし、植物体内の全窒素量が増加したが、この時期以降に地上部バイオマス量が顕著に上昇した。還元型または酸化型グルタチオン施用では、栄養生長期の期間を変えることなく、生殖生長期における生長量を増大させることが可能である。生長解析の詳細は、発表で報告する。
  • 江島 加余子
    p. 0117
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系IIの修復過程は活性酸素に対して感受性が高く、修復の阻害が光化学系IIの光阻害を促進する要因となっている。これまでにD1タンパク質など修復に必要なタンパク質の新規合成が活性酸素によって翻訳伸長の段階で阻害されることが明らかになっている。さらに、タンパク質合成系の中で、翻訳因子EF-Gが活性酸素により特定のCys残基が酸化され、ジスルフィド結合を形成して失活することも示唆されている。
    本研究では、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の葉緑体型EF-G(Slr1463)に着目して、その過剰発現株および酸化の標的Cys残基をSerに改変したEF-Gを発現する変異株を作製し、強光下でのタンパク質合成および光化学系IIに対する影響を調べた。EF-G過剰発現株では強光下でD1タンパク質の新規合成が促進したが、バクテリア型のEF-GホモローグSll1098の発現が著しく低下し、他の多くのタンパク質の新規合成が抑制された。一方、改変型EF-Gを野生型EF-Gと共発現させた株では、強光下でD1タンパク質の新規合成のみが著しく促進した。さらにこの変異株では、光化学系IIの光阻害が緩和した。光化学系IIの光損傷の過程が影響を受けなかったことから、EF-Gの改変により強光下で修復が促進され、光阻害が緩和したことが示唆される。
  • 諸田 拓哉, 永野 孝典, 小島 幸治, 久堀 徹, 西山 佳孝
    p. 0118
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    翻訳因子EF-Gはタンパク質合成の翻訳伸長反応で主要な働きを担う。近年、in vitroにおいてSynechocystis sp. PCC 6803のEF-G(Slr1463)は、活性酸素により特定のシステイン残基間にジスルフィド結合が形成され失活することが明らかになっている。さらに、このジスルフィド結合はチオレドキシンによって還元され、再活性化することも示唆されている。しかし、生体内でEF-Gが光合成電子伝達に由来する還元力によって還元されるかどうかは不明である。そこで本研究では、様々な光条件下でEF-Gのレドックス状態をin vivoで解析した。シアノバクテリアの細胞懸濁液に様々な強度の光を照射し、メタノールを加えてタンパク質のレドックス状態を固定した。細胞を破砕した後、PEG-maleimide試薬によってSH基を修飾し、抗EF-G抗体を用いて還元型および酸化型EF-Gを検出した。その結果、光強度の上昇に伴って、還元型EF-Gの割合が増大することが観察された。しかし、非常に強い光を照射すると、逆に酸化型EF-Gの割合が増大した。これらの結果から、EF-Gは光合成電子伝達から還元力を得て、翻訳装置を制御していることが示唆された。
  • 本橋 健, 久堀 徹
    p. 0119
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物葉緑体では、光合成電子伝達系から得られる還元力は葉緑体ストロマ側に伝達されNADPHを生じる。ストロマ側に存在するチオレドキシンは、この還元力の一部を使ってフェレドキシン、フェレドキシン-チオレドキシン還元酵素によって還元される。生じた還元型チオレドキシンは、ストロマ側で各種チオール酵素を還元し、その酵素活性を調節する。また、ストロマ局在のチオレドキシンは活性酸素種消去酵素であるペルオキシレドキシンの酵素反応そのものにも必要な還元力を供給する。
    これ以外に、ストロマの還元力は、チラコイド膜を介してチラコイド内腔のチオレドキシン様タンパク質HCF164へ還元力を供給する。HCF164はチラコイド膜に一回膜貫通領域を持ち、活性に必要な領域はチラコイド内腔側を向いている。この内腔側への還元力伝達に関与する可能性のある膜タンパク質CcdAについて、CcdAタンパク質の葉緑体内の局在とストロマチオレドキシンによるチラコイド膜上のCcdAタンパク質還元機構について報告し、高等植物葉緑体のチラコイド膜を介した還元力伝達経路の分子機構を考察する。
  • 池本 圭輔, 辻村 昌希, 丸田 隆典, 石川 和也, 吉村 和也, 重岡 成
    p. 0120
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    葉葉緑体において、NADP(H)は光合成などの一次代謝だけではなく、抗酸化系への還元力にも重要であるため、そのレベルおよびレドックス状態は厳密に制御されなければならない。これまでに我々は、シロイヌナズナ葉緑体局在型Nudix hydrolase 19(AtNUDX19)がNADPH加水分解活性を有すること、本酵素の発現は光強度に依存していることを明らかにした。そこで、AtNUDX19遺伝子破壊株(KO-nudx19)を用いて、AtNUDX19の光環境順応への関与について解析した。
    通常光(100 μmol/m2/s)照射下において、野生株と比較してKO-nudx19ではNADPHおよびNADP+が増加および減少していた。また、それらの変化は強光(800 μmol/m2/s)下でより顕著であり、KO-nudx19の生育は野生株よりも促進していた。さらに、KO-nudx19では強光下でのカルビン回路の酵素群のイニシャル活性、炭酸同化能、および電子伝達速度が増加していた。また、多くの抗酸化酵素活性の上昇および酸化タンパク質レベルの減少が認められた。以上より、AtNUDX19は光環境順応における光合成能や抗酸化能の制御のためのコアレギュレーターとして機能していると考えられた。
  • 池本 圭輔, 向井 春香, 丸田 隆典, 石川 和也, 吉村 和也, 重岡 成
    p. 0121
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    これまでに我々は、シロイヌナズナの葉緑体型NADPH加水分解酵素(AtNUDX19)は、光環境順応における光合成能や抗酸化能の制御に機能していることを明らかにした。このことから、葉緑体内NADPHレベルもしくはレドックス状態がシグナルとして、植物のストレス応答に関与している可能性が示唆された。そこで本研究では、この可能性を明らかにすることを目的として、AtNUDX19の欠損(KO-nudx19)が遺伝子発現に及ぼす影響を網羅的に解析した。
