日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
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  • 岡田 憲典, 宮本 皓司, 清水 崇史, 北島 竜也, 河本 晃一, 中条 哲也, 小澤 理香, 高林 純示, 宮尾 安藝雄, 廣近 洋彦, ...
    p. 0153
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ジャスモン酸(JA)は、病原体の感染、傷害、乾燥など様々なストレスにより誘導的に合成される植物ホルモンであり、植物の防御機構において重要な役割を担っている。我々はこれまでにJA応答性のbHLH型転写因子をコードするRERJ1遺伝子の解析を進めてきた。本発表では、イネ個体におけるRERJ1の生理機能を明らかにするため、RERJ1 promoter-GUS形質転換体を用いた発現様式の解析とrerj1-tos17変異体を用いた機能解析の結果について報告する。
    組織染色の結果、RERJ1は傷害処理後約15分から傷害部位周辺の狭い範囲で局所的に発現した。一方、持続的なJAの蓄積が見られる乾燥ストレスではRERJ1の発現は葉身全体で認められた。さらに、処理葉のJA量を測定したところ、JAの蓄積とレポーターの発現部位はよく一致していた。rerj1-tos17変異体を用いたJA処理後のマイクロアレイ解析を行ったところ、プロテイナーゼインヒビター遺伝子やモノテルペン生合成遺伝子などの病虫害抵抗性関連遺伝子群のJA応答性が抑制されていた。これらの結果は、RERJ1が傷害部位などのJA蓄積に応じて一過的に発現し、病虫害抵抗性遺伝子の発現誘導に関与することを示している。現在、rerj1-tos17変異体を用いた虫害抵抗性試験を進めており、イネの虫害抵抗性におけるRERJ1の寄与についても考察したい。
  • 小田原 真樹, 尾崎 崇一, 須田 邦裕, 青木 考
    p. 0154
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物のプロテアーゼインヒビター(PI)は、草食動物による食害に対する防御応答の一部として機能し、植物の食害抵抗性に重要である。トマト(Solanum lycopersicum)ゲノムにはPI遺伝子が多数存在するが、これらのうち食害応答性が示されているのは少数である。またこれら遺伝子の発現制御に直接関わる転写因子は明らかにされていない。そこで我々は、種々のマイクロアレイデータにおいて共発現をすることが明らかになっているPI群と転写因子に着目して解析を行った。このPI群はkunitzタイプとpotato protease inhibitorタイプに大別され、kunitzタイプの1種に関してはジャスモン酸によって発現の誘導がおこることが報告されている。メチルジャスモン酸(Me-JA)処理時の葉における発現解析を行ったところ、いずれのPIも発現が誘導され、また互いの発現相関が高かったことから、PI群の発現は食害に対して応答している可能性が示唆された。一方、これらPI群の共発現モジュールに含まれるMYB転写因子とTCP転写因子に関しても同様の解析を行ったが、Me-JAへの発現応答は見られなかった。また35S プロモーターによるMYB過剰発現トマトを作製したが、PI発現への影響は見られなかった。これらの結果から、共発現する転写因子のPI群発現における関与は弱いと考えられる。
  • 小林 光智衣, 森下 宜彦, 鈴木 秀幸, 光原 一朗, 大橋 祐子, 柴田 大輔, 瀬尾 茂美
    p. 0155
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    MAPキナーゼ(MAPK)カスケードは様々な生理機能の制御に関わるシグナル伝達経路であり、植物を含む高等生物に広く保存されている。構成因子の一つであるMAPKは刺激に応じて活性化され、転写因子等の基質の活性化を通して生理機能の制御に関わっている。傷害に対して植物はシグナル物質であるジャスモン酸(JA)やエチレン(ET)の生産を高めることで対処することが知られている。演者らや他の研究グループのタバコやトマトを用いた解析により、傷害に応じたJA生成はMAPKであるWIPKとSIPKが、ET生成は主にSIPKが正の制御因子として機能することが明らかとなっている。今回、傷害応答におけるWIPKとSIPKの上記機能が植物全般に保存されたMAPKの機能であるか否かを検証するために、シロイヌナズナの対応するMAPKの単独欠損体であるmpk3mpk6、及び、両遺伝子の発現を抑制したRNAi植物体(MPK3/MPK6二重抑制体)を用いて傷害応答を解析した。傷害後のET生成はSIPKに対応するMPK6が主体となって制御していた。一方、JAの生成はMPK3/MPK6二重抑制体においても野生型と同程度であったことから、タバコ等ナス科植物とは一部異なる制御機構であると考えられた。メタボローム解析による傷処理後の野生型植物とMPK3/MPK6二重抑制体間の生体内代謝産物の比較調査の結果も併せて報告する。
  • 加藤 新平, 朝倉 信英, 大西 泰朗, 瀬尾 茂美, 光原 一朗, 大橋 祐子
    p. 0156
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    MAPキナーゼは様々な細胞外刺激への応答において中心的な役割を果たす情報伝達因子である。タバコにおいては、二つの病傷害応答性MAPキナーゼであるWIPKとSIPKがストレスに応答したジャスモン酸とサリチル酸の蓄積を制御する。MAPキナーゼ脱リン酸化酵素はMAPキナーゼの抑制因子である。我々は、タバコのカルモジュリン結合性MAPキナーゼ脱リン酸化酵素・NtMKP1を過剰発現すると、WIPKとSIPKの傷害による活性化が抑制されることを報告してきた。本研究では、傷害に応答したNtMKP1の転写レベルおよびタンパク質レベルの変動について解析した。定量的RT-PCRの結果より、NtMKP1のmRNAレベルは傷害後一次的に減少し、その後に増加することが明らかになった。NtMKP1のタンパク質レベルを免疫ブロットにより解析したが、野生型植物においては検出されなかった。そこで、NtMKP1をカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター制御下で発現する形質転換体を用いた。NtMKP1タンパク質のレベルは傷害後急速に減少し、数時間低いレベルを保った後、基底のレベルに戻った。これらの結果より、NtMKP1は転写レベルおよび転写後レベルで制御されていることが明らかになった。
  • Rudus Izabela, Nakamura Kenzo, Ishiguro Sumie
    p. 0157
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Mechanical damage elicits various defense responses in plants. These responses are preceded by a rapid and transient burst of jasmonic acid (JA) which is supposed to act as a key signal molecule in wound-inducible gene activation. JA synthesis and signaling are interlinked by a positive feedback loop whereby jasmonates stimulates their own synthesis. It was shown that some JA biosynthetic genes such as LOX2 and AOS can be induced in COI1-dependent manner after wounding. JA biosynthesis is regulated by the availability of the substrate, α-linolenic acid, liberated from membrane lipids by phospholipases. The DEFECTIVE IN ANTHER DEHISCENCE1 (DAD1) gene largely contribute to JA production. The aim of our study was to examine whether the expression of DAD1 and its paralogs is also regulated by JA. We conducted experiments using JA-biosynthesis (aos, opr3) and JA-response mutants (coi1-1, coi1-dad3). Although DAD1 was weakly induced by JA, its expression levels after wounding were significantly reduced in both JA-biosynthesis mutants and even stronger in JA-response mutants. These results suggest that DAD1 may be involved in providing the substrate for self-stimulated JA production.
