堆積学研究
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78 巻, 1 号
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カバーストーリー
論説
  • 内山 しおり, 町田 順一, 保柳 康一
    2019 年 78 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2021/10/26
    ジャーナル フリー

    福島県南相馬市小高区井田川地区における過去1万年間の環境変遷とエスチュアリー埋積堆積物中に含まれるイベント堆積物の識別をおこなうことを目的として,完新統を掘り抜き鮮新-更新統の大年寺層に達する長さ14.45mのボーリングコアを掘削した.採取した試料のコア記載に基づき堆積相を設定し,軟X線写真撮影,粒度分析,14C年代測定の結果を総合し古環境の変遷およびイベント堆積物の供給源について考察した.(1) 10,000-8,500cal. yr BP: 最終氷期後の海進に伴い,研究地域は後浜から泥質および砂質潮汐平底の環境へと変化した.(2) 8,500-6,000cal. yr BP: 縄文海進の最盛期にはエスチュアリー中央盆地の環境が成立した.(3) 6,000cal. yr BP-現在: その後の海退によりエスチュアリーは縮小し,しばし離水する塩水湿地となった.2011年3月11日に津波が襲来するまでの100年間は水田として利用されてきた.塩水湿地中にはイベント砂層が挟在しており,それらは海成の貝化石やリップアップクラストを含む.また,葉理構造や級化構造をなすことからそれらの砂層は津波堆積物である可能性が高い.イベント砂層の形成周期はおよそ600年から650年間隔と見積もられ,仙台平野で推定されている津波の襲来周期と一致する.

  • 宇津川 喬子, 白井 正明
    2019 年 78 巻 1 号 p. 15-31
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2021/10/26
    ジャーナル フリー

    河川を運搬される砂礫は,破砕·摩耗作用によってより細かい粒子が新たに生産される.破砕·摩耗作用を詳細に評価するため,河川の水流·地質条件が似た渡良瀬川の2支流において径0.5〜128mmの砂礫を対象に,砂礫の岩種,粒径,円磨度の関係を検討した.粒度階ごとにチャートと頁岩の円磨度および岩種組成を下流方向へ調べた結果,細粒度階ほど円磨度が低く,チャートと頁岩の個数比が小さくなる傾向が得られ,粗い粒子の破砕·摩耗により生産された角張った粒子が細粒度階に供給されたと解釈した.下流側地点では,複数の粒度階で平均円磨度がほぼ同じ値をとる状態が確認された.これは円磨度の「飽和」であり,「摩耗作用による平均円磨度の上昇と,破砕作用による角張った粒子の増加に起因する円磨度の低下が均衡した状態」と考えられる.本研究では,チャートは0.4,頁岩は0.6の円磨度の極限値をとり,短距離かつ急勾配の島弧河川を特徴づける値と捉えられる.

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