    マイクロアレイ解析の結果、通常光および強光照射下において野生株と比較してKO-nudx19で発現レベルが異なる600以上の遺伝子群を同定した。興味深いことに、それらにはホルモン応答に関与する遺伝子が多く含まれていた。そこで、KO-nudx19の種々のホルモンやストレス処理に対する感受性を評価した。その結果、KO-nudx19はジャスモン酸やアブシジン酸処理に対して非感受性、傷害や浸透圧ストレスに対して高感受性を示した。さらに、KO-nudx19はサリチル酸処理に対して高感受性を示した。以上より、AtNUDX19によるNADPH代謝の制御はホルモンを介したストレス応答に関与することが示唆された。
  • 森 達也, 田部 記章, 丸田 隆典, 横山 国大, 佐藤 信雄, 高橋 広夫, 吉村 和也, 重岡 成
    p. 0122
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    シロイヌナズナにおけるセリン-アルギニンリッチ(SR)タンパク質ファミリーの中で、植物特有のドメイン構造を有するatSR45aはスプライセオソーム構成因子として機能し、強光ストレスにより迅速に発現誘導される(Plant Mol Biol 70:241-5,2009)。したがって、atSR45aは強光ストレスに応答した選択的スプライシング制御に重要な役割を果たしていることが示唆される。そこで本研究では、atSR45a遺伝子破壊株(KO-sr45a)を用いたタイリングアレイ解析により、atSR45aによりスプライシング効率を制御される遺伝子群の同定を試みた。
    タイリングアレイ解析の結果、強光ストレス下(800 μmol/m2/s, 1 h)においてKO-sr45a株では、235箇所のコーディング領域の発現量が野性株と比較して有意に変化していた。半定量的RT-PCRによる検証の結果、強光ストレス下における選択的スプライシング効率および転写レベルの変化が、各々9個および6個の遺伝子において認められた。また、それらの強光ストレス下での選択的スプライシング効率の変化は、atSR45aの発現誘導のタイミングと一致していた。さらに、選択的スプライシング産物のシークエンス解析の結果から、atSR45aはイントロンリテンション型のスプライシングエンハンサーとして機能していることが示唆された。
  • 塚原 啓太, 玉置 雅紀, 澤田 寛子, 河野 吉久, 中嶋 信美
    p. 0124
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    オゾンは光化学オキシダントの主要成分であり、その濃度上昇により多くの植物種の葉に可視障害をもたらす。葉の可視傷害は植物の光合成能の低下を誘導するため、作物では収量の低下につながると考えられてきた。しかし、イネでは可視傷害の発現程度と収量低下割合との間には明確な相関は認められなかったことから、これらは別のメカニズムで調節されていると考えられる。本研究では、オゾンに曝されたイネの収量低下に関わる遺伝子座を同定するために、ササニシキ/ハバタキの染色体断片置換系統群(CSSLs)を用いてQTL解析を行った。その結果、6番染色体後方のRM3430マーカー近傍に、オゾン曝露による収量低下に関与すると考える遺伝子座を確認できた。このマーカー近傍に存在するAPO1遺伝子は一次枝梗の発生に関与しており、これを介して収量に影響することが示されている。そこでAPO1の器官別発現解析を行ったところ、この遺伝子は幼穂で最も高く発現していた。また、幼穂においてオゾン曝露によりササニシキでは発現が上昇し、ハバタキでは顕著に低下した。このことから、オゾン曝露による収量低下は、一次枝梗数を調節するAPO1遺伝子の発現がオゾンの曝露で低下することにより引き起こされる可能性が示唆された。
  • 藤田 美紀, 井内 聖, 藤田 泰成, 小林 佑理子, 小林 正智, 篠崎 和子, 篠崎 一雄
    p. 0125
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまで、乾燥ストレスや塩ストレスなど、環境ストレス(非生物ストレス)に対する植物の応答機構について研究を進めてきた。環境ストレス応答は、病原体感染などの生物ストレス応答経路とクロストークすることが明らかとなりつつあり、このクロストークにおいては、ホルモンやリン酸化シグナル、転写調節などに加えて、活性酸素種が重要な位置を占めている。そこで我々は、活性酸素種に注目して解析を進めたところ、シロイヌナズナ野生系統の中に、酸化ストレスを誘発するMethyl viologenに対し強い耐性を示すNos-d系統を見いだした。様々な酸化ストレス誘発物質、環境ストレスやホルモンなどに対するNos-d系統の応答を調べた結果、浸透圧ストレスに対する耐性を示すことが明らかとなった。現在、これらストレス応答の関連性を解析中である。また、Nos-d系統と感受性系統であるColとのF2世代の解析から、この耐性形質は1遺伝子座にリンクする可能性が示唆された。さらに、理研BRCに収集されているシロイヌナズナ野生種の中から同様の耐性を示す系統の探索を行い、複数の耐性系統を得た。現在、原因遺伝子のマッピングを行うと共に、耐性のメカニズムの解析について解析を行っている。
  • 高梨 功次郎, 杉山 暁史, 矢崎 一史
    p. 0126
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    マメ科植物の根粒形成には様々な植物ホルモンが正もしくは負の調節因子として関与している。その中でオーキシンは、特に無限根粒において、根粒形成初期の皮層細胞分裂を促進する正の調節因子として重要な役割を担っていることが報告されている。一方で、有限根粒においては根粒形成時のオーキシン応答を調べた2003年の Pacios-Bras らの研究が報告されているのみであり、オーキシンによる有限根粒形成の調節については未解明の部分が多い。そこで本研究では有限根粒を形成するミヤコグサを用いて、根粒形成におけるオーキシンの役割を明らかにすることを目的とした。
    オーキシン応答性のGH3プロモーターを用いた解析を行ったところ、オーキシンの応答は根粒形成初期の分裂を始めた皮層細胞および根粒原基のメリステムで確認された。続いてオーキシン輸送阻害剤ならびにオーキシンアンタゴニスト処理下において根粒形成を観察したところ、根粒表面のレンティセル(皮目)の形成が全ての阻害剤処理で消失していることが確認された。さらに、レンティセル形成阻害と相関して根粒維管束の形成も阻害されていることが分かった。