  • 小笠原 希実, 初谷 紀幸, 西村 幹夫
    p. 0158
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ERボディは、アブラナ科植物の表皮細胞に存在する小胞体由来の新奇オルガネラであり、その機能はまだ詳細には明らかにされていない。ERボディは、シロイヌナズナの幼植物体の子葉に恒常的に存在する恒常型ERボディと、成熟葉において虫害や傷害を与えた際に傷口の周りに誘導される誘導型ERボディの二種類に分類できる。我々のこれまでの研究からERボディを可視化した野生株(GFP-h)の子葉の一方に傷害を与えた場合、傷害を与えた一方の葉と与えていないもう一方の葉の両方でERボディの数が著しく増加することを明らかにした。また、二種類のERボディの内容物は、どちらもβグルコシダーゼであるが、恒常型ERボディの内容物はPYK10、誘導型ERボディの内容物はBGLU18と異なっていた。このように二種類のERボディを比較解析することにより、恒常型、誘導型それぞれに異なった機能を持つことが強く示唆された(Plant Cell Physiol.2009)。本大会では、誘導型ERボディの傷害に応答した細胞内挙動について報告する。傷害誘導型ERボディが、ERから形成された後、どのような機能を果たすのかについても議論したい。
  • 佐藤 直樹
    p. 0159
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    脂質の代謝回転や作り替えは動物では詳しく調べられてきたが,植物など光合成生物では合成の研究に重点が置かれ,分子の作り替えや交換などの知見は乏しい.本研究では,安定同位元素であるC13を用いて光合成によりシアノバクテリアの細胞をラベルし,脂質分子の代謝回転と作り替えに関する知見を得ることを目的とした。材料としては,糸状性のAnabaena variabilis M3株と単細胞性のSynechocystis sp. PCC 6803株を用いた。脂質の分画は,TLCと硝酸銀添加TLCにより行った。糖脂質のC13を含むisotopomerの分析にはMALDI-TOFを用い,質量スペクトルの解析には,独自ソフトウェアC13distとperlスクリプトを用いた。2時間のラベル反応では,新規に合成された脂質分子が9割以上の高いabundance(濃縮比)でラベルされた。その後のチェイスでは,速やかにラベルが希釈されたが,5%程度の低い濃縮比でラベルされた分子集団が出現した。これは,一度他の物質に取り込まれたC13が再度放出されて脂肪酸合成に利用され,それを取り込んだ脂質分子が作られたと考えられる。さらに,チェイスの後の脂質isotopomerの分布はチェイス前とほとんど変わらず,脂質分子の作り替え(脱アシル化と再アシル化)がほとんど起きていないことがわかった。
  • 河野 卓成, メヒロートラ サンディア, 横田 明穂, 蘆田 弘樹
    p. 0160
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    生物進化においてカルビンサイクルはラン藻で完成したと考えられてきた。カルビンサイクルでは11酵素が働いているが、RuBisCO、phosphoribulokinase (PRK)はこの回路特異的酵素である。原始ラン藻Gloeobacter violaceusは、典型的なラン藻PRK遺伝子prk1に加え、2つのPRKホモログ遺伝子prk23を有している。大腸菌リコンビナントタンパク質を用いた解析の結果、PRK1は200 μmol/min/mg (Km(Ru5P) = 0.28 mM)、PRK3は23.5 μmol/min/mg (Km(Ru5P) = 5 mM)のPRK活性を示したが、PRK2は全く活性を示さなかった。系統樹においてPRK3はMethanospirillum hungateiなどのメタン産生古細菌PRKホモログと共にPRK1と独立したクレードを形成した。解析の結果、M. hungatei PRKは29.3 μmol/min/mg (Km(Ru5P) = 0.21 mM)のPRK活性を示したことから、古細菌型PRKの存在が明らかになった。これまで古細菌においてカルビンサイクルの存在は報告されていないが、本研究結果とM. hungateiがRuBisCOホモログを有することから、この古細菌で原始的なカルビンサイクルが機能していると予想された。
  • 斉格奇 白, 佐々木 孝行, 山本 洋子
    p. 0161
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    酸性土壌では、アルミニウムイオンによる根の生育障害が見られ、その主な原因は、根端分裂組織における細胞伸張阻害である。さらに、アルミニウムによる細胞伸張阻害は活性酸素の誘発を伴うことを特徴とし、同様の現象が対数増殖期のタバコ培養細胞でも見られる。ところで、細胞伸張に必要な水吸収には、液胞内の溶質濃度(遊離糖、無機イオン、アミノ酸等)の増加による浸透濃度の増加が必要であり、それを駆動力として水が取り込まれる。液胞局在のインベルターゼは、液胞内のスクロースをグルコースとフラクトースに分解することで、浸透濃度の増加に貢献していると考えられている。本研究では、アルミニウムイオンによる細胞伸張阻害に関連して、アルミニウムイオンの液胞インベルターゼ活性への影響について、タバコ培養細胞とタバコ幼植物の根を用いて調べた。タバコ培養細胞のインベルターゼ活性は粗酵素液を抽出して測定し、根のインベルターゼ活性は組織化学的染色法を用いて観察した。その結果、いずれの系においても、アルミニウム処理により、液胞に局在するインベルターゼ活性が上昇することを見いだした。従って、アルミニウムストレスの下に見られる液胞インベルターゼ活性の上昇は、アルミニウムによる細胞伸張阻害を補う可能性が示唆された。
  • 鈴木 雄二, 藤森 玉輝, 牧野 周
    p. 0162
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    最上位完全展開葉のRubisco含量が野生型の120%にまで特異的に増加した形質転換体イネ (Oryza sativa L.) においては、現在の大気CO2分圧および強光下の光合成速度に野生型との差はみられない。その原因を探るために、光合成中間代謝産物やその他の一次代謝産物をCE-TOFMSを用いて網羅的に定量した。サンプリングは光合成速度が定常状態に達した葉を液体窒素中で瞬時に凍結することで行った。形質転換体では3-phosphoglycerateの量が野生型の1.4倍に増加したのと同時に、fructose-1,6-bisphosphateおよびsedoheptulose 7-phosphateも同程度に増加していた。その一方で、ribulose 1,5-bisphosphateを含むその他の代謝産物の量には野生型との差はみられなかった。また、ATPやADPおよびNADPHやNADP+の量やそれぞれの量比にも差がみられなかった。これらのことから、形質転換体においてはRubisco量の増加に伴いその反応が促進されていたものの、RuBP再生産の酵素反応のうちいずれかの段階が滞っていたために、光合成速度の増加が生じなかったと考えられる。また、形質転換体においては他の炭素代謝や窒素代謝にも変化が生じていたので、これらについても議論する。
  • 小川 瞬, 鈴木 雄二, 菅野 圭一, 牧野 周
    p. 0163
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    光合成炭酸固定酵素Rubiscoは植物の成熟葉で最も多量なタンパク質であり、核ゲノム上のRBCSにコードされる小サブユニットおよび葉緑体ゲノム上のrbcLにコードされる大サブユニット、それぞれ8つずつからなる計16量体である。このうちRBCSはmultigene familyを形成していることが知られているが、個々の遺伝子が葉身Rubisco量を決定する上でどのような役割を担っているかは未だ明らかではない。そこで本研究では、イネ (Oryza sativa L.) において5分子種存在するRBCSOsRBCS1から5)のうち葉身で主に発現しているOsRBCS2から5をRNAi法によって個別に発現抑制し、幼植物期・栄養成長期・生殖成長期の葉身Rubisco量に及ぼす影響を調べた。各分子種の発現抑制体の葉身Rubisco量の減少量は生育ステージによって大きくは変わらず、野生型と比べてRBCS23で30%程度、45で5~20%程度減少していた。このことは程度は異なるものの、それぞれの分子種がイネの一生を通して一定程度Rubisco合成に関与していることを示唆していた。
  • 泉 正範, 角田 穂奈美, 鈴木 雄二, 牧野 周, 石田 宏幸
    p. 0164
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Rubiscoの小サブユニットをコードする遺伝子RBCSは核ゲノム上にmultigene familyを形成しているが、葉のRubisco量の決定にどのように寄与しているかは明らかでない。本研究では4種のRBCSAtRBCS1A1B2B3B)を持つシロイヌナズナにおいて各遺伝子のT-DNA挿入変異体を単離し、抽薹開始時の成熟葉を用いて、葉における各RBCSのmRNA量、Rubisco量への影響を解析した。まずrbcs1arbcs3b変異体を単離し、交配により二重変異体rbcs1a3bを得た。野生体の葉ではRBCS1A2B3BのmRNAが主に蓄積していた。rbcs1aではRBCS1A mRNAは検出されず、rbcs3bではRBCS3B mRNAが野生体の約20%まで減少しており、rbcs1a3bでも同様に両mRNAが減少していた。各変異体で他のRBCS遺伝子のmRNA量に有意な変動はなかったため、全RBCS mRNA量は変異遺伝子の減少に伴い低下していた。葉のRubisco量も各変異体で有意に減少し、減少量はrbcs1aで野生体の約38%、rbcs3bで約20%、rbcs1a3bは約63%であった。以上の結果からシロイヌナズナの葉において、RBCS1A3BはRubisco生合成に寄与しており、その発現抑制によりRubisco量が減少することが示された。
  • 深山 浩, 上口 千晶, 西川 薫, 石川 智恵, 畠中 知子, 三十尾 修司
    p. 0165
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Rubiscoの活性化に必須なタンパク質Rubisco activase の高発現がイネ葉の光合成におよぼす効果を解析するために,オオムギRubisco activaseを高発現する形質転換イネを作出した.ウエスタンブロットおよびSDS-PAGE解析により,形質転換イネではイネRubisco activase以上のレベルのオオムギRubisco activaseを発現していることが確認できた.光照射下でのRubiscoの活性化率は形質転換イネで若干高かった.また,Rubiscoの光活性化における緩和時間は,形質転換イネにおいて有意に低かった.つまり,Rubisco activaseの高発現によりRubiscoの活性化が促進されたと考えられた.しかし,形質転換イネの光合成速度は非形質転換イネに比べて低い傾向を示した.窒素供給量を変えて育成した場合も,低窒素,標準窒素,高窒素いずれの実験区も形質転換イネで光合成速度が低くなった.窒素含量,クロロフィル含量には差異は認められなかったが,Rubisco含量は形質転換イネで有意に減少した.以上の結果,Rubisco activaseの高発現はRubiscoの活性化を促進するが,Rubisco含量の減少を招き,その結果,光合成速度を低下させることが明らかとなった.
