三陸海岸南部に位置する広田湾底で実施した音波探査,コア試料採取,および試料分析から2011年津波とA.D. 869年貞観津波による堆積物を同定し,それらの空間分布と堆積学的特徴を明らかにした.広田湾底堆積物は,上位から砂層および泥層で構成され,両者は明瞭な不連続面で区分され,上位の砂層が2011年津波堆積物と同定された.その結果,2011年津波堆積物は,(1)下位層と明瞭な侵食面で区分される,(2)定常時の広田湾底堆積物と明らかに異なる粗粒な粒度からなる,(3) 2層以上の砂層などからなる,(4)葉理構造が認められる,および(5)広田湾内の海底面直下に広域に分布する,という特徴が明らかになった.広田湾底における堆積量(2.6×106 m3)は,陸前高田平野上に堆積したそれの約4倍であった.この陸前高田平野-広田湾系における総堆積量と,浜堤周辺からこれまでに求められた総侵食量の収支差から,津波堆積物の供給源は湾奥部浜堤周辺のみならず,陸域,広田湾東·西部海岸とより深い海底からの堆積物供給を想定する必要性が示唆された.また,湾内堆積物から古津波堆積物が確認され,その分布,堆積物性状,および放射性炭素年代値から869年貞観津波による堆積物であると同定した.
本総説では,地球統計学的堆積体モデリングの基本概念と手法のバリエーションをまとめ,近年の方向性を指摘した.地球統計学は,自然界における様々な現象の空間的,時間的な関連性をモデル化して推定を行う統計学であり,石油探鉱開発をはじめとして様々な分野において活用されている.地球統計学を用いた堆積体のモデリングである「地球統計学的堆積体モデリング」の手法として,ピクセルベース二点間法のほか,ピクセルベース多点間法,オブジェクトベース,プロセス支援,サーフェスベース,堆積プロセスベースなど,一部堆積学的·演繹法的モデリングとも融合した様々な手法が開発されている.地球統計学的堆積体モデリングを実施するにあたっては,地質学的·堆積学的拘束条件を考慮し,データ条件,目的に応じて適した手法を選択した統合的モデリングが行われることが望ましい.
反射断面や地質断面,柱状図等を簡単に三次元表示する手法を開発し,それを実現するプログラムを作成した.位置情報をまとめたテキストをポリゴンデータに自動変換し,テクスチャとして用意した画像を貼り付けることで三次元表示を実現した.位置情報をテキストにまとめ,画像を用意したうえでプログラムを実行するだけで三次元化の作業が完了する.データは仕様が公開された形式の物のみ利用し,無償で手に入るGoogle Earthで閲覧できる.プログラムは無償でウェブ公開され(https://staff.aist.go.jp/tomoyuki-sato/),閲覧にも制限が少ないので,データの整理や関係者との共有,アウトリーチ等に活用いただきたい.
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