  • 高原 皓史, 鈴木 章弘, 山下 健司, 石原 真美, 橋本 駿, 九町 健一, 阿部 美紀子, 東 四郎, 内海 俊樹
    p. 0127
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物ホルモンの一種であるアブシジン酸(ABA)をミヤコグサ (Lotus japonicus)に添加すると、ミヤコグサの根粒着生数は減少する。マイクロアレイにより、ABA添加に応答して発現が上昇するミヤコグサの遺伝子群を検索したところ、Class 1 chitinase (PR3), PR10.2 C Protein (PR10.2c), Chalcone synthase (CHS), β-1,3-glucanase (LjGlu1), ORF2 bases 1807-2850の5種類の遺伝子発現の上昇が検出された。これら5種類の遺伝子の発現を抑制したミヤコグサの形質転換毛状根をantisense法にて作出し、根粒菌を接種したところ、LjGlu1CHSの抑制体で根粒着生数と窒素固定活性が、ORF2 bases 1807-2850で窒素固定活性が上昇する傾向が見られた。しかし、毛状根におけるこれらの遺伝子の発現抑制効果は低いことが判明した。そこで本研究では、LjGlu , CHS , ORF2 bases 1807-2850のRNAi法による発現抑制毛状根を作出し、根粒着生と窒素固定能に与える影響について解析したので報告する。
  • 吉田 千枝, 養老 瑛美子, 舟山(野口) 幸子, 寿崎 拓哉, 佐伯 和彦, 川口 正代司
    p. 0128
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物は、根粒に共生する根粒菌による共生窒素固定により、窒素源に乏しい土壌で生育することができる。共生窒素固定に要するエネルギー源として、植物は大量の糖を根粒に投入する。過剰な根粒形成と共生窒素固定は植物の生育制限要因となるので、植物は自身の成長に適正な規模の根粒を維持する機構をもつと考えられている。
    plenty は、イオンビーム処理したミヤコグサMG-20由来の新奇の根粒過剰着生変異体である。接木実験により、PLENTY は根で根粒形成の抑制に働くことがわかった。plenty; har1 二重変異体が相加的な根粒数を示したこと、plenty が部分的な硝酸耐性と正常なエチレン感受性を示したことから、PLENTYは新奇の根粒抑制経路で機能することが示唆された。
    plenty は、har1, klv, tml と異なり、根粒数は増加するのに個々の根粒サイズが減少しない。plenty と野生型の乾重量を比較すると、plenty では根粒乾重量が顕著に増加する一方、地上部と根の乾重量は減少する。根粒のアセチレン還元活性を測定すると、plenty ではアセチレン還元活性値が顕著に高かったことから、多くの通常サイズの根粒による過剰な共生窒素固定活性が、総体的にplenty の成長阻害要因になっていることが示唆された。
    PLENTY 遺伝子のマッピングにより、ゲノム欠失領域を特定した。
  • 宮澤 日子太, 吉良(岡) 恵利佳, 佐藤 直人, 高橋 宏和, 呉 国江, 佐藤 修正, 林 正紀, 別役 重之, 中園 幹生, 田畑 哲 ...
    p. 0129
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物は根に根粒という器官を形成し、窒素固定細菌である根粒菌を細胞内に共生させる。我々はこれまでにマメ科モデル植物ミヤコグサにおいて根粒の形成数を全身的に負に制御する新奇のロイシンリッチリピート型受容体様キナーゼ(LRR-RLK)をコードするKLAVIER (KLV)を同定していた。根粒数を制御する別のLRR-RLKをコードするHAR1と同様に、KLVは葉において主に維管束組織で発現しており、また遺伝学的解析によって、KLVHAR1と遺伝学的に同一経路で、LjCLE-RS1LjCLE-RS2の過剰発現に対し上位的に働き、根粒形成を抑制することが示されていた。さらに共生における機能とは別に、KLVは茎頂分裂組織の大きさ、維管束の連続性、シュートの生長、花成開始などの制御という多面的な機能を持つことが示されていた。
    今回、ニコチアナベンサミアナにおける一過的発現系を用いた解析によって、KLVがHAR1と物理的に相互作用する能力を持つこと、またKLVとHAR1はそれぞれホモダイマーを作る能力を持つことが明らかになった。この結果から、KLV-HAR1受容体複合体が根由来のシグナルを受容して根粒形成を全身的に抑制し、またKLVはHAR1とは独立に多面的なシュートの形態形成を制御するというモデルが考えられた。
  • 箱山 雅生, Lombardo Fabien, 横田 圭祐, 三輪 大樹, 佐藤 修正, 田畑 哲之, 林 誠, 藤原 徹
    p. 0130
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物は、根粒菌との相互作用により根に根粒を形成する。根粒では、植物細胞内へと感染した根粒菌が、バクテロイドへと分化し窒素固定能を発揮する。バクテロイドは、窒素固定を行う上で必要な炭素源や無機養分を宿主植物からの供給に依存している。
    バクテロイドのニトロゲナーゼは窒素分子をアンモニアへと還元する酵素であり、その酵素活性にはモリブデンが必要である。宿主植物は、バクテロイドにモリブデンを供給していると推測されるが、その輸送機構は明らかではない。近年、シロイヌナズナにおいてモリブデン輸送体(AtMOT1)が同定された。そこで、我々はマメ科モデル植物であるミヤコグサのAtMOT1相同遺伝子が、バクテロイドへのモリブデン輸送に関与するかどうかについて検討した。
    ミヤコグサゲノムには4つのAtMOT1相同遺伝子(ST51-54)が見出された。リアルタイムPCRを用いた発現解析により、ST54は根粒でのみ発現し、その発現量は根粒の発達とともに増加することが明らかとなった。一方、残り3つの相同遺伝子は、すべて植物体全体で発現していた。これらの結果から、ST54遺伝子がバクテロイドへのモリブデン供給に関与すると期待された。現在、酵母を用いたST54のモリブデン輸送活性の解析や、RNAiによる発現抑制を行っており、本発表ではこれらの結果について報告する。
  • 山谷 紘子, 箱山 雅生, 河内 宏, 佐藤 修正, Hossain Md.Shakhawat, 柴田 哲, 長谷 純宏, 田中 淳, 川口 ...