  • 林 良祐, 進藤 沙織, 真野 陽人, 杉本 敏男, 近藤 昭彦, 藍川 晋平, 蓮沼 誠久, 秋本 誠志, 三宅 親弘
    p. 0166
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    本研究ではSynechocystis sp. PCC6803を用いて光合成でのΦII×PFDとJgの関係解明を目的とした。ΦII×PFD はChl蛍光測定による ΦII解析により、Jgは酸素発生速度(V(O2))解析により評価した。
    光強度の増大と共に白色光(WL)ではFm’とFsの低下が見られたが、赤色光(RL)では見られなかった。一方、緑色光(GL)ではWLよりも弱光で低下が見られた。Fm’とFsの低下は、ステート遷移、呼吸、WWCによるものではなっかた。我々は、GLの結果からPSIIアンテナ-Chl間の光エネルギー移動がOrange Carotenoid Protein (OCP)により制御され、Fm’とFsの低下に至ったと考えた。
    WL下、ΦII×PFD/Jg(=K)が強光下で増大した。一方、RL下では、強光下でもKは一定に保たれた。これはエレクトロンシンク律速条件下でも、AEFが働かないことを示唆する。さらに嫌気条件はV(O2)およびΦIIに影響を与えなかった。つまり、WL下で、AEFとしてのWWC活性が非常に低いことが示唆された。よって、WL下でのKの増大は、OCPによるPSII反応中心の光エネルギー捕集率低下によるものと考えられる。
    これらの結果から、S.6803では、ΦIIを用いたエレクトロンソース能評価は、RL下での光合成解析により可能であることが明らかになった。
  • 斉藤 亮太, 牧野 周, 杉本 敏男, 三宅 親弘
    p. 0167
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    ホウレンソウ葉緑体とチラコイド膜を用いて、メチルグリオキサール(MG)の代謝を検証した。我々は、葉緑体ストロマ画分にNADPHを電子供与体としてMGを還元する酵素を見出した。この反応では、MG還元反応によりHill oxidantであるNADP+が生成する。MGが消去され続けるためには、NADPHは再生されなければならない。従って、我々は、MGがHill oxidantとしての機能をもつという仮説を立てた。この仮説を検証するため、ホウレンソウ葉緑体にMGを添加した所、クロロフィル蛍光のクエンチングが観測された。葉緑体でのHill oxidantの生成は、光合成電子伝達反応を駆動することでO2発生を伴う。しかし、光照射されたホウレンソウ葉緑体にMGを添加した所、O2吸収を促進した。そこで、光照射されたチラコイド膜にMGを添加し、MGが媒介する酸素吸収速度(Vo2)の濃度、温度、光強度依存性を検証した。MGによるVo2は、1.0mMで最大となり、その速度は210μmol O2/mg Chl/hに達した。Vo2の至適温度は40℃であり、Vo2は光飽和することはなかった。また、光合成電子伝達阻害剤である、DCMU、DBMIBはMG依存のO2吸収を阻害した。これらの結果は、PS?Tで光還元されたMGが、O2を一電子還元し、H2O2が蓄積していることを示す。
  • 吉田 啓亮, 野口 航, 本橋 健, 久堀 徹
    p. 0168
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物ミトコンドリア内部のレドックス状態は、様々な環境要因によって変化する。この変化に応じて、生体内のレドックス制御に中心的な役割を果たすチオレドキシン(TRX)システムにより、様々なミトコンドリアタンパク質が活性調節を受けている可能性がある。私たちは、TRXアフィニティクロマトグラフィーとプロテオミクス技術を駆使して、ミトコンドリアのTRX標的候補タンパク質の網羅的な捕捉・解析を進めている。これまでに得られたジャガイモ根茎とホウレンソウ緑葉のミトコンドリア可溶性画分の標的候補には、TCAサイクル・光呼吸などの代謝系やタンパク質合成系など、様々な反応に関わるタンパク質が含まれていた。また、穏やかに可溶化した膜タンパク質からは、呼吸鎖複合体IやATP合成酵素の複数のサブユニットなどが標的候補として同定された。さらに、とりわけ興味深いタンパク質として、ストレス環境時に過剰還元力の散逸系として機能するAOXも標的候補に含まれることが、抗体を用いた高感度検出により明らかになった。本年会では、得られたミトコンドリアのTRX標的候補タンパク質のリストを提供し、TRXによるミトコンドリアの機能調節の可能性について議論したい。
  • 中村 有哉, 宗景(中島) ゆり, 岩野 恵, 横田 明穂
    p. 0169
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    光化学系I循環的電子伝達(CEF)は、C3型よりもC4型植物において活性が高くなっていることから、C4代謝に必要なATP供給を行っていることが示唆されている。Flaveria属植物には、C3型、C4型に加えC3-C4中間型の光合成を行う中間種や、よりC4型に近い光合成を行うC4-like種が存在する。C3型からC4型への進化の過程でC4代謝経路の発達に伴ってCEF系がどのように変化したのか明らかにするために、Flaveria属植物を用いて、CEF活性とそれに関わるタンパク質発現量、チラコイド膜構造の解析を行った。NDH活性は、中間種と比較してC4種とC4-like種で著しく高くなっていた。また、NDH-Hの発現量も同様な差異を示した。一方、P700の酸化速度から見積もられるCEF活性はC4-like種と比較してC4種で著しく高かった。FQR活性に関与するPGR5発現量の増加、また維管束鞘細胞の葉緑体におけるグラナ構造の減少もC4-like種からC4種間で大きな違いが見られた。C4代謝酵素の発現量は中間種で既に増加していることから、CEF系はC4代謝酵素の発現量の上昇と共に強化されたのではなく、進化プロセスの中間型からC4型へ移行する際に発達したと推察される。また、NDH経路がFQR経路より先に発達したことが示唆された。
  • 高市 真一
    p. 0170
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    紅色光合成細菌のカロテノイドは多種多様であるが、一部の目科属の各々のレベルで見られる特有のカロテノイドと、系統分類とは関係ない多様性に分けることができる。
    紅色光合成細菌は他の生物には余り見られない非環状のカロテノイドのみを生産し、そのうちの約半数の種の最終産物はスピリロキサンチンである。生合成にはCrtI, CrtC, CrtD, CrtFの4酵素が関与している。残りの種は、4種のスピリロキサンチン合成酵素の一部の変異・欠損、新たな酵素の獲得で説明できる。
    Rhodobacterales目はスフェロイデンやスフェロイデノンを生産する。これはCrtIの変異で最終産物がリコペンでなく1つ手前のニューロスポレンに変化し、ケト化酵素CrtAを獲得したためである。
    今回分析したPhaeospirillum属4種すべてがヒドロキシリコペン(ロドピン)あるいはジヒドロキシリコペンのグルコシドを生産した。CrtDの欠損、グルコース添加酵素の獲得によると思われる。またRoseospira属5種すべてがダイデヒドロロドピンを主成分としていたので、CrtF活性の低下と思われる。さらにRhodoplanes属5種は、2種がスピリロキサンチン、1種がロドピンを主成分としたが、1種はロドピンを主成分としテトラヒドロスピリロキサンチンも合成した。同じ属内で種毎に酵素の性質に違いが生じたと思われる。
  • 横野 牧生, 村上 明男, 秋本 誠志
    p. 0171
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    酸素発生型の光合成生物は2種の反応中心、PSIIおよびPSI、を用いている。光合成効率を維持するためには2種の反応中心の駆動バランスを保つことが重要である。中長期的なバランス調節は2種の反応中心の存在比を変えることで可能であるが、光環境の短期的変化に応じた迅速な調節には、2種の反応中心へのアンテナの接続状態の切り替えや、2種の反応中心間での励起エネルギー移動(スピルオーバー)、といった機構が提唱されている。紅藻は巨大な光捕集アンテナであるフィコビリソームをPSII反応中心に接続しているが、フィコビリソームが捕集したエネルギーの一部はPSI反応中心にも伝達されている。しかしながら、どのようなエネルギー移動経路でPSI反応中心に伝達しているのかについては不明である。これは2種の反応中心自体はどちらも類似の波長の光を吸収するため、生体内でアンテナを介さずに一方のみを直接励起することが困難だからである。本研究ではPSII反応中心における電荷再結合由来の遅延蛍光に着目し、そのスペクトル分布を解析することにより、アンテナサイズの異なる種々の紅藻におけるスピルオーバーを考察する。
  • 長尾 遼, 鞆 達也, 榎並 勲, 池内 昌彦
    p. 0172
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    珪藻のアンテナタンパク質は、fucoxanthin chlorophyll a/c binding protein (FCP)である。高等植物や緑藻タイプのアンテナタンパク質(LHC)に比べ、珪藻のFCPに関する生化学的な研究は多くない。近年、LHCIやLHCIIのように、PSIやPSIIに特異的なFCPが存在しているのかどうか議論となっており、PSI特異的なFCPの存在は示唆されているが、PSIIに特異的なFCPに関する知見はない。
