木材学会誌
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57 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
カテゴリーI
  • 細胞壁間接着による圧縮変形の固定
    小幡谷 英一, 大澤 晃司, 山内 秀文
    2011 年 57 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    アセチル化したスギ材にポリスチレン樹脂(PS)を含浸し,さらに放射方向に熱圧した。それらの動的ヤング率(E'),曲げ強度および寸法安定性を測定し,導入されたPS樹脂による細胞壁間接着の効果を検討した。アセチル化およびそれに続くPS含浸が木材のE'に与える影響はわずかであったが,180℃で熱圧することにより,木材が効果的に圧密されるとともに,接線方向のE'が顕著に増大した。そのような効果は室温で圧縮した場合には認められなかった。熱圧による力学性能の向上は,導入されたPS樹脂によって細胞壁同士が接着され,それらのセル変形が効果的に抑制されたことによると推察された。細胞壁間の接着は,圧縮変形の固定にも有効であった。アセチル化木材-PS複合体を熱圧することにより,乾湿繰り返しに伴う可逆的および不可逆的な膨潤が著しく抑制された。
  • 大賀 祥治, 宮本 亮平, 車 柱栄, 徐 健植
    2011 年 57 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    アラゲキクラゲ培地中の炭水化物含有量と子実体発生量の関係を検討した。菌糸体成長に及ぼす炭素源は,マンニトールとマンノースが促進することを明らかにした。培養期間に応じて炭水化物含有量が変動し,子実体発生量との相関が認められた。培地内グリコーゲン含有量と子実体発生との高い相関性が明らかになった。トレハロース含有量と子実体発生量との関連性はみられなかった。糖アルコールに関しては,マンニトールは菌糸体成長に促進効果をみせ,子実体発生量にかかわる代謝産物であることが分かった。一方,アラビニトールは菌糸体成長と子実体発生との関連性はみられなかった。
カテゴリーII
  • 水野 寿弥子, 杉山 淳司
    2011 年 57 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    京都府京都市に位置する茶室建築金地院八窓席で修理工事に先立ち,部材の樹種識別調査を行った。京都府文化財保護課および金地院のご協力のもと,試料採取を行った。樹種識別が可能となる最小限の大きさのサンプルを部材の樹皮下や割れ目や傷んでいるところより採取し徒手切片を作製したのち,光学顕微鏡により解剖学的特徴を観察して樹種識別を行った。金地院は小堀遠州の作といわれており,今回の識別結果より遠州の樹種選択についての科学的な知見を得ることができた。識別を行った結果,例えば,ニヨウマツ類やサクラ属が柱材に使用されていたことがわかった。樹種識別調査は,修理の際に部材の樹種を科学的に調査して,補修材の樹種選択に有益なだけではなく,その建築物の歴史的背景や価値,流通などを解明する上でも大変有効であると考えられ,学際的な研究の一環としても今後増加することを切望する。
  • 小幡谷 英一, 大澤 晃司, 梶山 幹夫
    2011 年 57 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    アセチル化したスギ材を,ポリ酢酸ビニル(PVAc),ポリエチレン(PE)およびポリスチレン(PS)を用いて接着し,それらの接着特性を気乾状態および湿潤状態で測定した。アセチル化によって水エマルション型PVAcの接着性能は若干低下したが,酢酸エチルに溶解させたPVAcを用いた場合には逆の傾向が認められた。アセチル化に伴う木材の疎水化で,疎水性溶剤の濡れ性が向上するものと推察された。アセチル化によってPSの接着性能は向上したが,PEの接着性能は変化しなかった。木材のアセチル化は,特にPSに対する親和性を高める効果があると推察された。PVAcやPEでアセチル化木材を接着した場合,温水浸せきによって接着強度が30-90%低下したが,PSの接着強度は湿潤によって10-20%しか低下せず,アセチル化木材-PS系の高い耐水性が示された。
  • 大村 和香子, 桃原 郁夫, 木口 実, 吉村 剛, 竹松 葉子, 源済 英樹, 野村 崇, 金田 利之, 三枝 道生, 前田 恵史, 谷川 ...
    2011 年 57 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    日本産および外国産の15樹種の心材を用い,ヤマトシロアリおよびイエシロアリを対象とした室内試験により耐蟻性を評価した。さらに,各樹種試験体を全国9カ所の野外に非接地・非暴露状態で設置し,加害シロアリ種および気象条件と食害指数との関係を検討した。室内試験の結果,イエシロアリ,ヤマトシロアリに対して,耐候操作を経ないレッドウッド,スギ,カリーが,耐蟻性の指標に設定した耐蟻インデックス値80%を下回った。一方,耐候操作により,ヤマトシロアリではヒバ,レッドウッド,スギで耐蟻インデックス値が顕著に減少したのに対して,イエシロアリでは耐候操作前後における耐蟻性の相違は,ヤマトシロアリの場合ほど顕著には認められなかった。野外試験では,高比重の広葉樹材の中ではカリーが高い食害指数を示し,耐蟻性が低いと評価された。また試験地の違いによって,同期間の暴露であっても,供試樹種の食害指数が異なることが明らかとなった。
  • 並列毛管圧着色法による着色パターン
    荒井 一成, 中島 健治
    2011 年 57 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    直線歯型に加工したラジアータパイン板目板の歯型木口面それぞれから毛管浸透により異なる着色液の供給を同時に並列して行う,並列毛管圧着色法を開発した。この着色法による浸透過程と着色パターンを調べるために,歯型木口面,歯型柾目および歯型底部曲面,板目面のいずれかの面,またはそのうちの2面を防水処理した試験片を用いて着色実験を試みた。その結果,歯型木口面から繊維方向に浸透した配合液が,歯型基部の延長域から歯型底部の延長域へ浸透する過程で分離し,吸着性のない顔料だけが隣接の色と混合した。また歯型柾目および歯型底部曲面からの浸透によって,吸着性の大きいBasic Violet 7による細く尖った着色パターンが生じた。このように防水処理の有無によって,着色液の着色過程,着色パターンに変化が見られ,意図的な着色パターン制御の可能性が示された。
  • 佐々木 靖, 栗本 康司, 谷田貝 光克
    2011 年 57 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 2011/01/25
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル フリー
    酵素糖化処理後のスギ残渣の化学組成分析を行うとともに25℃での水蒸気吸脱着等温線を測定し,吸放湿特性を検討した。さらに,糖化残渣を原料に熱圧プレスによるモールド成型またはポリプロピレン(PP)との混練を行ったのちに射出成型するとともに,得られたそれぞれの成型物について水分特性や寸法安定性,強度特性を評価した。
    熱水洗浄した糖化残渣は,糖化前のスギ木粉(コントロール)と比べホロセルロースの比率が半分にまで減少した場合でも,相対湿度60%以上の高湿度域で高い吸湿性を示した。しかしながら,同じ糖化残渣を用いたモールド成型物では吸湿性の低下が認められるとともに厚さ膨潤がスギよりも大きく低下した。一方,試料とPPを同じ比率で混練したのち射出成型した場合には,膨潤率はスギのおよそ1/2であった。このことから糖化残渣は膨潤抑制のための添加剤などとしての利用が期待できる。
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