    p. 0131
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物は根粒菌と共生して生物的窒素固定を行う。ミヤコグサ等のマメ科モデル植物において、共生初期の分子機構は明らかになりつつあるが、根粒感染細胞での共生成立の機構や窒素固定能の発現・維持機構については未だ知見が限られている。そこで我々は、窒素固定系成立、維持に関与する植物側の因子を明らかにする目的で、新規のミヤコグサ有効根粒形成不全変異体(Fix-変異体)Ljsym104に着目し、その解析を行った。
    Ljsym104は、根粒菌との共生条件下の生育が野生型に比べ著しく劣り、窒素欠乏症状を示す。着生した根粒は白色で肥大せず、表面に黒い着色がみられる根粒も観察された。根粒組織は分化し、感染細胞中のバクテロイドは野生型とほぼ同様の形状を示したが、感染細胞の早期老化の徴候が観察され、根粒の窒素固定活性(アセチレン還元活性)はきわめて低かった。これらの結果と、KNO3存在下の栽培試験で生育が回復した結果から、Ljsym104では、根粒菌との共生に異常が生じたため、窒素欠乏症状が引き起こされたと考えられた。その分子機構を明らかにするため、Ljsym104の原因遺伝子をマップベースクローニングにより同定し、遺伝子発現解析を行った。本発表では、これらの結果について報告する。
  • 征矢野 敬, 林 誠
    p. 0132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ミヤコグサNIN遺伝子は根粒形成過程で多面的に機能しており、nin変異体は根粒菌の感染による根毛カーリングの異常、感染糸形成不全、根粒原基形成不全といった表現型を示す。我々はNINの発現が感染糸形成及び皮層細胞分裂を誘導することを明らかにしており、根粒形成過程を制御する鍵因子の一つであることを示した。しかし、NINタンパク質の機能、NINがこれらの現象を誘導する分子機構は分かっていない。NINは構造的に転写因子として機能すると予測される。そこで、GAL4 DNA結合ドメインとNINの融合タンパク質をタバコで発現させたところ、GAL4結合領域をプロモーターに持つレポーター遺伝子の発現を誘導した。この結果より、NINは転写活性化因子として機能すると考えられた。さらに、ミヤコグサ・トランスクリプトームデータベースから、NIN依存的に根粒菌接種によって誘導される遺伝子を探索し、19遺伝子をNIN標的遺伝子の候補とした。これらがNINの直接的な標的遺伝子であることをChIPアッセイ、EMSAなどで解析を行い、少なくとも2つの候補遺伝子についてはNINがプロモーターに結合することを明らかにした。また、DEX誘導型NINを導入したミヤコグサの根では、DEX依存的にこれらの遺伝子の発現が誘導された。さらに、これらのコードするタンパク質の機能解析も行っておりこの結果についても報告したい。
  • 中川 知己, 賀来 華江, 下田 宜司, 杉山 暁史, 島村 昌幸, 高梨 功次郎, 矢崎 一史, 青木 俊夫, 渋谷 直人, 河内 宏
    p. 0133
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マメ科植物の根には根粒菌が感染して根粒が形成される。根粒では植物が光合成産物の提供等を行い、根粒菌は大気中の窒素ガスをアンモニアに変換して植物に供給することで相利共生が成立している。一方で土壌中には病原菌を含む様々な微生物が存在しており、これらを排除するために植物は防御機構を備えている。根粒菌などの共生微生物が、宿主植物の防御機構により排除されずに受容される仕組みについては明らかになっていない。
    マメ科植物は、根粒菌が分泌するNod ファクター(以下NF)を認識することで共生応答を開始する。NFはキチンを基本骨格とした化合物であり、非還元末端側に脂肪酸残基が結合した構造を持つ。一方でキチン自体は菌類の細胞壁成分であり、植物に防御応答を誘導するエリシターとして研究されている。最近になって単離されたNF受容体およびキチン受容体は、互いに高い相同性を持つLysM型受容体キナーゼであることが報告されており、これらの細胞内キナーゼドメインがそれぞれ共生応答、防御応答の誘導を担っていることが示唆されている。我々の最近の研究から、NF受容体であるNFR1はキチン受容体から進化した可能性が高いことが示唆された(Nakagawa et al, 2010)。本発表ではLysM受容体キナーゼの分子進化について最近得られた知見などを紹介しながら、防御から共生への進化のメカニズムについて考察する。
  • 今泉 隆次郎, 早川 徹, 嶋田 典基, 佐伯 和彦, 綾部 真一, 青木 俊夫
    p. 0134
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    フラボノイドの一種であるフラボノールは、紫外線防御やコピグメント効果によって花色を調節する役割を有する。マメ科植物では根粒菌との共生にはたらくことが知られ、根粒形成過程でオーキシンの輸送調節に関与することが示唆されている。我々はマメ科植物と根粒菌の共生過程におけるフラボノールの役割を明らかにするために、その生合成に関与するフラバノン3-ヒドロキシラーゼ(FHT)およびフラボノール合成酵素(FLS)をコードするミヤコグサの遺伝子(FHT1、FHT2、FLS1、FLS2、FLS3)の機能を同定した。野生型ミヤコグサ根粒菌を接種し、各遺伝子の転写レベルを経時的に調べたところ、FLS3以外は根粒原基形成に先立つ接種2日目に一過的に上昇し、根粒原基形成後は一定レベルに低下した。一方、nod遺伝子破壊株根粒菌を接種したところ、FLS3以外の各遺伝子は接種2日目からの高い転写レベルが4日目以降も維持された。このことから、フラボノール生合成遺伝子の発現は根粒菌由来の因子に誘導され、Nod因子で抑制されることが示唆された。組織化学的解析によって、FHT1は全体で強く、FLS1は茎頂や根の先端で特異的に発現していることがわかった。現在、根粒形成におけるFHTおよびFLSの詳細な役割を調べるために、生合成遺伝子の過剰発現および発現抑制によってフラボノール生合成を改変した形質転換毛状根の解析を進めている。
  • 村田 純, 小村 啓
    p. 0135
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    一般に土壌細菌は、土1gあたり108-9程度存在する。従って植物にとって、根の伸長過程において多種多様な細菌と遭遇することは、避けて通れない。ところが、植物と土壌細菌との相互作用に関するこれまでの研究は、植物と根粒菌、また菌根菌との相利共生、あるいは病原菌による寄生に限定的で、大多数の土壌細菌と植物との関係については不明な点が多い。一方で、植物の生長を促進する活性を持つ、Plant Growth Promoting Rhizobacteria(PGPR)と総称される土壌細菌が近年市販されている。しかしPGPRによる植物の生長促進にかかわるPGPR側または植物側の因子は殆ど明らかになっていない。そこで我々は、PGPRに分類される枯草菌とシロイヌナズナあるいはイネを共培養し、枯草菌が植物の生長に与える影響について生理学的検証を試みた。その結果、予想に反して枯草菌が根の伸長を抑制しうることを見出した。この植物根の伸長抑制活性は枯草菌が直に接触せずとも観察され、また枯草菌の培養条件により変動した。さらに、類似の生長抑制はアグロバクテリウムを用いた場合においても観察された。以上より、本現象は植物―土壌細菌に広く保存された一般的な現象である可能性が高いと考えている。
  • Ezquer Ignacio, Li Jun, Bahaji Abdellatif, Ovecka Miroslav, Baroja-Fer ...