    我々は、生化学材料としてよく使われている珪藻Chaetoceros gracilis (UTEX LB 2658)から酸素発生能を持つ光化学系II複合体の粗標品(crude PSII)の単離に成功した。このcrude PSIIには、FCPが含まれていた。本研究では、crude PSIIを材料としPSIIに特異的なFCPの単離と解析を目的とした。調製したcrude PSIIをTriton X-100で処理し、ショ糖密度勾配遠心によって、ペプチド組成の異なるFCPを単離することに成功した。現在、これらの標品の分光解析や色素組成の分析を行っているので、これらの結果を合わせてPSIIに特異的なFCPの特性を議論する予定である。
  • 山本 治樹, 楠見 淳子, 久留宮 祥平, 大橋 理恵, 藤田 祐一
    p. 0173
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    クロロフィル(Chl)生合成系には進化的起源の異なる2つのプロトクロロフィリド還元酵素が存在し、このうち暗所作動型酵素(DPOR)が暗所でのChl生合成能を決定づけている。DPORはL-蛋白質(ChlL)とNB-蛋白質(ChlN-ChlB)という各々ニトロゲナーゼのFe-蛋白質とMoFe-蛋白質と類似した2つのコンポーネントから構成される。被子植物を除く真核光合成生物においてDPORは葉緑体DNAにコードされ、一部の裸子植物ではchlNchlBがmRNAの段階でRNA editingによってアミノ酸置換を伴う塩基置換が導入されることが報告されている。本研究では、クロマツPinus thunbergiiの葉緑体DNAにコードされるChlNとChlBを、ラン藻Leptolyngbya boryanachlB欠損株で発現させ、暗所でのChl生合成能の回復を示標としてRNA editingのDPOR活性に与える影響を検討した。その結果、RNA editingによる塩基置換を導入したchlN-chlBを有する形質転換体においてのみ有意なChl生合成能が認められた。さらに、L. boryanaのNB-蛋白質を用いた生化学的解析はこの結果を支持していた。これらの結果は、RNA editing がNB-蛋白質を介してクロマツの暗所芽生えの緑化を制御していることを示唆している。
  • 野亦 次郎, 近藤 徹, 溝口 正, 民秋 均, 伊藤 繁, 藤田 祐一
    p. 0174
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    暗所作動型プロトクロロフィリド還元酵素(DPOR)はニトロゲナーゼ類似酵素であり、プロトクロロフィリド(Pchlide)のポルフィリンD環を立体特異的に還元し、クロロフィルの直接の前駆体であるクロロフィリド(Chlide)を生成する反応を触媒する。この反応では、PchlideのC17=C18間の二重結合が立体特異的に還元される。私達は、これまでに光合成細菌Rhodobacter capsulatusのNB-蛋白質(BchN-BchBへテロ四量体)の結晶化を行い、その立体構造を明らかにした。この構造と一連の生化学的解析結果に基づき、D環炭素間二重結合の立体特異的な還元反応機構を提唱した。本研究では、反応機構の詳細に迫るため、反応に関わると推定されたアミノ酸残基を置換した変異型タンパク質と基質アナログを用いて解析を行った。まず、反応条件下での吸収スペクトルの変化を経時的に測定したところ、基質Pchlideと生成物Chlideの中間的な吸収特性をもつ、反応中間体に由来すると思われるスペクトルが観測された。EPR解析の結果、この反応中間体はラジカル種であることが明らかとなった。さらに、変異型タンパク質と基質アナログを組み合わせて一連の生化学実験を行い、DPORによるPchlide還元反応の順序を決定しようと試みている。
  • 辻本 良真, 本松 里恵, 藤田 祐一
    p. 0175
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    光依存型プロトクロロフィリド還元酵素(LPOR)はクロロフィルaの直接の前駆体であるクロロフィリドaの生成反応を触媒する酵素であり、反応自体に光を必要とする点でユニークである。ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803においてLPORをコードする遺伝子porを欠損した変異株は、弱光・好気条件や通常光・嫌気条件では生育するが、通常光・好気条件では生育できない。このため、por欠損株はLPORの機能をin vivoで解析するために有用な系となる。海洋性ラン藻Synechococcus sp. CC 9311は淡水性ラン藻や植物のLPOR遺伝子とは系統的に異なるサブグループに属する3つのLPOR様遺伝子を持つが、これらの遺伝子がLPORとして機能するかどうか不明である。そこで、これらの遺伝子をpor欠損株で発現させ、通常光・好気条件での生育を検討した。併せて、大腸菌で発現させた精製タンパク質を用いてLPOR活性測定を行い、基質であるプロトクロロフィリドとNADPHに対するKm値を測定した。これらin vivoおよびin vitroでの結果から3つの遺伝子の機能について論ずる。さらに、糸状性ラン藻Leptolyngbya boryanaのLPOR遺伝子について、LPORに特異的なループ構造が活性に必須か否かをpor欠損株での発現系により検討したので、その結果も報告する。
  • 青木 里奈, 井原 邦夫, 藤田 祐一
    p. 0176
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、フィコビリン生合成系において、ヘムを酸化的に開裂しビリベルジンIXαに変換する酵素である。ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803には、ho1 (sll1184) 、ho2 (sll1875) という2つのHOアイソフォームをコードする遺伝子が存在している。ho1欠損変異株Δho1は、好気条件下では生育できず、嫌気条件で生育させたΔho1を好気条件に移すと、1)フィコシアニン(PC)含量の低下、2)プロトポルフィリンIX(PPN)の蓄積という特徴的な形質を示す。これらの結果から、HO1は好気条件での生育に必須であることが示唆された。今回、私たちは、好気条件下でも生育可能なΔho1の偽復帰変異株R1を単離し、その形質の解析を行った。R1の好気条件下での生育は野生株より少し遅いが、PC含量は野生株と同等まで回復し、PPN蓄積もΔho1の半分程度まで緩和されていた。RT-PCRにより、本来低酸素条件でのみ発現し、好気条件下でほとんど発現しないho2が、R1では発現していることがわかった。好気条件下でのho2の発現によりho1の機能が相補されR1が生育可能となったと推察される。このような変化を引き起こした変異部位を特定するため、現在、次世代シーケンサーを用いたゲノム解析を行っている。
  • 伊佐治 恵, 溝口 正, 原田 二朗, 民秋 均
    p. 0177
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    クロロフィル類の17位上のエステル鎖は、光吸収に直接関わりがないためあまり注目されてこなかった。しかしこの分子量の約1/3を占める側鎖は、光合成器官の構築や構造安定化に重要な役割を果たしている。我々は、このエステル鎖の生合成中間体(GG、DHGG、THGG鎖)を過剰に蓄積する紅色細菌Rhodopseudomonas (Rps.) palustrisを用いて、その構造をこれまで詳細に調べてきた。その結果、光合成器官ごと(LH2、LH4、RC-LH1)にエステル鎖中間体の偏在が確認された。今回我々は、反応中心(RC)のみに含まれるバクテリオフェオフィチン(BPhe)についても17位上のエステル鎖の構造を詳しく調べることにした。Rps. palustris種のRCの単離はいまだ報告されていないので、我々はまずこの種のRCの単離を試み、これに初めて成功した。SDS-PAGEや各種分光学的手法によって、単離したRCの精製度や光化学的機能保持を確認した。このRCに含まれるBChl-aとBPhe-aをLC-MSで調べた結果、BPhe-aではBChl-aに比べて明らかに成熟型のPhy鎖を有する色素の割合が多かった。同時に、THGG鎖型のBPhe-aが10%程度共存することも確認した。すなわちフィチル鎖以外のエステル鎖を持つBPhe-aを、RCの機能性色素として初めて同定した。
  • 溝口 正, 吉冨 太一, 原田 二朗, 民秋 均
    p. 0178
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    緑色硫黄光合成細菌は、クロロゾームと呼ばれる巨大な膜外集光アンテナ器官で特徴づけられる。このアンテナ器官は、脂質(主に糖脂質とリン脂質)と蛋白質(10種類)から成るミセル状の構造体で、その内部には200,000分子にも及ぶクロロフィル色素が内包されている。クロロゾームの外皮膜を構成する蛋白質の種類や機能については、分子生物学的観点から活発に研究がなされている。一方、外皮膜のもう一つの構成成分である脂質に関しては、その分子レベルでの研究は立ち遅れているのが現状である。我々は、好熱性緑色細菌の一種であるChlorobium (Chl.) tepidum(最近はChlorobaculum tepidumと呼ばれている)を中心に、クロロゾーム外皮膜を構成する糖脂質の構造解析を行ってきた。その結果、Chl. tepidumでは、従来提唱されていた単糖から成るMGDGに加えて、二糖から成る特異なRGDG (rhamnosylgalactosyldiacylglyceride) も同時に合成されていることが明らかとなった。更に、これらの糖脂質では、脂肪酸部位に不飽和結合としてシクロプロパン環構造を有していることも判明した。今回、これらのユニークな糖脂質の構造と組成の変化を、Chl. tepidumの培養時における温度・時間の関数として、詳細に解析したので報告する。
