中部ベトナムのクアンビン省には,フラニアン·ファメニアン(F-F)境界を挟むソムニャー層が分布している.模式地におけるソムニャー層(Xo 1〜39)は,炭酸塩岩類からなり,層厚は約6.3mで,生物片に富む明灰色のグレインストーンとワッケストーンからなるユニットI (Xo 1〜13)と生物片に富むパックストーンとワッケストーンが優勢なユニットII (Xo 14〜28),化石が乏しく弱い平行葉理が発達する灰色〜暗灰色の泥灰岩で特徴づけられるユニットIII (Xo 29〜39)から成る.ユニットIIでは,腕足類やアンモノイド,オウムガイ,二枚貝,テンタキュリトイド,ウミユリ,アクリタークなどが産出する.フラニアン階の年代指標として重要なコノドントのPalmatolepis linguiformisは,ユニットIIの上部に含まれている.ユニットIIIからは,ファメニアン階最下部を示すPa. triangularis帯に特徴的なPa. delicatulaが産出する.安定炭素同位体比の2つの顕著な正の偏移が確認でき,下位の偏移はユニットIのPa. rhenana帯にピークがあり,上位の偏移はF-F境界の直下(Xo 28)にピークがある.生層序のデータに基づくと,これらの偏移は下部·上部ケルワッサー事変を示す.ユニットIIの上部(Xo 16〜23)では,門や綱レベルで多様性の高い生物群集が確認でき,これは下部ケルワッサー事変後,海洋の生態系が一時的に回復したことを示すだろう.上部ケルワッサー事変後,最下部ファメニアン階の海洋生物の多様性は明らかに減少している.
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