    p. 0136
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Microbial volatiles promote accumulation of exceptionally high levels of starch in leaves. This phenomenon (designated as MIVOISAP) is inhibited by cycloheximide and cordycepin. Transcriptomic analyses revealed that Arabidopsis MIVOISAP is accompanied by drastic transcriptome reprogramming. Using different Arabidopsis mutants we investigated the impact in MIVOISAP of down-regulation of starch genes and of genes involved in the main signaling pathways. These analyses revealed that starch content increase in microbial volatiles-treated hy1 and hy2 photoreceptor mutants, and in mutants impaired in starch synthases class III (SS3) and IV (SS4), jasmonic acid (JA) sensing, and plastidial NADP-thioredoxin reductase C (NTRC) was low, whereas starch content increase was highest in bam1, isa3 and phs1 mutants impaired in starch breakdown enzymes. The overall data showed that MIVOISAP involves a photocontrolled, transcriptionally and post-transcriptionally regulated network wherein JA, SS3, SS4 and NTRC-mediated changes in redox status of plastidial enzyme(s) play important roles. We also provide evidence that microbial volatiles activate starch degradation during starch over-accumulation
  • 宗正 晋太郎, 中村 宜督, 森 泉, 村田 芳行
    p. 0137
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    アブシジン酸(ABA)は、気孔閉鎖を誘導し、蒸散による水分放出を抑制する働きを持つ植物ホルモンである。ABAが誘導する気孔閉鎖には、様々なシグナル因子が関わっており、孔辺細胞には複雑なABAシグナル伝達機構が存在することが知られている。今回、我々は、シロイヌナズナのヒスチジンキナーゼの一つであるAHK5の遺伝子破壊変異体であるahk5-1が、孔辺細胞におけるABAシグナリングに関して高感受性の表現型を示すことを報告する。ahk5-1変異体では、0.1 マイクロMという低濃度のABAで処理した際に野生株よりも大きな気孔口径の減少が観察された。ahk5-1変異体における孔辺細胞原形質膜イオンチャネルの活性を、パッチクランプ法を用いて評価した。また、ABAシグナル伝達経路において重要なセカンドメッセンジャーであるカルシウムイオンの挙動をカルシウム指示蛍光タンパク質であるyellow cameleon 3.6を用いて調査したので併せて報告する。
  • 渋谷 安未, 星安 紗希, 吉田 信行, 横田 明穗, 明石 欣也
    p. 0138
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    クチクラ層は、植物表皮細胞の表面を覆う疎水性の層であり、長鎖脂肪酸とそれらの誘導体からなるクチクラワックス類を主要成分とする。クチクラ層は、植物体からの水分損失を抑制する重要な役割を担うが、ストレス環境下におけるワックス生合成とクチクラ層の発達の制御様式については、ほとんど解明されていない。そこで強光乾燥耐性をもつ野生種スイカを用いて、クチクラ層の環境応答について解析した。野生種スイカの葉表面に沈着するワックス類の蓄積量は、弱光下で生育させた場合に比べ、強光下では単位面積当たりで約2倍に、強光乾燥ストレス下では約22倍まで増加することが判明した。特に、炭素数31の n-アルカン蓄積量が強光乾燥下で顕著に増加することが示唆された。そこで、クチクラワックス生合成に関与する遺伝子群の発現をreal-time PCR を用いて解析したところ、長鎖脂肪酸合成経路の鎖長伸長反応の初発段階を担うβ-ketoacyl-CoA synthasesと、長鎖アルデヒドからアルカンへの変換を触媒するAldehyde decarbonylaseの遺伝子発現が、強光乾燥ストレスにより顕著に活性化することが判明した。これらの結果は、野生種スイカにおいてクチクラワックス関連遺伝子群が転写レベルで協調的に制御され、強光乾燥ストレス下においてクチクラ層の強化が達成されることを示唆する。
  • 中林 亮, 榊原 圭子, 浦野 薫, 松田 史生, 小嶋 美紀子, 榊原 均, 篠崎 一雄, 峠 隆之, 山崎 真巳, 斉藤 和季
    p. 0139
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    本研究では、MYB12及びPAP1/MYB75の過剰発現体(MYB12OX、pap1-D)及びそれらを掛け合わせて作出した二つのMYB遺伝子同時過剰発現体(WOX1-1、WOX1-2)を用いてメタボロミクス及びトランスクリプトミクスによる統合解析を行い、フラボノイド生合成機構に密接に関連する生理現象の解明を目指している。
    統合解析を行った結果、これらフラボノイド関連転写因子過剰発現体では野生型Col-0に比べてフラボノイド特有の過剰蓄積及びストレス応答に関連する遺伝子の発現誘導がなされていることが明らかとなった。ストレス応答関連遺伝子の発現に関与するアブシジン酸量は、Col-0と過剰発現体間で顕著な差が見られなかった。このことからフラボノイド生合成経路はストレス応答機構と密接な関わりがあること、またフラボノイド生合成経路の誘導はストレス耐性を向上させることが示唆された。そこで非生物学的ストレス(乾燥、塩及び酸化ストレス)実験を行った結果、これら過剰発現体は有意なストレス耐性の向上を示した。
    フラボノイドは植物ストレスを緩和する抗酸化活性を有する。本結果は、ストレス応答研究におけるストレス応答段階のフラボノイド蓄積及び抗酸化化合物過剰蓄積に起因するフィードフォワードな二次的な影響を分類する上で、有効な結果であると考えられる。
  • 太田 賢, 原田 千大, 石井 謙一, 細川 瑛子, 榊原 均, 藤村 達人