  • 久保 佑喜, 上田 清貴, 大河原 錬也, 山口 雅利, 出村 拓, 松浦 秀幸, 加藤 晃
    p. 0179
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物の生育環境には様々な環境ストレスが存在しており、それらストレスに曝された植物では大部分のmRNAからの翻訳が抑制されることが知られている。このことは有用遺伝子を植物に導入しても環境ストレスに曝された場合、翻訳されない危険性があることを意味している。しかし、細胞内では一部のmRNAからの翻訳は維持されており、この翻訳制御にはmRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)が重要な役割を担うということが報告されている。実際に、翻訳が維持されるmRNAの5’UTRをレポーター遺伝子に連結し、一過的に発現させると、熱ストレス下においてもレポーターが抑制されることなく翻訳された。
    本研究では、熱ストレスによって翻訳が抑制される遺伝子および抑制されない遺伝子の5’UTRをレポーター(GUS)遺伝子に連結した発現ベクターを構築し、シロイヌナズナ培養細胞へ導入した。得られた形質転換細胞を通常条件および熱ストレス条件にて培養し、GUS mRNAの翻訳状態をポリソーム/qRT-PCRによって解析した。その結果、由来する遺伝子と同様な翻訳特性を示した。また、別の環境ストレスで培養したところ、GUS mRNAは同様にポリソーム画分に存在した。これらの結果は、熱ストレス下でも翻訳が抑制されない5’UTRを活用することで、植物へ導入した有用遺伝子を環境ストレス下でも効率的に発現できることを示している。
  • 藤井 律子, 小澄 大輔, 喜多 麻美子, Harry A. Frank, 伊波 匡彦, 杉崎 満, 橋本 秀樹
    p. 0180
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    オキナワモズクは沖縄原産の褐藻類であるが、藻体の前駆体である盤状体での大量培養が達成されており、光合成器官の研究には最適である。褐藻類のチラコイド膜では、主たる光合成アンテナタンパクであるフコキサンチンークロロフィルa/cタンパク(FCP)が光エネルギーを吸収し、光化学系I、IIへエネルギーを伝達する役割を担っている。珪藻由来のFCPについては生化学的・分光学的知見がここ数年で得られてきたが、褐藻類由来のFCPについては報告例が極めて少なく、その構造及びエネルギー伝達メカニズムは解明されていない。既に我々は、オキナワモズク盤状体からこのFCPを単離精製し、このモズクFCPが分子量17.5kDと18.2kDの二種類のサブユニットからなるホモかヘテロの三量体であることを決定した。一方、モズクFCPにクロロフィル(Chl) c1とChl c2が共に結合していることを発見し、結合する色素の化学量論比をフコキサンチン:Chl a : Chl c1 : Chl c2 = 5.5 : 4.5 : 1.1 : 1.0と決定した。本研究では、フェムト秒時間分解分光を用いてこのモズクFCPにおける励起エネルギー移動ダイナミクスを調べた。
  • Chen Jing, Sonobe Kohei, Ogawa Narihito, Masuda Shinji, Kobayashi Yuic ...
    p. 0181
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    Jasmonates (JAs) are phytohormones derived from oxygenated fatty acids and regulates a broad range of plant defense and development processes. Here we describe another function of JAs: hypocotyl elongation under various light conditions was suppressed by exogenous methyl jasmonate (MeJA) treatment in Arabidopsis. Mutant analyses suggest that SCFCOI1-mediated proteolysis is required for this function. However, (+)-7-iso-JA-L-Ile was showed weaker effect than MeJA under dark and red light. Under blue light, gibberellin (GA) abolished the jasmonate function on hypocotyl elongation. This result suggests a crosstalk between JA and GA signaling. By screening of EMS mutant seeds, three mutants insensitive to MeJA on hypocotyl elongation, jal1 (jasmonate resistance long hypocotyl 1), jal36 and jal17 were isolated. Further analysis indicates that both jal1 and jal36 have a mutation in phytochrome B gene. These results suggest that jasmonate signaling is partially involved in phytomorphogenesis through phytochrome B and SCFCOI1 dependent pathway mediated by (+)-7-iso-JA-L-Ile and other jasmonate derivatives.
  • 伊藤 花菜江, Nakayama Pulla, 垣田 満, 岩野 恵, 高山 誠司
    p. 0182
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    多くの高等植物は自己と非自己の花粉を認識し、自己由来の花粉との受精を選択的に抑制する自家不和合性機構を有している。本研究で扱うアブラナ科植物(Brassica rapa)では、雌蕊先端の乳頭細胞膜上に存在する受容体型キナーゼSRK (S receptor kinase)が自己の花粉表層タンパク質SP11(S locus protein 11)を特異的に認識し、乳頭細胞内へと自己花粉の情報を伝達することにより、自己花粉の吸水や発芽を抑制することがこれまで示されている。また、MLPK(M-locus protein kinase)はSRKと受容体複合体を形成し、SRKとともに細胞膜で情報伝達に関わっていることが知られているが、その標的因子など具体的な機能はわかっていない。
    そこで、我々はスプリットユビキチン法を基にした酵母two-hybird法により、MLPKと直接相互作用するタンパク質の探索を進めた。その結果、MLPKと直接相互作用するいくつかの候補因子が得られた。これらの中には、細胞内輸送系に関わるものも含まれており、自家不和合情報伝達系で機能することが期待される。現在、BiFC(Bimolecular florescence complementation)法により植物細胞内におけるこれらタンパク質の相互作用を確認している。
  • 垣田 満, 村瀬 浩司, 岩野 恵, 磯貝 彰, 高山 誠司
    p. 0183
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    アブラナ科植物の自家不和合性における花粉-柱頭間の自他識別には、柱頭の細胞膜上に存在する受容体キナーゼSRK(S receptor kinase)と花粉表層タンパク質SP11(S-locus protein 11)のハプロタイプ特異的な相互作用によって制御されている。自家受粉の際、SRKは自己由来のSP11を特異的に認識することで、情報を下流に伝達し、自己花粉の吸水・発芽の抑制といった自家不和合反応を誘起する。また当研究室では、自家和合性変異株の解析から、膜結合型キナーゼMLPK(M-locus protein kinase)を同定している。MLPKは細胞膜上でSRKと受容体複合体を形成し、SRKにより直接リン酸化されることが既に示されており、自家不和合情報伝達系において重要な役割を果たしていると考えられるが、SRKによるMLPKのリン酸化部位や活性調節機構は明らかとされていない。
    そこで、MLPKのリン酸化部位を明らかとするために、大腸菌発現タンパク質を用いたリン酸化解析を進めることにした。N末端にMBPを融合した発現タンパク質を作製し、in vitroリン酸化実験を行った結果、MLPKのN末端領域が自己リン酸化の標的部位であるとともに、この領域がSRKのリン酸化の標的となっていることが明らかになった。これらの結果は、この領域がMLPK自身の活性調節に関わる可能性を示している。
  • 久保 健一, 円谷 徹之, 高良 明枝, Wang Ning, Fields Allison M., Hua Zhihua, 豊田 真美子, ...
