堆積学研究
Online ISSN : 1882-9457
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80 巻, 1-2 号
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カバーストーリー
論説
  • 山口 直文, 滝 俊文, 関口 智寛
    2022 年 80 巻 1-2 号 p. 3-9
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    ウェーブリップルの形状への堆積物供給の影響を調べるための造波水路実験を行った.実験では,水理条件がほぼ同一で,上方より降らせる堆積物供給の速度のみを3段階に変化させることでその影響を調べた.堆積物供給速度が比較的小さい実験では,ウェーブリップルの形状は維持されたまま積み重なっていた.堆積物供給速度が大きくなるにつれてウェーブリップルは平坦化され,その領域は広くなった.今回の実験の水理条件および堆積物の条件(水深:0.3 m,波の周期:1.0 s,波の平均波高:76-78 mm,堆積物粒径:0.20 mm)の下では,砂床上昇速度が32 mm/min以上の実験でウェーブリップルの平坦化が観察された.今回の実験は,ウェーブリップル形状は堆積物供給の影響を受けないというこれまでのウェーブリップル葉理形成モデルにおける仮定が,堆積物供給速度が大きい場合には必ずしも成り立たないことを示唆している.

研究報告
  • 白井 正明, 宇津川 喬子
    2022 年 80 巻 1-2 号 p. 11-25
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    2019年の台風19号(T1919)襲来に伴う出水により,多摩川中流域の高水敷に堆積した砂礫の堆積状況を記録した.砂礫州の上流部から中央部流路寄りにかけては基本的に礫の堆積が優勢であり,中央部基部から下流部にかけて懸濁水から堆積した淘汰の良い砂が堆積する.淘汰の良い砂は緩やかな2Dデューン状のベッドフォームを呈することがある.高水敷上に位置するトラフでは過去数10年間でも出水によりしばしば礫が堆積を繰り返しており,礫の集合部分の形状や懸濁水から堆積した砂との上下関係から,高水敷上での礫の転動・停止を含めた平均移動速度は遅く,概ね数10 m/h以下と推定された.近来まれに見る出水イベントであるT1919は,巨礫から泥まで様々な粒径の砕屑粒子を大規模に移動させ,砂礫州上での礫から砂への粒径変化が従来の事例より明瞭に認識されたが,砂礫州の外形を大きく変化させるほどの影響はなかった.今後も「想定を超える降雨」による河川の出水の頻度が増加する可能性が高いことを考慮すると,各地のT1919による出水及びそれによる砂礫の運搬・堆積の状況を記録・共有しておくことは,極めて重要である.

  • 増田 富士雄
    2022 年 80 巻 1-2 号 p. 27-34
    発行日: 2022/02/28
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    京都府城陽市の水主神社東遺跡で氾濫流路の堆積物を調べた結果,厚さ数10 cm程度の流路堆積物の砂層とその周囲の氾濫原泥層とが同時異相のひとつのセットとして堆積し,複数のユニットが積み重なって谷状の流路堆積物の集合体になっていることがわかった.すなわちひとつの同時異相のユニットは,氾濫流の流速や流量などの違いに支配された流れの中での物質の濃集差を反映したもので,数時間から数日間の1回の洪水氾濫によって堆積したものであり,氾濫流路堆積物からなる谷状の地層は5〜6回の氾濫流がほぼ同じところを流れて形成されたものである.こうした堆積物では岩相境界の認定が難しいことがわかる.

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