    p. 0140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    我々は、イネの根系発達に対する乾燥の影響を研究するために、土壌を速やかに乾燥させることができる栽培方法を開発した。「ルートボックス」と名づけた栽培容器を用いてイネを栽培すると、乾燥ストレス条件下の方が灌水条件よりイネの主根の生長が促進された。また、冠根の数は乾燥ストレス条件では減少していた。乾燥ストレスによるイネ主根の伸長促進機構を調べるために、主根の根端部分における遺伝子発現の変動を調べた。マイクロアレーによる解析の結果、アミノ酸結合型のオーキシンからオーキシンを遊離させるILR1遺伝子やIAR3遺伝子とオーキシン応答遺伝子の発現が乾燥条件下で上昇していた。一方、サイトカイニン代謝に関連するCKX遺伝子発現やエチレン合成酵素遺伝子ACOの発現が乾燥ストレス区で抑制されていた。さらに、イネの根端における植物ホルモン量を測定したところ、IAA、GA、ABAが乾燥ストレス区で上昇していた。以上のことから、乾燥ストレスにより増加したIAAなど植物ホルモンが主根の伸長促進に関与していると考えられる。根端における表皮細胞の長さは、コントロールと乾燥ストレス区で差がないので、乾燥ストレスによる主根の伸長促進は細胞分裂の増加により引き起こされると推測される。
  • 浦野 薫, 圓山 恭之進, 尾形 善之, 鈴木 秀幸, 柴田 大輔, 篠崎 和子, 篠崎 一雄
    p. 0141
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の環境ストレス応答に関わる新規マスター転写因子を単離することを目的に、乾燥ストレス処理シロイヌナズナのマイクロアレイデータを用いて、共発現解析を行った。その結果、120個の共発現遺伝子グループが検出された。これらのグループの中で、乾燥ストレスに応答して特徴的に変動するグループに注目し、そのグループに属する遺伝子のプロモーター解析を行った。その一つに、乾燥ストレスに応答して抑制される遺伝子が共発現するグループが存在した。それらの遺伝子のプロモーター上には有意に共通のモチーフGGNCCCが検出された。このモチーフは腋芽形成や種子成熟に関与する遺伝子のプロモーター上に有意に存在することが既に報告されており、植物特異的な転写因子TCPの結合配列であることが明らかになっている。乾燥ストレス下でのTCP遺伝子群の発現解析を行った結果、TCP遺伝子の一つは顕著な乾燥ストレス誘導性の発現パターンを示した。現在、ストレス誘導性のTCP遺伝子の分子機能や下流因子に関して解析しており、TCPが関わるストレス応答機構について考察する。
  • 溝井 順哉, 安田 奈保美, 秦 峰, 圓山 恭之進, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0142
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナの転写因子DREB2Aは、乾燥・塩ストレス、高温ストレスに応答して発現し、それぞれのストレスに特異的な標的遺伝子の転写を活性化させることで、ストレス耐性の獲得に寄与している。DREB2Aの活性は、転写レベルの制御に加えて翻訳後レベルの制御も受けており、非ストレス条件下では負の活性調節領域に依存して不活性化され、ストレスに応答して活性化されると考えられているが、不活性化、活性化を決定づけるシグナルの実体は明らかになっていない。DREB2Bはアブラナ科における遺伝子重複によって生じたDREB2Aの相同遺伝子である。我々は前回の本大会において、DREB2BはDREB2Aと比較して、シス配列のDREを介した転写活性化能が低く、負の活性調節機能が弱いことを報告した。DREB2Bには、DREB2Aと比較してDNA結合ドメインや負の活性調節領域のアミノ酸配列にいくつかの違いがあるので、これらの違いが性質の違いを生んでいると考えられた。そこで、性質の違いを生んでいるアミノ酸残基を決定するため、DREB2Aの対応する残基をDREB2Bのものに順次置換し、野生型DREB2Aとの性質の違いを調べた。また、負の活性制御領域を欠失させ、恒常的活性型に変換したDREB2AおよびDREB2Bを発現するシロイヌナズナにおける遺伝子発現の比較解析を行ったので、あわせて報告する。
  • 松倉 智子, 溝井 順哉, 吉田 拓実, 戸高 大輔, 伊藤 裕介, 圓山 恭之進, 篠崎 一雄, 篠崎 和子
    p. 0143
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのDREBは、温度・乾燥・塩などのストレス応答に関与する転写因子であり、多くの環境ストレス誘導性遺伝子のプロモーター領域に存在するDRE/CRT配列に特異的に結合することでそれらの遺伝子の転写を活性化する。イネにおけるDREB2タイプの遺伝子群の網羅的解析からはOsDREB2Bが強い転写活性化因子として機能していることが示唆された。これまでにOsDREB2Bを過剰発現させたシロイヌナズナ内では乾燥・高温等のストレス誘導性の遺伝子の発現が増加していること、およびその形質転換植物のストレス耐性が向上していることを報告した。このことからOsDREB2Bがイネのストレス耐性獲得においても重要な遺伝子であることが期待された。プロトプラストを用いた一過的発現解析の系ではイネでもシロイヌナズナ同様にOsDREB2Bの転写活性化能が示された。しかし、OsDREB2Bの形質転換イネを作出し解析をおこなったところ、それらの植物体は形質転換シロイヌナズナのような顕著な形態変化を示さず、これまでのところ明確なストレス耐性の変化も見られていない。そのため、イネ植物体中においてはシロイヌナズナ中とは異なり、OsDREB2Bが十分に活性を持つための特異的制御機構が存在する可能性が示唆された。現在はGFPなどを用いて翻訳産物レベルでの解析を行っている。
  • 多田 朋弘, 戸田 雄太, 宮本 健助, 上田 純一
    p. 0144
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    エンドウ重力応答突然変異体ageotropum芽生えは自発的形態形成様の成長・発達を示すこと、また、上胚軸のオーキシン極性移動能は重力刺激の影響をほとんど受けないことが演者らの先行研究において示されている。本研究では、ageotropumエンドウ芽生えの上胚軸の成長・発達とオーキシン極性移動との関係を重力応答反応が正常であるAlaskaエンドウのそれと比較しつつ、オーキシン極性移動に密接に関係していると考えられるPsAUX1およびPsPINs遺伝子の発現解析から検討することを目的とした。Alaskaエンドウと比較して、ageotropumエンドウではPsAUX1、PsPIN1およびPsPIN2のアミノ酸配列に若干の相違があるものの欠失や挿入等は認められなかった。また、黄化ageotropumエンドウ芽生えの成長・発達、あるいは重力刺激に伴うこれら遺伝子の発現は黄化Alaskaエンドウのそれとほぼ同様であった。以上の結果、PsAUX1やPsPINsの機能は未だ明確ではないものの、ageotropumエンドウの重力応答反応の異常および上胚軸におけるオーキシン極性移動の低下をオーキシン極性移動関連遺伝子の構造やその発現の側面より説明することは困難であると考えられた。
  • Rahman Abidur, Takahashi Maho, Shibasaki Kyohei, Wu Shuang, Inaba Take ...