    p. 0184
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    自殖を防ぐための遺伝的メカニズムとして、ナス科植物はS-RNase型自家不和合性を有し、雌しべ側因子としてS-リボヌクレアーゼ(S-RNase)が、花粉側因子としてS-locus F-box(SLF)が同定されている。SLFは、花粉内においてS-RNaseの非自己アレルの産物を特異的に認識し、26Sユビキチン・プロテアソーム経路によるその分解を誘導することによって、和合性受粉を可能にしているものと考えられてきた。しかしながら、アレル間で高い配列多型性を示すS-RNaseと比べ、SLFの多型性は極めて低く、どのようにして非自己S-RNaseの多くのレパートリーを識別しているのか、謎であった。我々は形質転換体を用いたin vivo機能アッセイおよびタンパク質相互作用アッセイを行い、ペチュニア(ナス科)では少なくとも3つのタイプの異なる遺伝子にコードされたSLF(タイプ-1, -2, -3 SLFs)が、花粉側因子として協調的に機能し、それぞれが一部の非自己S-RNaseを分担して認識していることを明らかにした。本研究をもとに、協調的非自己認識システムを提唱する。
  • 高良 明枝, 久保 健一, 円谷 徹之, 磯貝 彰, 高山 誠司
    p. 0185
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    自家不和合性(SI)は、顕花植物において自殖を妨げるための遺伝的メカニズムである。ペチュニアを含むナス科植物では、非自己花粉管内において、花粉側因子を構成するSLF(S-locus F-box)が細胞毒性を持つ雌しべ側因子S-RNaseを非自己アレル産物特異的に認識し、解毒することによって、非自己花粉管の伸長をサポートしている。我々は最近、一部の非自己S-RNaseを選択的に認識するSLFsが複数機能し、多数存在する非自己S-RNaseを協調的に認識、解毒しているという、「協調的非自己認識」モデルを提唱した。我々は、少なくとも3つのタイプのSLF(タイプ-1、-2、-3 SLFs)が、それぞれ異なる一部の非自己S-RNaseを選択的に認識することを示したが、3つのタイプのSLFだけでは認識されないS-RNaseの存在も示されたことから、花粉側因子として機能する他のタイプのSLFの存在も示唆された。本研究では、新規なタイプのSLFの探索を進めると共に、花粉側因子としての機能を形質転換実験によって調べた。その結果、新たな花粉側因子候補を見出したので報告する。
  • 阿部 光知, 渡辺 綾子, 米田 好文
    p. 0186
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    花成を制御する外的・内的環境情報はFT遺伝子の発現制御機構に集約され、最終的にはフロリゲンの産生という形で効果が発揮される。FT遺伝子産物が花成を誘導する長距離シグナル分子(フロリゲン)として機能することは、これまでに多くの研究グループが様々な実験手法を駆使することによって証明されてきた。シロイヌナズナfe変異体は、1991年にKoornneefらによって報告された花成遅延変異体の一つである。fe変異体は、同時期に報告されたft変異体、fd変異体と良く似た表現型を示すものの、長らく花成研究の対象とされてこなかった経緯がある。われわれは、このfe変異体に注目し、現在までに原因遺伝子の同定ならびに表現型の解析による機能の推定を行ってきた。その結果、FEタンパク質は維管束篩部におけるフロリゲン機能の調節に関与しており、fe変異体においてはフロリゲン活性の低下が花成遅延の原因であることを示唆する結果が得られた。本発表では、フロリゲン機能の制御における FEタンパク質の役割について議論する。
  • 大薄 麻未, 山内 雪香, 川勝(池田) 恭子, 伊藤 博紀, 高野 誠, 井澤 毅
    p. 0187
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    短日植物イネには3つのフィトクロムがあり、花芽誘導を抑制する。これまでに、長日条件下の朝においてのみ、フィトクロム光信号伝達系が開花抑制因子Ghd7を誘導することが分かっている。この誘導は、フィトクロムによる花芽形成遅延および日長に対する応答に必須である。しかし、個々のフィトクロム変異体の開花期表現型は、それぞれのフィトクロムが独立して、または他のフィトクロムと協調して、花芽形成を抑制することを示唆している。本研究では、フィトクロム一重/二重欠損体を用いて、フィトクロムによるイネ花芽誘導関連遺伝子の転写を詳細に解析した。
    まず個々のフィトクロムについてGhd7誘導における役割を調べた。その結果、phyAphyBphyAphyC変異体はGhd7を光誘導できなかったが、単独変異体は誘導し、phyAおよびphyBphyCが冗長的にGhd7を誘導することが明らかになった。また、phyB変異体ではGhd7や他の開花抑制因子の発現量は大きく変化しなかったが、Ghd7によって強く抑制される開花促進因子Ehd1が日長に依らず高発現した。さらに、日長非依存的に花芽誘導が早い変異体と同等のEhd1が発現しているにも関わらず、長日条件下におけるphyB変異体のHd3aの発現は抑制されていた。これらの結果とEhd1過剰発現体を用いた実験から、各種フィトクロムによるイネ花芽誘導の作用点について考察する。
  • 田岡 健一郎, 島田 千尋, 柳瀬 朋子, 大木 出, 辻 寛之, 児嶋 長次郎, 島本 功
    p. 0188
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    フロリゲンは、日長変化に応じて葉で合成されて花成をひきおこすホルモンとして1930年代にチャイラヒアンによって提唱された。近年の分子遺伝学的解析から、フロリゲンの分子実体はイネHd3a (シロイヌナズナFT)タンパク質であることが強く示唆されている。Hd3a/FTや、それらと拮抗的に働くRCN/TFL1タンパク質は、生物界で広く保存されているPEBPファミリーに属するが、花成制御における生化学的機能はいまだ不明の点が多い。そこで本研究ではHd3aの変異解析を行い、Hd3aを含むタンパク質複合体の分子機能の理解を目指した。
    Hd3aタンパク質の構造解析結果を基にHd3aに種々の変異を導入し、Y2H法によるHd3a相互作用因子との相互作用解析を行った。さらに、イネ培養細胞を用いた一過的発現系を用いて、変異Hd3aタンパク質の転写活性化能を検定した。その結果、Hd3aタンパク質はイネGF14やイネFDと相互作用して複合体を形成し、標的遺伝子の転写活性化を行うことが示唆された。RCNタンパク質について同様の解析を行ったところ、RCNが同様の複合体を形成して標的遺伝子の転写抑制を行う可能性が示唆された。以上の結果を基にフロリゲンの花成促進作用の分子機構について議論する。
  • 辻 寛之, 玉置 祥二郎, 田岡 健一郎, 島本 功
    p. 0189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    フロリゲンは、植物が花芽形成に適した環境を感知すると葉で合成され、茎頂へ移動し花成を誘導する因子として、約70年前に提唱された。その実体は長く謎であったが、近年の分子遺伝学的解析から、Hd3a/FTタンパク質がフロリゲンの分子実体であることを強く示唆する結果が得られている。Hd3aタンパク質はイネの葉で合成された後、茎頂まで長距離移動して花芽形成を誘導する。これまでの知見から、フロリゲンが茎頂において花メリステム遺伝子の発現を活性化させるためには、bZIP型転写因子FDと相互作用することが重要であることが示されている。
    14-3-3タンパク質はリン酸化セリン結合タンパク質であり、OsFD1以外の転写因子とも相互作用して多種類の転写複合体を形成可能であると考えられる。イネゲノム中には少なくとも6つのFDホモログがコードされているため、OsFD1以外のFAC構成転写因子の候補としてこれらのFDホモログが考えられる。そこでイネからFDホモログ遺伝子を単離し、これらの機能を解析した。OsFD2及びOsFD5については酵母two-hybrid法によってHd3aと複合体形成可能であることがわかった。さらに、OsFD2を過剰発現させたイネでは花成が遅延することが分かった。
  • 清水 健太郎, 土松 隆司, 諏訪部 圭太, 清水(稲継) 理恵, 磯川 さちよ, Pavlidis Pavlos, Staedler Th ...
    p. 0190
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    自家和合性の進化は,被子植物でもっとも普遍的に見られる進化的な変化の一つである.アブラナ科の自家不和合性はS遺伝子座の雌の遺伝子(SRK)と雄の遺伝子(SCR/SP11)と,その他多数の修飾遺伝子によって成り立っている.モデル生物シロイヌナズナがどの変異によって自家和合性に進化したのかを調べるため、ヨーロッパの76アクセッション(エコタイプ)の S遺伝子座領域の配列を決定し、297アクセッションのジェノタイピングを行った。その結果、SCRの213 bpの逆位型変異がヨーロッパに広がっていることを見出した.一方、Wei-1などのアクセッションは全長のSRKを持っており、同じハプロタイプを持つ近縁種ハクサンハタザオとの交配から,シロイヌナズナの雌の自家不和合性が未だに機能的であることが示された.また,SCRの逆位型変異を元に戻したトランスジェニックWei-1植物は自家不和合性となった.これらの結果から,SCR以外の因子はまだ正常に機能しており,SCRの213 bpの逆位型変異がシロイヌナズナの自家和合性への進化をもたらしたことが示された.またこの変異は,氷河期と間氷期のサイクルの中で急速に生息地を拡大する際に広まったことが示唆され,ダーウィンの繁殖保証仮説が支持された.雄の因子への変異は送粉昆虫のおかげで広まりやすいという進化学的上の理論を裏付ける結果ともなった.
