古気候・古環境の復元を目的とした最近の湖成層研究から, 中国, 熱帯アフリカ, カナダ, スペインでの4つの研究を例にとり, 新しい研究手法とその成果についてレビューした. これらの研究では, 1, 有機炭素の同位体組成変動と気候変動に強い相関が認められること, 2, 陸上植物のタイプ分け (C3, C4) が湖周辺環境の復元に有効であること, 3, 有機物のC/N比が起源有機物の推定に有効であること, 4, 炭酸塩鉱物の酸素同位体組成が, 湖の濃縮相/希釈相変動, 水収支変動の復元に有効であることが示された. さらに研究手法としては, 5, 微化石群集解析と地球化学的パラメーター解析の総合的な検討がモデルの信頼性を高めるため, 特に重要であることが強調される. 湖成層研究と海成層研究では, その手法においてに際立った違いは認められないが, 湖成層データには, 汎世界的な変動情報とともに地域的な影響が記録されていることに注意を要する. また一般に, 海成層より時間空間的に高精度・高分解能の分析が可能である. これらの理由から, 湖成層研究には人類社会と関連した環境復元および近未来予測科学としての期待が懸かっている.
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