    p. 0145
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    In the root, the transport of auxin from the tip to the elongation zone (shootward) governs gravitropic bending. Shootward polar auxin transport, and hence gravitropism, depends on the polar deployment of the auxin efflux carrier, PIN2. In Arabidopsis thaliana, PIN2 has the expected shootward localization in epidermis and lateral root cap; however, this carrier is localized towards the root tip (rootward) in cortical cells of the meristem, a deployment whose function is enigmatic. We use pharmacological and genetic tools to cause a shootward relocation of PIN2 in meristematic cortical cells without detectably altering PIN2 polarization in other cell types or PIN1 polarization. This relocation of cortical PIN2 was negatively regulated by the membrane trafficking factor, GNOM, and by the regulatory A1 subunit of type two-A protein phosphatase but did not require the PINOID protein kinase. When GNOM was inhibited, PINOID abundance increased and PP2AA1 was partially immobilized, indicating both proteins are subject to GNOM-dependent regulation. Shootward PIN2 specifically in the cortex was accompanied by enhanced shootward polar auxin transport and by diminished gravitropism.
  • 飯島 功太, 伏田 豊仁, 田坂 昌生, 森田(寺尾) 美代
    p. 0146
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    高等植物における重力屈性反応の分子機構解明を目指し、シロイヌナズナ変異体を用いたマイクロアレイ解析により新規重力屈性関連遺伝子の単離を試みた。花茎における重力感受組織である内皮の形成不全により花茎重力屈性能を失った、sgr1/scrsgr7/shreal1で、共通して花茎での発現が低下している遺伝子群DGEDOWN-REGULATED GENE IN EAL1)に着目した。このうち、イネの重力屈性に関与するLAZY1と相同性を示すDGE1は、シロイヌナズナにおいても花茎重力屈性に関与することを一昨年度本大会にて報告した。
    本研究では、DGE1にごく一部で相同性を示すタンパク質をコードしたDGE2の解析を行った。DGE2は被子植物に広く保存されているが、機能が推測できるドメイン等を持たない。シロイヌナズナゲノム中にはDGE2と54%の相同性を示す遺伝子が1つ存在し、これをDETLDGE TWO-LIKE GENE)とした。これらの遺伝子についてT-DNA挿入変異体の解析を行った。dge2detl二重変異体において側根が水平方向または上方に伸長したことから、これらの遺伝子の根の重力屈性への関与が期待された。そこでdge1dge2detl三重変異体を作成したところ、花茎、胚軸、根において、重力屈性が著しく低下していた。現在、この三重変異体の詳細な表現型解析を行っている。
  • 平尾 知士, 渡辺 敦史
    p. 0147
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    マツノザイセンチュウによる「マツ材線虫病(マツ枯れ)」は日本の森林被害を代表する慢性的問題であり、1971年から現在までにマツノザイセンチュウの感染によって約4,000,000 m3のマツ林が失われている。このマツ枯れ対策の一つとして、林木育種の分野では抵抗性マツの選抜を進めているが、日本で植栽されているクロマツとアカマツのうち、クロマツはマツノザイセンチュウと極めて親和性が高く、抵抗性個体の選抜に多大な労力と時間を費やしている。
    我々は、抵抗性関連遺伝子をマーカーとした分子育種を目指し、マツノザイセンチュウに対する抵抗性クロマツの防御メカニズムおよび抵抗性遺伝子の単離に向けて研究を進めている。これまでに組織・細胞や代謝産物からのアプローチなど現象面での研究が進められ、抵抗性個体ではマツノザイセンチュウによる形成層や木部樹脂道、木部放射柔組織の破壊が少なく、細胞の周辺にフェノール物質が沈着することが確認されている(楠本ら, 2010)。一方で、遺伝子情報を含む遺伝子発現からの基礎的情報は極めて少ない。今回、我々はマツノザイセンチュウを接種した抵抗性および感受性個体から接種後1、3、7、14日の時系列を設定し、サブトラクション法から抵抗性と感受性で発現量の異なる遺伝子を単離した。本発表では、単離した遺伝子の発現挙動を中心に抵抗性および感受性個体の防御応答の違いについて報告する。
  • Asamizu Erika, Okabe Yoshihiro, Ezura Hiroshi, Noorul Amin Arshana, Go ...
    p. 0148
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Root-knot nematodes (RKNs) are a major parasite of agricultural crops, causing galls or "knots" formation throughout the root system. Finding a novel biological system for controlling the infection process is important to develop new method for limiting the RKN damage worldwide. The motile J2 stage juveniles invade into the host plant root near the root cap, penetrate intercellulary to the area of cell elongation where they initiate permanent feeding sites by injecting stylets. The molecular mechanism underlying this infection process, particularly the host plant and RKN interaction is virtually unknown.