  • 平岡 和久, 阿部 光知, 遠藤 求, 荒木 崇
    p. 0191
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    FLOWERING LOCUS T FT )遺伝子は約20 kDaのタンパク質をコードする。近年の研究から、このFTタンパク質が長距離移動シグナルとして作用することにより、植物の花成が誘導されることが明らかになっている。また、イネやポプラ、ドイツトウヒ、ジャガイモ、トマトといったシロイヌナズナ以外の植物においてFT 遺伝子のホモログが、分げつ形成や休眠、塊茎形成、複葉の形成などのさまざまな生理過程、特に分裂組織の関わる過程に働きを持つことが分かりつつある。
    本研究では、シロイヌナズナにおける花成以外の生理過程のひとつである側枝の伸長に注目し、花成後の野生型とft 変異体の側枝の伸長を解析し、野生型に比べてft 変異体では側枝の伸長開始の遅延および伸長速度の低下があることを見出した。現在、野生型の側枝とft 変異体の側枝について、ホルモン合成・シグナル伝達関連遺伝子や細胞壁関連遺伝子などの遺伝子の発現解析を行っており、その結果も合わせて報告する予定である。
  • 丹羽 優喜, 遠藤 求, 荒木 崇
    p. 0192
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    長日植物であるシロイヌナズナでは、長日条件下において葉の維管束篩部でFT遺伝子が発現し、茎頂に移動したFT蛋白質がAP1などの下流遺伝子の転写を制御することによって花の形成を開始させる。FT蛋白質は茎頂において、bZIP型転写因子FDと相互作用し、その転写活性化能を調節していると考えられている。しかし、遺伝学的研究などの知見から、FT蛋白質の花成促進機能はFD蛋白質に完全には依存しないことも示されている。また、花成に伴って、花の形成開始だけでなく、植物体全体で様々な変化が起こるが、そうした変化とFT蛋白質の関わりは明らかになっていない。われわれは現在、これらの課題を解決するため、転写因子ライブラリーを用いてFT蛋白質と相互作用する新奇転写因子の探索を行っている。また、酵母ツーハイブリッド法およびBiFC法を用いて、FT蛋白質と相互作用する因子として、これまでにTCP転写因子群に属する蛋白質を同定した。FT蛋白質と相互作用能を示したTCP転写因子の1つであるBRC1/TCP18は、側芽の形成・発達を抑制するという報告があることから、FT蛋白質がBRC1/TCP18との相互作用を介して側芽の発達に寄与する可能性が考えられる。側芽の発達を中心に、花成に伴う様々な変化を引き起こす分子機構について、tcp変異体及びft変異体の解析から得られた結果を報告する。
  • 川本 望, 高山 尊之, 遠藤 求, 笹部 美知子, 町田 泰則, 荒木 崇
    p. 0193
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのbZIP型転写因子であるFDタンパク質は、FTタンパク質と相互作用することで、APETALA1(AP1) などの花芽形成に関わる遺伝子の発現を促進する。AP1タンパク質は花芽形成に関わる遺伝子の発現制御の要であり、FDタンパク質はFTタンパク質とAP1 遺伝子の発現を結びつける重要な機能を担っている。FDタンパク質のC末端にはCalcium-dependent protein kinaseによるリン酸化配列が存在する。これまでの解析から、リン酸化を受けると推定される282番目のスレオニン残基をアラニン残基に置換した変異体FDタンパク質はFTタンパク質との相互作用能を失い,fd 変異体の遅咲き表現型を相補することができない。これらの解析からFDタンパク質のリン酸化が機能上重要であることが示唆されているが、そのリン酸化の実態は示されていない。
    そこでわれわれはFDタンパク質による花成制御機構、中でも特にFDタンパク質のリン酸化による機能制御に着目して解析を進めた。リン酸化ミミック変異を導入したFDは酵母ツーハイブリット法およびBiFC法においてFTとの相互作用を確認することができた.現在,282番目のスレオニン残基のリン酸化の検証,FD-FT複合体の形成機構についての解析およびFDをリン酸化するキナーゼの探索を進めており,本発表では得られた結果について報告する。
  • 藤田 浩徳, 豊倉 浩一, 岡田 清孝, 川口 正代司
    p. 0194
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
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    植物の茎頂分裂組織(SAM)は絶えず細胞分裂を行い地上部の組織を生み出しているにも関わらず、時空間的に高度に秩序だった振舞いを示す。 SAMの分子機構の研究は非常に進んでおり、例えばSAMの維持に中心的に関わっているWUS-CLV相互制御関係が明らかになっている。 しかしながら未だにSAMのダイナミックで秩序だった振舞いが必ずしも理解できている訳ではない。 それを理解するためには、SAMをシステムもしくはダイナミクスとして解析することが避けられない。 そこで我々は数理生物学的な解析による理解を試みた。 我々の用いた数理モデルの設定条件は、WUS-CLV相互作用(反応拡散系)、二次元的なパターン形成、細胞分裂による空間拡張、およびCZによるPZ誘導、の4つである。 まずモデルにおいて出現する全てのパターンを網羅的に調べた。その結果6種類のSAMパターン群に落ちることを示し、その出現条件の詳細を明らかにした。さらにこの結果を、シロイヌナズナ等における観察結果との整合性を検証し、ほとんどすべてを矛盾なく説明できることを明らかにした。 以上の解析の結果、SAMダイナミクスは2つのパラメータ、stem cell proliferation mode(パターン増殖モード)とstem cell containment (空間制約の強さ)、により本質的に理解できると結論した。
  • 小西 美稲子, 柳澤 修一
    p. 0195
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    シロイヌナズナのDof転写因子のひとつであるDof5.8は葉の前維管束細胞で発現する。我々は以前に前維管束における発現はオーキシンとオーキシン応答に関わる転写因子MONOPTEROS (MP/ARF5)によって制御されていることを報告した。今回はDof5.8の機能について新たな知見が得られたので報告する。プロトプラストにおいてDof5.8を発現させると、MPによる自身のプロモーターの活性化を強く抑制した。さらにDof5.8にVP16転写活性化ドメインを融合させた場合でも同様の抑制が見られたことから、Dof5.8は転写の抑制因子として働き、かつ自身の発現を負に制御する可能性が示唆された。そこで、Dof5.8の植物体での機能を調べるためにDof5.8を前維管束で過剰発現する植物を作成したところ、この過剰発現体では内在性Dof5.8のmRNAレベルが低下しており、また、ChIP解析によってDof5.8が自身のプロモーター配列に結合していることが明らかとなった。この過剰発現体では葉が細くなり、二次維管束上部と高次維管束の形成が阻害されていた。Dof5.8にSUPERMANの転写抑制領域を付加したタンパク質を過剰発現させた場合にも同様の表現型が見られた。これらのことから、Dof5.8は前維管束において転写の抑制因子として働き、維管束形成を抑制することが示された。
  • 菅野 茂夫, 竹内 誠, 嶋田 知生, 大木 進野, 森 正之, 西村 いくこ
    p. 0196
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    stomagenはシロイヌナズナにおいて気孔分化を促進する活性をもつシステインリッチペプチドである.STOMAGENEPF2は同じEPF familyに属する遺伝子にもかかわらず,機能が正反対という特徴を持つ.EPF2遺伝子の過剰発現は気孔分化を抑制することが知られているが,合成したEPF2の投与によってもシロイヌナズナの気孔密度を減らすことができることを確認した.
    stomagenとEPF2の機能の違いを探るために,我々は両者の生化学的解析を行った.stomagenの6つのシステイン残基を全てセリンに置換したペプチドは活性を失ったことから,stomagenのS-S結合と立体構造がその活性に重要であると考えられた.EPF2は8つのシステインをもち,そのうち6つはstomagenにも保存されている.EPF2特異的なシステインを含む領域(以下中間領域と呼ぶ)が,機能的差異を担うという仮説のもと,stomagenとEPF2の中間領域を取り換える実験を行った.驚くべきことにstomagenの中間領域をもつEPF2は気孔分化を促進する活性を示した.これらの結果は,中間領域の配列の違いがstomagenとEPF2との活性の違いを担っていることを示唆している.stomagenの機能ドメインの同定はEPF familyの機能推定や,機能分化の過程を推測するための大きな手掛かりになるだろう.
  • 志田 拓洋, 本村 泰三, 加藤 敦之
    p. 0197
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    RNA結合タンパク質AtRBP1(Arabidopsis thaliana RNA binding protein1)は、シロイヌナズナの根端、茎頂、カルスなどの細胞分裂が盛んな部位において発現している。このRNA結合タンパク質の機能解析として、大きく分けて以下の二つの実験を行った。一つは、AtRBP1の発現抑制が起こるトランスジェニック植物を作製し、生長への影響を観察した。現在のところ根の伸長阻害と塩ストレス耐性の低下という表現型が得られている。もう一つの実験としては、AtRBP1が結合するRNA分子の探索を行った。In vitroでは、ランダムな50ntのRNAを用いた結合実験を行い、AtRBP1がUUAGG、並びにこれに類似の配列が複数個近接して存在する部位に優先して結合することが示された。そしてin vivoでは、AtRBP1とGFPの融合タンパク質を発現するトランスジェニック植物から抽出したタンパク質を材料にGFP抗体を用いたIPを行い、融合タンパク質が含まれる溶出分画からRNAを抽出してcDNA合成と配列決定を行った。今のところin vitroで明らかになった結合配列を持つ複数の結合候補遺伝子が見つかっており、条件検討を重ねて更なる候補遺伝子の探索と絞り込みを行っていく。
  • 石田 喬志, 吉村 美香, 杉本 慶子
    p. 0198
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    植物をはじめとした多くの多細胞生物では分裂組織に未分化で分裂能を持つ幹細胞プールが維持されており、この幹細胞が細胞分裂を行うことで器官形成に必要となる細胞群が供給される。幹細胞では細胞分裂周期を進行させるのみならず、他の幹細胞と同調的に分裂をしたり細胞分裂の方向性が決まっていたりと非常に複雑な制御のもとにあることが示唆されているが、その詳細な分子機構は明らかとされていない。我々は細胞周期の進行に異常を示すシロイヌナズナ変異体high ploidy (hpy2)の解析から、真核生物に広く保存されているSmall ubiquitin related modifier (SUMO)による翻訳後修飾機構が細胞増殖及び幹細胞の維持に必須であることを発見した。HPY2はおそらく多数の基質タンパク質に対してSUMO化することで細胞周期の進行を制御するとともに幹細胞としてのアイデンティティを形成する機能を担っていることが予想される。本研究では主に遺伝学的アプローチによってHPY2が持つ生物学的意義を検証した。その結果、HPY2は予想通り根端など分裂組織で発現し、植物ホルモンなどの発生シグナルと協調的に機能していることが確認された。この結果は、HPY2がこれまでに明らかとされている以上に幅広い生物過程において、特に多細胞系の発生における重要な機能の一端を担っている可能性を強く示唆するものである。
  • 橋村 侑磨, 上口 智治
    p. 0199
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    頂端分裂組織の最も重要な機能のひとつは、植物の一生を通じて未分化細胞を維持することである。我々は地上部形態形成に異常をきたす変異として、劣性一遺伝子座変異であるmeristem disorganization1-1(mdo1-1)変異を分離した。mdo1-1変異体の地上部では葉序や葉間期の規則性が失われ、花茎が頻繁に帯化する。頂端分裂組織における組織学的解析や各種マーカー遺伝子の発現解析結果から、変異体では頂端分裂組織において規則的な層構造が崩壊し、未分化細胞が維持できないことが判明した。さらには、幹細胞の分化や細胞死が観察された。また、変異体ではDNA二重鎖切断レベルの上昇やDNA傷害誘導性遺伝子の発現上昇、DNA傷害薬剤に対する感受性の向上が確認された。これらの結果は、変異体では恒常的なDNA傷害によって、頂端分裂組織の崩壊が生じていることを示唆する。遺伝子クローニングと相補性試験の結果、MDO1遺伝子は既知の機能ドメインを有さない比較的小さなタンパク質をコードしていることがわかった。MDO1は陸上植物にのみ広く保存されており、mdo1-1変異はこれらオーソログ間で強く保存されたアミノ酸残基に生じたミスセンス変異である。以上の結果はMDO1遺伝子が、陸上植物にとって重要かつ共通した機能である頂端分裂組織における未分化細胞の維持に深く関わっていることを示唆する。
  • 大島 良美, 四方 雅仁, 小山 知嗣, 大坪 憲弘, 光田 展隆, 高木 優
    p. 0200
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    表皮細胞は、トライコーム、気孔、根毛などさまざまな形態や機能に分化する。成熟した地上部表皮細胞の表面に形成されるクチクラ層は、水分蒸発や外敵の侵入、組織の癒着を防いでいる。これまでに、転写因子WAX INDUCER/SHINE (WIN/SHN)がクチン及びワックス合成を正に制御することが知られているが、その他の制御因子は明らかになっていない。そこで、CRES-T法の適用により器官が接着する表現型を示す転写因子をスクリーニングし、EPIDERMAL DEFECT1 (EPD1)を同定した。シロイヌナズナにおいてCaMV35Sプロモーター下で、EPDと転写抑制ドメイン(SRDX)を融合したキメラリプレッサー(EPD1SRDX)を発現させたところ、つぼみ表面や栄養器官の接着がみられ、エピクチクラワックスの結晶が減少していた。また、遺伝子発現解析などの結果からEPDはWIN/SHNの上流で機能することがわかった。一方で、EPD1SRDX植物では表皮細胞の形態異常も認められ、表皮細胞特異的マーカー遺伝子ATML1の発現が低下していた。さらに、EPD1SRDXを導入したトレニアの花弁において表皮細胞が欠損していることがわかった。以上により、EPDはクチクラの形成だけでなく、表皮細胞の分化を広く制御する転写因子であることが示唆された。
  • 四方 雅仁, 秀野 晃大, 山口 博康, 佐々木 克友, 高木 優, 大坪 憲弘
    p. 0201
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    miR156/157は植物特異的転写因子SBP-box遺伝子を標的とし、生長相の移行を負に制御するmicroRNAである。シロイヌナズナのmiR156/157過剰発現体では、花成遅延、葉の幼若化、頂芽優勢の欠失がおこる。miR156/157の配列は種を越えて高度に保存されているが、機能の保存性を検証するため、シロイヌナズナのmiR157bを過剰発現(miR157b-ox)させたシロイヌナズナとトレニアの比較解析を行った。miR157b-oxトレニアは葉の幼若化、頂芽優勢の欠失など、シロイヌナズナと同様の表現型を示した。また、個体あたりの葉の生重量および枚数が増加していたことから、バイオマスの増大にmiR157b-oxが有効であると期待される。miR157bの過剰発現がトレニア内生遺伝子の発現に与える影響を調べるため、トレニアのSBP-box遺伝子を単離し発現解析を行った。単離した6遺伝子中3遺伝子の発現量が減少しており、標的配列の差異が発現制御の特異性を決定していることが示唆された。同様の現象はmiR157b-oxシロイヌナズナを用いた解析でも確認された。標的配列の差異に加え、miR157とmiR156は2塩基の配列の違いがあり、これらのmicroRNAの発現パターンと標的遺伝子の特異性により、SBP-box遺伝子群の発現を精細に制御していると考えられる。
  • 為重 才覚, 近藤 真紀, 渡辺 恵郎, 豊倉 浩一, 槻木 竜二, 西村 幹夫, 岡田 清孝
    p. 0202
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/02
    会議録・要旨集 フリー
    陸上植物の葉の多くは、平面的で向軸側(表側)と背軸側(裏側)とで細胞分化のしかたが異なる。このような性質を持つ葉を形成する上で、葉原基の段階から向軸側あるいは背軸側で特異的に発現する転写因子群の機能が重要であると言われている。中でもFILAMENTOUS FLOWER (FIL)は背軸側特異的に発現して葉の平面的な成長と細胞分化を促すことが知られている。
    我々が最近単離した新規なシロイヌナズナ突然変異体enlarged fil expression domain2 (enf2)はFILの発現領域が、野生型に比べて広いという表現型を示す。この変異体を用いた解析から、葉緑体の遺伝子発現が異常になると、FILの発現領域が広くなることが示唆されて来た。葉緑体の状態に応じて核の遺伝子発現を制御するという葉緑体シグナルについて、特にGUN1タンパク質に依存したシグナルの存在がよく知られている。GUN1の機能を欠いた変異体gun1enf2の二重変異体を作製したところ、FILの発現パターンは野生型に近いパターンを示した。以上のことから、葉緑体の遺伝子発現状態に応じて、GUN1を介してFILの発現パターンを制御する機構が存在すると考えられた。現在、葉緑体の状態に応じてFILの発現パターンが変化するときの細胞自律的、非自律的な影響を解析中であり、本発表ではその進捗状況も含めて議論したい。
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