    Tomato is a major host for the infection by RKNs. Recently a dwarf cultivar Micro-Tom is regarded as the model tomato and bio-resources such as mutant populations, a TILLING platform, full-length cDNA and genome sequences are developed mainly by the National BioResource Project. By accessing to these resources and information, we surveyed for host genes that potentially have a role in regulating the RKN infection process. We are assessing the genes' effect on the infection rate by RNAi or by utilizing the mutant. The current status of the study is presented.
  • Maruyama Yosuke, Yamaguchi Junji, Goto Derek
    p. 0149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Root-knot nematodes (RKNs) are parasitic animals that invade root systems of many agricultural plants. RKNs are effective parasites because they induce permanent feeding sites inside plant roots as juveniles, and then spend their whole life-cycle at this single site. During initial infection, RKNs interact with root tips and move between cells to reach a final target destination near developing vascular cells. It is thought that successful infection by RKNs involves a suppression of defense responses. We have investigated this hypothesis by quantitative measurement of host defense response during invasion of tomato roots by the northern root-knot nematode, Meloidogyne hapla. Control experiments revealed that the defense response differs in roots from that typically observed in aerial tissues. During RKN invasion, a significant induction of the "root defense marker genes" was observed, demonstrating that a susceptible host does indeed recognise early RKN parasitism. These results indicate that suppression of host defense is not required for RKNs to establish an infection site, and that these signalling networks may even by used to guide the infection process.
  • 杉本 貢一, 松井 健二, 小澤 理香, 飯島 陽子, 赤壁 善彦, 秋武 翔太, 佐々木 亮介, 青木 考, 柴田 大輔, 高林 純示
    p. 0150
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植食害虫の被害を受けた植物からは健全植物とは異なるブレンドの揮発性化合物が放散される。この揮発性化合物ブレンドは、植食害虫の天敵を誘引する間接防衛シグナルや周囲の健全植物に防衛準備を誘導する植物間シグナルとして働くことが知られている。我々は植物-植物間におけるシグナル伝達現象を分子・物質レベルで明らかにする目的で、トマト植物とその害虫であるハスモンヨトウを用いた実験を行っている。
    これまで、被食害植物から放散される揮発性化合物ブレンドに曝露された健全トマトを食害したハスモンヨトウはコントロールトマトを食害したものに比べて体重の増加量が有意に抑制されることを報告しており、植物間シグナル伝達によって健全トマトがハスモンヨトウ抵抗性を誘導したと考えられた。食害抵抗性の原因を明らかにするため、揮発性化合物ブレンドに曝露された植物の代謝物を一斉分析したところ、みどりの香りの1種であるヘキセノールの配糖体が有意に蓄積していることが明らかになった。健全トマトはヘキセノールの単一曝露のみでも配糖体を蓄積し、ハスモンヨトウへの抵抗性を誘導することから、ヘキセノール配糖体がハスモンヨトウ抵抗性に関与する化合物であると考えられた。現在、配糖体化合物を単離・精製しその構造を明らかにするとともに、抵抗性発現メカニズムについて詳細に調査している。
  • 小澤 理香, 松島 良, 植田 浩一, 竹本 裕之, 松田 一彦, Maffei Massimo, 高林 純示
    p. 0151
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の食害に対する誘導防衛反応には,摂食阻害物質の生産のような直接的な防衛と,植食者の天敵を誘引するような間接的な防衛とがある.食害により植物から放出される揮発性物質(HIPV)は,天敵の誘引に寄与しており,HIPVの放出は間接的な防衛反応の1つであると考えられる.ところで,植物の過敏感反応において感染部が褐色に変化する現象はよく知られているが,広食性のカンザワハダニがリママメを食害した際の食害痕も褐色の場合がある.我々は植物の加害種特異的な防衛反応の違いを明らかにする目的で,カンザワハダニの個体群から,リママメ葉に褐色の食痕を誘導する赤系統と白色の食痕を誘導する白系統を選抜した.そして,これら2系統はリママメに対して異なるHIPVブレンドを誘導すること,すなわち間接防衛反応が異なることを見いだした.また,防御遺伝子の発現解析およびサリチル酸の定量により,白系統の食害ではジャスモン酸経路が主に誘導されるが,赤系統の食害ではジャスモン酸経路とサリチル酸系路の両方が誘導されることが示された.これらの結果から,先のHIPVのブレンドの違いは,食害で活性化されるシグナル伝達系の組み合わせに起因すると考えられた.さらに,カルシウムイオンの分布や活性酸素種の生成を,共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析することにより,2系統の食害に対するリママメの応答の初期反応の違いについて述べる.
  • 安部 洋, 冨高 保弘, 瀬尾 茂美, 下田 武志, 釘宮 聡一, 畠山 勝徳, 鳴坂 義弘, 佐々木 一誠, 櫻井 民人, 津田 新哉, ...
    p. 0152
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    昆虫による食害は、干ばつなどの環境要因、病原菌などによって引き起こされる病害と並び、植物の生育を脅かす重大な要因の一つである。近年、シロイヌナズナを用いた虫害研究が欧米を中心に進んでいるが、鱗翅目などの農業害虫はシロイヌナズナを短期間で食べ尽くしてしまうなど、研究上の制約も大きい。そこで我々は、微小な農業害虫であるアザミウマに着目し解析を行っている。アザミウマによる食害の進行は比較的遅く、世代を超えて同一のシロイヌナズナ個体上で解析を進めることが可能である。我々はこれまでにミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)を用いてシロイヌナズナのアザミウマ抵抗性と植物ホルモンとの関わりについて解析を行い、植物の誘導抵抗性がアザミウマの繁殖や行動に影響を及ぼしていることを明らかにしてきた。一方で、農業現場においてアザミウマは、害虫であると共にウイルス媒介虫としても大きな問題となっている。本年会では、最新の知見と共にアザミウマによって媒介されるトスポウイルス病害とアザミウマによる虫害との相互作用についても報告を行う。更に、我々が行っているハクサイからの完全長cDNAリソースの開発やデータベースの整備についても報告し、虫害研究におけるハクサイへの展開の可能性についても言及したい。
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